みなさんこんにちは、マンガフルライターの神門です。
私はゲームが好きで(上手くはない)、いわゆる対戦格闘ゲームも一時期ハマりました。
「ストⅡ」、「サムスピ」、「ワーヒー」、「バーチャ」、「DOA」、等々、中でも最もハマったのが「バーチャファイター」シリーズで、当時はパイ使いとして名をはせたものです(嘘です)
そんな対戦格闘ゲームを名門女子学院のお嬢様が!?
という、“お嬢様学校×格ゲー”の異色のコラボレーション漫画が
『対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』
です。
今回はこの『対ありでした。』について、どんな作品でどんな魅力があるのかをご紹介いたします!
目次
1、『対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』ってどんな作品?
著者 | 江島 絵里 |
出版社 | KADOKAWA |
掲載雑誌 | 月刊コミックフラッパー |
掲載期間 | 2020年1月~ |
単行本巻数 | 既刊3巻(2021年11月時点) |
ジャンル | コメディ、百合 |
『対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』は、江島絵里先生が月刊コミックフラッパーで連載している、格闘ゲームのプレイを題材にしたコメディ作品です。
主人公の深月綾(みつき あや)は、お嬢さま学校の黒美女子学院に入学した後、“白百合様”と呼ばれて女子生徒達の注目を集める夜絵美緒(よるえ みお)が、誰もいない教室で対戦格闘ゲームに興じているところを見てしまいます。
実は綾自身も格闘ゲーマーであり、そのことを美緒に見破られて対戦することに。
美緒との対戦を通して、一度は冷めて離れてしまっていた対戦格闘ゲームへの熱を思い出した綾は、厳しい学校生活の中でどうにかこうにか格闘ゲームをプレイする方法を模索します。
そうして美緒や、その後に知り合う先輩達とともに、再び格闘ゲームにのめり込んでいくことになります。
なぜ、そこまでして格闘ゲームをプレイするのか?
その疑問に対する答えは、作品内にある(はず)!
なお、タイトルの“対ありでした。”とは、対戦格闘ゲームで対戦終了後、対戦者同士が相手に敬意を込めて「対戦ありがとうございました」という挨拶を省略したものです。
どんなに熱くなって激しい戦いを繰り広げても、対戦が終了したらノーサイド。
全ての対戦相手に対する感謝を込めて終了するのです。
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 1巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
2021年11月時点で単行本は3巻までの発売ですが、すでにアニメ化も決定しています。
今後の動向が楽しみな一作です。
2、お嬢様学校で格闘ゲームに興じる女子高校生4人をご紹介
まず本作を彩る、格闘ゲームに興じる魅力的な女子高校生4人をご紹介します。
2-1 深月 綾(みつき あや):ツッコミ(暴言)のキレ味抜群!
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 1巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
この作品の主人公の一人です。
お嬢さま学校である黒美女子学院に入学しますが、本人は袋ラーメンを好む一般庶民であり、お嬢さまに憧れて高等部から転入しました。
実は小学生の頃から男子に交じって格闘ゲームに熱中してきた重度の格闘ゲーマーですが、それを封印して黒美に入学しました。
トレードマークは黒く長い髪に、少し吊り上がった目。
美少女に弱く、美緒の涙には逆らえません。
そんな綾の魅力はなんといってもツッコミ力でしょう。
元が一般庶民だけに(?)、やや汚い言葉遣いを内心で、あるいは声に出してのツッコミ(時にツッコミを超えた暴言)が、お嬢さま学校にあって非常に心地よいです。
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 1巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
2-2 夜絵 美緒(よるえ みお):格ゲーのために生き、格ゲーのために泣く女
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 1巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
綾とともに作品の主人公の一人です。
高等部からの転入組ですが、その美貌と全身より放たれるオーラから、“白百合さま”と呼ばれ他の生徒から尊敬される存在となっています。
が、本人はただの格闘ゲーム廃人のコミュ障で、変に噂されるせいで友達もできないボッチになっているだけです。
トレードマークはふわふわした髪の毛に、右目の下に一つ左目の下に二つある泣き黒子。
ただひたすらに格闘ゲームに打ち込み、格闘ゲームができなくなると手が震えて嘔吐する禁断症状が出てしまう重度の格ゲージャンキー。
また格闘ゲームのことになるとすぐに泣いてしまうなど、文字通り格闘ゲームに全身全霊を注いでいます。
先のことなど考えない、ただ、“今”の目の前の勝負をしたい、勝ちたい、という思いだけを強く持っており、そんな美緒が放つエネルギーのこもった言葉は読者の心も打つこと間違いありません。
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 1巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
2-3 犬井 夕(いぬい ゆう):ほんわかとした癒し系バランサー
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 3巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
綾たちの先輩にあたり、寮では寮務委員を務めています。
綾たちがこっそりと隠れて格闘ゲームしようとしているところを見つけますが、実は夕も実家の弟たちと一緒に格闘ゲームをプレイしていた格闘ゲーム好き。
寮務委員ということを活かして寮内の空き部屋を使用し、綾と美緒、そして珠樹とともに格闘ゲームの鍛錬をするようになります。
トレードマークはツインテール。
穏やかで柔らかい雰囲気の、メンバー内の潤滑油的存在です。
2-4 一ノ瀬 珠樹(いちのせ たまき):真面目なお嬢さまだけど格ゲーマー
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 2巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
夕と同様に綾たちの先輩で寮務委員を務めています。
綾たちが隠れて格闘ゲームをプレイしようとしているところを見つけて容赦なく処分を下そうとする珠樹ですが、アケコン(アーケードコントローラ)の一部を目にしただけで格闘ゲームと理解するくらい実は珠樹も格闘ゲーマーでした。
ネットの対戦で心を折られていた珠樹は、綾と美緒に対して、ゲームを教えてもらう代わりに空き部屋の使用を認め、夕とともに4人で格闘ゲームを訓練し始めます。
トレードマークはうねうねしたショートカットの髪。
常に言葉遣いが丁寧で、4人の中で唯一、お嬢さまを感じさせてくれる女の子です。
愛称は“てゃ先輩”です。
3、「なぜお嬢様が格闘ゲームを?」ではなく、「なぜお嬢様学校で格闘ゲームを?」のコンセプトを理解する
作品タイトルが「お嬢さまは格闘ゲームなんてしない」ということもあり、作品コンセプトが
“なんでお嬢さまが格闘ゲームを?”
と思われがちですが、実はそうではありません。
本作のコンセプトは
“なんでお嬢さま学校で格闘ゲームを?”
です。
そう、あくまでお嬢さま学校で繰り広げられる格闘ゲームを主に描いた作品なのです。
2の登場人物紹介を見ていただければ分かりますが、主人公である綾も美緒も、お嬢さま学校に通っているだけでお嬢さまというわけではありません(実家を見ると美緒はお嬢様な気配もありますが)
必然的に、“お嬢さまが”ということにはならないのです。
そう考えると、作品の見方も変わってきます。
WHY:なぜ、わざわざお嬢さま学校で?(動機)
このWHYにこそ、この作品の馬鹿馬鹿しい魅力(誉め言葉)の根本となるものが詰まっています。
お嬢さま学校に入学した綾と美緒。
全寮制で、“ゲーム持ち込み禁止”が規則であり、ゲーム機を持ち込んで退学になった前例があるくらいの環境です。
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 1巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
なぜ、わざわざそんな環境でリスクを負ってまで格闘ゲームをするのか?
そこには二人それぞれ異なる動機が存在し、この格闘ゲームに対する考え方を見ることで綾と美緒、二人のヒロインの対比が行われます。
3-1 美緒の場合:格闘ゲームをプレイし続けなければ生きていられない生粋の格闘ゲーム馬鹿だから
美緒については簡単です。
ただ単に、格闘ゲームこそが、美緒が生きているという証だからです。
中学時代、格闘ゲームの時間を確保するため一年生一学期の期末テストから三年生に至るまでガン無視し、教師に呼び出されようが親になじられようが、“絶対に勉強しない”という確固たる意志を持っていました。
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 2巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
その結果、当然ながら成績は没落し、親にゲーミングPCを没収されてしまいます。
そしてPC返却の条件に出されたのが、黒美への合格だったのです。
PCを取り返すため血のにじむ思いで勉強した美緒は、全寮制でゲーム禁止のお嬢さま学校と知らずに黒美に合格したのです。
そんな美緒ですから、規則程度で諦めるなどありえません。
自分自身の存在をかけて、例え規則による退学のリスクがあろうとも、格闘ゲームをしないという選択肢はありえないのです。
突き抜けている格ゲー馬鹿。
この美緒の突き抜け具合、イカレ具合が、作品の大きな魅力となっているのです。
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 1巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
3-2 綾の場合:一度は離れた格闘ゲームこそ、自分自身が最高に輝けるものと美緒との対戦により再認識したから
綾は美緒と異なり、そもそも綾が黒美に入学した理由が
“お嬢さまに憧れたから”
です。
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 1巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
綾自身は一般庶民であり、毎日毎日インスタ映えするカフェ飯みたいな学生食堂の食事にメンタルを削られているような、お嬢さまからは縁遠い女の子です。
ではなぜ、“お嬢さまに憧れた”のか?
この根底にも格闘ゲームが存在します。
実は綾も幼少時より格闘ゲームが大好きでのめりこんでいた、生粋の格闘ゲーマーです。
男友達の間に交じって格闘ゲームにはまり、やりこみ、友人たちの間でトーナメントを開催して盛り上がるほどの入れ込みようでした。
まさに全身全霊をかけて打ち込み、間違いなく綾の人生はキラキラと輝いていたと言い切れる時期でした。
しかし学年が上がり中学生になってくると、友人たちは部活や他の趣味に夢中になり始め、格闘ゲームから離れていきます。
いつしか格闘ゲームは、一人ネットで対戦をしてポイントを稼ぐだけの“作業”になっていました。
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 1巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
格闘ゲームとの決別
そのために綾は、格闘ゲームとは最も縁遠いと考えるお嬢さまになるため、黒美に入学したのです。
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 1巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
そして同時に、お嬢さまになれば格闘ゲーム以外で夢中になれる何かが見つけられるのではないか、という思いも持っていました。
そんな綾が黒美に入ってまで格闘ゲームをするのは、最初は美緒という存在が綾の前に現れたからです。
ただ自分の好きなことを全力でやる。
お嬢さま学校である黒美に入学したところで考えを変えることなく、ただひたすらに格闘ゲームに打ち込んでいる美緒はとてつもなく輝いて見えて、それはかつて存在した小学生時代の綾であり、自分が選ばなかった道の先に存在する綾自身でした。
そんな美緒を許容することは、格闘ゲームを諦めた今の綾を否定することに他なりません。
だから綾は今の自分を肯定するため、美緒の心をへし折るため、格闘ゲームに再び手をつけたのです。
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 1巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
しかし美緒との対戦は逆に綾の心に再び格闘ゲームの火を灯すことになりました。
自分が夢中になってキラキラ輝くことができるのはやっぱり格闘ゲームだ!
そう理解した綾は、その後は美緒とともにいかにしてお嬢さま学校で格闘ゲームをプレイするかに執念を燃やすことになるのでした。
要は、結局のところ綾もどうしようもないほどただの格ゲー馬鹿だったということです。
一度は消えた格ゲー熱の火を新たに灯し、且つ、一度はその舞台を降りたことで冷静さも併せ持つ綾に共感を覚える人も多いのではないかと思います。
同じ格闘ゲーム馬鹿でも、ずっと貫き続けてきた美緒と、一度は心が折れて離れたものの戻ってきた綾。
二人の人生の軌跡が交錯し、黒美女子学院というゲーム禁止の地で格闘ゲームに興じていく姿に読者は心うたれ・・・うたれるのか?
4、格闘ゲームに懸ける女の子たちの常軌を逸したテンションの言動が芸術的に美しい
この作品の大きなウリの一つはこれです。
お嬢さま学園に通う身目麗しい女の子たちが、こと格闘ゲームのことになると常軌を逸した行動に走ることです。
熱いとか、入れ込んでいるとか、そういうレベルではありません。
もはや、どこか頭のネジが一本か二本かそれ以上に外れているように見えるのですが、それがお嬢さま学校に通う美少女がやると美しいのだからあら不思議!
こういうのは中途半端にしてもつまらないだけ、美少女とイカレた情熱、そのギャップが激しいほどに魅力は高くなります。
実際のその例を幾つかご紹介します。
4-1 ネット対戦で敗北した相手を全力で煽る美緒
寮にはゲーム機持ち込み禁止、さらに二人部屋のためPCでゲームすることも不可ということで、美緒は学園内の使用されていない教室でこっそり格闘ゲームをプレイしています。
そしてネット対戦で勝利すると、敗北した相手に向けて(おそらく実際には相手に聞こえていないでしょうが)高らかに勝利宣言&煽り!
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 1巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
学園内では“白百合さま”と呼ばれている美緒ですが、本性はコレなのです。
遠慮ない突き抜け方、だけどそれがイイ!!
4-2 隠れて格ゲーをプレイしていたことがバレそうになり教室の窓を突き破って逃げる!
未使用の教室に隠れて対戦していた美緒と綾ですが、物音を立てて用務員の人に見つかりそうになります。
そんな二人が取った決断と行動は、窓を突き破って逃げること!
スマートさもなく、怪我することも厭わないけれど、その見開きページの美しいこと!
青春の1ページにも見えますが、理由を考えると単にゲームしていたのがバレるのを恐れて逃げ出しただけなんですけどね。
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 1巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
しかも、破片がささって流血沙汰です。
でも、それが良い!
4-3 先輩に対する指導も容赦なし! 格ゲーに妥協しない姿勢は覚醒を促す!
実は格闘ゲーマーであることが判明した一ノ瀬珠樹先輩。
珠樹にゲームを教える代わりにプレイする場所を提供してもらう契約を交わした綾ですが、格闘ゲームのことになれば先輩であろうと遠慮しません!
ズバズバと珠樹の心を抉り、
「一生練習しててください」
「わかったらやれ」
と、容赦なく放り投げます。
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 2巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
あまりにも酷い放置っぷりになりますが、なぜか珠樹はそれで変な方向に覚醒しちゃったりもして、そういうキャラクターたちのずれっぷりもまた魅力です。
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 2巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
4-4 格闘ゲームをプレイするためには、母親すらも倒すべき敵!?
前項の3にて、美緒が黒美に通うことになった経緯は簡単にご紹介しました。
しかし美緒も、最初から唯々諾々と従ったわけではありませんでした。
親にプレゼントしてもらったゲーミングPCでひたすら格闘ゲームに明け暮れて成績のがた落ちした中学生時代の美緒。
このままではゲームしかできない人間になると心配した母親は美緒のPCを金庫に隠して施錠してしまいます。
PCを取り戻したいなら選択肢は二つ。
母の指定する高校を受験して合格すること(⇒黒美への入学)、もしくは、母親を倒すこと!
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 2巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
いやなんで!?
というツッコミも野暮というもの。
このノリ、このテンションこそ、本作の魅力の一つです!
4-5 清々しいほどの綾のキレっぷりが癖になる!
美緒がただ純粋に格闘ゲーム廃人なのに対し、綾は格闘ゲームに対する熱と同時に理性というか一般常識を持っているだけに、その理性を超えてキレた時が凄まじいです。
そして、それがまた綾の魅力でもあります。
例えば大会直前にアップデートによるバランス調整が入ったとき、その調整によって出来るようになった技ばかりに固執する美緒に対して苛々が募ってキレてぶっ放した言葉とか、堪りません。
「対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」 3巻/江島絵里 KADOKAWAより引用
この容赦ないキレっぷりが癖になります!
5、まとめ
ということで、『対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』
- どんな作品なのか
- お嬢さまが格闘ゲームをする漫画なの?
- 何が魅力なのか
をざっくりご紹介しました。
2021年11月時点で単行本は3巻までなので、まだまだこれから盛り上がっていく作品です。
格闘ゲーム好きの方も、格闘ゲームに興味ない方も、格闘ゲームから離れて久しい方も、この作品の熱さに触れてみてください!
以上、「え、アーバンチャンピオンって対戦格闘ゲームじゃないの?」とは言わないマンガフルライターの神門でした。
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