みなさんこんにちは。
学生時代、多分オタクじゃ無い人よりはオタクだけど、オタクの人から見たらオタクってほどじゃない、そんなところに属していたマンガフルライターの神門です。
でも、そういう人って結構多いと思います。
今回ご紹介する「タイムスリップオタガール」は、どっぷりオタクだった人でも、ちょっとオタクだった人でも、とにかく1990年代にちょっとでも「オタク」要素のある学生生活を過ごした方なら絶対に楽しめる作品です。
うーん、そこまでオタクじゃなかったんだけど……
という人でも大丈夫です!
少しでも「オタク」的な学生生活を送った人、あるいはオタク趣味に興味があったけれどあまり出来なかった人、とにかく少しでも「オタク」的な要素を抱えている人なら問題ありません。
- 自分で漫画や物語を作ろうと思ったり、考えたりしたことがある!
- アニメ雑誌なんかを読んだことがある!
- とにかく好きな推しがある!
この辺のワードに引っかかった人は是非、手に取ってみて下さい。
後悔はさせません!
目次
1.「タイムスリップオタガール」ってどんな漫画?
著者 | 佐々木陽子 |
出版社 | ほるぷ出版 |
掲載雑誌 | COMICポラリス |
掲載期間 | 2016年5月~ |
単行本巻数 | 既刊5巻(2020年4月時点) |
ジャンル | タイムスリップした腐女子の人生やり直しコメディ |
「タイムスリップオタガール」は、佐々木陽子さんがウェブコミック配信サイト・COMICポラリスで連載している作品です。
佐々木陽子さんにとっては記念すべきデビュー作、でもあります。
どんな作品かというと、タイトル通り、主人公であるオタク女子・城之内はとこがタイムスリップして過去に戻り、オタク人生をやり直す!
とまあ、そういう作品です。
タイムスリップものといえば、タイムパラドックスであったり、歴史の再構築であったり、なんでタイムスリップしたのかとか、そういった要素がよくありますが、本作ではそういう難しいことはありません。
体は13歳ながら中身は30歳でオタクのアラサーが、二度目の人生を明るく全力で突っ走ります。
タイムスリップした時代が1996年ということで、1990年代に青春時代を過ごした人ならば共感し、主人公に感情移入して応援したくなっちゃう、そんな作品です。
2、「タイムスリップオタガール」のあらすじ
主人公である城之内はとこ(30歳)は、いわゆる腐女子のオタクです。
どれくらいのオタクかといえば、
- お目当てのサークルの同人誌を購入するため上京してコミュケに参戦
- ついでに2.5次元ミュージカルも楽しみ
- 言葉の語尾には「~ござる」を付ける
というくらいのオタクです。
「タイムスリップオタガール」 1巻 佐々木陽子/ほるぷ出版 より引用
更に死を目前にしたときも、
- せっかく購入した戦利品はどうなるよ!?
- 遺品整理でBL同人誌の山を見られちゃうの!?
- 今抱えもっている同人誌を公共の場にさらすわけにはいかん!
と考えてしまうくらい分かりやすいオタクです。
「タイムスリップオタガール」 1巻 佐々木陽子/ほるぷ出版 より引用
そんなはとこは夏の連休に大好きなサークルの新刊同人誌を購入するため東京にやってきます。
ついでに2.5次元ミュージカルを鑑賞し、大量の戦利品(同人誌)を抱えて実家に戻るため駅のホームで並んでいたところ、後ろから押されてホームから転落してしまいます。
電車がホームに入ってくる中、「あ、これ死んだ」と思ったはとこでしたが、気が付くとミュージカルの行われる劇場の前にいました。
そう、タイムスリップしていたのです!
しかし、はとこは過去に戻ってもまたドジをして同様にタイムスリップを繰り返し、とうとう13歳の中学時代にまでタイムスリップしてしまいました。
「タイムスリップオタガール」 1巻 佐々木陽子/ほるぷ出版 より引用
そうして、体はぴちぴちの13歳、中身はアラサーの腐女子が、やたらポジティブな「オタク学生生活やりなおし人生」を突っ走っていきます。
- 当時はまだ元気に生きていた大好きなお婆ちゃんに涙したり
- 自分の黒歴史を思い出して身もだえしたり
- 年賀状のやり取りだけになってしまっていた大事な友達とオタク活動をやり直したり
自分が過去に戻ったらこんなことしたい、絶対に同じようなことを思う、そう思えるような二度目の人生を進めてくれるはとこの姿は、多くの大人の目に眩しく映ること間違いありません!
3.1990年代に青春を捧げたオタクが絶対に共感する!「タイムスリップオタガール」の魅力
ここからは「タイムスリップオタガール」の魅力をお伝えします。
特に、1990年代にちょっとでもオタク要素を含んだ青春時代を過ごした方なら、絶対に当時の自分自身の姿を思い出し、重ねてしまうこと受けあいです。
3-1 自分自身にブーメランとなって突き刺さる“オタクあるあるネタ”
「タイムスリップオタガール」の魅力の一つ、それはオタクだったら頷かずにはいられない、“オタクあるあるネタ”です。
え、それだけ?
そう思うことなかれ。
ただのオタクあるあるネタではありません、今オタクの人というのもありますが、1990年代に学生時代を過ごしたオタクさんが、
- 自分もそう思ったことある!
- 泣きたいほどに同じ行動をした!
- うわ、古傷を抉られる!
なんて、過去を思い出すあるあるネタなのです。
例えばコレ、
「タイムスリップオタガール」 1巻 佐々木陽子/ほるぷ出版 より引用
私の考えた○○シリーズ!
これはもう漫画にしろ小説にしろ創作を志した人なら必ずある黒歴史のはずです(断言)
というか、オタク要素を持った人は必ず自分で漫画を描きたい、作品を作りたいと思ったはずです。
そして大抵は、自分にとって最高に面白い設定、キャラクター、シナリオで、他の人が読んでも絶対に面白いだろう! などと全く根拠のないものを力強く自信を持って作っています。
更に実際にはとこのネタ帳に描かれているイラストの下手さ加減、書かれているネタや自分自身のコメントの痛さ、同じ方向ばかり向いているキャラ、等々、読んで笑いながらもまるでブーメランのごとく自分に突き刺さってきます。
更に、隠していたグッズ類!
「タイムスリップオタガール」 1巻 佐々木陽子/ほるぷ出版 より引用
カードに限りませんが、必ず隠していたグッズ的なものがあったと思います。
ただ単に好きなアニメのグッズであれば隠す必要はありません。当時だって、下敷きや定規など文房具で普段使いできるものはありました。
じゃあなんで隠すかといえば、
- ちょっとエッチ
- イケメン・美少女キャラが前面に押し出されている
- 単純に無駄遣いと思われる
画的に恥ずかしいのは非常に分かりやすいですが、分かりづらいのは、興味がない人にとってはただの無駄遣いにしか見えないこと。
そりゃあそうです。だって、
- 下敷きが何十枚もあってどうする?
- カードとか実際、何に使う?
普通にそう思いますし、今思えば、なんでこんなの買っていたんだ? というのも多数。
大人になって思い返せば冷静に考えられても、当時は好きな作品、キャラクターのグッズは何でも欲しい!
本当、使いもしないのに、なんであんなに買ったのか・・・・それは、全ては愛と情熱でした。
ただとにかく、好きな作品や好きなキャラクターに純粋に愛情を注いでいて、買った後どうするかとか細かいことはいちいち考えるな、感じるんだ! そういう姿勢だったと思います。
皆さんも実家の部屋の奥を探せば、そのようなものがあるかもしれん! そんな方は多いかと。
是非、帰省の際には家探しをしてみて下さい!
とまあ、こんな感じで”オタクあるあるネタ”が作品内に散りばめられていて、自分自身にグサグサと跳ね返ってくるのを感じながらも懐かしさとともに楽しめるのです。
痛いけれど、M的に!
3-2 もし自分が10代のオタク時代に戻れたらこうなりたかった!と考える“人生を追体験”
中学生に戻ったはとこは、オタク人生をやり直します。
それもただやり直すだけじゃありません。
オタクであることを否定せず、過去に戻ったことで所持していたグッズ類を喪失しても後ろ向きにならず、「中学生の今」だからこそ出来る事に全力を注ぎこんでいきます。
当時はネットなんて発達していませんから、SNSもまとめサイトも、動画投稿サイトもpixivも何もありません。
でも、時間はあります。
タイムスリップものの分類では「人生やり直し」に入る本作では、はとこのオタクやり直し人生が実に魅力的に描かれています。
例えば、マンガを描きたいと思い、ノートにネームをひたすら書きまくる。
書くのはもちろん、イケメンが沢山出てくる漫画(BL)です。
しかもそのことが他の人にばれた時も、実際に中学生なら精神的なダメージも半端なく大きいでしょうが、精神年齢30のはとこは開き直って堂々と宣言しちゃうくらいです。
そうして漫画を描く夢を他の人に語り、その夢を応援してもらえることの嬉しさを、はとこは知ります。
「タイムスリップオタガール」 2巻 佐々木陽子/ほるぷ出版 より引用
隠れてこそこそと一人で活動するのではなく、誰かがみてくれているというのはそれだけで力になります。
自分の漫画だけではなく、オタク友達と一緒に同人誌作成の活動にも力を入れます。
30歳の記憶があれば、同人誌制作の知識も頭の中にありますから、皆に声をかけて同人誌作りに励みます。
同じ趣味を持つ仲の良い友人と共に同人活動をする、これが楽しくないわけがありません。
「タイムスリップオタガール」 5巻 佐々木陽子/ほるぷ出版 より引用
更にやり直しはオタク活動だけではありません。
アラサーの精神を持つはとこにとって、中学生の男子など「男」と認識するようなものではありません。
結果どうなるかというと、男子の友達が出来て普通に話が出来る状態になります。
それは傍から見れば男子と仲良くしているリア充な女の子!
「タイムスリップオタガール」 2巻 佐々木陽子/ほるぷ出版 より引用
はとこにとってはそんなつもりはありませんが、この年代の男子にとって女の子と接するのは気恥ずかしいもの。
ちょっと一緒にいたり話したりするだけで冷やかしの声が出たりしますが、心がアラサーのはとこには全く関係なし、オタクの女友達と、そして男子とも話す充実した中学生ライフを過ごすことになり、こんな学生生活を送れたら羨ましい! そう思える姿を見せつけてくれます。
決して嫌味になることがないのは、はとこが凄く素直で真っ直ぐだからです。
- 亡くなったお婆ちゃんの体のことを考え、率先してお手伝いをしたり。
- 卒業以来疎遠になっていた親友と心を開いて話し、お互いに思っていることを伝え合い。
とにかく、もし自分が中学時代に戻れたら後悔していたあのことをやり直そう!
そう思えることをはとこは実現してくれるのです!
だから読んでいて応援したくなる、そんな場面が目白押しの作品です。
3-3 自分自身の青春時代の想い出が鮮明に蘇ってくる1990年代の“オタク活動”
はとこが90年代にタイムスリップしたことに伴い、必然的に90年代のオタク活動を追体験することになります。
何せ当時はネットもまだ未成熟ですから、今みたいにネット上で多くの人と交流して、自分の創作活動を発表することなんで出来ませんでした。
紙(本)と郵便が基本の世界です。
ビデオに録画した沢山のアニメ作品や、人気声優の情報などが掲載されているアニメ雑誌
「タイムスリップオタガール」 1巻 佐々木陽子/ほるぷ出版 より引用
さらには同人誌紹介雑誌とか。
「タイムスリップオタガール」 3巻 佐々木陽子/ほるぷ出版 より引用
ネットで拾えないから、とにかく紙媒体を漁る!
当時はそうでした!
- アニメ雑誌といえば、「アニメージュ」、「アニメディア」「ニュータイプ」の御三家
- 更にディープかつ独自の方面を狙っていた「ファンロード」、「OUT」
- OVA専門の「アニメV」
- ラノベ系なら「ドラゴンマガジン」
時代的に残念ながら廃刊となってしまった雑誌もありますが、中高生くらいの頃オタク活動に興味があれば、どれか一つは手に取って目にしたことがあると思います。
蘇ってくる想い出!
- アニメージュは徳間だったからジブリ系に強かったとか、キャラ人気投票に毎月一喜一憂したとか。
- アニメディアはライトに色々な方面の作品情報が楽しめるとか。
- ニュータイプは「FSS」だよないやいや「精霊使い」だろとか、角川だからガンダムとかロボット系に強かったとか。
ネットがないからこそ、雑誌の隅から隅まで目を走らせ、色々な情報を吸い上げていました。
もちろんそれだけではありません。
実名はさすがに出すわけにはいかずに伏せ字ですが、当時人気だった漫画、アニメ作品のタイトル名が作品内の色々なところで出てきます。
そのタイトル名を目にするだけで、当時の記憶が蘇ってくる!
別に特別オタク活動をしていなかった人でも、見れば分かるタイトルも沢山あります。
「タイムスリップオタガール」 1巻 佐々木陽子/ほるぷ出版 より引用
- そういえばこの頃、これが流行っていた!
- 自分もこの作品好きだった!
- また読みたくなってきた!
そんな思いが溢れ出すこと間違いありません!
3-4 オタク活動を肯定してくれる
自分が30代、40代と大人になっていくと、自分の好きなことは好きだと素直に言えたり表現できたりするようになることも多いです。
それは時代が変わって価値観が多様化され、オタクが世間に、世界に認められていることがあります。
ですがそれ以上に、「気にしなくなる」というのが大きいと思います(笑)
とはいえ、オタクな趣味やオタクな活動に興味があっても、周囲から変な目で見られないか、仲間外れにされないか、変な奴だと思われないかと気にするのは当然のことだと思います。
学校にしても会社にしても閉じられた世界です、特に学校は“スクールカースト”なんて言葉もあるくらいですから、そこで一度貼られたレッテルを剥がすのは容易なことではありません。
作中のはとこも、最初はそうでした。
駅のホームから線路に落ちて死を予感した時、脳裏によぎったのは
”遺品整理で押入れの同人誌の山やPCの中身を見られ、母にBL好きと知られるなんてヤバい”
そういう思いでした。
人に知られたなくない、ということです。
ですが中学時代にタイムスリップして、自分の好きなことを改めて理解し、やり直す時間が出来るようになったはとこは考え方も変わっていきます。
ある日、クラスメイトの男子に男の裸が描かれているBL妄想ノートを見られて、「キモい」といわれてしまいます。
でもはとこは、「自分は男の裸を描くのが好きだ」と笑顔で言いきります。
だって、好きなんだから!
誰に何を言われたところで、変えることのできないものだから、好きなことは仕方ないのだと。
「タイムスリップオタガール」 3巻 佐々木陽子/ほるぷ出版 より引用
ただ一方的に言うのではなく、「キモい」と思われることも仕方ないと受け入れたうえで、自分は好きなんだから仕方ないと、全てを肯定します。
BLに限った話ではありません。
魔法少女ものであったり、百合であったり、グロであったり、人によっては気持ち悪いと思うものでも好きなんですから、しょうがないんです。
タイムスリップした過去で、はとこはオタクであることを隠そうとせず、自分の好きなお薦めアニメなどを嬉々として布教しようとします。
「タイムスリップオタガール」 5巻 佐々木陽子/ほるぷ出版 より引用
自分がかつて出来なかったことを、はとこがしてくれるのです。
自分の好きなモノを他人に否定されて落ち込むこともあるかもしれません。
他の人がどう思うかは自分ではどうにもできないことであり、仕方ありません。
でも、好きなものを好きでいて良いと、自分の気持ちまで否定してなくて良いのだと、この作品は肯定してくれるのです。
皆さんも自分の好きなことを否定されたときは是非、この作品を読んで自分自身を肯定してあげてください!
4.まとめ
ということで、「タイムスリップオタガール」の魅力を紹介いたしました。
- ブーメランで自分に刺さる「あるある」ネタ
- 羨ましくなる人生やり直し体験
- 懐かしい90年代にのめり込んでいたこと
などなど、読んでいて本当に過去を思い出すこと!
1990年代に青春時代を過ごしたオタクの課題図書として是非、手にとることをお薦めします!
アプリでも読めますので、良ければこちらからどうぞ!
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