みなさんこんにちは、マンガフルライターの神門です。
世に“バディもの”と呼ばれるものがあります。
基本的には男性(?)二人組が活躍する作品のことで、
- うしおととら
- 寄生獣
- TIGER & BUNNY
など名作が揃っていますが、“男女バディもの”って意外と思い浮かびません。いや、あるのですが、男女だとどうしても恋愛要素が強くなってしまうので“バディもの”という感じがしないのです。
ですが、そんな中でも『シティーハンター』は“男女バディ”ものの名作といって過言ではないでしょう。
冴羽獠と槇村香の二人、恋愛要素も絡みますが、それ以上に事件を二人で解決していく名コンビという、恋愛すらも超越した二人の強い絆を感じさせてくれるからです。
そこで今回の記事では『シティーハンター』の、登場人物達の強い絆や関係性を描いた名エピソードをご紹介します。
是非、皆さんも思い出してみてください!
目次
- 1.『シティーハンター』ってどんな漫画?
- 2.獠や香達の秘められた過去や思いから導かれる絆を描いた、珠玉の名エピソード9選を時系列で紹介!
- 2-1.相棒、槇村の死。「香を……頼む」この一言から全てが始まった
- 2-2.冴子の行動の奥底にある槇村に対する思い
- 2-3.海坊主と美樹の過去。美樹の思いを受け取れない海坊主の真意
- 2-4.香の生き別れの姉との再会。真実とは何かを考えさせられる姉妹のエピソード
- 2-5.「あんたの誕生日を作ってあげる」冴羽獠がこの世に生まれ、生きていることを肯定した
- 2-6.互いのパートナーの存在が唯一無二であると認識させた、獠と海坊主の命を懸けた戦い
- 2-7.獠と香が真のパートナーとなった日。ミック・エンジェルとの戦い
- 2-8.本当の意味で獠が過去と決別し香と今を生きていくことを示した、育ての親・海原神との戦い
- 2-9.「永遠にあなたのもの」ずっと二人で生きていくことを誓う二人
- 3.まとめ
1.『シティーハンター』ってどんな漫画?
著者 | 北条司 |
出版社 | 集英社 |
掲載雑誌 | 週刊少年ジャンプ |
掲載期間 | 1985年13号 – 1991年50号 |
単行本巻数 | 全35巻 |
ジャンル | ハードボイルド・アクション |
『キャッツ・アイ』で一躍人気漫画家となった北条司先生の2作目が、この『シティーハンター』です。
新宿を舞台に、スイーパー「シティーハンター」として活躍する冴羽獠とその相棒である槇村香の二人が活躍する、ハードボイルドアクションです。
- 美女絡みの依頼しか受けない獠
- 100tハンマーを振り回すヒロインの香
- 「もっこり」を全国に周知させた下ネタ
作品内でのお約束を定着させ、シリアスとコメディをバランスよく散りばめた本作は大きな人気を得ました。
かつて、新宿駅の伝言板に「XYZ」と書いた人は数多くいるはず!(最近の若い方は駅の伝言板といわれてもなんのこっちゃ? かもしれませんが)
その人気は世界でも高く、海外で実写映画化され、しかも漫画の実写映画化(しかも外国)なのに珍しく成功しています!
2019年にもアニメと実写で映画化されるほど、連載終了(1991年)から30年が経つ今も人気で愛されている作品です!
2.獠や香達の秘められた過去や思いから導かれる絆を描いた、珠玉の名エピソード9選を時系列で紹介!
『シティーハンター』は、数話からなるエピソードを重ねていく作品スタイルとなっています。
そのエピソードの中には
- 登場人物の重要な過去
- 秘められた思い
など、物語の根幹につながる重要なエピソードが散りばめられています。
主人公の獠はもちろん、香、海坊主、等々、主要登場人物達には色々と背負ってきているものがあるのです。
- あの人にはそんな過去があったのか
- 行動の裏にはそのような考えがあったのか
- 誰にも伝えていないけれど秘めた思いがあったのか
と理解することで、他のエピソードにおける彼らの行動もまた違った目で見ることが出来たりもします。
そんな、『シティーハンター』の登場人物達の秘められた過去、そしてそこから繋がる絆を描いた珠玉のエピソードを紹介します。
時系列に紹介しますので、かつて読んでいた方も当時を思い出しながら読んでいただければと思います!
2-1.相棒、槇村の死。「香を……頼む」この一言から全てが始まった
「シティーハンター」といえば獠と香のコンビがあまりにハマりすぎているのですが、獠の最初のパートナーは香の兄である槇村秀幸でした。
槇村は元々警察官でしたが、法では裁けない悪人を裁くために警察を辞めて獠とコンビを組むようになりました。
危険がつきものの仕事をしている槇村にとってもっとも大切なのは、唯一の家族である妹の香です。
その香と槇村は血が繋がっていません。
香は、槇村の父(警察官)が追跡中に事故死させた殺人犯の娘で、身寄りのない香を槇村の父が引き取ったのです。
血のつながっていない二人ですが、その絆は深く固いもので、実の兄妹以上に仲が良く互いのことを思っていました。
そして香が20歳になったとき、母親の形見の指輪を渡して真実を告げることにしていました。
「CITY HUNTER」 1巻 北条司/集英社より引用
その香の誕生日当日、槇村は仕事の依頼で麻薬組織ユニオン・テオーペとの交渉に向かいますが交渉は決裂し、麻薬「エンジェル・ダスト」を投与して超人的な力を手に入れた人間に槇村は襲撃されます。
瀕死の状態で獠のもとに辿り着いた槇村が、最後に託したのが妹の香のことでした。
「CITY HUNTER」 1巻 北条司/集英社より引用
原作では1巻で退場してしまうことになる槇村ですが、その死のインパクトと血のつながっていない妹である香との絆から、根強い人気を誇っています。
獠と槇村、槇村と香。
そして、そこから結びついた獠と香のコンビ。
彼らの強い関係性は、この先もずっと作品を通して繋がっていきます。
『シティーハンター』はここから始まったといって間違いない、全ての始まりを告げるエピソードです。
2-2.冴子の行動の奥底にある槇村に対する思い
香の兄である槇村は、獠とコンビを組む前は警視庁で敏腕女刑事の野上冴子とコンビを組んでいました。
美人の冴子と見た目冴えない槇村のコンビは“警視庁の月とスッポン”などと呼ばれていましたが、実力は確かなもので二人に解決できない事件はないとも言われていました。
そんな二人が唯一解決できなかったのが人身売買の事件で、その事件を解決できなかったことがきっかけで槇村は警察を辞めたのです。
「CITY HUNTER」 11巻 北条司/集英社より引用
残された冴子は一人、槇村に代わって組織の全貌を暴いて必ず壊滅させてみせると誓ったのです。
冴子は自分の身を囮にして組織に入り込むことを決意し、手伝いとして獠に依頼を出しました。
お金にならない仕事ですが、死んだ槇村が関わっていた事件となれば、香が黙って見過ごせるはずもありません。
潜入した三人は見事に組織を壊滅させて囚われていた女性達を解放させることに成功します。
その戦いの最中、香が手にしている銃は、かつて槇村が使っていたものだということに冴子は気が付き、冴子は槇村のことを思い出します。
そう、槇村は冴子のことを愛しており、冴子もまた槇村のことを愛していたのです。
「CITY HUNTER」 11巻 北条司/集英社より引用
愛した男の妹が、かつてその男が使っていた銃を手に裏の世界で働くのを冴子は果たしてどのような目で見ていたのでしょうか。
警察という立場から、色々と危ない獠の立場や活躍をサポートする冴子ですが、そこには獠に対する思い以上に、もしかしたら槇村とその妹である香に対する思いが強くあるからなのかもしれない、と思わせてくれるエピソードでした。
2-3.海坊主と美樹の過去。美樹の思いを受け取れない海坊主の真意
獠の最高のライバルといえば元傭兵の凄腕スイーパー、海坊主です。
そんな海坊主のもとに、彼との結婚を申し込んで押しかけて来たのが美樹です。
そんな美樹に対して海坊主が出した条件は、「獠にペイント弾を命中させる」という不可能に近い難度の高いものでした。
「CITY HUNTER」 18巻 北条司/集英社より引用
- なんで海坊主にこんな美人が?
- そして海坊主はなぜ受け入れないのか?
裏には海坊主と美樹にまつわる過去がありました。
それは美樹が8歳の時、とある国の内戦で孤児となった彼女を海坊主が保護したことから始まりました。
海坊主は美樹が一人でも生きていけるようにと傭兵としての技術を教え込みますが、成長した美樹は海坊主の役に立ちたいと傭兵隊に志願します。
美樹を危険な傭兵稼業に就けたくない海坊主は彼女の前から去り、美樹は愛する男の役に立ちたいと、その一心で日本にいる海坊主の元までやってきたのです。
海坊主は美樹を傭兵として戦場に引き込んだことで、普通の女としての幸せを奪ってしまったと考え、さらに危険なスイーパー稼業の中で美樹を守り切る自信がないから、美樹の思いを受けるわけにはいかないと考えます。
「CITY HUNTER」 18巻 北条司/集英社より引用
ならば獠はわざと美樹の弾を受けて自分が女の幸せを与えてやるなどと嘯き、その言葉に激昂した海坊主と戦うことになります。
同じレベルの腕を持つ二人が本気で戦えば、双方とも無事で済むわけがありません。
二人の戦いの結末は――
「CITY HUNTER」 19巻 北条司/集英社より引用
海坊主の過去を知ることができる貴重なエピソードであり、海坊主と美樹、二人が互いを想う強さを感じさせてくれたエピソードでした。
2-4.香の生き別れの姉との再会。真実とは何かを考えさせられる姉妹のエピソード
2-1でもご紹介したよう、香は本来、「槇村」姓の人間ではなく槇村の父親が追跡中に謝って事故死させてしまった殺人犯の娘です。
そんな香には生き別れになっていた姉がいました。
その生き別れた香の姉である立木さゆり(立木は母方性)はずっと香のことを捜しており、ついに突き止めて獠の元にやってきます。
「CITY HUNTER」 20巻 北条司/集英社より引用
香は死んだ槇村の妹であることを誇りに思っており、実は自分が妹ではなかったこと、生き別れた姉がいることなど知りません。
だから獠は、香に真実を告げるのが良いことなのか判断出来ず、一人の依頼人としてしばらく香と一緒に暮らしてから結論を出して欲しい、とお願いします。
獠と香、二人と一緒に暮らし、二人の関係性や仕事を間近で見てさゆりは悩みます。
- 獠みたいな男と一緒にいさせて良いのか
- こんな危険な仕事をさせるわけにはいかない
- 女としての幸せはもっと他にあるのに
姉としてみれば当然ともいえる思いです。
だけど、獠と一緒に仕事をしている香の姿は、さゆりからはとても幸せそうで輝いて見えます。
それは当然です。大好きだった兄が命をかけ、誇りに思っていた仕事であり、また大好きな獠を手伝える仕事なのですから。
「CITY HUNTER」 20巻 北条司/集英社より引用
香に真実を話すべきか判断がつかず迷い続けるさゆりは、ある日、ボディガードをしていた香ともども拉致されてしまいます。
ですがその誘拐騒動の中で、獠と香がいかに互いを信頼し、互いのことを思っているかを知ります。
- さゆりと香が拉致されるのを、獠が黙って見過ごすわけがないと信頼する香
- 香に人殺しはさせないと、照準の狂った銃を使わせている獠
そうしてさゆりは決断します。
さゆりが知っている真実よりも、香が知っている真実の方こそがより真実だと。
「CITY HUNTER」 20巻 北条司/集英社より引用
真実を告げずに香の前から去るさゆりですが、香も分かっていたはずです。
- 実の姉妹の絆
- 長い間一緒にいた兄と妹の絆
- 生死を共にするパートナーの絆
何が正しいというものではありません。ただ、長きに渡って築き上げられた絆こそが香にとっての真実だと、それが描かれていたエピソードでした。
2-5.「あんたの誕生日を作ってあげる」冴羽獠がこの世に生まれ、生きていることを肯定した
新宿でスイーパーを営んでいる獠ですが、かつてはアメリカで仕事をしていた時期もあり、その時に獠のアシスタントを務めていた“ブラッディ・マリィー”が来日して獠の前に再び現れることからこのエピソードは始まります。
「CITY HUNTER」 22巻 北条司/集英社より引用
香は獠の過去を知らず、獠が自分の誕生日も知らないと言うことも知らず、銃や戦いについても素人でマリーの足元にも及ばない事実を突きつけられ、自分が信頼されていないのかと悩みます。
香はマリィーに頼んで獠の過去について教えてもらいますが、獠の過去は香の想像を超えて凄絶なものでした。
獠は幼い頃、乗っていた飛行機が墜落してジャングルに一人で放り出され、何日もさ迷い歩いた末に辿り着いたのが内乱の続く中米の小国で政府軍と戦っていたゲリラの村でした。
獠は生きるためゲリラの戦士となり何年も戦い続けた挙句、政府に敗れて敗走しスイーパーとなったのです。
「CITY HUNTER」 23巻 北条司/集英社より引用
真実を知り香はショックを受けますが、それは獠の壮絶な過去にではありません。
獠が香にその過去を教えてくれていなかったこと、自分のことを信頼してくれていないと思いショックを受けたのです。
獠に対して怒るわけではなく、四年間もパートナーとして働いてきたのに信頼されていない自分が情けないという香をフォローしたのは海坊主でした。
「CITY HUNTER」 23巻 北条司/集英社より引用
マリィーが獠の過去をしったのは、獠の最初のパートナーがマリィーの父親だったからであり、香を信頼していないから話していないのではなく誰にも話していないことを知ります。
真実を知った香は獠のもとに行き、こう告げます。
あたしがあんたの誕生日を作ってあげる、と。
香が示した獠の誕生日は3月26日、それは二人が初めて出会った日。
獠が香から貰ったのは、単に誕生日という表面的なものだけではありません。
今まで誰からも誕生日を祝ってもらえなかった獠。今回のことで、獠は本当の意味でこの世に生を受け、人として受け入れられたと感じたのではないかと思います。
「CITY HUNTER」 23巻 北条司/集英社より引用
誕生日とは、自分が生まれてきたことを喜んで貰える日です。
ゲリラの村で育ち戦闘に明け暮れ、日本に来てからも裏社会で手を汚して生きている獠です。自分がなぜこの世に生まれてきたのかという疑問を抱いてもおかしくありません。
そんな自分が生まれて生きていることを初めて肯定してくれた。
この日こそ獠の止まっていた時間が再び流れ始めた記念すべき日、そんな素敵なエピソードです。
2-6.互いのパートナーの存在が唯一無二であると認識させた、獠と海坊主の命を懸けた戦い
2-5でご紹介したマリィーは獠のアメリカ時代の二代目の相棒であり、初代の相棒は別の男でした。
その、かつての相棒の娘であるソニアが日本にやってきて、海坊主に仕事の依頼をします。
依頼の内容は、「冴羽獠を殺すこと」
「CITY HUNTER」 27巻 北条司/集英社より引用
ソニアの父はかつて相棒だった獠に殺され、父親の仇をうち復讐するためソニアは日本にきたのです。
友人ではあるが好敵手でもある獠と戦うことを海坊主は了承します。
それはプロとしてのプライドであると同時に、獠と対等に戦うことのできる最後の機会だったからです。
なぜなら海坊主は、かつての古傷がもとで視力が弱っており失明寸前まで状態は悪化していたのです。
「CITY HUNTER」 27巻 北条司/集英社より引用
香が決めた獠の誕生日に海坊主はソニアの依頼を受け、決闘はその5日後の3月31日に決まりました。決闘の場所は、獠の前のパートナーであり香の兄でもある槇村が眠る墓地です。
二人の死闘が繰り広げられる中、ソニアは美樹から父親の死の真実を知らされます。
ソニアの父は獠に裏切られて殺されたのではなく、ソニアの命を守るため獠に殺されなくてはならなかったのです。
「CITY HUNTER」 28巻 北条司/集英社より引用
真実を知ったソニアは二人の決闘を止めようとしますが、獠も海坊主もプロとして、いや男の意地とプライドにかけて決闘を止めることなど出来ません。
美樹でも香でも止めることの出来ない死闘は、まるで死んだ槇村が計らってくれたかのように痛み分けで終わりました。
この二人の決闘は、それぞれに自分のパートナーの大切さを教えてくれました。
- 海坊主がいなければ自分もこの世にいないと言う美樹
- 自分が存在することが獠の弱点になると思うけれど、今の自分だからこそ獠のパートナーだと理解する香
「CITY HUNTER」 28巻 北条司/集英社より引用
決闘を終えた3月31日は香の誕生日でした。
二人とも散々に思える誕生日でしたが、プレゼントは互いに「生きて一緒に誕生日を過ごしてくれること」が良いと言います。
「CITY HUNTER」 28巻 北条司/集英社より引用
それは互いの存在が唯一無二であると認めること。
獠と海坊主の決闘が、「雨降って地固まる」になったエピソードでした。
2-7.獠と香が真のパートナーとなった日。ミック・エンジェルとの戦い
物語も後半になってくると、獠のアメリカ時代の過去の話、そしてそれに伴う獠と香との関係について焦点を当てたエピソードが増えていきます。
このエピソードもまさにその通り、獠がアメリカにいた時代の親友であり同業の凄腕スイーパー、ミック・エンジェルが来日することで始まります。
ミックは獠に勝るとも劣らぬ腕を持ち、尚且つ獠と同じくらい無類の女好きということで獠とは気の合う友人です。
そんなミックが日本にやって来たのは当然、依頼を請け負ってのことであり、依頼の内容は「冴羽獠を消すこと」
「CITY HUNTER」 32巻 北条司/集英社より引用
しかしミックには依頼対象と戦う前に必ず行う“ある儀式”があります。
それはなんと、ターゲットの男に恋人がいた場合、必ずその恋人を自分のモノにする、というものでした。
獠がターゲットですからミックの狙いは香ということになりますが、香と獠の結びつきは強くそう簡単に香を振り向かせることなど出来ません。
そこでミックは香を精神的に揺さぶります。
香の持っている銃の照準が滅茶苦茶であることを見抜き、獠は香のことを本当のパートナーと考えていないのではないかと、香の心が獠から離れるような行動を取ります。
「CITY HUNTER」 32巻 北条司/集英社より引用
一方で獠も、どうするのが良いことなのか思い悩みます。
「CITY HUNTER」 32巻 北条司/集英社より引用
悩み迷う香でしたが、やがてミックと戦うことを決意します。
真のパートナーが危機にさらされたのなら助けるのは当然のことだと、獠に認められるために香はミックと戦うことを決めたのです。
しかし獠と並ぶ凄腕のミックに香が敵うはずもなく、ミックに組み伏されてしまいます。
そこに、ミックと戦うため獠が姿を現します。獠は戦いに巻き込まれないよう香にこの場から離れるように言いますが、香は頑としてその場に残ろうとします。
そして、生も死も共にするのがパートナーだと、もしも獠が負けたら自分も死ぬと言うのです。
「CITY HUNTER」 32巻 北条司/集英社より引用
決して切ることのできない二人の強い結びつきを理解したミックは、香を自分のモノに出来ない時点で負けを認めるのでした。
戦いの後、獠は自分の思いを香に告げました。
香に当たらない銃を渡しているのは香が人を殺さないようにするため、それでいながら危険な世界にいる自分の横にいつまでも居させているという矛盾に思い悩んでいたこと。
加えて香は、相棒だった槇村の最愛の妹なのですから。
それでも獠は最後に、香に照準を調整した銃を渡します。
それは、香のことを真のパートナーと認めたということであり、この世界でともに生きていくことを決意した証です。
「CITY HUNTER」 32巻 北条司/集英社より引用
親友の妹を、完全に表の世界に戻れないよう引き込むことを決めた、獠にとっては何よりも重い決断のはずです。
獠と香、二人が互いを思う強さを最も感じさせてくれるエピソードであり、二人が本当の意味で真のパートナーとなった話なのです。
2-8.本当の意味で獠が過去と決別し香と今を生きていくことを示した、育ての親・海原神との戦い
2-7で獠を殺しにきたミックは、仕事の依頼人は獠の“おやじ”だと伝えて帰っていきます。
「CITY HUNTER」 33巻 北条司/集英社より引用
獠の“おやじ”とは、獠がゲリラの村で生きていた頃の育ての親、海原神です。
当時、政府軍に圧倒され敗色濃厚となった時、ゲリラ軍は狂気の兵士を作り出す麻薬エンジェル・ダストを一人の兵士に投与して政府軍の小隊を全滅させることに成功します。
そのエンジェル・ダストを投与された兵士こそが獠だったのです。
獠の相棒であり、香の最愛の兄である槇村の命を奪ったエンジェル・ダストとその麻薬組織ユニオン・テオーペが、二人の前に再び姿を現したのです。
「CITY HUNTER」 33巻 北条司/集英社より引用
巨大な組織となったユニオン、その仲間に引き込むために、かつて部下だった獠のもとに海原はやってきます。
当然、獠は海原の傘下に入るつもりなどありませんし、エンジェル・ダストを広げようとしている組織をそのままにするつもりなどありません。
獠、香、海坊主の三人は海原が待ち受ける巨大船へと乗り込みます。
船内で三人は分断されたりしつつもどうにか海原のもとへとたどり着きますが、そこに待っていたのはエンジェル・ダストを投与されたミックでした。
「CITY HUNTER」 33巻 北条司/集英社より引用
薬で超人的な力を与えられ、もはや人の心など残っていないように見えるミックでしたが、香の命がけの行動により最悪の事態はどうにか回避します。
そしてとうとう獠は育ての親であり、戦場での生き残り方や戦い方を教えてくれた敬愛する師でもある海原と対決します。
二人の戦いは一瞬。
紙一重の差で獠は海原を倒すことが出来ましたが、船に仕組まれた時限爆弾に解除装置はなく、爆発が間近に迫ります。
逃げ出そうとする一行ですが、獠と香たちの間を遮っている防弾ガラスの壁を開けることが出来ず、獠だけが取り残されます。
獠だけを残すなんてできない、自分も残ると言う香に獠は言います。
必ず生きて帰り香を悲しませることなんてしないから、香もまた逃げ遅れて自分を悲しませるようなことをするな、と。
そうして二人はガラス越しに約束のキスを交わしたのです。
「CITY HUNTER」 34巻 北条司/集英社より引用
飛行機が墜落し、ゲリラの村で生き残り兵士として育てられ、エンジェル・ダストを投与されたという、呪われたような幼少時。
その時、海原は間違いなく獠のことを息子だと思い、彼なりの愛情をもっていたのだとは思います。
それでも獠には現在があり、香が隣います。
呪われた過去と決別し、今のパートナーと新しい人生を進んでいくことを、敬愛した師であり父親でもある男に告げたエピソードでした。
2-9.「永遠にあなたのもの」ずっと二人で生きていくことを誓う二人
海坊主と美樹が結婚することになりました!
スイーパーという裏稼業をやっている中で結婚するのは大変な決意ですが、美樹も結婚という形式にこだわっていたわけではなく、二人にとってのけじめが欲しかったのだと言います。
そして、自分たちの次は香たちの番と香に告げます。
幸せいっぱいの結婚式でしたが、その最中に新婦の美樹が何者かに狙撃されてしまいます。
「CITY HUNTER」 35巻 北条司/集英社より引用
獠と海坊主の二人は敵を追いかけますが、敵の真の狙いはシティーハンターである獠で、獠と海坊主をおびき寄せている間に香が人質としてさらわれてしまいます。
香を人質にとられて手も足も出せないかに見える獠ですが、その程度の逆境で諦めるような男ではありません。
何より獠は、愛する者のために何がなんでも生き延びることこそが自分の愛し方なのだからと、自分の死を香の目の前で見せることなど絶対にしないと言いきります。
「CITY HUNTER」 35巻 北条司/集英社より引用
言葉通りに相手を倒して助け出した香の襟もとには、美樹が投げたブーケの切れ端がくっついていました。
それは、ホトトギスの花。
ホトトギスの花言葉は
永遠にあなたのもの
「CITY HUNTER」 35巻 北条司/集英社より引用
ホトトギスの花を手に、香は獠の胸に抱かれました。
獠の愛を、香の愛を、最後に全て示してくれたラストエピソードです。
「CITY HUNTER」 35巻 北条司/集英社より引用
その後も続く二人の変わらぬ日常は、この先も離れずに一緒にいることを見せてくれます。
明確に言葉にして伝えたわけではなくても、二人には分かりあえる。
そう思わせてくれるラストに相応しいエピソードでした。
3.まとめ
以上、『シティーハンター』の登場人物達の絆の深さを知る名エピソード9選でした。
獠と香の関係というのは、本作において最初から最後まで通して描かれていたテーマだと思います。
- ただの男と女ではない
- 仕事の相棒というだけではない
こうして読み返してみると、どこか心の奥底、言うなれば魂で繋がっているということを改めて感じさせてくれます。
こんな、文字通り生死を共にする一生のパートナーに出会えた獠と香はとんでもない幸せ者だと思います。
今もなお人気を誇る作品、かつて夢中になった方も今一度、是非、手に取ってみて下さい!
以上、マンガフルライターの神門でした。
※『シティーハンター』は以下で入手できます!
CITY HUNTER シティハンター (1-35巻 全巻)
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