みなさんこんにちは! 「マンガフル」ライターの神門です。
春・夏・秋、ときていよいよ今回は冬!
これで春夏秋冬、どの時期でもお薦めの漫画が揃うことになりました。
寒い冬は暖かい部屋でぬくぬくしながら漫画を読むことこそ幸福です。
そんなときのお供に、ライターがお薦めする作品を是非ご参考にしてみてください!
目次
1、『adabana ー徒花ー』 / 「何が起きたらあなたは人を殺しますか?」女子高生が起こした悲しい殺人を巡るサスペンス
作者 | NON |
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出版社 | 集英社 |
掲載誌 | グランドジャンプ |
掲載期間 |
2020年4月~
|
巻数 | 既刊1巻 |
「何が起きたらあなたは人を殺しますか」
その問いかけは作者から読者に向けたものなのか、それとも読者がキャラクターへ向けたものなのか、あるいはキャラクターが読者に向けたものなのかもしれない。
主人公は藍川美月。
17歳の女子高生で、親友の真子を殺害して身体を切断した殺人鬼。
犯行について滔々と語る美月の様子には違和感があり、
- 「なぜ彼女は親友を殺したのか?」
- 「本当に彼女が殺したのか?」
という疑問ばかりが強まります。
- 2人の女子高生の間にはいったい何があったのか?
- 美月が抱える秘密とは?
涙が出るほど切なく苦しく、ときに吐き気がするほどグロテスクな展開は、目を逸らしたいのに逸らせない、不思議な引力を感じます。
女子高生の友情と愛憎が織り成す鮮血のプラトニック・サスペンス。
次巻は2021年1月発売予定です。。
2、『メダリスト』/ フィギュアスケートに賭ける少女と青年の熱い姿を描いた作品
作者 | つるまいかだ |
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出版社 | 講談社 |
掲載誌 | 月刊アフタヌーン |
掲載期間 | 2020年5月~ |
巻数 | 既刊1巻 |
主人公の青年、司は、フィギュアスケートで大学時代に全日本選手権に出場したほどの腕を持っています。
その実績からプロスケーターを目指したものの、アイスショーのオーディションに落ち続けて無職、非常に落ち込んでいる状況です。
そんな司がある日出会ったのが、フィギュアスケートをやりたいという女の子、結束いのりでした。
母親は、いのりには才能がないからとスケートはやらせない考えでしたが、氷上のいのりを見て司は
いのりには絶対に才能がある!
と強く断言して、とうとう司がコーチとなっていのりを教えることになりました。
いのりが目指すのはオリンピックのメダル。
司といのり、二人で本気でメダル獲得に向けて熱くフィギュアに賭ける物語です。
冬といえばウィンタースポーツ!
スキー、スノボ、などありますが、今回選んだ作品は、フィギュアスケート!
この作品のお薦めポイントは
- スポーツものとして王道であるところ
- コミカルな部分と真剣な部分のバランス
です。
ヒロインであるいのりは勉強もクラスの活動も上手くできない落ちこぼれのような子ですが、唯一フィギュアスケートでは才能を発揮して、同年代のライバルの女の子と競って這い上がっていく展開が王道。
天才的な少女、そして向上心バリバリの年下の少女と、タイプの異なるライバル達との交流。
そしてまたフィギュアを真面目に描いていながら、司やいのりは時にコミカルで、その波が交互にやってくるバランス。
燃えるところは燃える、笑うところは笑う。
読んでいてどちらか一方が続かないので、うまいこと刺激を繰り返して読み進められます。
まだ始まったばかりなのですが、先が楽しみな作品です!
3、『野性伝説 羆風』/ 日本史上最大の熊害事件を描いたアニマルスリラーかつアクション活劇な一作
作者 | 戸川 幸夫/矢口 高雄 |
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出版社 | 山と溪谷社 |
掲載誌 | 月刊ビッグゴールド |
掲載期間 | 1996年8月号 – 1997年12月号 |
巻数 | ヤマケイ文庫全1巻(他社刊行分は3巻などもあり) |
大正時代に北海道で起きた、熊による殺傷事件「三毛別熊事件」。
死者7人、負傷者3名、日本史上最悪の熊害(ゆうがい)とも呼ばれる当事件をモチーフにした小説を劇画化。
雄大な自然が襲ってくる恐怖、そして人間の逆襲。
手に汗握るアニマルスリラー、かつドラマティックなアクション活劇。
迫る熊に震え、打ち倒すカタルシスにアガれ!
冬におすすめと言えば!
大正時代の12月、厳しい自然の惨劇に思いを馳せてみませんか(悪趣味!)
超おすすめポイントはやはり
・矢口先生の美しくも厳しい自然描写!!
熊害として有名な三毛別熊事件ですが、実は私「死者7人/負傷者3人」の数字にピンと来てませんでした。
それ怖いの?って。
ところがこの『羆風』、山や川や「暗闇」が圧倒的リアルを放ち、人間を狙う熊に底知れぬ恐怖を抱かせてくれます。
見通し悪く深い山、人っ子ひとりいない開けた河岸、家の中なのに隅が見えないほどの闇。
こんなんで熊に狙われたら怖すぎるだろおおお!!!
ステイホームで過ごす冬、自然の恐怖を噛み締めて「文明サイコ〜」とか言いながら過ごすのにうってつけでございます。
なお、恐ろしさだけでなく美しさにも見惚れるのが『羆風』の自然。
釣りキチ三平などで知られる矢口先生は「海水と淡水を描き分ける」自然描写の名手。
電気の通らない北海道の集落の日常は、厳しくも心満たされる美しさです。
※矢口先生は2020年11月にご逝去されました。ここにお悔やみ申し上げます。
4、『呪術廻戦』/ 人々の呪い、病、災難と向き合って戦う呪術師たちの姿がとにかく熱い!今一番来ている漫画
作者 | 芥見下々 |
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出版社 | 集英社 |
掲載誌 | 週刊少年ジャンプ |
掲載期間 | 2018年〜連載中 |
巻数 | 既刊13巻 |
人間の負の感情から生まれた化け物(呪霊)と戦う呪術師を描いたダークファンタジーバトル漫画。
10月からアニメもスタート!
観てる人、漫画で読んでる人はすでにご存知だと思いますが、今一番来てる作品。
そして、間違いなくこれからもっと来る!
と断言できる作品。
それぐらいほんとに面白いです。
日々、多くの作品が生まれてて、今はアプリでもいろんな作品が無料で読めちゃう時代なので、以前ほど同じ作品を何回も読み返す機会も減ってきました。
でも呪術廻戦はもう何周もしちゃってます。
普段、あまりアニメは観ないんですけど、この作品だけは観ちゃってます。
まだ見てない人は、この冬にぜひ!です。
この作品の魅力は1回では語りきれないですが、今回はポイントを3つに絞ってご紹介します。
- 人々の呪い、病、災難と向き合って戦う呪術師たちがとにかく熱い!
- 2人の最強から目が離せない!
- 物語の展開の振り幅が大きくて、とにかく速い!です
まず、2020年はコロナ一色でしたが、この作品も人間VS呪い(病)の基本構造で物語が進みます。
今はコロナという病、そこから派生した負の感情によって重苦しい空気が流れています。
作品中でもそんな世界を投影したような禍々しいシーンが描かれてるんですけど、イカれた熱いキャラクターたちがそんな重たい雰囲気を一変してくれます。
そして、そんなイカれた登場人物の中で特にやばいのが、2人の最強です。
1人目は五条悟(ごじょうさとる)。
この男の誕生が世界のパワーバランス(均衡)を激変させました。
各キャラそれぞれ特性の違う必殺技(呪術)を使いますが、五条悟の呪術は“無限”。
最強です。
もう1人は、その最強の男に“紛うことなき呪いの王”と言わせちゃう宿儺(すくな)。
この2人があまりにも桁違いに最強すぎて、出てきた時の緊迫感、ヒリヒリ感がもの凄いです。
存在感やばすぎ。
最後のおすすめポイントは、なんと言っても展開の速さです。
ワンピースでいう頂上戦争編クラスの総力戦が10巻から始まってます。
そして今まさに戦いの真っ最中。
激熱です。
1月4日に最新刊も発売予定なので、まだ読んでない人はぜひこの冬に一気読みしちゃってください!
5、『今年はじめての雪の日』/ 榛野なな恵の作品純度が最高にピュアだった時期に描かれた傑作短編集
作者 | 榛野なな恵 |
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出版社 | 集英社 |
掲載誌 | ヤングユー 月刊ST |
掲載期間 | 1986年 1992年 |
巻数 | 全1巻 |
『Papa told me』などで有名な榛野なな恵先生が80年代後半~90年代初期に描いていた、
- 「今年はじめての雪の日」
- 「トパーズの月」
- 「水鳥の昼の夢」
- 「水晶時計」
といったエッジが効いた短編作品四篇を収録している短編集です。
表題作「今年はじめての雪の日」では、両親の離婚がきっかけで世界に居場所がなくなった主人公の少年・榎本考志(えのもと・たかし)が、ある雪の日に地方の全寮制の高校から出発し、ただ一人彼に優しくしてくれた恋心を寄せる年上の女性・いずみの元(――東京)へと向かう、実存的な列車の旅路が描かれます。
自己否定感を抱える主人公と、彼/彼女を照らすことになる光を携えた人間……という後の傑作『ピエタ』、『パンテオン』に繋がるような構造を持ちつつ、鋭さと優しさの両方で読者を包む榛野なな恵作品の純度が、最高にピュアだった時期に描かれた傑作四篇だと個人的には思っております。
(収録されている四作の短編はどれも素晴らしいですが、今回は表題作の「今年はじめての雪の日」について)
冬といえば「雪」。
人肌に触れれば体温で消えてゆく儚いイメージがありますが。
作品のタイトルにあるとおり「雪」が非常に象徴的に使われている作品です。
作品の主人公、榎本考志がこんな台詞を述べる箇所があります。
「それは未来の記憶だと思います 先生
太陽は年老いてゆき やがて爆発し 地球も運命を共にする
人類は永遠に故郷を失う その時の悲しみがあらかじめ我々の遺伝子にインプットされてるんです
目の前に展開されているこの風景は
この時間の現実であると同時に未来における追憶ですから
とりわけ自然に対して懐かしさを抱くのは当然だと思います
満開の桜を見て散る時を思うっていう感性を時間軸に沿って大幅に延長したものじゃないですか
でも 考えてみたら 地球の消滅より先に人類は滅んでいるに違いない
そうなると
地球の方が僕たちを懐かしんでいるのかもしれません じゃ 失礼します」
(『今年はじめての雪の日』 榛野なな恵/集英社 より)
つまり、雪、宇宙、そして儚い恋、というものを「やがて消えてしまうかもしれない朧気なもの」としてシンボリックに重ねて描くという、壮大なようなアクロバティックなようなことをやっている、とても文芸的な趣がある作品なのです。
構造的には宇宙まで大きく(マクロに)射程を広げながら、気がつけば現代消費文明の中であり得るように、孤独と自己否定感に源がある、主人公の年上の女性への恋という実存に(ミクロに)返ってくるような構造の作品です。
最終的には、両者が「雪」の象徴で結ばれて「優しい場所」にたどり着きます。
主人公・考志のほろ苦い、若い年齢的には苦しいような恋の旅路を、一歩引いた地点から見守る優しいまなざしのようなものも感じられる、榛野なな恵先生の初期作品の中でも傑作の一篇です。
雪降る静かな夜に、自分という実存の音だけが響いている……ようなシチェーションで頁を捲り 、是非、静謐で暖かい漫画表現の粋を堪能して頂けたらと思います。
まとめ
ということで、冬に読みたい作品をご紹介しました!
- 冬をイメージさせてくれる作品
- ウィンタースポーツが題材の作品
- 温かいお家に引きこもって読み込みたい作品
今回はなぜか血まみれというか、そういう作品の割合が多かったです。
冬といって思い浮かべるのは真っ白な雪、だからこそ赤がコントラストで浮かび上がるのかもしれません。
寒い冬、温かい家でぬくぬくと漫画を読んで幸せな気分に浸りましょう。
マンガフルライター 神門
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『デリバリーシンデレラ』『ハレ婚。』でおなじみのNON先生の新作です。
女子高生でサスペンスというまさに新境地。
これまでのNON先生のイメージとガラッと変わっているので、これだけでも読む価値ありです。
そして単行本1ページ目からカラーで魅せてくれる……!
なんでわざわざ「冬に読みたい漫画」として選んだかっていうと、この冒頭のシーンです!
雪の中の美しい惨劇がとても印象深くて…。
もはや雪を見れば思い出す、真子の死に顔(笑) (脱線しますが、このカラーページで白雪姫を連想しました。雪のように白く、血のように赤く、そして黒檀のように黒い美月!)
物語の展開ももちろん気になるのですが、物語を構成する細かい要素のひとつひとつもまた秀逸。
ちりばめられた伏線とあわせて、すべての要素が目と興味を引き、ページを繰る手が止められません!
おっさんキモい!
はたして美月の抱える真実とはなんなのか?(個人的には百合的なことを期待してますが!)
NON先生ファン必見!
ファンじゃなくても全力でおすすめできる漫画です。
エゴイズムにじみ出る女子高生奇譚をお楽しみください。