みなさんこんにちは、マンガフルライターの神門です。
大人になると、学生生活を懐かしむこともあると思います。
それもただ懐かしむだけでなく、もうちょっとこうしていればよかった、なんて少し理想を描いた学生生活を思い浮かべるのではないでしょうか。
そんな方たちにお薦めなのが
『スキップとローファー』
です。
等身大でリアリティのある登場人物が見せてくれる学生生活は、既に卒業をして大人になった人にこそ染みる作品なのではないかと思います。
2023年4月からアニメ放映も開始された本作品、本当ならアニメ放映前に記事にしたかったのが間に合いませんでしたが、遅ればせながら本作品のどういう部分に惹かれたのか、魅力があるのかをお伝えしたいと思います!
目次
1、『スキップとローファー』ってどんな漫画?
著者 | 高松美咲 |
出版社 | 講談社 |
掲載雑誌 | 月刊アフタヌーン |
掲載期間 | 2018年10月~ |
単行本巻数 | 既刊8巻(2023年5月時点) |
ジャンル | 学園青春もの |
『スキップとローファー』は、高松美咲先生が月刊アフタヌーンで連載しています。
主人公の岩倉美津未(いわくら みつみ)は石川県のはしっこから東京の高校へと進学してきました。
高校を優秀な成績で卒業して大学に進学、さらには官僚となって日本を率いるような存在となり、やがては過疎化の進む地元をどうにかしたいという人生設計を持っています。
そんな人生設計だけは完璧な美津未ですが、実際の本人は少し天然の入ったまっすぐで力強い性格をしています。
都会の進学校には十人十色、さまざまな生徒がいますが、美津未は持ち前の純粋さ、まっすっぐさで周囲に様々な影響を与えていきます。
美津未を中心に、高校生達の思いや行動が変わっていく様を描いた、爽やか青春群像劇となっています。
連載開始後から、その質の高い高校生たちの日常の描き方でぐんぐんと人気と評価を高め、
「マンガ大賞2020」では3位を受賞しました。
2022年4月からはアニメ放映もされて非常に良い感じです。
2、『スキップとローファー』は大人が懐かしみ憧れる高校生活を描いていることが読者を惹きつけている
『スキップとローファー』の大きな魅力は、読者が
- こんな学生生活を過ごしたかった
と強く思えるところにあるのではないかと思います。
それも、主人公が美少女やイケメンにモテるハーレム学園生活や、俺TUEE的な学生生活といったフィクションで非現実的な学生生活ではなく、懐かしさを感じ自分自身の学生時代を思い出させるリアリティのある学生生活です。
「スキップとローファー」 4巻 高松美咲/講談社 より引用
登場人物の中に特別に凄い子はいません(強いて言うなら、志摩くんが幼少期に子役として活躍していた、というのがあるくらい)
皆、ごく普通の高校生達です。
読者の多くも、ごく普通の高校生だったと思います。
もちろん、それだから共感する、という単純なものではありません。
普通の高校生といっても当然ながら一人一人は独立した一人の人間であり、それぞれが個性を持っています。
例えば『スキップとローファー』で美津未が仲良くなった女の子達三人を見てみると、
- 村重結月:容姿端麗で男子からの人気が抜群の女の子(陽キャ、見た目ギャル系)
- 江頭ミカ:オシャレや恋愛が好きな女の子(一般的な普通の女子高校生)
- 久留米誠:大人しくて人見知りで読書が趣味な女の子(地味な文学少女)
いわゆるスクールカーストでいう上位・中位・下位と見事に分かれた三人になります。
「スキップとローファー」 2巻 高松美咲/講談社 より引用
学校に入ればスクールカーストとまでいかなくてもグループが形成されるのはごく一般的だと思います。
細分化すればもっと細かくなるとは思いますが、大きく分類すると上述したように
- クラスの中心的な陽キャ、人気系のグループ
- ごく普通のグループ
- 地味、オタク系のグループ
に分かれると思っていて、それぞれのグループは基本的にグループ内で仲が良く、別のグループと交流はすれどもそこまで仲良くはないかと思います。
本来なら交わらなさそうな三人が、美津未というある意味で“異分子”が入り込むことで交流を持ち、次第に仲が良くなっていきます。
「スキップとローファー」 3巻 高松美咲/講談社 より引用
気が合わなさそうな人や価値観の違う人だけど、いざ話してみて共に行動してみると今まで見えなかったものが見えてくる。
そういうことで新たな景色に気がつき、今までとは異なる学園生活を過ごすようになっていきます。
読者も多くの人はいずれかのグループに属していたと思いますので、誰かのどこかには同調できる部分があるかと思います。
そして、もし美津未のような存在がいたら自分も別のグループの誰かと新たな関係性を築けたかもしれない。
別の価値観を持つ同級生とも仲良くなり、知らない世界を知ることが出来たかもしれないと思います。
「スキップとローファー」 5巻 高松美咲/講談社 より引用
学生時代は仲の良い、趣味や気の合う同じ系統の仲間たちと過ごすのが心地よく、またそれが当たり前だと思います。
ですが大人になって社会に出ると、学生時代とは比較にならない広い世界を知り、自分が知らなかった世界に属する人と知り合っていきます。
そういう立場を経験してからこそ、『スキップとローファー』のような学生生活を過ごしたかったとより強く思うのではないかと思います。
だからこそ、大人が共感する学園青春ものとして人気を博しているのではないかと思います。
3、『スキップとローファー』は美津未を媒介にして多感な等身大の高校生達が“変わっていく姿”を“共に経験する”物語である
本項では本作の魅力についてもう少し深掘りしていきたいと思います。
前項では、「こんな学園生活をしたかった」と読者が思える作品だということをご説明しましたが、ただそれだけではありません。
そういった学生生活の中で、登場人物たちが少しずつ変わっていく姿を、その登場人物たちと共に経験することができる物語だということです。
結月、ミカ、誠の三人は異なる属性を持ち、本来なら仲良くなるようなことのなかった三人でした。
ですが、美津未という異分子の登場によって三人は交わることになり、異なる属性を持つが故に化学反応を起こしてそれぞれに影響を及ぼし変化を促していきます。
ここでいう「変化」=「成長」でもあると言えます。
人間、自分の嫌なところを治したいと思ってもそう簡単には出来ません。出来るくらいならそんな嫌なところなんてなくなっています。
だけど、自分とは全く異なる資質を持つ友人と過ごすことで自分とは違う考え方や価値観を知り、自分とは違うことで悩んでいることを知ります。
相手のことを知ることで偏見も減り、そうした中で少しずつでも変わりたい、変わろう、という思いを強めて行動に移すようになっていくのです。
「スキップとローファー」 5巻 高松美咲/講談社 より引用
それだけでは単に作品の登場人物が変わっていくだけですが、こんな学生生活を過ごしたかったと思える等身大の高校生を描いているため、誰かのどこかに過去の自分を重ね合わせることができます。
そのため登場人物が変わっていく姿を、「自分もこのように変われたら良かった」と思い、変われて良かったと共感することで、自分自身も同じように経験していると思えてきます。
「変わっていく(成長する)」のを「共に経験する」
この二つがあわさることで作品としての強い魅力になっているのだと思います。
では実際に、結月、ミカ、誠の三人が変わっていく姿を追いかけていきたいと思います。
3-1 村重結月:美人でスクールカースト上位組も、友人関係の構築に思い悩む
結月は誰もが認める美人で、学年でもナンバーワンの人気を誇ります。
家も裕福で育ちも良いから性格も良く、小さい頃はアメリカのインターナショナルスクールに通っていた帰国子女です。
だから日本に帰国してからも学校で困ることはなく、結月が何をするでもなく人は寄ってきてカースト上位組に属していました。
「スキップとローファー」 7巻 高松美咲/講談社 より引用
でも、それで良い事ばかりではありませんでした。
人気があるが故に男子生徒からは言い寄られたり、守ってもらったりすることが多く、それがもとで女子との関係性が捻じれ、友情が壊れたりもしました。
結月の意思を無視して周囲だけが盛り上がったりしていましたが、一方で結月も周りの空気を壊したくないと、周りにあわせるように穏便に流す言動をしていました。
人気者だから故に、周囲との関係性を上手く構築できず、そんな環境を変えたくて高校受験して今の学校に進学してきたのです。
「スキップとローファー」 7巻 高松美咲/講談社 より引用
そのため結月は三人の中で最も積極的に変わろうとして実際に行動していました。
タイプの異なる美津未や誠に積極的に話しかけ、新たな友人関係を築こうとしていました。
結月が築きたかったのは、周囲が勝手に結月に思い描く象にあわせて気を遣う継ぎ接ぎで張りぼての友人関係ではなく、一緒に馬鹿なことをして笑い合える気の置けない友人関係でした。
そういう意味では真正直な美津未や、忖度することのない誠との関係性は理想のものでした。
「スキップとローファー」 3巻 高松美咲/講談社 より引用
それはそれで結月の努力もあってのことですが、本当の意味で結月が変わっていると感じられるのは二年に進級しクラス替えで美津未たちと別のクラスになってからだと思います。
新しいクラスでは、また過去と同じような状態になりかけます。
カースト上位に位置するようなグループに入ると、結月に好意を抱く男子とくっつけてあげよう、みたいな動きが結月の意思を無視して始まったりします。
新しいクラスで新たな友達を作って仲良くなりたいと思う結月に対し、すぐに恋愛事に絡めて勝手に動き出すクラスメイトでは最初から大きな食い違いがあるのです。
だけど、昔なら穏便に流す対応をしていた結月ですが、美津未達と過ごす気持ちよさを知ってしまった今、そんなことはできません。
結月が選んだのは、自分の思いをきちんとぶつけることでした。
「スキップとローファー」 7巻 高松美咲/講談社 より引用
以前なら波風立てることを恐れていましたが、自分が何を大事にしているのか、何を望んでいるのか、その意思を伝えることでした。
過去の結月には出来なかったこと、それが出来たのはまさに結月が美津未、誠、ミカと知り合い友達になったからこその変化だと思います。
もちろん、それ故に人間関係はより悪化するリスクもありますが、それが分かっていても自分の気持ちをきちんと伝えることを選ぶようになったのです。
スマートではないし不器用かもしれないけれど、結月には絶対に必要だったのだと思います。
3-2 江頭ミカ:自分の嫌なところを知っても受け入れてくれる信頼感を得て変わっていく
ミカは三人の中でもっとも「普通の女子高校生」をあらわしたキャラクターだと思います。
- おしゃれが好き
- 恋愛話が好き
- 流行が好き
- ダイエットをしている
自分を可愛く見せるために努力をするし、それはなぜかといえばやっぱり素敵な彼氏を作りたい、好きな男の子に興味を持ってもらいたいと思うから。
性格だって良いところばかりでなく妬みや僻みも持っていて、打算もそれなりにあります。
最初はスクールカースト的なところを意識してか美津未に興味を持っていませんでしたし、美津未や誠が同性としては絶妙にダサいと認識し自分の引き立て役にしようともしていました。
「スキップとローファー」 1巻 高松美咲/講談社 より引用
だけどそれは当たり前のことであり、人間ならごく普通に持つ感情だと思います。
ある意味で、一番人間臭いのがミカだと思います。
ミカは自分の性格も理解しており、自分の嫌なところも含めて自分だと思っていますけれど、そういうことを自覚すると自己嫌悪に陥る繊細さも持ち合わせています。
「スキップとローファー」 6巻 高松美咲/講談社 より引用
そんなミカに変化を与えてくれたのは、変わり者であり正直者でもある美津未でした。
志摩のことが好きなミカは、志摩と仲が良くなっている美津未に対してキツク当たっていました。
そのことを自覚し嫌な奴だったと自分で思うミカでしたが、美津未からしてみれば、ミカは当たりは少し強いけれど決して嘘をついているわけではなく、むしろそういうミカの性格だからこそ美津未に対して変に忖度せず忌憚のない意見を貰えるのではないかと捉えていました。
ミカは、美津未が自分のことをそんな風にとらえていたと知って衝撃を受けたのではないかと思います。
「スキップとローファー」 2巻 高松美咲/講談社 より引用
他にも、ミカなら絶対に嫌だと思うようなことも、美津未はポジティブにとらえて前向きな姿を見せてきて、価値観の違いを思い知らされます。
だけど、そんな美津未を見ても別に嫌になるわけでも、嫌いになるわけでもありません。
それは美津未の良さであり、そういう美津未を受け入れられる自分自身に気がついてきているのだと思います。
結月、誠との三人の中で、行動面での変化は見えづらいかもしれませんが、内面の変化とそこから発生する細かな言動の変化がミカの特徴だと思います。
「スキップとローファー」 5巻 高松美咲/講談社 より引用
人は自分の良いところよりも悪いところの方が分かるし、意識しているのではないかと思います。
だけど、他の人の視点からでは良いところと悪いところが全然違う、なんてこともあります。
同じグループに所属している人だと同族で似ている人も多く気づかせてくれないかもしれませんが、別グループの異なる価値観を持つ人ならばそういことにも気づかせてくれます。
美津未とミカの関係性はまさにそういうところだったのではないかなと思います。
3-3 久留米誠:自分の中にあった卑屈な偏見を解放し自ら変わりたいと願い行動していく
誠は眼鏡にお下げ、人見知りで本を読むのが好きな、地味な文学少女です。
オシャレとか流行りものとかにも興味はなく、クラスにいたら目立たない存在で、スクールカーストで位置づけるなら下位になるようなキャラクターかと思います。
自分に自信が持てず、自分が決してイケている部類に所属していないことを理解しており、カースト上位グループと相容れることはないと思っていました。
実際に誠の入学当初は、明るく爽やかだけどチャラチャラしているように見える志摩、カースト上位にいる陽キャの結月とは絶対に合わないし仲良くなることなんてないと考えていました。
そういう人たちはきっと自分みたいな人間のことは見下しているだろうと、そういう被害妄想的なものも強くありました。
「スキップとローファー」 1巻 高松美咲/講談社 より引用
そんな誠の意識に変化が生じ始めたのは、やはり美津未の存在を介してでした。
美津未と仲が良くてよく一緒にいる志摩や結月と接する機会が増え、今までだったら注文していなかったようなメニューを注文したり、遊びに行ったりするようになりました。
そうすると、今までだったらやっていなかったことなのに、実際にやってみるとそれを受け入れられる自分がいることに気がつきます。
「スキップとローファー」 1巻 高松美咲/講談社 より引用
誠は、偏見を抱いているのは自分自身だということ、そして自分も変わっていけることに気がつき、実際に少しずつ変わっていきます。
初めに媒介となったのは美津未でしたが、それ以降、誠に強い影響を及ぼしたのは結月でした。
全くタイプが異なって全てを分かり合えると言えなくても、価値観が違うからこそ結月の良いところや凄いところが誠には分かります。
その誠の大きく変わったところが分かるのが、二年生に進級してクラスが別々になり、新しいクラスで友人関係に悩んでいる結月のことを知ったときです。
かつて誠自身が落ち込んでいた時、何も聞かず誠のところまで飛んできてくれて一緒にお喋りをしてくれたことを思い出し、誠自身も結月の家までわざわざ出向いていったのです。
「スキップとローファー」 7巻 高松美咲/講談社 より引用
入学当初の、自分と異なる分類にいる人と積極的に関わろうとしなかった誠だったら絶対にしなかったことだと思いますし、結月と友人になっていなかったら他の友達が同じ状態になっていてもできなかった行動だと思います。
行動、ということでは誠がもっとも作品の中で変わったのではないかと思います。
三人が変わっていく姿は、どれも物凄く大きなことではないかもしれません。
ですが、現実の生活の中でもいきなり大きく変化するなんてことはそうそうないものです。
小さな変化を繰り返し、積み重ねていくものだと思います。
自分自身もこういう気付きが得られたらよかった
こういう友人を得て変わっていくことが出来たらよかった
そう思えるからこそ自分の身を投影し、キャラクターに共感し、変わる=成長をキャラクターと共に経験している気持ちになれるのではないかと思います。
4、まとめ
今回は『スキップとローファー』の魅力をお伝えできればと思い記事を作成しました。
もちろん今回の内容は魅力の一面を切り取ったものであり、
- 単純に作品の雰囲気が良い
- とても青春している感じが伝わってくる
- 美津未が良い味を出しすぎている
などなど、様々な魅力があるかと思います。
個人的にライターは、美津未を取り巻く女子三人の友人たちの関係性こそが最も魅力的だと感じました。
読む人それぞれに色々な思いを抱かせてくれる作品だと思います。
是非是非、手に取ってみてください!
『スキップとローファー』はアプリで読むこともできますので、読みたくなった方は是非こちらから!
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