みなさんこんにちは、マンガフルライターの神門です。
2023年4月よりアニメ第一期が放映され人気を博した【推しの子】
特に、「何が何でも有馬かなを可愛く描くぞ!」という執念を感じさせる作画は素晴らしかったです!
アニメ【推しの子】公式サイトより
アニメ放映を機に一気に人気にも火がついて原作漫画の発行部数も一千万部を突破しました。
マンガフルでも以前、【推しの子】の人気キャラでありライター最推しの「有馬かな」記事を作成しましたが、今回は【推しの子】記事第二弾です。
【推しの子】は、作品の中で描かれているけれど説明されていないことが色々とありますので、今回はそれらのことについて考察をしていきます。
といっても、本作にはあまりに考察ポイントが沢山あるので、その中から幾つかに絞ってお届けします。
私も考察がそこまで得意というわけでもないので、どこまで考察できるか怪しいところではありますが、お付き合いください。
目次
1、『推しの子』ってどんな作品?
著者 | 原作:赤坂アカ、作画:横槍メンゴ |
出版社 | 集英社 |
掲載雑誌 | 週刊ヤングジャンプ |
掲載期間 | 2020年~ |
単行本巻数 | 既刊12巻(2023年8月時点) |
ジャンル | サスペンス |
『推しの子』は、原作:赤坂アカ先生、作画:横槍メンゴ先生のタッグによって描かれている、芸能界を舞台にしたサスペンスです。
田舎の産婦人科のゴローは、自分が熱烈に推しているアイドルの星野アイのストーカーによって命を落とすと、アイの隠し子である双子の一人のアクアとして生まれ変わりました。
しかしながらアイは、アクアが4歳の時にストーカーに襲われて死んでしまいます。
アクアとして成長したゴローは、アイを殺した人間を探して復讐するため芸能界に足を踏み入れ、また同時に双子の妹・ルビーも母親のようなアイドルになるため芸能界に進みます。
華やかに見える芸能界の光と闇を、シリアスさとユーモアさを絶妙なバランスで描き、さらに先の読めないサスペンスとしても秀逸な展開を見せている作品です。
2023年4月にはアニメ第一期が放映され、その質の高さでファンを増やし人気をさらに高めました。
2、【推しの子】の特徴でもある、「瞳の星」はどのような意味を持つのか?
「【推しの子】」 1巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
【推しの子】の中で最も特徴的であるのが、キャラクターの瞳に描かれた大きな星です。
この星はあくまで漫画の表現としてのものであり、実際に星があるわけではなく他の人から見えるものではありません。
そしてこの星が何を意味しているかというと、いわゆるスターとしての輝き、ギフト(才能)、というものを示しているのだと思います。
劇団ララライの金田一は、黒川あかねが力をつけて眼が変わったことを受けてこのように言っています。
「人を騙す目 嘘を真実だと思わせる力 役者にとって最高の資質」
「【推しの子】」 10巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
星を最初に保有していたのはアイで、実際にこの吸い寄せられる天性の瞳で見る人を魅了して虜にして、圧倒的な輝きをもってスターダムを駆け上っていき伝説的なアイドルとなります。
そしてこの瞳の星はアイの子供であるアクアとルビーにも引き継がれます。
但し、アイが両目に星を宿していたのに対し、アクアとルビーはアイの星を分かち合うようにアクアは右目に、ルビーは左目に、その星を宿します。
「【推しの子】」 2巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
アイが持っていた資質を単純に受け継いだと言えますが、ならばなぜ左右の目に分割されたのか?
そしてアクアとルビー以外の人の瞳にもあらわれた星は何を意味するのか?
その辺のことを考えてみました。
2-1 アクアとルビーの瞳の星。左右の瞳に宿す星の意味を考えてみる
では、アクアが左目に、ルビーが右目に星を受け継いだことにはどのような意味があるのかを考えてみます。
そのヒントは二人が赤ん坊の時にあります。
ベビーシッターを押し付けられて疲労し精神的に限界に近づいていたミヤコがアイの秘密を売るのを止めようとしたとき、アクアとルビーは演技をします。
その時にルビーは言います。
「我はアマテラスの化身」
と。
「【推しの子】」 1巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
アマテラス、左目、宮崎県とくれば思い当たる人は思い当たるのが、天照大神の誕生でしょう。
天照大神は日本神話における神様であり、「古事記」にその生まれなどが描かれています。
※ちなみに私の神話の知識は基本的に「女神転生」を起点としております。
日本神話において国生みを行い多くの神々を産み落としたのが伊邪那岐命(イザナギノミコト)と伊邪那美命(イザナミノミコト)です。
イザナギが死んでしまった妻のイザナミを求めて黄泉の国に行き、そして逃げ戻って来た際に体の穢れをうため阿波岐原(あわきはら)で禊払いを行います(阿波岐原は宮崎県にあり、ゴローとさりなの居た病院があったのも、アイがアクアとルビーを産んだのも宮崎です)
そしてイザナギが禊払いで顔を洗った際に、イザナギの左目から生まれたのがアマテラス、右目から生まれたのが月読尊(ツクヨミノミコト)、鼻から生まれたのが須佐之男命(スサノオノミコト)です。
「マンガ 面白いほどよくわかる!古事記」 かみゆ歴史編集部/西東社 より引用
左目に星を宿すルビー=左目から生まれたアマテラス の構図が成り立ちます。
アマテラスは太陽神です。
常に明るくポジティブで周囲の皆を照らし出すルビーそのものをよく現していると思いますし、またアイドルとなって皆の太陽となる存在とも取れます。
「【推しの子】」 4巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
ルビー=アマテラスが成り立つと、アクア=ツクヨミの構図もまた成り立つこととなります。
ツクヨミは文字通り月の神、夜の神と言われています(あとはスサノオは誰かいるのか? という謎は残りますが)
作品においてもアクアとルビーは対照的な存在であり、月と太陽というのはキャラクターのイメージとしても合致しますし、名前がそれを補強しています。
アクアマリンの宝石言葉は「沈着」、「聡明」であり、ヨーロッパ社交界では「宝石の夜の女王」とも呼ばれており、夜を統べるツクヨミとも一致します。
ルビーの宝石言葉は「情熱」、「勇気」、「自由」、「威厳」であり、燃えるような赤色は太陽をイメージさせます(実際には軍神マルスが宿るとされ火星と紐づくのですが)
「真・女神転生 GRIMOIRE」 エンターブレインより引用
※この辺の宝石知識も前出の「女神転生」より。「女神転生」って素晴らしいですね。
実際にはアマテラスの方が姉であるとかの違いはありますが、二人を表す存在としては当てはまるのかなと思います。
そしてアクアとルビーの右目と左目の星が意味するところも同じような意味合いも持っているのではないかと感じています。
即ち、右目の星は後ろ向きな星、左目の星は前向きな星、というものです。
「人を騙す目」と言っていましたが、左目の星は人を幸せにするような騙し(アイドルのような)、右目の星は文字通り、ある意味悪意を持って人を騙すもの。
というのもある時点でアクアの瞳から星が消えたり、ルビーの両眼に星が宿ったりしたからです。
ルビーの右目にも星が宿るようになったのは、宮崎でゴローの死体を発見し、アイとゴローの復讐を誓って闇落ちした時でした。
「【推しの子】」 8巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
そしてアクアの瞳から星が消えたのが、姫川からの情報で自分の父親(復讐相手)が死んでいると分かり、もう復讐しなくて良いと思った時でした。
「【推しの子】」 7巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
更にその情報が間違いであり復讐相手がやはり存在すると分かった時、アクアの瞳に星が復活し、しかも左目にも星が宿っていました。
これは、復讐のためには芸能界での活動が必須だと、芸能活動に本気で前向きになったからではないかとも捉えられます(その理由は後ろ向きですが)
そしてこの星は、放つその色によって感情を示しています。
通常の精神状態であれば白抜きの星ですが、強い負の感情を持つと黒い星に変わります。
負の感情とは、一番分かりやすいのは復讐心(憎悪)ですが、必ずしも憎悪というわけではないと思います。
例えばアクアがルビーのアイドル活動を阻止したときとか、「今日あま」の収録に向けて考えているときとか、「今ガチ」のスタッフに腹を立てている時など、内容も程度もかなり差がありますが、怒り、憎しみ、苦しみ、悲しみ、といったネガティブ感情の際に黒く浮き上がるものと思えます。
2-2 アイを憑依させることで宿した黒川あかねの瞳の星
「【推しの子】」 3巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
黒川あかねが初めて目に星を宿したのは「今ガチ」の収録の時でした。
恩人であるアクアの好みの女の子=アイになりきるためにアイをプロファイリングし、アイ本人に同化するほどのクォリティで演じることで目の星をも実現させました。
これは純粋にあかねが役そのものになり切る没入型、憑依型の天才役者だからこそ成せたものだと思います。
純粋にアイのスター性を体現させたことで出てきたものだと思われます。
金田一が言った通り、見た人をアイのようだと騙すほどの姿だったのです。
そしてそれは、あかねが役者として成長し新人俳優賞を受賞する頃には、アイを憑依させなくともカメラを向けられると目に星を宿すまでに至ります。
あかねが俳優としてのオーラ、スター性を持ち始めたことを表現しているのではないかと思います。
2-3 有馬かなの瞳の星は、他のキャラクター達とはまた別の意味を持つ?
「【推しの子】」 7巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
2.5次元舞台「東京ブレイド」にて、アクアに導かれた有馬かなが本気の演技を見せた際にも、その瞳に星が宿りました。
これもまた意味合いとしては役者としてのオーラ、スター性を発揮したことで出現したものだとは思いますが、しかしながらその星はアイやアクア達の持つ星とは異なるものでした。
アイの星が六芒星というか六つの角がある星に対し、有馬かなの星は十字の星です。
この違いにはどのような意味合いがあるのか。
十字の星と言われて思い浮かべるのは南十字星かと思います。
かつての大航海時代、南十字星は南極の方角を知るために用いられていたと言われています。
そして火を象徴し、太陽や光、情熱を意味し、方位が南であり、闇を照らすという意味も加わります。
即ち、かなもまたルビーとならんで作品内で「太陽」の存在だということです。
実際に「東京ブレイド」の舞台では、目を焼く程に眩い太陽のような巨星の演技こそが有馬かなの真骨頂と言われています。
「【推しの子】」 7巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
ここまでくるとこじつけかもしれませんが、復讐劇という闇に落ちて行こうとするアクアに対して闇を照らし光の世界への道標となる唯一の存在であり、決して変わることのない絶対的な太陽の存在として位置づけられていると思えてきます。
2-4 片寄ゆらの瞳の星
映画「十五年の嘘」の主演女優候補の片寄ゆらの瞳にもまた星がありました。
彼女は物語からすぐに退場してしまうので細かいことは分かりませんが、人気女優ということもあり、それだけのスター性を兼ね備えているという意味合いで星があったのかなと思います。
2-4 カミキヒカルの瞳の星
現時点で黒幕候補のカミキヒカルもまた両目に黒い星を宿していました。
アクアとルビーの父親の可能性が高く、アクアやルビーはもしかしたらアイだけでなくカミキヒカルの星も受け継いでいるのかもしれません。
※この辺は正直、まだ考察不足ですね
3、アクアを巡る二人の少女、有馬かなと黒川あかねの関係性を考える
アクアに関しては双子の妹であるルビー以外にもう二人、黒川あかねと有馬かなという二人の少女が強く関わってきます。
アクアに対する有馬かな、黒川あかねとはどのような存在として立脚しているのかを考えてみました。
3-1 有馬かなと黒川あかねは対をなす存在である
アクアとルビーが対をなす存在であるように、あかねとかなも対をなす存在になっていると思います。
「【推しの子】」 6巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
まず色が黒と白で対照的です。あかねの黒は文字通りに名字に黒があり、かなの場合はB小町で選択したサイリウムのカラーが白(まあ、この辺は完全にこじつけなところありますが)
表記はひらがなですが、あかね=茜ととらえれば、茜色の空は夕焼けの空を意味しており、これから日が沈んで夜になっていくもので、月(アクア)がこれから明確に見えるようになってくる空とも捉えられます
そしてあかねはその能力をアクアに見込まれアクアと彼氏彼女の関係になります。夜の神ツクヨミに位置するアクアのペアとして行動を共にするわけです。
一方でかなは前項2-3で記載した通り太陽の存在であり、ルビー(太陽)とともにB小町として活動します。
かなもまた太陽を象徴すると考えれば、ルビーとアクアが太陽と月の関係にあるのと同様、あかねとかなもまた月と太陽の関係にあると感じます。
3-2 アクアの気持ち。有馬かなと黒川あかねに対する思いの違い
アクアはかなり早い段階からかなに好意を抱いていたと思われます。もしかしたらかなのアクアに対する好意より先に持っていたのではないかと思うくらいです。
最初にアクアがかなを意識したのは、「今日あま」収録の前日にカラオケで話しをしたときで、そのときかなは「役者に大事なのはコミュ力」と言います。
それは幼少時にかなと初めて出会った撮影現場で、アクアが五反田監督から言われた言葉です。
当時、天才子役と持て囃され天狗になっていたかなが、その後に苦しみもがいた十数年を生きていく中で自分で辿り着いた結論であり、アクアはその言葉を聞いて驚きの表情を見せます。
「【推しの子】」 2巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
更に「今日あま」の撮影に対する思いを聞いている時も、ただ圧倒されたような表情でかなを見つめていました。
そして大きかったのは「今日あま」の撮影当日、かながアクアの演技を見て役者として努力してきたことを見抜いて認めてくれたことではないかと思います。
アクアも当初はアイのような才能があるかもしれないと思い、五反田監督の下で指導を受けて幾つかの作品にも出演しましたが、分かったのはアイのような才能はないという事実でした。
努力すれば必ず報われる世界でないとはいえ、自分の人生が否定されたと感じてもおかしくはないと思います。そしてそれでも藻掻いて芸能界にしがみついてきたのです。
しかし、今まで誰にも評価されずアクア自身すら評価しなかった演技に込められた意味や努力を、かなは初見で理解してくれたのです。
「【推しの子】」 2巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
かな自身もそうですが、自分自身の深いところを誰に言われるでもなく見てくれて理解してくれるというのは嬉しいものです。
アクアはこの時、かながいかに真摯に演技に向かい合ってきたかを知り、また自分の努力を認めてくれたことを理解し、かなに対し特別な感情を抱きはじめたのではないかと想像します。
だからこそ、鏑木の残した煙草の吸殻を採取して目的を果たしたのに、撮影を適当に終わらせずかなの実力を出させるような行動に出たのだと思います。
また他に、単純に顔と性格がアクアにとってどストライクだったのではないかと思います。
ゴロー時代は16歳のアイと12歳のさりなを推しておりロリコン扱いされていましたし、アクアになってからもB小町に誘ったのはかなの他にMEMちょと、いずれも童顔の子です(さらに過去のMEMちょの顔立ちはかなに似ています)
ルビーもかなを見て、「コッテリしたオタの人気を滅茶苦茶稼ぐ」と言っており、コッテリしたドルオタ=ゴロー(アクア)に合致する気もします。
「【推しの子】」 2巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
そして実際、アクアは何度もかなのことを穏やかで悪意のない笑顔で見ていたりすることがあります。
- 「今日あま」の打ち上げで原作者から感謝されているところであったり
- キャッチボールをしているときであったり
これは、あかねや他の女性キャラクターに対しては見せない表情です。
「【推しの子】」 2巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
かなへの気持ちが明確になったのはおそらくキャッチボールのときで、このときアクアは「黒川あかねに対する感情はそういうのじゃない」と言っています。
かなに対しながらそう思うってことは、かなに対してはそういうのだ、ということを再認識したのだと受け取れます。
またルビーも、かなと一緒にいるときは昔のアクア(アイが亡くなる前)に戻ったみたいとも言っており、アクアの闇(復讐)を知らず正面からぶつかって言いたい放題言い合えるかなの存在が、アクアにとっての清涼剤になっているのではないかと思われます。
かなと一緒の時は復讐のことを忘れ、一人の「アクア」という存在としていられるのだと思います。
では、黒川あかねに対してはどのような感情を向けているのか。
初めはアイの思考がわかるあかねのことを利用するためにビジネス上の彼氏彼女として交際を始めており、実際にあかねのことを異性として見ていないとはっきり口にしています。
変化が生じるのは、アクアが勘違いで父親が既に死んでいてこの世にいないと思い、復讐から解放されたときです。
そこから改めてあかねに向き合い、あかねを守りたいと告げて正式に交際を開始するようになりました。
恐らくこの時点でも、あかねに対して恋愛感情がなかったことは、あかね自身が感じています。
「【推しの子】」 9巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
それでもあかねと交際を続けたのは、あかねを利用していたという罪悪感と、アイドルとなったかなと距離をとる必要があるということ、だったのかなと思います。
そして恐らく、アクアはあかねの傍にいることが楽で心地よかったのだと思います。
あかねは非常に頭が良く、プロファイリングも得意で相手が何を考えているのかを高い確度で感知します。
だから、アクアが何を望んでいるか、どういう彼女ならアクアに喜んでもらえてアクアの居心地が良いのかが分かるのではないかと思います。
十年以上復讐のことを考えていたアクアですが、普通の人間が悪意を持ち続けるのは疲れます。復讐相手が既にこの世にいないと勘違いした(思いたかった)アクアは、長年の復讐心から不意に解き放たれたものの長年のダメージが蓄積されていたような気がします。
そんな状態のアクアを、あかねは受け止め、無理させず、少しずつ癒してくれたのではないかと思います。
具体的な言動でも、かなとあかねに対してでは大きく違いがあります。
かなに対しては
- 可愛い
- ファンである
- 大事な妹を預けられる、信頼できる
ということを面と向かって言っています(ファン発言はぴえヨン時ですが)
「【推しの子】」 2巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
一方であかねに対しては
- 女優として強い興味を持っている
- あかねと出会ってからずっと救われていた
「【推しの子】」 10巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
かなに対しては「純粋にかな自身をどう思っているか」を伝えており、あかねに対しては「自分(アクア)にしてくれることに対しどう思っているか」を伝えています。
かなはかなに対してしか言えないことであり、あかねはあかねではない他の誰かでも同じことができるなら言えることなのではないかと思います。
しかしだからこそ、あかねを身近に置けても、かなは遠ざけるしかないわけです。
そしてアクアは、かなに避けられると傷つき、かなを傷つけると荒れて落ち込むと、実に分かりやすい態度も見せてくれます。
二人がアクアに対してどういう存在かとあらわすならば
- アクアと一緒に闇に落ちてくれるのが、あかね
- アクアを闇から引っ叩いてでも引っ張り出してくれるのが、かな
なのかなと思います。
あかねは実際に「付いて来てって行ってくれてたら地獄だって一緒に行くのに」と言っています。
「【推しの子】」 10巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
あかねは、アクアの黒い感情も含めて否定せずに受け止めてくれて居心地がよく、能力も高く、悪い言い方をすればアクアにとってあらゆる意味で非常に都合の良い子、なんだと思います。
だからこそアクアはあかねの傍が居心地よく、依存してしまいそうになるのだと思います。
あかねは夜へと誘う立ち位置であり、月(アクア)と同じ存在、アクアが近づきやすい存在なのではないかと思います。
一方でかなは、アクアに対する恋愛感情を動かすことで利用はできますが、恐らくあかねと違って一緒に落ちていってはくれないと思います。
むしろぶっ叩いてでもアクアを止めようとするのではないでしょうか。
かなはJIFの時に「必ずアンタのサイリウムを真っ白に染めてやる」と言っており、白く染めるというのはかなによってアクアの心の闇を光に変えることを意味するとも捉えられます。
そして、かな=太陽であり、闇を光で照らしだす存在です。
アクアにとってかなは眩しすぎ、近づきたいけれど、かなが純粋で真っすぐすぎるが故に近くにいるとアクアの方が苦しくなる。そして、そんなかなを闇に引き寄せるわけにはいかないと考えます。
「【推しの子】」 11巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
むしろ、近づくものを焼き尽くすほどの強い光により、自分の闇(復讐心)が払われてしまう事を恐れているのかもしれません。
アクア自身、心の中にいるゴローが「有馬かなは光で、黒川あかねは理解者」と言っています。
これが出たのはまだ物語も中盤ではありますが、結局はこれが結論なのかもしれません。
「【推しの子】」 6巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
まあ実際には、アクアは悪になり切れずあかねの手も振りほどき、かなの手を掴むこともなく、第三の道を突き進んでしまっているのですが(2023年8月現在)
3-3 有馬かなでも黒川あかねでも一人きりでもない第四の選択肢、ルビー
アクアが有馬かな、黒川あかね、双方の手をとらなかった場合、アクア一人で闇に進む以外に第四の選択肢が存在します。
それは、ルビーです。
ルビーはもともとさりなが転生した身であり、さりなはゴローのことが大好きでした。
「【推しの子】」 8巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
そしてアクアはゴローが転生した身であり、ゴローはさりなのことを大事に思っていました。
但し、アクアとなった現在は少し状況が違っており、今のアクア=ゴローから地続きの状態ではない、と思っています。
実際に有馬かなとキャッチボールをしている時に、
- 身体が成長するに連れて精神の方が身体と環境に適合していく
- 「僕」と「星野アクア」との境目がなくなっていく
と言っており、これはゴローではなくアクアとしての自分が強くなってきていることを示していると思われます。
ゴローはさりなを推していたけれど、アクアとしては有馬かなに惹かれている、という状況なのかと。
そういう意味で二人が恋仲になることはないのではないかと個人的には思っていますが、一方で「ルビー=太陽」であり、アクアを闇から救い出す役割はかなではなくルビーだというのは十分にありえます。
この辺、ルビーを含めた三人の少女とアクアの関係性は、原作が完結する時には分かるかと思うのでそれを待ちたいと思います。
※記事執筆は2023年8月。原作連載を追いかけると色々と展開ありますが・・・
4、有馬かな、黒川あかねのアクアに対する恋愛感情は本物か?
さて、アクアから見たかなとあかねについて述べましたが、では逆にかな、あかねの方からアクアに対する思いを考えてみました。
4-1 有馬かながアクアに恋したその瞬間、その理由
有馬かなのアクアに対する恋心は疑うべくもないでしょう(実際、本人には言っていないけれど島政則には言っています)
では、いつ、何故、恋したのかを考えます。
かなが重要視しているのは、相手が今のかな自身のことを見てくれていることです。
天才子役と持て囃されたのもごくわずかの間で、売れなくなるとそれまでチヤホヤしていた人たちも皆離れていってしまいます。売れなくなった後も芸能界にしがみつくも、周囲の人が見るのは売れていた天才子役時代の姿で、その時の有馬かなを見てくれる人はいませんでした。
幼い子供にとってはトラウマになるかもしれませんし、人間不信になったかもしれません。
だから、今のかながどういう人間なのかを理解してくれて今のかな自身を見てくれる人を好きになります。
それは、アクアがぴえヨンの格好をしている時の会話からも明らかです。
「【推しの子】」 4巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
そんなかながアクアに明確に恋心を抱いたのが「今日あま」の撮影の時でした。
「今日あま」の撮影において、アクアはかなが何を求めているかを理解し、それを見事に実現させてくれました。
子役云々ではなく、前日までにかなと会話したことや「今日あま」の過去の放映を観て、何をすればかなが本気で演技ができる状況になるかを考え、実行して場を作りだしたのです。
かなは誰よりも演技に執着しています。
かなのためを思っての行動であると同時に、これほど今のかなを理解してくれた行動はないでしょう。
「【推しの子】」 2巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
更にかなは天才と呼ばれた幼少時にアクアの演技で鼻っ柱をへし折られています。それ以来アクアの名を心に刻んで演技に邁進してきました。
それ以来、十数年の時を経て再会するわけですが、会えなかった時間が長かったためにアクアに対する思いや執着は余計に強くなり、「今日あま」の一件でそれが一気に恋心に反転したものだと思います。
これ以降、有馬かなのアクアに見せる態度は恋する乙女そのものであり、幼少時から芸能界で育ち精神的には大人びているはずのかなが、アクアの前では小学生くらいになっちゃっているのがなんとも可愛いです(演技一筋で自分自身の恋愛から疎かったことが分かります)
4-2 黒川あかねのアクアに対する思いは恋愛感情なのか?
黒川あかねのアクアに対する感情はなかなか複雑なものと思えます。
もとは「今ガチ」での炎上騒ぎと自殺から助けてくれたことで感謝の念を抱いた状態で、好意があったのは確かですが、明確な恋愛感情ではなかったのではないか、と思います。
恋愛リアリティショーの流れで、恋愛感情がない状態のままアクアとビジネス上の彼氏彼女を演じることになります。
これであかねがもう少し軽く考えることが出来ればまた違ったのでしょうが、根が真面目なあかねは、歪な状態から始まった恋人関係から素直に恋に移行できなかったのではないかと思います。
アクアを好きなことは間違いないけれど、それは助けてもらったからそう思っているのではないかと、常に自分自身の気持ちに疑問を抱いてきたのではないでしょうか。
偽の彼氏彼女を演じるうちに、次第に感情が本物になっていくというのは実際にあることだと思いますし、あかねはきっとそうなっていったのでしょう。
「【推しの子】」 8巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
そして、気持ちが本物になったあとは一気に愛情のメーターが振り切ったようにも感じます。
もともと役者として没入型のあかねは、恋愛においても自分がアクアを好きだということに強く没入してしまったのではないかと思います(初めての彼氏ということもあります)
だからこそあかねの気持ちは強く、重いものになります。
アクアが復讐のために人を殺すと言えば一緒に殺してあげると言い、地獄に落ちるなら一緒に行くとまで言い切ります。
ここまでいくと、愛情が重いですね・・・
「【推しの子】」 10巻 横槍メンゴ、赤坂アカ/集英社 より引用
ストーカー気質のかな、メンヘラ気質のあかね、いずれにしてもアクアは重い女の子に好かれる気質なんでしょうかね。。。
5、おまけ:タロットのアルカナから見る物語性
さて、ここは考察というよりも完全にこじつけというか妄想的なものになるのですが。
星野アイという役者として最高の資質である「星」の瞳を持った存在。
そんなアイの資質を受け継いで生まれたのが、「月」の存在であるアクアと「太陽」の存在であるルビーです。
「星」、「月」、「太陽」ときて思い浮かべるのはタロットのアルカナです。
そして実際に各タロットの意味を見ると以下のようになります(いずれも正位置の意味)
- 星:希望、願いが叶う、絶望からの再生
- 月:不安定、トラウマ、フラッシュバック
- 太陽:成功、誕生、約束された将来
何やら各キャラクターを暗示する意味にも感じ取れますし、この三種のタロットの絵柄にはいずれも「双子」を象徴するものが描かれています。
更にこれらのカード番号は以下のように並んでいます。
- カード番号17:星
- カード番号18:月
- カード番号19:太陽
星(アイ)から始まり、月(兄・アクア)、太陽(妹・ルビー)と続く並びと同じです。
そして太陽のあとに続くのは「審判」と「世界」の二つだけで、17番の「星」から21番の「世界」までの5枚のカードは特に最強のものとされています。
さらに「太陽」に続く20番目のカード「審判」と21番目のカード「世界」は以下のような意味を持ちます。
- 審判:復活、覚醒、転生
- 世界:成就、完成、グッドエンディング
タロットはその順番にも意味があり、その順番により物語性があります。
「星」のカードの前を見ると、15番「悪魔」、16番「塔」となります。
「悪魔」のカードが意味する裏切り、憎悪、嫉妬心から、「塔」のカードが意味する悲劇、崩壊が発生する。
しかしその後の「星」のカードで希望が生まれ、その希望が「月」、「太陽」へと繋がっていきます。
そして「審判」で復活、覚醒し、「世界」で願いが成就し全てが完成する。
何か物凄く、【推しの子】の物語性に合致しているとも思えてきます。
これらの流れが示しているのは、アイではなくやはりさりなとゴローのように見えます。
では彼らが望む成就、グッドエンディングとは何なのか。復讐を果たすことなのか、アイのように芸能界で輝き幸せな人生を歩むことなのか、その辺はどうにも捉えられてどこか怖い気もします。
とはいえタロットカード自体さまざまな意味を持っていますし、物語にあわせるよう都合の良い解釈もできるので偶々合致して見えただけ、なのかもしれません。
6、まとめ
今回の記事では、
- アクアやルビーの瞳の星の意味すること
- アクアに対する有馬かな、黒川あかねの意味
- 有馬かな、黒川あかねのアクアに対する感情
といったことを考えてみました。
素人の考察なので甘々かもしれませんし、実際には全然違うかもしれませんし、また連載の中で新たな情報が加われば考えも変わってくるかもしれません。
実際、マンガフルの他のライターさんからは日本神話に加えてキリスト教もモチーフに入っているだろうと言われており、更に深掘りできそうです(今回は行っていませんが)
今回のこと以外でも、本作では物語の序盤から様々なことが描かれており、考えることは色々とあります。
【推しの子】は、読み返すたびに様々なことに気がつかされます。
皆さんも是非、読み返してみてはいかがでしょうか。同じ場面でも、全然違った意味に見えてきたりすると思います。
以上、アニメで今まで以上に更に有馬かな推しになったマンガフルライターの神門でした。
本作は、↓ ヤンジャンのアプリで読むことが可能です!
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