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チェーザレ・ボルジアの女子人気に憧れるなら予測不能な男になろう!「何をするのか読めないリーダー」としての生き方を漫画『チェーザレ』の名場面に学ぶ!

こんにちは!

「歴史を知りたければ漫画を読もう!」を世に広めるべく勝手に走り回る、世界史マニアのヤシロです!

今回は「恰好いいリーダー像」をとことん追究してみたいと思うのですが、

敵には恐れられ、男性の部下には畏服され、そのうえ女性に大人気なリーダーというものが現実にいたら、是非あやかってみたいと思いますよね?

ルネサンス時代のイタリアに、ぴったりのモデルが実在したのです!

チェーザレ・ボルジアという人物なのですが、ご存知でしょうか?

伝えられている肖像画はこんな感じです

(WIKIMEDIA COMMONSより引用 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cesareborgia.jpg

現代日本でも通じそうなイケメンぶりですね

宝塚歌劇や少女漫画にもしばしば登場するキャラクターとなっています。

それでいて実像は、ただのヤサ男ではなく、戦争も策謀も外交も巧いヤリ手の君主

三国志でいう曹操や、日本の戦国時代でいう織田信長のような、「冷酷無比ながらも優秀なリーダー」として申し分のない実績の方なのです。

そういう暴君タイプは「嫌われ者」と相場が決まっていそうなのものですが、この人は女性にも人気キャラとして愛されております

その生き様のどこに秘密があるのでしょう?

というわけで今回は、「女子ウケする冷酷無比リーダー」なる羨ましいポジションを得るにはどうすればよいのか、惣領冬実先生の『チェーザレ』から徹底的に学んでいきましょう!




1、『チェーザレ 破壊の創造者』とは?

 

著者 惣領 冬実
出版社 講談社
掲載雑誌 モーニング
巻数

連載中

※2019年7月現在 既刊12巻

『チェーザレ 破壊の創造者』は、惣領冬実先生がイタリア文学者の原基晶先生とコンビを組んで取り組んでいる、時代考証に徹底的にこだわった歴史漫画です。

連載開始から15年くらい経過するのに、まだ主人公のチェーザレ・ボルジアは10代後半という丹念な描きこみ。

このペースで行くと最終的には全何巻の大作に膨れ上がるのでしょうか、そんな期待も高まる大作です!

2、関わった人間は虜になる!チェーザレ・ボルジアのカリスマ性とは?

その惣領冬実先生の画力で描かれるチェーザレ・ボルジア像は、このような感じです。

(『チェーザレ 破壊の創造者』6巻 惣領冬実/講談社より 引用)

物語の中ではまだ10代とはいえ、のちに暗殺や謀略もお手のものの歴史的人物になる方です。

「怖い」雰囲気が出ていますね。

ところがいっぽうでは、ションボリ歩いている学友に後ろから追いついて帽子を取っちゃうイタズラをしたり、やんちゃな姿も見せてきます。

(『チェーザレ 破壊の創造者』2巻 惣領冬実/講談社より 引用)

ここで「チェーザレ様!」と驚いている少年は、チェーザレに翻弄されているうちにそのカリスマの虜となっていくアンジェロ君です。

このシーンの少し前、チェーザレとお忍びで町を散策した時に、まさにチェーザレ一味による殺人の現場に居合わせるはめになってしまった少年です。

それでションボリしていたところに、「なに下を向いて歩いてんだ?!」と颯爽と登場したチェーザレ様に、完全に心をやられてしまうアンジェロ君なのでした。

(『チェーザレ 破壊の創造者』4巻 惣領冬実/講談社より 引用)

親友のミゲルに「あまりチェーザレにのめりこむな」とわざわざ忠告までされるアンジェロ君。

ですがこんな三角関係になっている時点で、関係者全員、もうマインドコントロール下にあると言っていい

(『チェーザレ 破壊の創造者』4巻 惣領冬実/講談社より 引用)

こんなふうに悩んでいるうちにアンジェロ君はいつもチェーザレと「つるむ」ようになり、

単なる学友のレベルを超えて、自発的にチェーザレの役に立つような活動をするようになっていくのでした。

3、チェーザレ・ボルジアの人気の秘密は「予測不能なリーダー」というキャラ属性?!

このアンジェロ君は架空のキャラクターで、読者の感情移入先として設定されている役回りとなります。

中性的な少年に描かれているのも、女性読者の感情移入先になるようにとの配慮からでしょう。

ということは、アンジェロ君がチェーザレに「翻弄されていくことで虜になっていく」プロセスを追えば、チェーザレの「女子ウケ」の秘密にも迫れるかもしれませんね!

「翻弄されていくことで虜になる」というところで、ひとつ、チェーザレの謎を解けそうなキーワードを思いつきました。

まさにチェーザレ・ボルジアのリーダーシップについて言及している、元マイクロソフトジャパン社長の成毛眞さんの『超訳・君主論』という本に、以下のような言葉があるのです。

理想は、予測不能なリーダー、これだろう。

私の場合、相手が褒めてもらいたいと思っている場面では、絶対に褒めない。

褒めるときは、思いもよらない場面で徹底的に褒める。

怒るときも、予測のつかない場面で起こる。特に問題を起こしていなくても、得意げになりやすい人を「本当にバカだね、おまえは」と徹底的にこき下ろしたりする。

私にとっては、「あの人、何をするかわからない」というのは褒め言葉である

(『成毛眞の超訳・君主論』成毛眞/メディアファクトリー より引用)

これは!

成毛眞さんは大企業での人心掌握のコツを語っているのですが、まさにアンジェロ君を含めた登場人物たちがチェーザレにコントロールされていくプロセスを語っているようなコトバではないでしょうか!

4、チェーザレ・ボルジアの予測不能ぶりを『チェーザレ』6つの名場面から検証!

そこで以下では、『チェーザレ 破壊の創造者』の既刊巻から、チェーザレの「予測不能性」を象徴するような名場面を引用していきましょう!

チェーザレの言動が「部下を翻弄する」カタチになっていることが、よく見えてくるかと思います。

そして、まずはここに引用したチェーザレの言動を真似することが、「女子ウケするリーダー」への成長の手掛かりになるかもしれません!

4-1 快活かと思えば打算的

まずはチェーザレが庶民の服装をして、アンジェロと一緒に町に出る場面から。

一緒に道端で果物を食べたり、射的で遊んだりと、楽しい時間を過ごすチェーザレとアンジェロ。

(『チェーザレ 破壊の創造者』5巻 惣領冬実/講談社より 引用)

ふと気づくとチェーザレは町の娘たちと楽しそうに談笑していたりします。

彼女たちが暇そうにしていたので声をかけたんだ」とのお言葉。

なぁんだ、チェーザレ様も普通に10代の男の子らしいところがあるだな」とアンジェロ君に思わせておいて、

(『チェーザレ 破壊の創造者』5巻 惣領冬実/講談社より 引用)

実は、暗殺者に尾行されていることに気づき、それをまくために女子たちの中に飛び込んだ演技だったことが判明します。

どこまで冷静に周囲を見ているんだ、チェーザレ様!

そしてこの直後、尾行していた暗殺者はミゲルに秒殺され、

せっかく「これから舟遊びをしましょうよ」という話にまで進んでいた女子たちについては、用済みとばかりにチェーザレ様に放置されてしまうのでした

街の異性に声をかけモテたいと思えば、演技としてならいくらでもモテ男になれる

でも実際にはどうやら興味がない

軽薄な遊びへの関心がまったくないこの冷徹さは、強靭なリーダーシップに憧れる女子には強力なポイントに見えるのではないでしょうか?

4-2 ウラオモテの使い分けが恐ろしいほど激しい

続いて、メディチ家の御曹司ジョヴァンニとの会話シーンから。

このジョヴァンニという人物は、チェーザレやアンジェロの学友ではあるのですが、立場としてはフィレンツェの最高権力者の息子。

チェーザレから見れば、将来の政治の布石として当然、仲よくしておくべき重要人物です。

チェーザレは、この愚鈍な印象もあるジョヴァンニのことを、よく面倒見てやり、いろいろなピンチから救い出してやります。

(『チェーザレ 破壊の創造者』3巻 惣領冬実/講談社より 引用)

お前は生涯の友だ」と抱きしめられて、チェーザレにすっかり心酔の様子のジョヴァンニ。

この場面をもしアンジェロ君が見ていたら、「なぁんだ、チェーザレ様もけっきょく、権力者の御曹司にはおべっか使いなのだな、長いものには巻かれる人なんだな」と、ちょっと失望するところかもしれませんよね。

と思いきや、チェーザレ様、そのジョヴァンニの部屋から出て一人になった瞬間に、このひとりごと。

(『チェーザレ 破壊の創造者』3巻 惣領冬実/講談社より 引用)

あんなあったかい振る舞いをしておいて、一人になった途端に「ふざけるな」って

アンジェロ君が聞いていたら「そうこなくちゃ!」と感涙する背中ではないでしょうか。

「ウラオモテを使い分ける人は嫌われる」というのが一般常識ですが、チェーザレ様の哲学は、それとはまったく逆のようです。

女子の立場から見れば、こんなチェーザレに睨まれたら、「どんなに温かい態度をとられても、どんなに褒められても、本心ではどう見られているのかが読めない。本心がどうなのか気になって仕方ない」という心理に、追い込まれていくのではないでしょうか?

4-3 ちゃんといいところを見てくれている、ようでいて急にそっけなくなる

アンジェロ君との付き合いが長くなってくると、突然こんなことも言い出すチェーザレ様。

(『チェーザレ 破壊の創造者』9巻 惣領冬実/講談社より 引用)

ちゃんと「疑うな馬鹿!」とまでダメ押ししてくれています

そんなふうに人の心に入り込んでおいて、アンジェロのライバルであるドラギニャッツォと何か大事そうな話をしているところに出くわすと、

(『チェーザレ 破壊の創造者』5巻 惣領冬実/講談社より 引用)

「いや、やっぱりいいや」な態度。

あれ、急にそっけない?!

「チェーザレ様、このあいだはドラギニャッツォのことは嫌いだって言ってたじゃないか?!」と、アンジェロ君はこの表情。

(『チェーザレ 破壊の創造者』5巻 惣領冬実/講談社より 引用)

焦らされるアンジェロ君はますますチェーザレのために必死に働くようになります。

しかも自発的に!

ここでの犠牲者はアンジェロ君ですが、これが女性に対する態度だったら、相当に罪なやり口ですね。

本命の相手を褒めた後、そのライバルとあえて接近したりするのですから・・・。

仕掛けられた相手は、もうチェーザレの本心がどこにあるのか油断がならず、もう一度褒めてほしいがために、必死になってしまいますよね

4-4 剣術もなかなか強い、ただし強すぎない程度に

チェーザレはまだ若い学生なのに、既に暗殺者に襲われたり、フランス人学生グループと殺傷寸前の乱闘になったりと、アクションシーンにもしばしば巻き込まれます

(『チェーザレ 破壊の創造者』5巻 惣領冬実/講談社より 引用)

たとえばフランス人学生のリーダー格と、フル装備で真剣勝負をやるはめに!

ところがこういうとき、剣術でもなかなかの腕前を見せるチェーザレ

よほど普段から剣術も練習しているのでしょう。

フランスの勇猛な大男を前にしても引けを取りません!

ここで良いところは、チェーザレが「なかなか強い」けれども、「本当に強い」というほどでもないこと。

だんだん押されはじめ、危なくなったところで、ちゃんと部下たちの参戦で守られます。

「自分でなんでもかんでもできるわけでもない」、このバランス感覚も大事でしょう

で、そのあとにアンジェロを含めた学友たちに見せる表情が、これ。

(『チェーザレ 破壊の創造者』5巻 惣領冬実/講談社より 引用)

さらに、アンジェロだけに見せる姿が、これ。

(『チェーザレ 破壊の創造者』5巻 惣領冬実/講談社より 引用)

学園ドラマでいえば、不良グループとの果し合いに堂々と出て行ってケンカ上手さを見せてくれたと思いきや、終わった後にこっそりと信頼できる女子のところに、ケガの手当てをお願いしに来るようなものです

弱みを見せられた女子は、心理的に逃げられなくなってしまいますね

4-5 まだ埋もれている超一流の人材を見抜いてしっかり交際している!

チェーザレについていった男性部下にせよ女子にせよ、とりわけ嬉しいことは、当代一流の人々との交際の輪に入っていけることではないでしょうか

それもまだ有名になる前の、「若きタマゴの状態の一流人」たちをどんどん紹介してもらえるわけです。

よほどチェーザレには人物眼があるのか、それともチェーザレのところに「のちに大成する人たち」が自然に集まってきちゃうのでしょうか?

たとえば新大陸発見前のコロンブス船長を、アンジェロ君に気軽に紹介してくれたり。

(『チェーザレ 破壊の創造者』10巻 惣領冬実/講談社より 引用)

まだ修業時代の若造ミケランジェロについても、チェーザレ様は何かを見抜いたらしく、目をかけ、いろいろちょっかいを出し、つるんでいます。

(『チェーザレ 破壊の創造者』10巻 惣領冬実/講談社より 引用)

きわめつけはこれ。

若き日のレオナルド・ダ・ヴィンチとは初見の際から意気投合!

(『チェーザレ 破壊の創造者』2巻 惣領冬実/講談社より 引用)

権力者との交際の中ではいろいろとウラオモテが多いチェーザレですが、一流の冒険家や芸術家との交際ではウラもなく純粋にコミュニケーションを楽しんでいるようです。

現代で言えば、ビジネス上の付き合いとは別のところで、一流アーティストや一流アスリートのタマゴたちと頻繁に仲良くしているリーダーというところでしょうか。

女子の視線からすると、仕事一辺倒の付き合いしかしない人かと思っていたら、サッカー選手やピアニストとのパーティーにどんどん連れて行ってもらえるようなものです!

へたな意識高い系の起業家パーティーなどへ連れていかれるより、よほど胸ときめくのではないでしょうか?

4-6 とはいえ結局は、発想がいちいち残酷で怖い!

やはり将来は冷酷無比な専制君主になる運命の男。

ことあるごとに、どこか危険な香りを漂わせます。

(『チェーザレ 破壊の創造者』2巻 惣領冬実/講談社より 引用)

いきなり何を耳元で言い出すんですか、チェーザレ様!

(『チェーザレ 破壊の創造者』4巻 惣領冬実/講談社より 引用)

ふいに人の殺し方を指南してくれるチェーザレ様!

(『チェーザレ 破壊の創造者』4巻 惣領冬実/講談社より 引用)

きわめつけはこれ、「お前が私に嘘がつけるのか?」の名セリフ!

もしこの人を裏切ったりしたら、いったい何が起こるのでしょうか?

うーむ、やっぱりこの人、どこか危険で、怖い!

これも女子の目線に立って考えると、引き締めるべき時には「ぴしゃり」と怖いことを言ってくれる人、ということになりましょうか。

実際、最愛の妹であるルクレツィアも、あまりチェーザレに対して甘えたことを言っていると突然「邪魔だ、出ていけ」のヒトコトを食らいます

(『チェーザレ 破壊の創造者』4巻 惣領冬実/講談社より 引用)

その下のコマのセリフ、「嘘泣きはやめろ」も凄いですねえ。

こんなこと女子に言っちゃっていいんでしょうか、、、

あっけなく言えてしまうところがチェーザレ様の凄さということになるのでしょうけど。




5、まとめ:チェーザレにあやかるなら「予測不能なリーダー」たれ!ただし男性部下にとって幸せか不幸せかは保証できません

今回の記事では、惣領冬実先生の『チェーザレ 破壊の創造者』を題材に、

  • チェーザレ・ボルジアが男性的なリーダーというだけではなく女子人気も高い人物である
  • その秘密は、どうやら人を翻弄する「予測不可能性」なのではないか

というお話をさせていただきました。

そして作品中からチェーザレの「予測不可能性」を象徴する、

  • 街の女子と遊んでいるように見えたのは刺客を惑わすため
  • 相手によって平気でウラオモテを使い分けていた
  • いいところを褒めてくれておいて、次に会ったときには突然冷たかったりした
  • 剣術も、強すぎない程度に強かった
  • 同時代の一流人のタマゴたちを見抜いて交際していた
  • 突飛に「怖い」雰囲気を見せて裏切りを牽制していた

といった場面を、「ぜひ倣いたいチェーザレの言動」として紹介させていただきました。

この記事に出てきたチェーザレの言動を意識的に真似してみるだけで、女子ウケもして部下に畏怖される「予測不能なリーダー」に一歩近づけるはず

・・・と、思います。

今回考察したのは、完全に男目線で拾い上げた「チェーザレの魅力」なので、女性読者のご意見も是非お伺いしたいところですが、いかがでしょう?

また男性読者の方は、こんなリーダーとつるんでその下で働いてみる自分を想像しながら『チェーザレ』を読んでみる、というのも面白いかもしれませんね!

チェーザレのような上司をもったら、男性部下にとってもさぞかしエキサイティングな日々でしょう!

そのかわりズタボロになるまで使われてしまいそうですが。。。

漫画のほうでは、そんなチェーザレ・ボルジアに心酔してしまったアンジェロやミゲルは、今後どのような運命を辿るのか?

そしていよいよ冷酷な専制君主として政治の世界にデビューすることになるチェーザレは、どのような成人に描かれていくのか?

『チェーザレ 破壊の創造者』は連載中につき、今後の展開がますます楽しみですね!



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ABOUTこの記事をかいた人

日本の漫画のみならず、アメコミもバンドデシネも好き。未知の「漫画」が地球上のどこかの国にまだあるのではないかと日々、探索をしております。好きな作品はアメコミの『Watchmen』。