みなさんこんにちは、【今週の1冊】として毎週、直近に読んだ作品(時には古い作品も!)をご紹介するマンガフルライターの神門です。
皆さんが作品を購入するご参考にしていただければと思います。
今回ご紹介するのは
『君と宇宙を歩くために』
です。
2024年のマンガ大賞を受賞したということで、内容をよく知らずに1、2巻を購入しました。
単純に表紙とタイトルだけをみると、宇宙とか宇宙飛行士を憧れる少年の話なのかな、とか思っていました。
ところが実際に読んでみると全然違いましたね。
作者さんもあとがきで書いていますが、ヒューマンドラマです。
というか令和の時代に(時代は関係ないかもですが)、なんというかこう、ベタっと人の心を温かくさせてくれるお話を描いております。
主人公は二人。
小林大和は勉強もバイトもうまいこといかず、いらいらとした日々を送るヤンキー風の高校二年生。
ある日小林のクラスに転入生がやってくる。
宇野啓介と名乗る少年は、馬鹿でかい声で自己紹介をし、自分がしなくてはならないことを一つ一つノートにメモしている。
何かあったらそのノートを見ることで行動の指針にしている。
記憶することは得意だけれど、同時に何かをしたり臨機応変に対応することが苦手だから。
「君と宇宙を歩くために」 1巻 泥ノ田犬彦/講談社 より引用
他の多くの人とはちょっと違う。
だから、他の人と同じように動くためには工夫が必要。
そのメモを、宇宙飛行士の宇宙空間での命綱である「テザー」に例えている。
宇野にとっては日常生活そのものが、宇宙で行動しているのと同じような難易度なのかもしれません。
そんな宇野の姿を見せられ、小林は心を動かされます。
自分がバイトでうまくいかないのは、自分が出来ないことが恥ずかしい、何か聞いて的外れだったら嫌だ、怒られたくない
そういう心理的な部分が大きく、そんなすぐに出来ないし分からない、うまく出来ないのは自分が悪いんじゃない
どうせ自分は馬鹿だから頑張ったって無駄。
そう思っちゃうから分からないことを質問しようとか、復習して覚えようとしなかった。
だけど宇野の姿を見て、覚えられないことは一つずつメモをとり、メモにそって行動して出来るようになる。
「君と宇宙を歩くために」 1巻 泥ノ田犬彦/講談社 より引用
当たり前といえば当たり前のことなんだろうけれど、当たり前の定義は人それぞれ。
バイト先の人も怒っているわけではなく、その人にとっての「普通」が小林の「普通」とは異なりその違いからくるものだったり。
きちんと自分がどう感じているか、どうしたいのかを伝えれば、お互いのちょっとした齟齬みたいなものも分かってきます。
人は言葉があるのだから、伝えて、そしてそのことを理解し、相手のことを考えれば歩み寄ることができるのです。
でも宇野のことを変な目で見たりせず、一人の人間として、友人として凄いと思い、倣おうとする小林もまた結構凄いですけどね。
一方で宇野も小林に影響をうけます。
作中内ではあえて単語を出していませんが、恐らく宇野はいわゆる発達障害に近いものなのだと思います。
今までの学校でもそれが問題で周囲とうまくできず、友人関係を築けていなかった模様。
自分が他の人と違うことを理解し、他の人に迷惑をかけないよう、メモにそった行動を心掛ける。
だけど、そこにヒビを入れてくれたのが小林。
友人には迷惑をかけても良い、本当に迷惑ならそう言うから。
困ったことがあるなら相談しろ。
「君と宇宙を歩くために」 1巻 泥ノ田犬彦/講談社 より引用
これも小林にとってはごく当たり前のことですが、恐らく宇野からしてみればそんなこと言ってくれる級友などいなかったのでしょう。
学校生活は大変だけれど、それでも小林と過ごす日常は楽しいと思えるほどになっていきます。
そんな宇野の趣味というか好きなことは、宇宙。
小林と宇野は天文部に入部し、また新たな人と関わっていきます。
そうした学園生活、バイト、部活、といったものを通して小林と宇野の成長や、人との触れあいや関係性の変化を描いていきます。
年を取ってくると、こういうヒューマン系の作品には特に弱くなってきますね(笑)
作者の泥ノ田先生は新人で本作がデビュー作とのこと。
絵に関してはまだ色々と乱れたりしているところもありますが、味のある絵柄で見づらくはありません。
新人らしい瑞々しさで(年齢は知らないのですが)、このまま突っ走ってほしいです。
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