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『ちかのこ』第5巻が照らす足元の宝物~寒い日も一緒にいる「家族」をもう一度

どうも。マンガフルライターの相羽です。

漫画家・イラストレーターのらぐほのえりか先生の大ファンである僕は、以前から、

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といった記事を執筆させて頂いていたり、

らぐほのえりか先生がイラストを担当された「飯坂真尋(いいざか・まひろ)ちゃんのフレーム切手」を求めて福島県は飯坂温泉まで取材に行ってきた記事を書かせて頂いたりしておりました。

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2019年12月3日

そんな僕にとって、昨年(2020年)一番のビッグニュースとは?

そう、『ちかのこ』第5巻の発売です。

世の中的には一度目の緊急事態宣言下の2020年5月初旬、発売日から少し遅れて到着した第5巻を読んだ僕の感想は……

こ、これは!?

現時点での、らぐほのえりか先生の最高傑作では!?

こうして、語りたいことがとめどなく溢れてきた僕は、『ちかのこ』第5巻についての8千字の記事を今回執筆してしまったのでした。

今回の記事では、

 

  • 「家族」
  • 「もう一度」

 

といったキーワードで『ちかのこ』第5巻の見所を語っていってみます。

もともと『ちかのこ』大好き! という方から、それほど情熱を掻き立てるマンガとはどんなものぞや!? とちょっと興味を持って頂けた方まで。

広く読んで頂けたら喜ぶのでした。

(注)現時点(2021年4月)での最新巻・第5巻について語るという記事の性質上、記事中には第5巻を含むこれまでのお話のネタバレがかなりの程度含まれます点をご了承頂けたらと思います。

1、『ちかのこ』ってどんな漫画?

作者 らぐほのえりか
出版社 廣済堂出版
掲載誌 pixivコミック(MANGA pixiv)/『E☆2(えつ)』
掲載期間 2015年~
巻数 既刊5巻

『すくりぞ!』や『温泉むすめ』関連のお仕事など、「癒し」や「和」の表現には定評があるらぐほのえりか先生が贈る、ちょい百合ハートフル仲良し日常系コメディ漫画です。

「pixivコミック(MANGA pixiv)」で話の区切りごとのまとめを連載しつつ、ほぼ毎日(土日以外)1PずつTwitterで更新されていた漫画で、日本の疲れた社会人の皆さんの日々の癒しになっていたりした作品です。

2021年の現在は、雑誌『E☆2(えつ)』でまとまったエピソードが掲載されるように移行しておりますが、メインエピソードの雑誌連載にとどまらず、WEBやpixivFANBOXでのイラスト・漫画の公開、即売会イベントでの同人誌版の頒布などなど……といったカタチで展開されており、もはやその「自由」さにおいて、発表形式も天衣無縫(てんいむほう)になってきた、摩訶不思議作品です。

ちょっと内気だった主人公の千条ノコ(ちじょう・のこ)の日常は、ある日アパートの地下からおもむろに出てきた地底人の内野チカ(うちの・ちか)と出会ったのをきっかけに少しずつ変わりはじめて。

 

  • 天上人の天使ポイ(あまつか・ぽい)
  • 地上人(?)の都合マキナ(つごう・まきな)
  • 悪魔の亡藤メア(ないとう・めあ)

 

……と、通称「ノコハウス」で一緒に暮らす、仲良しな友だちも増えていきます。

彼女たちと出会い、そして共に過ごしていく、ちょっと不思議で、ちょっと百合な、何気ないけどかけがえのない日々が描かれていく、異種族同居コメディです。

今回の第5巻は、連載の中心が雑誌『E☆2(えつ)』に移行してからの最初の一冊で、新キャラの黒猫のクロの登場など新展開が始まっております。

仲良しな女の子たちののどかな日常があり、ちょっとエッチな展開があり、SF的な作品世界の広がりもあり、個人的には人知を超え始めている(え)作品だと感じております。

 

2、『ちかのこ』第5巻のテーマは「家族」で、忘れていた足元にある身近で大事なものに気づき直せる

『ちかのこ』の第5巻を読むと、身近すぎて普段は意識していない「家族」に対して、キラキラした気持ちが少し取り戻せるようになったりします。

どういうことか?

まず、らぐほのえりか先生ご自身が、『ちかのこ』第5巻のテーマは「家族」であると語っておられます。

5巻のテーマは「家族」です。

ノコハウスに集まる女の子たちは、いわば「家族」だと思っています。

「ちかのこ」最新刊5巻発売のお知らせ(特典情報など)/らぐほのブログ より)

ノコ、チカ、ポイ、マキナ、メアらが「ノコハウス」という「家」で一緒に暮らしていたりと、『ちかのこ』はもともと「家族」感がある漫画でありました。

(『ちかのこ0巻~ゼロと書いて〝ラブ〟と読む!~
』 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

そして、僕は思い出しました。

らぐほのえりか先生がイラストを担当された『温泉むすめ』の飯坂真尋ちゃん切手をきっかけに、飯坂温泉に取材に行ったとき、インタビューさせて頂いた吉川屋七代目さんが印象的な言葉を語っておられたのを。

吉川屋七代目さんいわく、

「地域の宝は足元に眠っている」

と。

この(普通にしていると意識してることが少ないという意味での)「足元の宝物」が、温泉街だったら、伝承、歴史、文化(資産)などで、『ちかのこ』第5巻だったら「家族」なんだ! と僕は思うのです。

 ◇◇◇

●ライター注:『温泉むすめ』とらぐほのえりか先生について

 

  • 『温泉むすめ』の飯坂真尋ちゃんって誰?
  • 福島県の飯坂温泉で何かやっているの?
  • らぐほのえりか先生と何の関係が?

 

という方は、以前書かせて頂いたこちらの記事を参照して頂けたらと思います。↓

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2019年12月3日

 ◇◇◇

足元にある宝物、「家族」がもう一度輝き出すということ。

僕たちにも、あったかもしれない。

あるいは今でも持ち続けているのかもしれない「家族」という。

普段はあまりに身近すぎて忘れがちな宝物がもう一度キラキラと輝き出すまで。

『ちかのこ』第5巻の一連の流れを、次節で見ていってみましょう。

 ◇◇◇

●ライター注:「家族」について

「家族」と言っても、

従来型の血縁による繋がりとしての「家族」だけに限らず。

あるいはWEBがこれだけ発展・普及した世の中ですと、ネット上でだけの付き合いだけど、この人と私の関係はかなり「家族」的だ……なんて関係もあるかもしれません。

『ちかのこ』第5巻では、この現在では無条件では成立しなくなってきているかもしれない「家族」を、紡ぎ直していくようなエピソードが綴られていくのです。

 

3、『ちかのこ』第5巻では「家族」と「もう一度」をキーワードに世界がキラキラを取り戻していく

らぐほのえりか先生の初期作、『すくりぞ!』にこういった箇所があります。

(『すくりぞ!』2巻 らぐほのえりか/芳文社 より引用)

「リゾート」=「行楽地」「たまり場」「頼りにすること」「手段」「助けを求める」。

(『すくりぞ!』2巻 らぐほのえりか/芳文社 より引用)

そして、「居場所」。

個人的には、らぐほのえりか先生が作家として大事にしているものが色濃く現れている場面だと思っています。

『すくりぞ!』から5年。

らぐほのえりか先生が満を持して贈る、「家族」(という多くの人にとっての「居場所」)にまつわるストーリー。

この節では、『ちかのこ』第5巻で描かれる、「居場所」のような繋がりのカタチが想起されるエピソードを見ていってみましょう。

 

3-1 喪われた「家族」的な繋がりの象徴である黒猫のクロと「もう一度」出会う

今巻の冒頭、新キャラの「クロ」──ノコが昔拾ってしばしの間共に過ごしたネコが人間化して(?)「ノコハウス」にやってきて、日常のような日常じゃないような、少し不思議ないつもの『ちかのこ』ワールドにあなたは誘われていきます。

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

昔、一緒にいたネコ? 

そんな大切で、でも厳しい現実の流れの中で絶ち切られざるを得なかったような「家族」が、僕(読者)にもいたような、いなかったような?

そんな“今では失われた(かもしれない)もの”を象徴する存在であるクロ。

実は、らぐほのえりか先生の亡くなったネコがモチーフのキャラクターです。

2018年の暮れに掲げていたもう一つの「やりたいこと」。

死んじゃった私の飼い猫(クッキー)を反映したようなキャラクターを生みたい!を実現すべく編集さんに以下のラフを提出。

(中略)

そして「クロ」が生まれました。
やりたいこと、できているのかな?
ありがとうね、クッキー。

第110回 2019年 忘年会会場/らぐほのえりか先生のpixivFANBOX より)

命が喪われたという事柄ですから悲しい話ではあるのですが。

らぐほのえりか先生が全身体的に作品作りに取り組んでおられるのがうかがえる話でもあるし。

慰霊と創造にまつわる、人間が前を向けるまでの話でもあると感じられます。

象徴と誕生にそんな経緯があるクロ。

虚構と現実を架け橋するような「昔あった大事な何か」。

それはたとえば、「家族」です。

再会するまで、ノコはクロのことをわりと忘れていました。

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

『ちかのこ』自体が、ノコが「無償の愛」を探し続ける物語であるという側面があるのですが。

(『ちかのこ』2巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

この、クロにまつわる、

 

  • 「身近すぎて気づきづらい」という要素
  • 「子どもの頃に一緒にいた」という要素
  • そして、「再会するまで離れていた」という要素

 

ノコとクロの間にある関係性は、ちょっと恋愛的というよりは、「無償の愛」的であるいは「家族」的な愛であると感じられます。

昔あった愛情との、再会。

この一度失われたものと「もう一度」……という象徴性は、第5巻の全編にわたってかかってくることになります。

 

3-2 子どもの頃「家族」のように一緒にいた友だちの大切さに「もう一度」気づく

クロという存在にまつわる不思議気分に微睡んでいるうちに、エピソードはちょい百合風味な天使のポイと悪魔のメアの子供の頃のエピソードに。

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

天使のポイと悪魔のメアは、幼なじみです。

子どもの頃から続いているメアとポイの関係は、クロと同じく「昔あった繋がり」を表現していると言えそうです。

昔ノコと一緒にいたクロの存在と同様、幼かった頃のメアがポイに贈ったというポイの髪飾り(ポイは、今も身につけているのです)は、子どもの頃から現在まで続いている二人の精神的な繋がりの象徴といえるかもしれません。

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

一方リアル読者の僕らは、

 

  • 何だか最近、昔仲が良かった友人と連絡とか、取ってないような……。
  • それどころか「家族」とも、リアルでは離れて暮らしているという人も多いような……。

 

そんな状況ゆえに、普段は忘れてしまっていた大事なもの。

ポイの髪飾りも、やはり「家族」的な繋がりの象徴といえるかもしれません。

ポイがいつも当たり前のようにつけていたゆえに、意識が向かずについなくしてしまった髪飾りを。

クロ(──子供時間的「繋がり」の象徴でもある)が見つけるという物語構造になっている本エピソード。

このようなストーリーの流れも、一度無くしてしまった(意識しなくなってしまった)「家族」的な繋がりを「もう一度」見つける話になっていると捉えられそうで。

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

やはり、「家族」と「もう一度」が、第5巻のキーになっていると思う次第なのです。

 

3-3 死んでこの世界で「もう一度」生きてもその場所にいたい「家族」のような居場所を見つける

ノコとクロの繋がりのように。

ポイとメアの繋がりのように。

途切れないものもあるのかもしれない。

そんな想いを獲得したところで。

今巻前半のエピソードで紡がれた「繋がり」がホンモノなのかを確かめるように、この世界で生きる理由をノコに(そして読者にも)問う珠玉のエピソード、「寄せ鍋ダークネス」へと物語は流れ込んでいきます。

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

元は同人誌で発表されたこのエピソードはとにかく「すごい」ので、個人的にはこのエピソードを目撃するためにだけでも『ちかのこ』の第1巻から第5巻までを読む価値があると思います。

恐るべきは闇鍋。

「ノコハウス」のメンバーたちも一人、また一人と犠牲になっていきます。

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

ついに我らの主人公のノコも。

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

闇鍋のゴボウを食した瞬間、世界は暗転。

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

不思議な世界へ。

そして現れる「ラブバニ」。

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

ノコは、死にました。

 ◇◇◇

ライター注:ちなみにこの「ラブバニ」についてですが。

『ちかのこ』作中でちょくちょく登場する、このウサギ的なキャラクター。

神であるマキナでさえ「ラブバニ」のファンであるという謎の存在です。

僕なりの「ラブバニ」に関する考察はあるのですが、本格的に考察を展開するともう何本か記事を書かなきゃならなくなるので。

第5巻のテーマについて語るのが主眼の今回は、「なんか不思議な存在」……くらいにとらえておいて頂けたらと思います。

 ◇◇◇

不思議な狭間の世界でノコに問われるのは、生きる理由。

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

そして、目覚めます。

ノコは本当に一回死んだのか?

いや、全ては夢だったのか?

それとも、ここはもう一度消滅してしまってまた創られた新しい世界だったりするのか?

よくは、分からないけれど。

よくは、分からないほどに。

世界(にちじょう)とは闇鍋に口をつけただけで終わってしまうほどの儚いものであるかもしれないからこそ、

くっきりと今、私(ノコ)の胸の中に浮かび上がってくる本当に大切なもの。

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

ノコが迷いこんだこの世と常世の狭間のような世界が何なのか。

ラブバニは何者なのか。

よくは分かりませんが、一つだけ、確かなこと。

この「世界」との再契約。

この「世界」で「もう一度」。

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

ノコも、僕たち読者も生きていくのでありました。

 

3-4 さむい日は温め合えるような「家族」がいつも側にいたのを「もう一度」思い出す

ラスト、「寄せ鍋ダークネス」の試練を経過したノコに訪れるのは、家族のような存在──、チカ、ポイ、マキナ、メア、クロたちと一緒に過ごす、ある何気ない冬の「さむい日」。

ノコがこの日「寒い」と感じているのには、物理的に気温が低くて体が冷たいという以外に、精神的な要因があるようです。

心理的に「寒い」理由はもしかしたら、

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

経済的な問題からだったりするかもしれないですし……

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

あるいは動乱めいて不安になってきたりする社会情勢に囲まれているからだったりするかもしれません。

そんな日々だとしても、補い合って「温かさ」を補給し合う「家族」的な「ノコハウス」の面々が描かれます。

たとえば、寒さでおなかを壊したポイにメアがタイツを貸したり。

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

タイツも「繋がり」の象徴で。

やや深読みが過ぎるかもしれませんが、「タイツ」は(普段は意識しないという意味でも)「足元」を連想させる……と読み解きたいところです。

足元の宝物=タイツ。

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

ノコのラストのセリフは。

 

「なんだ……今日はあったかいんじゃない」

 

ノコがどうして「あったかい」だったのかに想いを馳せながら、そっと本を閉じ、本巻の余韻、おそらくはあなた自身にも残留していたかもしれない家族」の情味を味わいながら、あなたの日常へと帰還して頂けたらと思います。

(『ちかのこ』5巻 らぐほのえりか/廣済堂出版 より引用)

「世界」が美しいとまで胸を張って言えるかは分からないけれど。

少なくとも「家族」と一緒なら「あったかい」「世界」です。

それはあるいは「無償の愛」の断片──いつの頃からか忘れがちになってしまっていたけれど、気がつけばいつも足元にあった温かさを「もう一度」確認したところで、「家族」の巻は終幕しています。

 

4、まとめ

今回の記事では、

超展開百合ハーレムコメディ漫画『ちかのこ』の特に第5巻に関して、

今巻にはキーワードとして「家族」「もう一度」という言葉があることに注目して読みながら、

 

  • 一度失われた「家族」的な繋がりの象徴である黒猫のクロとの再会の物語を通して普段は忘れていたりするけど身近なところに大事な人やものが存在していることに気づいたり
  • 子どもの頃から続くポイとメアの友情の再確認の物語を通して読者である我々も昔仲が良かった友だちに改めて想いを馳せたり
  • 「寄せ鍋ダークネス」の死と再生の物語を通してこの世界の日常で生きることに改めて向き合ってみたり
  • 様々な意味で寒い日々かもしれない時代の中で、でも足元には気づくと大事な存在が輝いていたりするということにハっとしてみたり

 

な感じで魅力を語らせて頂きました。

今回の記事での「家族」という言葉は、かなり広義で。

「家族」的なもの、なんでもイイと思うのです。

たとえば人でなくてもイイかもしれません。

絵を描く人が、いつも使っている色エンピツが私にとって「家族」のように大事だというのなら。

その色エンピツが宝物だって気づいてキラキラして見えて、元気になれるのだったら、それでとてもイイ。

身近にあった「宝物」がキラキラと輝きを取り戻していく感覚。

少し大げさですが、『ちかのこ』はこの世界は美しいんじゃないかって信じさせてくれる漫画です。

躓(つまず)いたり、立ち止まったりしがちな最近です。(そういう時は、あってもイイと思うんですが。)

『ちかのこ』の第5巻を読んで、あなた自身の足元の宝物──「家族」に想いを馳せる時間をとってみることで。

またこの世界の日常を歩き出せるきっかけになれたりしたら。

一『ちかのこ』好きとしても望外の喜びであるのでした。

 相羽裕司(あいばゆうじ)

 

『ちかのこ』は現在(2021年4月時点)、

コミックス第4巻収録部分くらいまでは「pixivコミック(MANGA pixiv)」で無料で読むことができます。(コミックス用の描き下ろし漫画やおまけページなどはコミックス版のみの収録となっております)↓

●ちかのこ – pixivコミック(pixivへの登録が必要)

 

 
そして、今回語らせて頂いた『ちかのこ』第5巻につづく第6巻が2021年4月30日に発売となります。
 
いよいよストーリーに本格的に登場してくる「百合ヶ丘女子高等学校」の面々にも注目です! 意味がわからないかと思いますが「東洋の処刑人(オリエントジャッカル)」もやってきます! ライターは(「百合女」では)リンリン推し!

日本発、漫画の世界にも広がる「百合」ワールド。

今回紹介した『ちかのこ』のような振り切り過ぎてるほどユニークな作品もワンダフルですが、気になる先輩、歴史が感じられる寄宿舎、揺れるタイとプリーツスカート……といった、良い意味で様式的な「百合」作品もまた良いものです。↓

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また、時代別に2000年代、2010年代の「百合漫画」に関する記事も書かせて頂いております(2010年代には『ちかのこ』も登場!)。合わせてお読み頂けたら幸いなのでした。↓

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