はじめまして、そらみつと申します。
みなさんは漫画「ちはやふる」をご存知でしょうか?
漫画雑誌「BE・LOVE」(講談社)で2007年から連載中の累計発行部数1600万部の大人気漫画です。
2011年~2013年にはアニメ化になり、2016年には「ちはやふる 上の句/下の句」で映画化もされました。
さらに2018年春には続編「ちはやふる-結び-」の公開が予定されてます。
今や若手役者の第一線で活躍してる、広瀬すずちゃんや野村周平さんの出演作なので、映画から原作漫画を知った方も多いかもしれませんね。
もうすでに「知ってるし」って方も「まだ見てな~い」って方も、一般的でなかった「競技かるた」を取り上げた少女漫画が、10年以上もファンを魅了し続けている理由と「ちはやふる」の楽しい読み方を語りたいと思います。
目次
1.ちはやふるのストーリー
まず、ストーリーのおさらいからいってみましょう。
主人公・綾瀬千早が「競技かるた」のNo.1クイーンの座を目指す青春物語です。
競技かるた永世名人のおじいちゃんに育てられた綿谷新と幼き頃からそばで千早と一緒に過ごす真島太一の3人の幼馴染みがかるたで出会う小学生時代から始まります。
親友との離別・再会を経験しながらも、高校で新しい仲間たちと出会い「競技かるた」部を立ち上げ、大会を通しながら圧倒的覇者周防久志名人・孤高クイーン若宮志暢との一戦に挑んでいく。
概要を読むとまるで体育会系少年漫画みたいですね(笑)
そうなんです。
「ちはやふる」は少女漫画ジャンルに少年漫画要素を取り入れたいわば
ユニセックス漫画
ジェンダーフリーが世の中で受け入れられてきている昨今で、いち早く先駆けて時代の兆候をキャッチしていたのかもしれません。
表紙がすっごく少女漫画で乙女ちっくなので、男性はなかなか手に取りづらいですよね(笑)
けれど、そんなとまどいを乗り越えたくなるような漫画の見所を紹介したいと思います。
2.ちはやふるが愛される3つのポイント
2-1.胸をノックする個性豊かなキャラクターたち
本当珍しいんですよ。
躍動感や熱さを表現してる少女漫画があるなんて。
ちはやふる1巻より引用
少女漫画といえばのよくあるベタで恋愛の惚れたはれた漬けじゃなくて、かといって少年漫画のオラオラむさ苦しいガチンコ系でもない。
どちらの長所も良い塩梅で取り入れられた新しい作風です。
キャラクターは選手である高校生たちだけじゃなく、部活顧問の先生、協会の師範、かるたを読み見上げる裏方の読手、名人、クイーンなどたくさん出てきます。
もともと競技かるたは年齢層にこだわらず、参加できることもあってかボーダレスに生き生きと登場してきます。
また、それぞれの視点から見るドラマ・心理描写が素晴らしいんです。
例えば・・・
- 友人の出会いと別れ、そして再会しつつもたどたどしくすれ違う複雑な友情
- 王者になったがゆえに抱える同世代と仲良くなれない寂しさ
- 仲間が実力を上げていく中で上達せず置いてけぼりになる悔しさ
- 派閥をめぐる協会責任者同士の見栄やプライドのぶつかり合い
- 天才に育てられた二世が抱える周りからのプレッシャーの克服
- 指導者として出来損ないの教え子へ心の通った教育への向き合い方
- 勢いある若手に追い越されそうになる年配世代の葛藤
などなど
現実に誰もが生きていればぶつかるであろう課題や葛藤を、その時その時のキャラクターの心情を丁寧に浮き彫りにすることで、「耳が痛いな、これ(笑)」とか「やば...超泣ける」って世代に縛られず読者の胸をノックする訳です。
ちはやふる2巻から引用
力強い画力や迫力、非現実的な世界(SF・バトルものなど)は少年漫画の方が遥かに優れています。
けれど、琴線にふれる内側の描写を繊細なタッチで描けるのは少女漫画の良いところ。
少女漫画という枠組みに少年漫画の要素が入る事でオリジナリティが際立ち、どこかで見た事がある既視感を感じさせない秀逸な仕上がりになっています。
2-2.畳の上の格闘技=競技かるたの真の正体
作品を支えている大きな柱が競技かるたです。
初めて読む人はニュースで流れるのを見て、かるたを真剣にする人たちぐらいにしか分からないと思うんですよね。
そこで漫画がさらに面白く読めるようになるように、競技かるた別名畳の上の格闘技と呼ばれている所以を簡単に解説したいと思います。
まず、試合の流れは選手が百人一首の上の句を聞き、下の句の札をいち早く取るという至って誰にでも分かるシンプルなルールです。
ところがどっこい
シンプルがゆえに競技となると
ものすごくゴツイッ!!
知れば知るほど選手たちを尊敬のまなざしで見つめちゃいますよ(笑)
① 集中力と心理戦による知性の戦い
選手は百人一首の上の句と下の句を百首全て暗記して試合に参加します。
試合は1対1で行われ、相手選手と100枚中50枚の札をシャッフルし、25枚を自陣(自分の近く)に三段に分けて並べます。
試合ごとに自陣と敵陣分合わせて、わずか15分で覚えて試合がスタートします。
札は50枚しかないものの100首全て詠まれるので、誤ってお手付きしないよう選手は配慮しなければいけません。
超絶暗記&集中力を使いながら
- 自陣の札は何枚あるのか?
- 札の種類は?
- 敵陣の様子は?
- 相手選手の出方は?
- どのくらい既に詠まれたのか?
を試合が進むごとに戦略を練って行かなければいけません。
集中力だけじゃなく選手同士の心理と駆け引きが一札を詠まれるごとに繰り広げられていきます。
ちはやふる5巻より引用
一試合あたり約1時間半ほど掛かるそうで、大会ではこれを一日何試合も行うのです。
キャラクターたちがクタクタになっていくのは当然ですよね(笑)
② 蒸し風呂状態でスピードを争う体力の戦い
相手より素早く札を取る=瞬発力がこの競技には要になってきます。
現役の選手もスクワットや腹筋、ジャンプのトレーニングを行うそうで、漫画の中でも体力作りシーンを史実に描かれています。
ちはやふる5巻より引用
試合本番は正座かつ中腰で構えて、余計な音が入らないよう室内は密閉かつ静音状態です。
熱気がこもる会場で汗水流しながら、決まり字(上の句でここまで詠んだら下の句が分かるという文字)が詠まれると瞬殺で札を取っていく。
現実の試合では札が壁に刺さってしまうこともあるらしく、リアル必殺仕事人並みの離れ業レベルなんですね(笑)
知性と体力の両方を兼ね備えて挑まなければいけない
競技かるたの真の正体は・・・
文武両道を地で行く
超硬派文化系スポ根ワールドだったのです。
ちはやふる5巻より引用
しかも、名人・クイーン戦は袴姿で行うんですから、体力と精神力は相当なものだと伺えますね。
2-3.歴史と私たちをつなぐ変わらないもの
「ちはやふる」のストーリーは体育会系寄りなんです。
なんだけれど、そうなり過ぎないのには作中である仕掛けがあるんですね。
それが、百人一首=短歌とキャラクターを重ね合わせ情感を作り出す演出です。
短歌の紡ぎ出す情緒溢れる世界観は、大ヒット映画「君の名は。」冒頭の国語授業シーンでも使われています。
『 誰(た)そ彼と われをな問ひそ 九月(ながつき)の 露に濡れつつ 君待つわれそ 』
~作者未詳『万葉集』2240
現代訳:誰だあれは?と聞かないで下さい。九月の雨に濡れながら、あなたを待っている私なのです。
映画を見た人はもうお気づきかもしれません。
伏線として短歌が映画の全体的なストーリーを現していたんですね。
すごいと思いませんか?
たった5・7・5・7・7のリズムと31文字の言葉が織りなす奥行きと色彩豊かな趣きを五感で感じさせてくれます。
日本語には文章を読んだだけで想像力を掻き立てられるわびさびの世界があって、この国に古くから根底に流れてるDNAみたいなものだと思うんですよね。
1000年以上も前の言葉なのに、読むと何とも言えない胸に染み入ってくるような感性に響く短歌が「ちはやふる」でもところどころに使われています。
せっかくなので作中の一首をご紹介しようと思います。
タイトルにも使用されている枕詞“ちはやぶる”から始まる一首です。
『 千早(ちはや)ぶる 神代(かみよ)もきかず 龍田川(たつたがは)
からくれなゐに 水くくるとは 』
在原業平朝臣(17番)『古今集』秋・294現代訳:不思議なことが起きる遠い昔、神々の時代でも、こんな美しさは聞いたことがない。散りゆくもみじが竜田川に流れ拡がり、水面一面を真っ赤に絞り染めている。
この首の背景は恋多き色男、在原業平朝臣が皇太子と結婚する二条の后への秘めながらも燃える恋心を、散った紅葉の赤さに重ねながら詠んだ歌です。
主人公・千早はこの歌の意味を知った時、「どんな時代でも人を想う気持ちは変わらない」と作者の情景から札とのつながりを初めて感じます。
と、同時に千早の中で選手としてただの試合道具だったかるたの札が、色鮮やかな歌として生まれ変わったのです。
ちはやふる2巻より引用
「ちはやふる」が10年以上も長く支持されているのは、伝統的な短歌を取り入れてることで心に訴えかける独特な文化のつながりも感じれるからではないでしょうか?
視覚からの情報だけじゃなく、内部へそれも遺伝子レベルから彷彿させる情緒や風情、日本に生まれた一人一人の普遍的な根底に流れている、いつの時代も変わらない文化の源泉が日本語には込められているような気がします。
この他にもキャラクターの心情と合わせて登場してきますので、歌の意味や作者の情景を知りながら双方向に読むと1冊でグッと濃く楽しめるようになっています。
自分と照らし合わせながら、お気に入りの歌を見つけてみるなんて粋な楽しみ方ができちゃいますね。
あー、国語の授業はこんな風に教えてもらえたら、もうちょい真剣に授業聞いてたかもしれない(笑)
国語が苦手な人は先に読んで苦手意識を払拭してみてください。
3.映画「ちはやふる」についても語ってみた
最後に映画続編公開記念としまして、映画版「ちはやふる」についても、せっかくなので触れていきたいと思います。
近年、大量に漫画の映画化が公開されていますよね。
映画化と聞くと原作ファンには不安と不満が渦巻いてしまうのも無理ありません...
非常に分かります、大切な作品ほど仕上りによっては、やるせない気持ちになりますから(笑)
なので、この章は原作ファンの声なき声をくみ取りながら勝手に語ってみようと思います。
3-1.広瀬すずちゃんの綾瀬千早はアリかナシか?
漫画の映画化に賛否両論出やすいのが
なんといっても
役者がキャラクターとマッチしているのか?
原作ファンにとってかなり大きなウエイトを占めてると思うんです。
やっぱり漫画は小説と違って絵でも表現されている分、読者にとって頭の中にイメージがすでに出来上がってる。
なので、パッと見ただけで合ってるのか合ってないのか快・不快が非常に出てきやすい。
前作映画「ちはやふる 上の句 下の句」でも配役発表時に賛否両論が例外なく起こりました。
一番反感をかったのが主人公・綾瀬千早を演じた広瀬すずちゃんです。
彼女はもともと丸顔で童顔な顔立ちのショートカット美人さんです。
ロングヘアで涼しげな清涼系美人顔の主人公・綾瀬千早とは別系統の雰囲気の持ち主なんですよね。
OH!アンマッチ!!
なんてこった!!!
当時の映画評論や一般の人の感想もなかなかにシビアなものでした。
主人公なので最も目立つし、仕方ないといえば仕方ないんですが...
だが、しかし
映画のビジュアルが発表されると同時に酷評が一転、好評へと変化をとげたのです。
か、かわゆいやないか♥(単純)
実際、広瀬すずちゃん自身も初主演映画で役になりきれるか不安があったみたいで、写真撮影の時に千早のハマリ具合にとても喜んでいたそうです。
でもでも、見た目だけでは公平な記事にならない!
実際、映画のレビューも行いたいと思います。
感想はですね、なんで彼女が引っ張りだこなのか分かりました。
彼女の目力には観客を圧倒し吸い込むような力があって、真剣な試合のシーンも目だけで演じれちゃうんですね。
けれど、堅苦しい真剣なところばかりじゃないんです。
漫画にもあるコミカルな白目で気絶しちゃうシーンなどを、美人なのにかるたバカ過ぎて「無駄美人」と呼ばれる主人公千早をぴったり再現し、役のために吹っ切れてるところにとても好感がもてました。
それにいいなって思ったのが、前作「ちはやふる 下の句」の初日舞台挨拶での出来事です。
続編決定を監督の計らいで、舞台上でサプライズ発表したんですね。
キャストや取材陣が同時に舞台上でいきなり知ることになったんですけど、彼女は「また一緒にできて嬉しい、これでみんなと最後だと思ってたから」と驚きと共に、嬉し泣きしちゃったんです。
若さって素晴らしすぎませんか?
嬉しいことを嬉しいと身体いっぱいで素直に喜ぶ純粋さが、主人公・綾瀬千早と広瀬すずちゃんの共通項であり、演技にも反映されていたんですよね。
このエピソードでさらに感じたのが、映画はチームプレーが最も大切な気がしました。
漫画の制作現場は個人プレーが多いと思うんです。
アシスタントさんがいるとしても、大きくは作者がメインで作品の大筋を創り上げていく。
それに比べて、映画は製作に関わる人数が多い分、チームワークが作品の完成度に大きく影響しやすい。
「また一緒に仕事ができて嬉しい」って制作陣の仲の良さが自然と伝わってきますよね。
この作品が続編になったのも、陰ながらのこうした絆が作品の完成度に大きく響いたんじゃないかなと思わせてくれます。
ではでは、総評したいと思います!
広瀬すずちゃんの綾瀬千早はアリかナシか?
ででででーででん
大アリです!(ぱちぱちぱちぱち)
広瀬すずちゃんの他にもクイーン若宮詩暢演じた松岡茉優ちゃんの「団体戦なんてお遊びだったって全員に言わせたるわ」のイケズなセリフが最高にクールでした(笑)
けど、語りだすともうキリがないので続きはDVDで観てみて下さいね。
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3-2.最新作「ちはやふるー結びー」はどうなるのか?
次に、漫画の映画化レビューについての意見でよく聞くのが
何年もかけてできた漫画を2時間で表現するのには無理があるのでは?
はい、本当そうですね(笑)
この「ちはやふる」の前作2部作で進んだのがたった5巻だけでした。
長くなればなるほどキャラクターたちも成長するし、ストーリーに織り込みたいシーンが次から次へと出てきます。
最新作では「結び」とサブタイトルがついてるくらいなのでおそらく最終章です。
ストーリーはどうなのかな?と調べてみました。
ちょうど前作公開から2年が経って、映画でも前作から2年後の高校三年生から始まる模様です。
予想では最新刊(2017年9月現在で35巻)までのストーリーを凝縮したカタチになるでしょう。
ってことは、話はしょり過ぎて大丈夫なのかな?と原作ファンの方は身構えてしまいそうですが
ふふふ、最新作の脚本には心強い方が太鼓判を押してくれてるんですよー。
それは
原作作者 末次由紀先生 ですです!
実は前作でも原作ファンが、がっかりしないように脚本に関しては末次先生も参加されていました。
引き続き最新作でも、監督と脚本を作り上げられたらしく、違和感なく楽しめるストーリーになってくれてると期待できそうです。
それに加えて、楽しみなのがすでに参加が決まっている新キャスト陣たちです。
- 太一に恋した新入部員 花野菫役 優希美青さん
- 本番に弱い新入部員 筑波秋博役 佐野勇斗さん
- 映画オリジナル 我妻伊織役 清原果耶さん
- 史上最強名人 周防久志役 賀来賢人さん
おー!!ついに周防名人がお出ましします!!!
ってことは王者たちにメインキャラクターたちが挑戦する、原作ファン待望の
周防名人・若宮詩暢vs綾瀬千早・綿谷新・真島太一
の試合が漫画より一足先に見ることができるのでしょうか?
試合シーンはスピードと鬼気迫る迫力で、前作を上回る撮影してもらいたいなと、いち読者である私も心から願っています。
原作漫画にはない新しい話も盛り込まれる予定なので、2018年春の公開をぜひお楽しみに。
https://twitter.com/chihaya_koshiki/status/874834369252380673
4.まとめ
ってなわけで、漫画「ちはやふる」の魅力はいかがでしたでしょうか?
「ちはやふる」の一番の強みは既存の少女漫画にはない要素を、あえて取り入れ個性を打ち出し、境界を超えて幅広く支持されている点です。
場所を変えると価値が生まれる。ってことを教えてくれた気がします。
また、この漫画が世に生まれたことで現実の試合観戦者や競技人口、近江神宮(名人戦が行われる場所)の参拝者増加にもつながりました。
閉鎖的であまり深く知られなかった伝統文化を、漫画にすることで社会全体に浸透させてしまうって、漫画の力は凄まじいですね。
社会貢献もできる素敵なツールだなって改めて思います。
30巻オーバーのボリューミーだけど、その量を上回る期待を裏切らない情感と熱情溢れる名作と呼ばれるのに相応しい作品です。
読んだことのある方もそうでない方もこの機会にぜひご堪能下さい。
そらみつでした。
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