みなさんこんにちは、もしもタイムマシンがあったら幕末や戦国時代に行ってみたいと思う反面、行ってもすぐに命を落としそうだと思うマンガタリライターの神門です。
そんな風に皆さんも一度くらい、
- 「あの瞬間に戻ってやり直したい」
- 「あの時代に行ってみたい」
- 「記憶を持ったまま過去の自分に戻りたい」
とか考えたことはあると思います。
だからでしょうか、過去から今に至るまで「時間移動」を取り扱った作品はメディアを問わず数多く作られています。
かくいう私も大好物で、漫画はもちろん様々な媒体で「時間移動」ものを楽しみまくっています。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『シュタインズ・ゲート』から『ウは宇宙ヤバイのウ!』まで、色々と手を出してきました!
なお『ウは宇宙ヤバイのウ!』はコードウェイナー菫とか、州谷州(すたにす)わふれむとか、SFファン的にはむしろネーミングがヤバいです!
また、「時間」を取り扱った作品の個人的最高傑作は『Ever17』です。いまだかつてこの衝撃を越える作品には出会っていません。
脳味噌から記憶を消去してもう一度プレイしたいゲームNo.1!
ドリームキャストの通常版/Premium Edition、PS2の限定版、Windows版。XBOX360版も持っていますが見当たらず。。。
なお、基本的に全て同内容です! 阿保ですかね!
そんな数ある「時間移動」ものの作品で近年熱いのが、『サマータイムレンダ』です!
そして『サマータイムレンダ』の面白さや魅力をご紹介したいのですが、その前に!
私が愛する、実に千差万別、様々な種類、パターンを誇る「時間移動もの作品」の「類型化」を実施します!
漫画に限らず、小説、ゲーム、映画、アニメ、各種媒体における「時間もの」作品を楽しんできましたので、その経験をもとに、
- 時間ものってどういうパターンがあるのか
- 具体的にどのような作品があるのか
と、時間移動に関する作品を分類してパターン化して各パターンの代表作をご紹介しちゃいます。
皆さんも、「時間移動」もの作品の楽しさに触れ、夢中になり、時を忘れて時の物語にのめりこみましょう!
1、時間移動の仕方と時間移動の影響の2軸で「時間移動」作品を分類
「時間移動」をテーマとした作品は実に沢山、世の中に出ています。
過去に行ったり未来に行ったり、タイムマシンで自ら行くこともあれば、精神だけ過去の自分に戻るなんてこともあります。
そこで、「時間移動」作品にはどのような種類があるのかを、私の観点で分類します。
2つの軸で分けて、マトリクスにして考えていきます。2つの軸は以下の通りとします。
- 「時間移動の仕方」:タイムトラベル(物理的な時間移動)か、タイムリープ(精神的な時間移動)か
- 「時間移動の影響」:歴史改変があるか、確定した世界に収束するか(歴史改変なし)
何を軸とするかは色々と選択肢があると思いますので、これが絶対というものではありません。私が考える分類とお考え下さい。
そして2軸でマトリクスを作り、以下のように分類化します。
ここからは、2つの軸について説明したうえで、各分類パターンの説明と代表作品を紹介します。
1-1 時間移動の仕方による2分類
第一の軸、「時間移動の仕方」をここではご説明します。
時間移動の仕方には、以下の二つがあります。
- タイムトラベル(肉体的な時間移動)
- タイムリープ(精神的な時間移動)
一つ目、タイムトラベル(物理的時間移動)は、分かりやすく言ってしまえばタイムマシンによる時間移動です。
古くはH・G・ウェルズ氏が発表した短編小説『タイム・マシン』で世間的に広まりましたが、それでもおそらくSFファンまででしょう。
爆発的に一般の人に知られるようになったのは、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だと思います。
デロリアンをタイムマシンに改造し、過去へ跳んで奮闘する主人公マーティの活躍を何度も目にした人も多いと思います。
特徴としては、まさに前述した通り、タイムマシンという機械に人間自身が乗り込んで、生身の体のままで過去、あるいは未来へ移動することです。
タイムマシンの形は様々ですが、宇宙船や自動車のようなタイプが多く、これは人が乗り込むことから考えられているものと思われます。
日本人で有名なタイムマシンといえば、コレですね!
机の引き出しがタイムマシンと繋がるというのも斬新でした!
「ドラえもん」 1巻 藤子不二雄/小学館より 引用
タイムトラベルの最大の魅力、それは「歴史の証人になれる、歴史に介入できる」ことです。
設定さえ可能なら過去でも未来でも好きな時代に行けるわけですから
- 幕末に行って新選組の活躍を間近で体験する
- 三銃士の時代に行ってルイ14世とリシュリュー枢機卿の実物を目にする
- 遥か未来のディストピアとなった世界を見る
なんてことも出来ちゃうわけです。
歴史好きな人には堪らない体験をすることができるのです!
2つ目は、タイムリープ(精神的時間移動)、これは自分の意識のみが時間を移動するものです。
(※タイムリープもタイムトラベルの一種とも考えられますが、当記事では肉体的時間移動と精神的時間移動で、別物としています)
小説や映画で有名な『時をかける少女』もタイムリープの代表作となります。
多くの作品では“現在の記憶を保持したまま”、“過去”に戻ります。
タイムトラベルと大きく異なるのは、あくまで自分の意識が過去に戻るだけなので、自分が生まれる前の時代に戻ることはできません。
タイムリープの最大の魅力は、「やり直せる」ことです。
記憶を保持したまま過去の自分に戻ります。どれくらい過去に戻るかは作品によりけりですが、過去に戻った時点で「自分の記憶=未来の出来事」となり、この先自分がどんな人生を歩んでいくかを知っているわけです。
となれば、同じ轍を踏まないよう行動することが出来るようになります。
- あの時、大好きだったあの子に告白していたなら両想いになれていたかも?
- あの試合で右アッパーではなく左ストレートならKO勝ちしていたのに!
- あの日、寄り道さえしなければ事故に遭わなかったのに!
なんて思いを抱えた人が、その瞬間に立ち戻ってやり直すことが出来るわけです。
またタイムリープのもう一つの特徴として、“ループする”ことが非常に多いです。
過去に戻り、再び時は流れていきますが、ある地点に到達したりある条件を満たしたりするとまた過去に戻る。これを繰り返すのです。
厳密にはタイムリープとタイムループは別物と考えますが、細かくし過ぎると複雑になることもあり、今回タイムループはタイムリープの一種として考えることにします。
1-2 時間移動に伴う影響による2分類
第二の軸、「時間移動に伴う影響」による分類をご紹介します。
時間移動に伴う影響は、以下の二つがあります。
- 歴史改変あり(主人公の行動により世界が変わる)
- 確定した世界に収束(主人公が何をしても歴史は変わらない、変えるような行動は取れない)
一つ目の「歴史改変あり」は、時間移動を行い歴史に介入することにより、本来自分が知っていた歴史が変わってしまうことを意味します。
例えば、
<坂本龍馬が暗殺されずに生きていたら?>
多くの人が同じようなことを考えたりすると思います。
時間移動した人が、龍馬が殺されないよう助けた場合、王政復古のクーデターは発生せず、西南戦争も起きなかったかもしれません。
その後の日本の政治、経済状況も大きく変わり、今とは全く異なる日本になっていたかもしれません。
時間移動による「歴史改変あり」は、上述したようなことを可能にするものです。
自らの手で歴史を変える、これは恐ろしいと同時に大きなロマンでもあります。
更に加えるなら、歴史を改変した後の世界がどう変化するかによる違いもあり、大きく以下の2パターンとなります。
- 上書きパターン(元の世界は消滅し、新たな世界が再構築される。映画『バタフライ・エフェクト』等)
- 並行世界パターン(元の世界とは違う世界に分岐する。二つの世界は互いを観測できない。『ドラゴンボール(トランクス未来編)』等)
上書きパターンは、前述の例でいえば、龍馬が暗殺されなかった世界に歴史が塗り替わり、龍馬が暗殺された世界は完全に消滅します。
主人公が時間移動を終えて元の世界に戻った時、主人公が目にするのは龍馬が暗殺されなかった世界となります。
並行世界が作られるパターンは、龍馬が暗殺された世界とは別に、龍馬が暗殺されなかった世界が新たに構築されます。
二つの世界は決して交わることなく平行線をたどります。
龍馬が暗殺されなかった世界はそのまま続いていきますが、主人公が戻る元の世界はあくまで龍馬が暗殺された世界であり、主人公が生まれ育った世界が消えることはありません。
今回はこのレベルまで細分化しませんが、それくらい、細かなパターンが「時間移動」作品には存在するのです。
二つ目の「確定した世界に収束」とは、タイムトラベルやタイムリープした主人公がどんな行動を取ろうとも決して歴史が変わることはない、というものです。
坂本龍馬で説明した例になぞると、私達が知っている歴史において「坂本龍馬は暗殺された」ことは歴史的事実です。
既に定まっている事柄ですので、過去に戻ってどのような行動を取ろうと、龍馬が暗殺されることは変えられません。
仮に主人公が龍馬を助けようと近江屋に行かないようにしても、
- その場の暗殺は防げたが異なる場所で龍馬は暗殺される
- 助けようとした主人公に邪魔が入り助けられなかった
- 助けようとした主人公の行動が実は暗殺をアシストするものだった
細かい部分は変わっても、歴史の根幹にかかわる事柄は決して変えることが出来ない、あるいは変えようとするような行動を取ることが出来ない。
必ず、歴史は定まった結末に収束するというものです。
2、「時間移動」作品分類まとめ:組み合わせによる大分類6パターンと代表作品を解説
「時間移動」の作品を2つの軸で分類し、その分類内容についてご説明してきました。
そして2つの軸でマトリクス化しパターン分類したのが以下となります。
いよいよここでは各パターンの内容と魅力、そしてパターン内の代表的な作品をご紹介します。
2-1 歴史改変:タイムトラベルして歴史を変えてしまう作品
時間移動の仕方 | タイムトラベル |
時間移動に伴う影響 | 歴史改変あり |
分類パターン | 歴史改変 |
代表作品 | 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(映画) 『アシガール』(漫画、著:森本梢子) 『クロノ・トリガー』(ゲーム) |
タイムトラベルをしての歴史改変ものです。
実際に自分が過去、あるいは未来に行き、その時代に介入することで歴史を変えてしまうもので、非情に分かりやすいです。
歴史は、日本や世界の歴史を大胆に変えてしまうものもあれば、主人公の身近な人たちの歴史を変えるものまでさまざまです。
このパターンの魅力は、歴史に介入することで発生するパラドックス、これをいかに解決していくかというのが物語的に見ていて分かりやすくワクワクすることでしょう。
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で自分が生まれてこない世界にしないため、両親をくっつけるべく奮闘するマーティ。
漫画の『アシガール』では、戦国時代にタイムトラベルした女子高校生の唯は、一目ぼれした若君様・羽木九八郎忠清を助けるために、なんと足軽となっちゃう物語です。
戦国時代に移動してしまった唯
「アシガール」 1巻 森本梢子/集英社より 引用
名作ゲーム『クロノ・トリガー』では、時間を移動する手段を手に入れた主人公たちが、滅亡した自分たちの未来を変えて救うため様々な時代を行き来して戦うという壮大な物語になっています。
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2-2 答え合わせ:タイムトラベルして歴史を変えようとするも、必ず史実通りに収束する
時間移動の仕方 | タイムトラベル |
時間移動に伴う影響 | 確定した世界に収束 |
分類パターン | 答え合わせ |
代表作品 | 『輪廻の蛇』(小説、著:ロバート・A・ハインライン) 『ドゥームズデイ・ブック』(小説、著:コニー・ウィリス) 『プリデスティネーション』(映画) |
タイムトラベルをするが、歴史は変わらない作品になります。
歴史を変えようとしても変えられない作品もありますし、逆に歴史を変えないように主人公が動く作品もあります。
パターン名を「答え合わせ」としたことにもちろん意味はあります。
歴史が変わらない=結末が決まっているわけですが、どうやってその結末に辿り着くかが分からない。
それが、過去に戻り、主人公が行動することで、先に示されている決まった歴史=答えに辿り着きます。
そのプロセスを見て読み手は「あ、そういうことだったのか!」と思うわけです。
なぜその結末に至ったのか「答え合わせ」をしているのです。
既に答えが出ているだけに、いかにして答えに辿り着かせるかという見せ方が重要となる難しいパターンですが、それだけに全てが繋がった時には「おお!」と本当に思います。
SF作家、ロバート・A・ハインラインが描く時間もの作品はこのパターンに属し、小説『輪廻の蛇』はまさにこのパターンにおける秀作で、数十ページの短編ですが、『プリデスティネーション』という一本の長編映画にもなっているほど良い出来です。
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小説であれば他に、女子大生のキヴリンが伝染病の流行した中世ヨーロッパにタイムトラベルして凄まじいラストを読者に叩きつけてくれる作品、『ドゥームズデイ・ブック』(著:コニー・ウィリス)などがあります。
[amazonjs asin=”4150114374″ locale=”JP” title=”ドゥームズデイ・ブック(上) (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-4) (ハヤカワ文庫SF)”]歴史を変えることが出来ない故に、切なく、考えさせられる作品が多いのもこのパターンの特徴です。
2-3 特殊パターン:タイムリープにおける特殊な構成の作品
時間移動の仕方 | タイムリープ |
時間移動に伴う影響 | 確定した世界に収束 |
分類パターン | 特殊パターン |
代表作品 | 『タイム・リープ あしたはきのう』(小説、著:高畑京一郎) 『スキップ』(小説、著:北村薫) |
ここからタイムリープに入ります。
その一発目、タイムリープの確定世界収束型がなぜ「特殊パターン」となるのか?
タイムリープとは即ち未来の記憶を保ったまま、過去の自分に戻るわけです。
その時点でそもそも歴史が変わっていますし、記憶をもって過去に戻ったのに、これから起こす行動を変えず同じ人生を歩んだところで作品として面白くもなんともありません。
ただ、このパターンの作品がないわけではなく、小説『タイム・リープ あしたはきのう』という素晴らしい作品があります!
[amazonjs asin=”B00BULR3HQ” locale=”JP” title=”タイム・リープ<上> あしたはきのう (電撃文庫)”]この作品が革新的だったのは、
- タイムリープは発生タイミングも飛び先もランダム
- 同じ時間には二度とタイムリープ出来ない
という設定です。
そのため主人公は、整合性を取るために奮闘します。
例えば、
- 一週間後にタイムリープした主人公は苦手教科のテストで満点を取ったことを知る
- しかし、主人公はまだそのテストを受けた記憶がない
- 過去にタイムリープした主人公はテストで満点を取るため猛勉強する(満点を取らないと矛盾が生じ、どのような世界となるか不明!)
といった具合です。
いわば自分の生活の過去と未来をパズルのように組み立てていくわけで、そのアイディアが秀逸というか、思いついたもん勝ち、早いもの勝ちで、真っ先に形にして世に出した高畑さんは凄いと思います。
特殊パターンでは他に小説『スキップ』も該当すると思います。
主人公の女子高校生が何十年も未来にタイムリープするもので、主婦になり子供もいる、だけど精神だけは子供という、非常にキツイ状況に陥る物語です。
気が付いたら全く知らない中年の夫と子供がいるなんて、恐ろし過ぎます!
2-4 人生やり直し:知識を持ったまま過去の自分に戻って、新たな人生を生きる
時間移動の仕方 | タイムリープ(タイムループ) |
時間移動に伴う影響 | 歴史改変あり |
分類パターン | 人生やり直し |
代表作品 | 『アゲイン』(漫画、著:久保ミツロウ) 『リプレイ』(小説、著:ケン・グリムウッド) |
タイムリープして歴史改変ありには大きく二つパターンがあり、そのうちの一つがこちら「人生やり直し」パターンです。
このパターンをタイムリープとタイムループ双方に跨らせたのは、過去に戻るのが一回のみのパターンと、ループして何度も人生をやり直すパターンがあるからです。
ただいずれにしてもタイムリープで記憶を保持したまま過去の若い自分に戻るのです、当然、過去の失敗を振り返って新しく人生をやり直したいと考えるのが人間でしょう。
まさに、究極の夢といえるかもしれません。
知識を活かして、可能性は幾らでも広がります。
冴えない人生からの一発逆転! これこそこのパターンの最大の魅力です。
現実でも冴えて光り輝いている人生を送っていると自ら思う人はそう多くないでしょう。あの時に戻ってやり直せたらと思うことも多いでしょう。
ループしない作品としては漫画の『アゲイン』があります。
友達もなく一人寂しく高校を卒業した金一郎が高校一年生にタイムリープして再び高校生活をやり直す、イケてない人生からイケてる(?)人生への一発逆転物語です!
「アゲイン!!」 1巻 久保ミツロウ/講談社より 引用
憧れますね!
ループする作品で「人生やり直し」パターンの最も有名だと思うのは小説『リプレイ』です。
[amazonjs asin=”4102325018″ locale=”JP” title=”リプレイ (新潮文庫)”]48歳で死亡したのに気が付いたら18歳になっていた主人公は人生をやり直します。
株も競馬も思いのままで大金持ちになりますが、また48歳の時に死んで・・・・と、何度も人生を繰り返します。
この作品は単に人生やり直せたら何をするか、ということを描いているわけではありません。
何度も繰り返す主人公を通して見えてくるのは、一度きりの人生を生きるとはどういうことなのか? ということです。
これは是非、中年以降に読んでいただきたい一作です。
2-5 悪夢からの脱出:繰り返される悲劇を回避するため、主人公は何度でも運命に抗う
時間移動の仕方 | タイムリープ(タイムループ) |
時間移動に伴う影響 | 歴史改変あり |
分類パターン | 悪夢からの脱出 |
代表作品 | 『シュタインズ・ゲート』(ゲーム・アニメ) ※記事内ネタバレあり! 『魔法少女まどか☆マギカ』(アニメ) 『バタフライ・エフェクト』(映画) |
今までの4パターンと比較し、残りの2パターンはぐっと重くなります。
パターン名も重苦しくしています。
タイムリープで歴史改変ありのもう一つのパターン、「悪夢からの脱出」は、絶望的な悲劇を回避するために主人公が何度もタイムリープを繰り返す、というものです。
そして「時間移動」作品の5割以上、もしかしたら7割以上はこのパターンに該当するのではないかと思えるくらい、多くの作品が世に出ています。
2010年代でも多くの作品が出ており、アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」は可愛らしい魔法少女モノと思いきや、ハードで重い内容が話題になりました。
悲劇の多くは「最愛の人の死」や「破滅」だと思います。
最愛の人を助けるため、破滅から逃れるため、何度でも繰り返し諦めず戦いを繰り返す主人公は、見ている方も熱く燃えます!
更に幾多もの苦難を乗り越え、悪夢を克服できた暁には得も言われぬ充実感、カタルシスを覚えます。
特にこのパターンと相性が良いのがゲームです。
何せゲームは繰り返しプレイ前提で作成できますし、グラフィックやテキストも繰り返し使用しつつ、ちょっとした違いを表現することも可能です。
『シュタインズ・ゲート』、『ひぐらしのなく頃に』、『マブラヴオルタネイティヴ』、『この世の果てで恋を唄う少女 Yu-No』等と、名作が目白押しです。
どれも、主人公が惨劇を回避するためループし、何度も何度も辛く苦しい目にあうのを見て、プレイヤー(=読み手)も本当に辛くなります。
『シュタインズ・ゲート』はその最たるものでしょう
何をしても、どんな対策をうとうとも、必ず死んでしまうヒロイン
プレイしていて、主人公の絶望がいやというほど感じられる。
こんなの何度も目にしたら、精神がおかしくなります。「STEINS;GATE」 PSVita/5pb.より 引用
そしてその辛い思いを何度も繰り返し経験し、成長し、強大な敵(=運命ともいう)に立ち向かう姿は燃えます。
映画でも『バタフライ・エフェクト』はいわゆる“バタフライ効果”を非常に上手く映画化した作品です。
タイムリープして未来を変えようとするも、わずかな行動の変化がその後の未来を大きく変えてしまう物語に魅入り、あっという間に最後まで観終えてしまいます。
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冒頭で軽く触れた漫画、『サマータイムレンダ』もこのパターンに分類されます。
2-6 時の牢獄:未来に進むことのない時間の中に閉じ込められた世界
時間移動の仕方 | タイムリープ(タイムループ) |
時間移動に伴う影響 | 確定した世界に収束 |
分類パターン | 時の牢獄 |
代表作品 | 『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(映画) 『涼宮ハルヒの暴走(エンドレスエイト)』(小説、著:谷川流) 『Fate/hollow ataraxia』(ゲーム) |
タイムループで確定世界収束の「時の牢獄」パターンは、ひたすら同じ時間を繰り返すというものです。
主人公だけがタイムリープするというよりも、世界の全てがスタート地点に時間が巻き戻るイメージです。
例えば同じ一週間を繰り返す。7日目が終わって次の日の朝は1日目の朝、記憶も何もかも全てが一日目に戻っている、というものです。
有名なところでは、劇場版映画の『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』でしょう。
登場人物達は自分たちがループしていることを知らず、そのため基本的に毎回同じ行動をして、同じ展開となり、同じ結末を迎えます。
そしてまた、巻き戻る。
そんな閉鎖空間の中で、誰か(主に主人公)が何かの拍子に自分達が時の牢獄に閉じ込められていることに気が付き、脱出を試みるというパターンが王道です。
約束の4日間。永遠の4日間が繰り返される、「Fate/hollow ataraxia」
4日目の明日は、また1日目-
「Fate/hollow ataraxia」 PSVita/TYPE-MOON/角川ゲームスより 引用
ループの中でも登場人物の行動が微妙に変わったりしますし、また最終的にはループから抜け出すことが殆どなので、正確には歴史改変ありではあるのですが、”歴史が変わるのではなく、一定期間で循環していた時間が先に動き出す”、と捉えて別分類としています。
このパターンは、いつまでもこのままでいたい、気持ち良い今の状態でずっといたい、そういう人間の思考を思わせられます。
モラトリアムに浸っていたい、でも抜け出さないと前に進めない、そういう心理状態が捻じれた世界を作り出すことも多々あります。
このパターンの魅力は、なぜこんな空間が作り出されたのか。その理由をつきとめ、いかにして抜け出すかの過程にあります。
多くは何者かの「この時間を終わらせたくない」という意思により無限ループの状態に陥っているため、周囲の人間がどのようにして、「終わらせても良い」と納得させるかを試行錯誤する、そこにこそ面白味が詰まっています。
前述の「Fate~」より。
どうすれば、何をすれば気が付けるのか-?「Fate/hollow ataraxia」 PSVita/TYPE-MOON/角川ゲームスより 引用
課題は心の内にあるため、脅したり宥めたりしても意味がありません。
心理を見極め、本人が自ら牢獄を壊すことを望むような動きを取る必要があり、登場人物の内面を深く抉りこんでいく。それは読み手自身も、思索の谷に入り込んでいく必要がありますから、心理学や哲学の領域に踏み込むことで読み手同士の議論や対話を呼ぶこともあります。
前段の「無限の試練」が物理的な問題に起因するループ面が強いのに対し、「時の牢獄」は精神的な問題に起因するループ、といえるかもしれません。
[amazonjs asin=”4044292051″ locale=”JP” title=”涼宮ハルヒの暴走 (角川スニーカー文庫)”]ハルヒの内意識が ”終わらない夏休み” を作り出した小説『涼宮ハルヒの暴走(エンドレスエイト)』も、このパターンにあてはまります。
3、まとめ
「時間移動」に関する作品は、皆さんも一度くらいは見たこと・読んだことがあると思います。
今回の記事ではその「時間移動」について、
- 「時間移動」を2軸からマトリクス化
- マトリクス分類に従った各パターンの説明と代表作品
をご紹介しました。
作品全体ではなくとも、作品の中の1エピソードとか含めると、「時間移動」を取り扱った作品はさらに格段に多くなります。
それだけ私達が楽しめる1ジャンルになっていると言えると思います。
そんな1ジャンルとなった「時間移動」作品で2010年代の代表作となるかもしれないのが『サマータイムレンダ』です。
別の記事にて、『サマータイムレンダ』の「時間移動」作品としての魅力を存分に紹介いたしますので、是非、ご覧ください!
また、記事巻末にはお薦めの画・小説・映画・ゲームの「時間移動」作品を載せましたので、興味のある方、興味が出た方はご参考にしてみてください!
以上、マンガタリライターの神門でした。
【付録】時間移動ものおすすめ作品10選
記事の本分中だけではお伝えすることが出来なかった、漫画・小説・映画・ゲームそれぞれでお薦めの「時間移動」作品10作を、一言コメントともにご紹介します!(本当はもっともっとあるのですが、泣く泣く10作に絞りました)
■『紫色のクオリア』 小説/うえお久光/アスキー・メディアワークス
リンク
見た目美少女ラノベ、中身はガチハードSF。血なまぐさいスプラッタに、鬱展開を繰り返していく無限ループが素晴らしい! |
■『君と時計と嘘の塔』(君と時計シリーズ) 小説/綾崎隼/講談社
リンク
タイムリープで過去に戻ると自分の大切な人が一人消える。青春とミステリーとタイムリープがうまく交わった一作。 |
■『果てしなき流れの果に』 小説/小松左京/KADOKAWA
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日本SF界を代表する一作。一度読んだだけでは理解しきるのは難しい、時間と空間を超えた壮大な物語に酔うべし。 |
■『ミッション: 8ミニッツ』 映画/ジェイク・ジレンホール
リンク
乗客全員死亡の列車爆破事件を阻止するため爆発8分前に入り込み何度も8分を繰り返す。スピード感と謎が収束する様が実に心地よい |
■『12モンキーズ』 映画/ブルース・ウィリス、ブラッド・ピット
リンク
鬼才、テリー・ギリアム監督がおくるタイムトラベル作品。ブラッド・ピットは本作のような役こそ適役だと思いますぞ! |
■『僕だけがいない街』 漫画/三部けい/KADOKAWA
リンク
主人公が過去に戻って周囲の人を襲う悲劇を回避する王道タイムリープサスペンス。伏線回収の構成力が見事! |
■『タイムスリップオタガール』 漫画/佐々木陽子/フレックスコミックス
リンク
30歳の城之内はとこが中学時代にタイムスリップ、全力でオタク人生をやり直し自分も周囲も明るく変える!30代以上必見! |
■『Never7 -the end of infinity』 ゲーム/KID
リンク
この「infinity」シリーズはラストシナリオに入ってからの怒涛の展開こそ!哲学、量子論、医学、様々な領域で繰り広げられる展開は圧倒! |
■『CROSS†CHANNEL』 ゲーム/FlyingShine、5pb.
リンク
8人の高校生男女が織り成す、いわゆる「セカイ系」の作品。物語の中盤、そしてラストに訪れる展開に衝撃! |
■『マブラヴ オルタネイティヴ』 ゲーム/age、5pb.
リンク
燃えること間違いなしの「あいとゆうきのおとぎばなし」。前作「マブラヴ」から入ると全て繋がっていたことに気付いて驚愕! |
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