こんにちは。北の大地の田園に閑居するマンガタリライターのchopsticksです。
私は小学生の頃、図書室に置いてあった『ブラック・ジャック』を手に取って以来、手塚作品の大ファンになったのですが、やはり『ブラック・ジャック』は数々の手塚作品の中でも面白い!
その魅力はどこにあるのかと言えば、やはり素晴らしい名言が作中に数多く散りばめられているところでしょう。
ブラックジャックを読んだことのある人の中には、
- ブラック・ジャックのある医者に対する叱責の言葉が自分の胸にも刺さった
- 本間先生がブラック・ジャックに語り掛けた一言が奥深くて忘れられない
- ブラック・ジャックが正義についてふとこぼした言葉について今も考えさせられることがある
という人もいらっしゃると思います。
私はブラック・ジャックが嘲笑うキリコに対して自身の信念を叫ぶ名言が大好きです。
ただ、なんとなく感動したことは覚えていても、その言葉が登場したのが何巻のどのエピソードだったかはパッとは思い出せない人も多いはず。
そこで今回は、その中でも特に座右の銘にしたくなる名言7選をそのエピソードの内容と共にお届けしたいと思います。
ぜひ、ご覧ください。
1、『ブラック・ジャック』ってどんな漫画?
著者 | 手塚治虫 |
出版社 | 秋田書店 |
掲載雑誌 | 週刊少年チャンピオン |
掲載期間 | 1973年~1983年 |
単行本巻数 | 全17巻 |
ジャンル | 医療漫画 |
はじめに『ブラック・ジャック』がどんな漫画であるかをおさらいしておきましょう。
『ブラック・ジャック』は手塚治虫にとって斜陽の時代に生み出された作品でした。
その当時はスポ魂漫画やギャグ漫画、少女漫画が流行りだし、手塚治虫の描くヒューマニズム作品は受け入れられにくくなっていました。
しかし、手塚治虫は逆境にも負けず『ブラック・ジャック』を描き続け、ついには愛蔵版や新装版などなど多くの単行本が出版されて時代を超えて愛される名作となりました。
『ブラック・ジャック』の主人公はご存知の通り「ブラック・ジャック」です。
手塚治虫『ブラック・ジャック』1巻/秋田書店 より引用
ブラック・ジャックは天才外科医として世界的に有名な医師ですが、なんと医師免許を持っていないというアウトサイダー。
その上、ブラック・ジャックの手術を受けるには、目玉が飛び出るほど高額の医療費を支払わなければなりません。
それでも、その手腕は本物ということで、ブラック・ジャックに手術を依頼する人は後を絶ちません。
手塚治虫『ブラック・ジャック』1巻/秋田書店 より引用
そんな冷酷にも見えるブラック・ジャックですが、彼の何よりの魅力はその心に秘めた情熱にあります。
『ブラック・ジャック』には、ブラック・ジャックの「命」や「生」というものへの信念や葛藤、叫びがそこかしこに描かれています。
手塚治虫はかつて医学生であったため、手術の描写だけではなく、医者としての葛藤がリアルに描かれているのです。
今回の記事では、「命」と「生」に真剣に向き合ったブラック・ジャックの名言を選び抜き、そのエピソードと共にご紹介していきます。
2、座右の銘にしたくなる『ブラック・ジャック』の7つの名言をエピソードと共に徹底紹介
『ブラック・ジャック』についてザッと振り返ったところで、いよいよ名言7選の発表です!
今回は、名言と共に名言が登場したエピソードの魅力もお届けします。
皆さんにとっても思い入れのある名言やエピソードはいくつあるでしょうか?
その1 【ときには真珠のように】人間が生き物の生き死にを自由にしようなんて…
ある日ブラック・ジャックの元に不思議な物質に入れられたメスが送られてきます。
その送り主はブラック・ジャックの命の恩人で、医者になるきっかけを作った本間丈太郎先生でした。
ブラック・ジャックは本間先生に何か意図があってメスを送ってきたと考え、本間先生の元を訪ねます。
すると、布団に横たわる本間先生が…!
ブラック・ジャックはその姿に動揺しつつ本間先生にメスを送ってきた意図を尋ねました。
すると、本間先生は自らのミスによってブラック・ジャックの体にメスを置き忘れてしまったことをずっと黙っていたこと、
7年後の手術でようやくメスを取り出したところ、カルシウムの鞘に包まれたことを告白します。
そのことを打ち明けた先生は安心してしまったのか容体が急変。
近くの病院でブラック・ジャックが執刀することになります。
ところが、力を尽くしはしたものの残念ながら本間先生は帰らぬ人に…。
病院の玄関でうなだれるブラック・ジャックに本間先生の幻影が語り掛けます。
「人間が生き物の生き死にを自由にしようなんておこがましいと思わんかね…」
手塚治虫『ブラック・ジャック』1巻/秋田書店 より引用
医学は生命のふしぎさにはかなわない…。
それなのに、人間ごときが生き物の生き死にを自由にしようだなんて身の程知らずではないか…。
本間先生の最期の言葉でもあったこの言葉は、ブラック・ジャックはもちろんのこと、多くの人々の心に突き刺さる名言として語り継がれていくことでしょう。
その2 【ふたりの黒い医者】それでも私は人をなおすんだっ 自分が生きるために!!
ブラック・ジャックが依頼主と会うために約束の場所に向かっていたところ、安楽死をとげさせることを生業とするドクター・キリコと出くわします。
2人は正反対の理念を持つということで犬猿の仲。
所謂ライバル関係にあります。
そして、偶然にもトラックにひかれて背骨を折り、一生身動きできなくなってしまったという女性の命をめぐって争うことに。
女性はこれ以上子どもたちに負担をかけたくないと死を願ってキリコを頼り、子どもたちは母の存命を願ってブラック・ジャックを頼っていたのです。
ブラック・ジャックはなんとか手術をする権利を勝ち取り、女性の命を救うことに成功します。
ところが、再びキリコと対立していたところに親子で乗っていた病院車にトラックが衝突し、親子もろとも死んでしまったという知らせが…。
せっかく救った命が、それどころか子どもたちの命までもが一気に失われたことに動揺するブラック・ジャックとそしてそれを嘲笑うキリコ…。
ブラック・ジャックはキリコの背中に向かって叫びます。
「それでも私は人をなおすんだっ
自分が生きるために!!」
手塚治虫『ブラック・ジャック』3巻/秋田書店 より引用
無理に生きさせようとした結果、最悪の結末を迎えてしまったとも考えられる悲しいエピソードです。
しかし、ブラック・ジャックは自分の生きる意味を見出すために人をなおし続けると叫びます。
ブラック・ジャックのその熱い志はきっと多くの人々の胸に焼き付くことでしょう。
その3 【約束】正義か そんなもんはこの世の中にありはしない
難民キャンプにルペペという名の男を手術をしに来たブラック・ジャック。
二度の手術が必要な患者の一度目の手術でしたが、医療器具がほとんどない中で無事に成功を収めます。
ブラック・ジャックはルペペと二度目の手術を約束して帰るのですが、その際にルペペの担当医からルペペが「正義の強盗」であるという話を聞かされます。
するとブラック・ジャックは次のように返したのでした。
「正義か
そんなもんはこの世の中にありはしない」
手塚治虫『ブラック・ジャック』9巻/秋田書店 より引用
二度目の手術の際、死刑判決を受けたルペペは獄中にいました。
約束の手術の後、当然ながら処刑されたルペペ。
彼にとっての正義は貫かれたのかもしれませんが、やはり法は彼の正義を認めてくれませんでした。
ブラック・ジャックはそのことを知っていたからこそ、正義などありはしないと吐き捨てたのかもしれませんね。
その4 【ある老婆の思い出】もし人のいのちを救ってその人の人生をかえたなら…
ニューヨークで看護師として勤めていたメアリは、心優しいあまり看護師としての自分の人生に悩んでいました。
そんなある日、彼女の目の前で妊婦が倒れてしまいます。
その現場にたまたま出くわしたブラック・ジャックは、病院に運ぶついでに妊婦の手術をすることになりました。
しかし、病院の院長はブラック・ジャックが執刀していると聞いて大慌て。
法外な手術費用を吹っかけられて病院の経営が傾くことを恐れ、手術を中断させようとしてきたのです。
しかし、メアリは必死に院長を説得し、ブラック・ジャックが連行される前に瀕死の赤ちゃんを泣かせることに成功します。
このことによって院長も渋々母親の手術を許可し、ブラック・ジャックは執刀を続けられたのでした。
しかし、手術後にメアリは看護師を続ける自信を無くしてしまったとブラック・ジャックに打ち明けます。
そんな彼女に対し、ブラック・ジャックは次のような言葉を投げかけます。
「もし人のいのちを救ってその人の人生をかえたなら
もしかしたら歴史だって変わるかもしれないだろう?」
手塚治虫『ブラック・ジャック』3巻/秋田書店 より引用
その言葉を聞いたメアリは、ブラック・ジャックのと共に助けた母親の希望もあり、看護師を辞めて乳母になりました。
そして、彼女が救った赤ちゃんは優秀に育ち、ついに一国の大統領となったのです。
彼女が子どもを立派に育て上げることができたのは、ブラック・ジャックの言葉があったからに違いありません。
ブラック・ジャックの言葉が後の大統領を生んだと言っても過言ではないでしょう。
その5 【病院ジャック】こっちは…1人助けるだけでせいいっぱいなんだぜ…
ブラック・ジャックが病院で6歳の男の子の手術をしていたところ、突然覆面の男が侵入。
男はどうやらテロリストのようで、日本政府が彼らの要求を呑むまで手術を中止することを主張します。
ブラック・ジャック以外の医者や看護師は大慌て。
あの手この手でテロリストの男を懐柔しようとしますがうまくいきません。
それどころか、日本政府との交渉が決裂し、報復処置として病院の電源を爆破されて患者の命がますます危険に晒されることに…!
暗闇の中で誰もが手術をすることを諦めたのですが、ブラック・ジャックだけは諦めませんでした。
ブラック・ジャックは手探りで器具や臓器を探り当て、見事手術を成功させたのです。
そんなブラック・ジャックが電気が回復した病院で警察に取り押さえられた犯人に対して吐き捨てたのが次の言葉。
「たいした奴だな…
簡単に5人も死なせるなんて
こっちは…
1人助けるだけでせいいっぱいなんだぜ…」
手塚治虫『ブラック・ジャック』2巻/秋田書店 より引用
一人の患者の命は救うことができたものの、停電によって5人に患者の命が失われてしまった…。
命を奪うのは簡単ですが、命を救うのはとても難しいです。
そのことを踏まえた上で犯人に皮肉を言うブラック・ジャック…やはりとてもかっこいいですね!
その6 【おとずれた思い出】そいつァ人間のいちばん愚劣な病気みたいなもんだ
ブラック・ジャックの家をフラリと訪れた自殺未遂の末に記憶を失ってしまった女性。
なんと彼女はピノコとなった奇形脳腫を宿していた、ピノコの双子の姉でした。
そんなこととはつゆ知らずすぐに仲良くなった2人でしたが、ブラック・ジャックは彼女の記憶が戻ってしまう前に家に帰そうと彼女の担当医に電話をします。
事情を知った担当医は「世間体が…」とひどく狼狽しますが、それに対してブラック・ジャックは次のように痛烈な言葉を投げつけたのです。
「格式だの家柄だのってやつはわたしゃア胸がムカつくんでね!!
そいつァ人間のいちばん愚劣な病気みたいなもんだ」
手塚治虫『ブラック・ジャック』17巻/秋田書店 より引用
すぐに迎えに来た担当医を見て記憶を取り戻した女性は、ブラック・ジャックが危惧した通りピノコから早く遠ざかろうとします。
本当の姉のようだったとこぼすピノコに「おまえにはねえさんはいない」と語るブラック・ジャックの背中がとても切ないです。
格式や家柄のことがなければ、2人は普通の姉妹のように仲良く暮らせたのに…。
そう思ったからこそ、ブラック・ジャックは担当医へ憤りを爆発させたのでしょう。
その7 【獅子面病】われわれは神じゃない…人間なんだ
無免許医であることを咎められて警視庁の男に逮捕されたブラック・ジャックは、病院に連れて行かれてテストを受けさせられることになります。
ある患者の手術に成功すれば医師免許をとれるとのことですが、それは獅子面病という原因不明の病…。
とにもかくにもブラック・ジャックは手術に挑んでみることにします。
しかし、どのように手術をするのか尋ねてくる医者たちにブラック・ジャックが脳の手術をすると答えたところ、医者たちは驚いて止めようとします。
中には「患者の命を生かすか殺すかカケるとは許せんっ」と憤慨する医者も。
そこでブラック・ジャックは次のように叫んで医者たちを黙らせたのです。
「あなたがたはいつも患者がなおると保証して治療をしているのですかっ
そんな保証のできるものは神しかいないっ
…われわれは神じゃない…人間なんだ」
手塚治虫『ブラック・ジャック』6巻/秋田書店 より引用
手術は無事に成功し、3か月後に獅子面病が完治したことが認められました。
そしてなんと、その患者は警視庁の男の息子だったのです。
男はさっそくブラック・ジャックの医師免許の申請を願い出るのですが、ブラック・ジャックは世界中で患者を脅迫しているということで許可が下りず…。
男はブラック・ジャックにかける言葉も無く立ち去ったのでした。
患者を救うことに熱い志を持つブラック・ジャックですが、その情熱とは裏腹に冷たい側面を持っています。
そういった面からも彼は自身を神ではなく、人間であると強く意識していたことが窺えますね。
3、まとめ
今回は『ブラック・ジャック』の座右の銘にしたい名言7選を紹介しました。
- 人間が生き物の生き死にを自由にしようなんておこがましいと思わんかね…
-
正義か そんなもんはこの世の中にありはしない
- われわれは神じゃない…人間なんだ
などなど、医者ではなくとも胸に響く言葉が『ブラック・ジャック』にはたくさんありますね。
『ブラック・ジャック』には今回ご紹介した名言の他にもたくさんの名言が山のように眠っています。
皆さんもこの機会にぜひ改めて『ブラック・ジャック』を手にしてみてください。
きっと素敵なエピソードと言葉に出会うことができるでしょう。
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