みなさんこんにちは、【今週の1冊】として毎週、直近に読んだ作品(時には古い作品も!)をご紹介するマンガフルライターの神門です。
皆さんが作品を購入するご参考にしていただければと思います。
今回ご紹介するのは
『エリオと電気人形』
です。
物語の舞台は、人類とAIとの間で100年戦争が行われ、その戦争が終結してから10年後の世界です。
集合知AI「メティス」はネットワークを介して自己増殖を繰り返し、人類のインフラや生産設備を乗っ取っていきます。
人類はそのようなAIに対して勝利するため、電気を放棄しました。
ネットワークとそれを支える電力供給を断つことこそが、AIに勝利するための手段だったからです。
そしてその代わりに人類は電気を失い、かわりに発達したのが蒸気の力です。
そう、スチームパンクの世界ですね!
主人公のエリオは体内から電気を生成することができる特殊な体をしており、そのため実験体として囚われていました。
そしてエリオの相棒・アンジュは戦争のために造られたソルディロイド、即ち機械人間です。
アンジュは戦争が終結した時に囚われていたエリオを見つけ、エリオから電力をもらう代わりにエリオを育て守っていました。
10年間、二人だけで陸の孤島ともいえる場所で過ごしてきましたが、アンジュはエリオに自分の目で人間の世界を見るべきだと言います。
電気を失いながらも再び復興を進める人間の世界へと旅するエリオ(人間)とアンジュ(機械)を描いた物語です。
「エリオと電気人形」 1巻 島崎無印、黒イ森/集英社 より引用
人間と機械がバディを組む作品は今までにも色々とあったかと思います。
個人的に思い出すのは
- アイの物語(山本弘)
- BEATLESS(長谷敏司)
- 鋼鉄都市(アイザック・アシモフ)
もちろん、他にも沢山あるんですけれどね。
そういう人間×機械のコンビで一つ重要なのは、なぜそのお互いじゃないと駄目なのか、という点があるかと思います。
理由などなく、ご主人として設定されたから、ってのも勿論ありだとは思いますが。
本作においてはエリオとアンジュ、それぞれの依存関係が上手く設定されています。
人類とAIの百年戦争で人類が勝利したことにより、人類は電気を手放して新たに文化を創り出し始めます。
ソルディロイドのアンジュは当然ながら電気を定期的に補充しないと活動できなくなりますが、電気が失われてしまった世界です。
そんな中で、エリオだけが秘密裏にアンジュに電気を提供することができます。
一方でエリオは幼いころから特殊体質のため囚われており、知識も経験も不足していて生きていくためにはアンジュの力が必要。
また定期的に放電する必要がありますが、電気を生成する体などということは他の人たちに言える世界ではありません。
そんな中でアンジュに電気を供給することでカバーをしている。
お互いがお互いを必要とする理由が明確にある、というのが分かりやすく描かれています。
「エリオと電気人形」 1巻 島崎無印、黒イ森/集英社 より引用
もちろん、ただ電気が必要だから、みたいな無機質な理由だけで一緒にいるわけではありません。
10年も一緒に暮らしている中で、エリオはアンジュのことを素直に大好きになっています。
天真爛漫にアンジュに対して愛情を表現し、言葉でも伝えます。
もちろん、アンジュはロボットで心があるわけではないので冷たい反応しかしてくれないのですが、それがツンとかクーな美少女に見えます。
というか、見た目はそういう美少女ですから。
そして、エリオがアンジュに電気を供給する方法が・・・キス!
別にキスじゃなくてもできるようなのですが、エリオは好んでキスをします。
ちなみにここまで伝えていませんでしたが、エリオは少年っぽい容姿ですがれっきとした女の子。
即ち、少女×ロボット美少女の百合ものでもあるといえるわけですね。
これでまた百合センサーに引っ掛かる人もいることでしょう。
「エリオと電気人形」 1巻 島崎無印、黒イ森/集英社 より引用
一巻ではエリオとアンジュが旅に出て、人の街で人間たちと交流し、少しずつ物事を知っていきます。
- 戦争後、人はどのような生活をしているのか
- 人間と機械の関係はどうなっているのか
- また純粋に、今まで知ることのなかった人の心はどういうものか
旅を続けていく中でエリオは人間として成長し、そして世界の姿が明らかになっていくのでしょう。
アンジュは機械で心がないと言いますが、それでも冗談というか皮肉っぽいことは口にします。
いや、正直なことを口にしているだけなのでしょうが、純粋で爛漫なエリオと対比することでそれがギャグのようにも感じさせられます。
そういうバランスもなかなか絶妙に感じます。
「エリオと電気人形」 1巻 島崎無印、黒イ森/集英社 より引用
スチームパンクなSFとして、冒険・成長ものとして、そして百合モノ(?)として。
色々と先が楽しみな一作です!
本作は、↓ ヤンジャンのアプリで読むことも可能ですので、気になったらまずこちらで確認してみてください!
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