はじめまして。アラフォー主婦のマンガタリライター、椿さくらと申します。
今回、紹介するのは
「王様達のヴァイキング」
です。
連載されているのは青年誌なのですが、
女性にもぜひ読んでほしい漫画であることをお伝えしたいです。
子育てに悩んでいる主婦など、女性からみた、または母親目線の、ちょっと変わった視点からこのマンガの魅力を語っていきたいと思います。
目次
1.「王様達のヴァイキング」って、どんな漫画?
では早速、王様達のヴァイキングの基本情報やあらすじについて見ていきましょう!
1-1.基本情報
作者 |
さだやす |
---|---|
出版社 | 小学館 |
掲載雑誌 | ビッグコミックスピリッツ |
巻数 | 13巻(2017年7月28日現在) |
第18回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品。
「マンガ大賞2015」第9位。
1-2.あらすじ
主人公は、天才的なハッカー技術をもちながら、社会に適応できずにいた是枝一希(これえだ かずき)という18歳の少年です。
彼は、他人とコミュニケーションをとるのが苦手です。
取り壊されることが決まっているビデオ屋の店舗で、愛犬とひっそり暮らしていました。
(王様達のヴァイキング11巻より)
実は是枝は、過去にいじめを受けていて、その現実から逃れるように没頭したのがパソコンでした。
そのうち難解なコードを読み解くようになり、他者のデータにアクセスして不正に改ざんするテクニックも身につけてしまいました。
高度な技術を使って犯罪行為をしていた是枝ですが、ある日、エンジェル投資家という、起業家を支援する投資家の坂井大輔(さかい だいすけ)が、是枝の技術に目をつけ、是枝を正しい道へ導きます。
坂井は、IT業界を「征服する」と言い放つ男です。
ただの欲深い男と思いきや、人の育成がとてもうまく、その言葉一つひとつが胸に響きます。
是枝も、坂井に育てられることにより、高度な技術でたくさんの人を救い、感謝されることの喜びを知ります。
坂井に拾われ、サイバー攻撃を受ける企業を救っていくうちに、警察と連携しながら、犯罪組織の摘発、国を揺るがす重大な案件までも、突き詰めていきます。
坂井だけでなく、家族、友人、仕事を通じて出会った仲間によって支えられ、是枝はますます成長していく・・・というストーリーです。
1-3.なぜ女性にこそ勧めたいか?
少し横道に逸れますが、
王様達のヴァイキングをなぜ女性にも勧めたいか、ちょっと語らせていただきます。
私は、ある日の深夜にスマホでマンガを検索していたら、この時偶然「王様達のヴァイキング」1巻が無料で読め、ハマってしまいました。
なぜなら、「王様達のヴァイキング」の主人公は少年ですが、引きこもる彼の姿が、生活に縛られ自由を失いつつある女性と重なって見えたからです。
女性は、結婚して名前が変わり「妻」になり、子どもができると「ママ」になり、めまぐるしく環境が変わって、生活を維持するのに精いっぱいな時があります。
仕事の時間に縛られたり、子どもの世話に加えて親の介護が入ったり、子どもが思春期に突入して言うこと聞かない…仕事、家事、育児に追われてあっという間に一日が終わります。
主人公の少年・是枝は、坂井大輔によって少しずつ自分の殻を破っていき、自立、成長していきます。
是枝は、本当にやりたいことは何なのか自分自身に問いかけ、坂井にヒントをもらいながら、自分の意志で未来を選択していきます。
どんな環境になっても、一人の人間としての成長してほしい。冒険するつもりでこのマンガを読んで、可能性と未来を開拓してほしいと思います。
坂井は、旺盛な意欲と行動力の持ち主です。これから彼の言葉を紹介しますが、きっと胸に響きますよ。
2.人の可能性を引き出す天才「坂井大輔」の過去と名言!
主人公の是枝の可能性を信じ、育てていく坂井大輔は、私にとって
「理想の上司ナンバーワン」です。
仲間のことを家族のように思いやり、時には厳しい言葉を浴びせても、その真意には温もりがあります。
しかし、坂井が最高の上司になれたのは、壮絶な過去があったからなのです。
この項では、
- 坂井の壮絶な過去
- 乗り越えたからこそ放てる名言
についてまとめてみました。
2-1.エンジェル投資家「坂井大輔」の過去
坂井は、「エンジェル投資家」という、起業間もない創業者たちを、主に資金面でサポートしていく投資家です。
3巻を読むと、坂井にも苦しい時代があったことが分かります。
(王様達のヴァイキング3巻より引用)
海外DVDの並行輸入、販売サイトをつくった坂井。創業まもなく広告費用を費やし過ぎて、借金に追い込まれてしまいます。倒産目前、猪野というエンジェル投資家によって2億円を融資してもらい、坂井の会社は立て直しに成功します。
この経験をもとに、坂井は、若い創業者を支援したいと、自らエンジェル投資家となります。自分も救われたのだから、今度は自分が救う番だと。
坂井がエンジェル投資家となり、PCに詳しい若い技術者を集めてつくったのが「ヘッジホッグ」です。坂井のビルの一室がヘッジホッグの拠点となっているのですが、そこに是枝も呼ばれました。
しかし、あまりにも協調性に乏しいことから、ヘッジホッグの一員にはな流ことができませんでした。
が、坂井は、是枝を見捨てませんでした。
なぜなら、もう一つの苦い過去があったからです。
坂井がエンジェル投資家になる前の創業時、「御手洗 昴(みたらい すばる)」という青年を仲間に加えていました。
(王様達のヴァイキング3巻より)
昴は、PCには何時間でも向き合える優れた技術者ですが、頑固でもあり、自分の気に入らない作業はしません。扱いにくいという点と、優れた技術者であることは、是枝と共通しています。
その昴が、坂井の方針に背き退社し、自ら立ち上げた会社が上手くいかず、自殺してしまうのです。坂井が、扱いにくい技術者を簡単に見捨てないのは、こんな経験があったからではないでしょうか。
坂井は、自らが救われ、そして次に救う側へ立ち、次々と仲間を集めては才能を開花させ、そして世界へ挑戦していきます。
ちなみに、坂井の借金の話は、ピクシブの創業当時のお話を参考にした模様です。そんな裏話も、コミックの最後に描かれているので、隅から隅まで読んで想像を膨らませるのも楽しいですよ!
(王様達のヴァイキング3巻より引用)
2-2.名言その1
「今まで真っ当とは呼べない経験が、奴に見えない宝をくれているはずなんだ」(1巻より)
高校は中退、コンビニバイトは3回クビ、他人とコミュニケーションをとるのが苦手。こんな是枝の唯一の居場所がパソコンです。
小学生時代からいじめを受けていて、その悔しさ、悲しさを根底に、彼は一人パソコンに向かい、人知れずその技術を高めていきます。
小学生の頃から数字の羅列を読み解き、コードを解析できるようになりました。
彼は「見えない宝」を得ました。これに気づいたのが坂井です。
(王様達のヴァイキング10巻より)
もし「見えない宝」を誰もが持っているとしたら、すごくないですか。
技術だけではなく、例えば、誠実とか真面目とか,これだけは持っている、というもの、誰もがもっていると思うんです。女性であれば「気が利く」でもいいですね。
仕事でつまづいても、「見えない宝」があると思えば、乗り切れると思いませんか。
つまづいている人がいたら、「見えない宝」を探してみようと思えばいいのではないでしょうか。
子どもも同じです。大人には意味のないものに見えても、この子は何かを得たいと思っていると視点を変えてみたら、面白いと思いますよ。
2-3.名言その2
「多くの優秀なハッカー達の、絶え間ない探求心と限りない労力で、新しい世界が創られてきたんだ。」(1巻より)
是枝は、自分のことを「欠陥品」と呼びます。高い技術をもっていながら、人間的に落ちこぼれだと、自分自身にレッテルを貼っています。これがいけないんです。
1巻で是枝は、パソコンの世界に「侵入」し、他者のデータを不正操作することをやめられずにいます。天才的な能力が、自分自身の評価を下げていることで発揮できずにいます。
「絶え間ない探求心」とは、是枝にとってパソコンの技術向上です。
(王様達のヴァイキング2巻より)
是枝は、金や利権を奪おうとする犯罪者を摘発するため、対抗するプログラムを短時間で仕上げる腕を常に磨いています。
そうすることで少しずつ自信が芽生え、警察にも頼られる存在になるとなります。
民間会社のサイバー攻撃を阻止、暴力団の摘発、国境を越えた事件の゛解明などなどこの成長ぶりはすごい!!!
ついこの間までは、不正操作ばかりしていた少年が、ですよ。自分を過小評価すると、できるものも、できなくなります。
坂井がやっていたことは相手をとことん理解しようとすることだと思います。
是枝は、言葉に詰まったり、支離滅裂なことを話し、何を伝えたいのか分かりにくい人物ですが、坂井は、彼の言葉を最後まで聞き取ります。そして是枝のことを
「頭の回転が速すぎて、言葉がついていけない」(2巻より)
と理解します。坂井のような理解者のおかげで、是枝は才能を開花させ、あらゆる難題に挑んでいきます。
親が子どもに対して全てを理解している、とは限らないですよね。忙しかったり疲れたりしていると、子どもに向き合えないこともあります。
私はこの坂井のやり方を習得して、子育てに生かしたい、才能のつぼみを、見逃したくないと思いました。
ちなみに、坂井大輔には、独自のTwitterが存在しますよ。
「王様達のヴァイキング」13巻、今日7/28発売。応援してくださる皆々様に、我々から心からの愛を。
今巻は私と笑い猫がアメリカで動きます。東京とワシントンのバトル、お楽しみに。つーかさ、是枝よ!そろそろ自分で結べるようになれや! pic.twitter.com/iskPt3D84x— 坂井大輔 (@sakaiin) 2017年7月28日
つぶやきをチェックするのも面白いです。
是枝の高度な技術が目を見張りますが、是枝を支えている家族、仲間、友人が、すごくいい!!!もし子どもが、友人が、仕事仲間がへこんでいたら、こんな言葉をかけてあげたいです。
3.是枝を支える仲間たち
是枝は小学生の頃からいじめられていて、同世代の友達はいませんでした。しかし、近所に住む年上の加藤 剛(かとう つよし)、通称「ゴリラ君」は、是枝と同様にパソコンが好きで、彼の最初の理解者です。
(王様達のヴァイキング1巻より引用)
体は大きいのに、よく泣きます。だぁぁぁと泣くゴリラ君は、実は繊細で感情的なんです。見た目とのギャップが面白いです。是枝の将来を心から心配するゴリラ君は、本当のお兄ちゃんのようです。
また、坂井が育てているチーム「ヘッジホッグ」のメンバーたちも、是枝の仲間です。一緒に坂井のビルに住み込み、一緒にご飯を食べる仲間です。
是枝が闇の組織に拉致された時、チーム一丸となって是枝の居場所を突き止め、救出の糸口をつくりました。是枝が無事だという事を知った仲間たちの笑顔が、この絵です。
(王様達のヴァイキング7巻より引用)
こんなにも仲間がいたら、どんな困難にも立ち向かっていけますね。
是枝は、民間会社のサイバー攻撃だけでなく、国家レベルの犯罪捜査に加わることになるのですが、是枝は憶することなく挑んでいきます。
坂井の背中の後ろでビクビクしていた是枝が懐かしいです。人は支えあってこそ、力を発揮できるのかもしれません。
4.女性キャラクターも魅力的!
王様達のヴァイキングには何名か女性キャラクターも出てきます
その中でも、女性目線から見て最高に魅力的な2人を紹介しますね
4-1.どんな時も信じて愛してくれる「是枝のママ」
是枝の母親は、是枝のことを「小さな天才くん」と呼びます。
王様達のヴァイキング1巻より引用
是枝は、小学生の頃からイジメに遭っていました。ランドセルには「バカ」「キモイ」じかれたり、水を浴びせられたりしていました。
自分のことを「バカな変人」とか「欠陥品」とか言っているのに、他者からバカにされると、途端に闘争心をむき出しにします。
彼のプライドを支えているのは、ママから言われた「小さな天才くん」という言葉であると思います。
ママは失踪していて、世間体から外れた人のようですが、是枝の心の支えはママであり、ママの言葉であると思います。ママからのプレゼント、愛犬256(ジゴロ)も、是枝になくてはならない存在です。
ママって、存在大きいです。世間から外れていても、子どもにとってはかけがいのない存在です。
例えば、是枝を樹木に例えるなら、パソコンは彼の根っこになり、「小さな天才くん」と呼ぶママの存在は根の周りを温める「土」だと思います。
いじめを受けて、木の芽はなかなか伸びずにいましたが、坂井大輔という人物が「太陽の光」だとすると、太陽光を差した時から、芽はぐんぐん伸びていき、やがて大きな樹木に育つイメージです。
失踪中で是枝のそばにいないママ。でも「小さな天才くん」という言葉でつながっていると思います。
4-2.クールな見た目に情熱を秘めた女性「衣笠真琴」
是枝が警察の捜査に協力することになって、警視庁刑事部捜査二課の管理官が登場します。衣笠真琴(きぬがさ まこと)。女性キャリア。父親が警察庁のOBですが、親子の仲は悪く、親の名前でのし上がった地位ではないようです。
女性の武器といえば、まず笑顔。
しかし、衣笠管理官の笑顔は、とてもビジネス的で、感情がこもってないです。
王様達のヴァイキング10巻より引用
当初、この笑顔の裏に隠された素顔が気になって、是枝や坂井の味方なのか敵なのか分かりませんでした。
が、12巻で
「これこそ私が待っていた好機かもしれない。悪しき慣習を一掃するための。」
という会話で、衣笠管理官は、警察幹部と政治家との汚職を追及する覚悟があることを暴露します。
細身の体に、一本の髪すら落ちない立派な夜会巻きのヘアスタイル。びしっとスーツを着こなしていますが、このまま着物を着てもいいくらい、見た目は古典的な日本女性です。
そんな清廉な見た目の裏に、燃えたぎる正義感を秘めている女性なのです。
彼女の笑顔は、計算されつくしていて、冷たくも見えますが…「王様達のヴァイキング」はまだまだ話が続くので、そのうち素顔の衣笠管理官が出てきてほしいです。
5.まとめ
いかがだったでしょうか。
是枝は、天才的な技術の持ち主ですが、それは当初、いじめられた悔しさやみじめさのはけ口がパソコンの世界だったことから始まります。
それがいつしか高度な技術を身につけ、坂井という人物との運命的な出会いを果たすのですが、彼はどんな困難にも立ち向かうようになります。
6巻では自ら犯人を確保することに失敗したり、7巻では拷問を受けますが、彼の心は折れません。
その根底にあるのは、母親が使う「小さな天才くん」という呼び名が無意識のうちにプライドを与えていたからだと思います。
そして坂井という理解者のもと、仲間ができ、彼はますますパワーアップしていきます。
仕事で後輩の育成を任されたり、子育てにおいてイライラすることってありませんか?
そんな時に坂井の言葉を思い出してみてください。もしかしたら、「見えない宝」があるかもしれませんよ。
また、母親だからこそできること、女性だからこそできる特権を生かそうじゃありませんか。
仕事や子育てに生きる言葉がたくさんあって、読めば読むほど心が動かされます。
恐らく、アラフォー主婦世代は縁がないであろう少年マンガですが、ほんと、面白いですよ!!!
以上、椿さくらでした。ご意見、ご感想をいただけると励みになります。よろしくお願いいたします。
コメントを残す