みなさんこんにちは、マンガフルライターの神門です。
世の中に百合作品が存在するのが当たり前になって、どれくらい経ったでしょうか。
漫画、アニメ、小説と、様々なところで百合作品が発売され、しかも一ジャンルとしてポジションを確立するなんて、なんて素敵な世の中になったことでしょう。
そんな百合作品群の中で今回ご紹介するのは、
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』
です。
元々はライトノベルで発売され、その後コミカライズされ、更にアニメ化もされる人気作!
今回はこの通称『わたなれ』をご紹介いたします。!
目次
1、『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』ってどんな作品?
著者 | 原作:みかみてれん、竹嶋えく、漫画:むっしゅ |
出版社 | 集英社 |
掲載雑誌 | 水曜日はまったりダッシュエックスコミック |
掲載期間 | 2020年~ |
単行本巻数 | 小説:既刊7巻(2024年12月時点)、漫画:既刊7巻(2024年12月時点) |
ジャンル | ガールズラブコメ |
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』(以後、記事本文中では『わたなれ』)は、みかみてれん先生によるライトノベル作品です。
主人公の甘織れな子は高校進学を機に陽キャデビューを果たし、その勢いで学園のスーパースター王塚真唯と友達になり、真唯が所属するグループの一員となります。
学園内でもトップカーストのグループに所属できたものの、根が陰キャのれな子はそんな生活に馴染めずに窒息寸前の日々。
そんなある日、ひょんなことかられな子は真唯と秘密を共有することになり、更にそれに留まらずそのことを契機に真唯から惚れられ、告白され、恋人になって欲しいと強烈に迫られることになります。
恋人関係になりたい真唯、あくまで親友でありたいれな子。
そんな二人に加えて、れな子が属するグループの他の女の子達(みんな美少女)を巻き込んで賑やかに展開してくガールズラブコメディ作品です。
2、『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』の魅力をノベル、コミック、双方の観点を織り交ぜてご紹介
ここでは『わたなれ』が持つ魅力を大きく3点、簡潔にご紹介します。
2-1 キャラクター:異なる属性の女の子たちそれぞれが抱えているものが生きているキャラを生み出す
まずはやっぱり、登場人物にどれだけ魅力があるかどうか!
本作では主人公の甘織れな子を中心に、れな子が所属するグループの四人の女の子がメインとなりますが、その誰もがとても魅力的で生き生きとしています。
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 1巻 むっしゅ、みかみてれん、竹嶋えく/集英社 より引用
キャラについては次章で更に深く掘り下げていきますが、誰もがその行動原理や思考の根幹となるものがあり、それが物語の中で表現されているからこそ彼女たちの行動が納得できますし、考え方も理解できます。
ただ見た目が可愛い、キラキラしているから魅力なのではなく、物語を読み進めていくうちに彼女たちの内面や抱えているものが分かり、それに共感したり、共感できなくとも頷けるから人として魅力を感じるのだと思います。
所謂、“クインテット”と呼ばれる5人に属性を当てはめるとしたら以下のような感じになります。
- 甘織れな子:陽キャムーブした陰キャ
- 王塚真唯:傲岸不遜、オレ様なスパダリ
- 琴紗月:クールビューティ
- 瀬名紫陽花:天使
- 小柳香穂:小悪魔な小動物(裏の顔アリ)
とはいえ、それぞれがそんな一言の属性で定まるものでもありません。
各自の魅力については改めてご紹介します!
2-2 ビジュアル:百合実績のある作家さんに描かれ、一目でそのキャラらしさが分かる!
ラノベはイラストが重要、とはよく言われます。
その点、本作のノベルのイラストを担当されているのは、竹嶋えく先生!
もう、この時点で勝ち確ですね。
コミック百合姫で『ささやくように恋を唄う』を連載して人気を誇る漫画家さんにしてイラストレーターさん。
竹嶋先生が描く可愛らしく活き活きとしたイラストが、それぞれのキャラクターに生命を与えてくれています。
そしてコミカライズを担当されているのは、むっしゅ先生。
むっしゅ先生といえば、私も大好きだった『ふりだしにおちる!』を描かれていた方(なんで2巻で終わったのか今も謎!)
『ふりだしにおちる!』は女子高校生たちのほのぼのとした日常を描いた作品でしたが、その雰囲気を纏わせつつも『わたなれ』の賑やかな感じをきっちり出していて、読んでいて全く違和感がありません!
特にデフォルメされたギャグテイストな部分ではむっしゅ先生のキャラの可愛さが遺憾なく発揮されていると思います。
2-3 物語:れな子の自虐ボケツッコミで進む物語が軽快かつ読み手の心を抉り突き刺してくる
物語に関しては、主人公のれな子を抜きにしては語れません。
ここで語りたいのはストーリーそのものというよりも、その描き方というか表現方法です。
原作のノベルはれな子自身の語り口調によって進行していくのですが、それがなんというか、もう絶妙なのです。
ラノベはこう書け!
と言いたくなるほど読んでいて楽しくなります。
高校デビューを果たしたれな子は根が陰キャであり、華やかな友達と行動をともにしていても内心では自虐に富んだ思いを抱え込んでおり、地の文で曝け出されるその自虐ボケとツッコミのリズムとテンポの良さが読み手をひきつけます。
ああ、隣を見れば、わたしの部屋に紫陽花さんが座っている……なんて幸せ……。
いや、じーんと感動に打ち震えている場合じゃない。『なに見てんの? うざ……』とか言われる。紫陽花さんはそんなこと言わない!『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 1巻 みかみてれん/集英社 より引用
なんとなく目についたところから引用しましたがこんな感じ。
そしてテンポだけでなくその自虐の内容そのものも刺さってきます。
陰キャを自覚する人は勿論、人なんて根から陽キャな存在なんてそうそういると思えず誰しも少なからずネガな要素は持っていると思っているのでそういう人にも刺さるはずです。
3、『わたなれ』のクインテットの本質的な魅力、そしてれな子というトリックスターとの関係性を考える
ライトノベルということもありますが、作品の魅力を大きく支えているのは登場するメインキャラクター5人であり、更に主人公であるれな子という存在です。
ここではクインテットの5人と、彼女たちとれな子の間にある関係性がどのような形にあるのかをご紹介します。
3-1 王塚真唯:王塚真唯が王塚真唯であること、それこそが真唯
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 1巻 むっしゅ、みかみてれん、竹嶋えく/集英社 より引用
王塚真唯は金髪碧眼のクォーターで誰もが認める完璧な美少女です。
母親は世界的に有名なデザイナーで、真唯も小さい頃からモデルとして活躍していて真唯本人も有名人です。
頭脳明晰で学年一位の成績を誇り、運動神経も抜群、それでいて気さくな性格をしており周囲の生徒には特に分け隔てなく接し、周囲からの人望も厚い、完璧超人にしてスパダリです。
これだけでも真唯が魅力的だと思いますが、あえて真唯の魅力を表現するならば
「王塚真唯が王塚真唯という存在である」
ことだと思います。
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 1巻 むっしゅ、みかみてれん、竹嶋えく/集英社 より引用
これだけ完璧なので真唯は当然のように自信家であり、「誰にも負けない」、「当然自分が一位だ」みたいな考えをしています。
そして実際に真唯は何でもできますし、やろうと思えば大抵のことを実現できると思いますが、真唯が求めるのは正面から正々堂々と達成することです。
もちろん、家の財力など法に触れず恥じることなく活用できるものは使いますが、それも状況を作り上げるまでのことであり、そこから先はただ一人の王塚真唯として動きます。
れな子に対してはもちろん、他の誰を相手にしても、
「私はこう思うしこうしたい、さあ、君はどうだ?」
と真正面から向かうのが真唯なのです。
下手な手練手管を使わず、相手の精神を揺さぶり逃げ道を塞ぐようなこともせず、それでも自分の思い通りになると思っています。
傲慢とも思えますが、その潔いほどの自信が王塚真唯たらんとするものであり、真唯の魅力を作り上げている部分でもあります。
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 1巻 むっしゅ、みかみてれん、竹嶋えく/集英社 より引用
ただ、ムカつく点であるのも確実であり、ムカつくからこそこんな真唯を凹ませたいとも思います。
そこがまさにれな子との関係性の部分でもあります。
真唯はれな子のことを本気で好きになり、恋人になろうと告白し迫るようになります。
れな子が求めているのは親友であり真唯の告白を拒否しますが、真唯はそんなこと気にせず最終的にはれな子も告白を受け入れると確信しています。
だけど、そんな真唯の鼻っ柱を叩き折るのがれな子であったりもするのです。
凹んだときの言動も真唯らしく、それもまた魅力であるのですけれどね。
■れな子との対比
通常、完璧超人で財力も容姿も能力も最高値の真唯に求愛されれば、例え同じ女性だとして靡かないわけがありません。
だけど、れな子は違います。
それまで友達すらまとも出来なかったのに恋人なんて、という思いはもちろんありますが、それ以上に、れな子が憧れるのは「普通」であることだからではないかとも思います。
過去に人間関係で失敗しているれな子は、皆から浮くこと、弾かれることを異常に恐れています。
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 1巻 むっしゅ、みかみてれん、竹嶋えく/集英社 より引用
そんなれな子にとって、真唯の恋人になることは「普通」ではないのです。
真唯のことは好きだ、でも恋人になるのは普通じゃない。この場合に適しているのは友達・親友になることだ、そう考えるれな子の思考が真唯に対して壁を作ることになります。
「王塚真唯が王塚真唯という存在である」という真唯の最大の魅力が障壁になっているわけです。
真唯が放つ光が強すぎて、真唯が纏う炎が熱すぎて、自分が触れるわけにはいかない。
だけど実は、その光は優しくもあり、炎は温かくもある。
れな子は、真唯自身も自覚が薄かったそのことに気づかせてくれた存在であり、王塚真唯もちょっと変わった「普通」の人間であると分からせてくれた存在、なのかもしれないと思ったりもしました。
3-2 琴紗月:どうしてこうなった!? クールビューティのはずがヤバイ女?
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 1巻 むっしゅ、みかみてれん、竹嶋えく/集英社 より引用
紗月は黒髪ロングのクールビューティで、その見た目通りに性格もなかなかクールで尖っています。
学業でも真唯に続く学年二位の成績を誇り、容姿、能力とも真唯の横に並んで立つのにふさわしいと思わせてくれる少女です。
ともすれば冷たい印象を抱かせてしまう紗月ですが、彼女の魅力はそんなところにはありません。
紗月の魅力を一言で表すならば、
「王塚真唯の厄介な拗らせ推しであることに起因する奇天烈な言動のキャラ」
であります。
何しろ紗月は真唯と幼馴染で小学生の時からの付き合いです。
それだけの期間、王塚真唯という完璧超人の間近にいて、真唯の完璧さを見せつけられてきたのです。
紗月が得意とする勉学はもちろん、スポーツやその他でも真唯に対して連戦連敗を重ねてきたわけです。
なまじ能力のある人間なら、その苦しさ、悔しさは想像を絶するものがあるのではないでしょうか。
紗月は何年間もの間真唯に負け続け、だけど真唯と友人であり続けた結果、真唯に対して非常に面倒くさく拗れた人間に育ってしましました。
真唯を負かすため、かなり人間性を疑うような行動をそれが生じさせる結果を深く考えずにしてしまうのです。
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 4巻 むっしゅ、みかみてれん、竹嶋えく/集英社 より引用
おいおい、紗月さんってそんなヤバくて面白い女だったの!?
そう思わせてくれます。
まあそれも全ては、れな子という異分子が現れたことで今までとは異なった方向で真唯を攻め立てることができると分かったからで、全てはれな子に起因するのですけどね。
だけど紗月の魅力のもう一つは、クールさの裏側にある優しさです。
常に真唯に挑み、本気で真唯に勝とうとし続けているのは、紗月が「真唯を独りにさせないため」なのです。
天下無双、完璧超人の真唯ですから、同世代の子達の中にあってはすぐに浮いてしまうのは目に見えています。性格もアレですし。
ただ、真唯が凄すぎて紗月も拗れてしまい、その優しさが非常に分かりづらくなってしまいましたが・・・
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 4巻 むっしゅ、みかみてれん、竹嶋えく/集英社 より引用
■れな子との対比
紗月とれな子は、真唯を挟んで対峙する同工異曲な存在なんだと思います。
紗月とれな子が真唯に対して行ったこと、行っていることって、「真唯を独りにしない」ということなんだと思います。
それは一緒にいるとか表面的なことではなく、本質的な意味合いで、です。
だけど、外面からはお互いにそうしているようには見えない。
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 4巻 むっしゅ、みかみてれん、竹嶋えく/集英社 より引用
そして紗月からしてみれば、紗月自身がずっと昔からやっていることを、ぽっと出のれな子がやってしまって、嬉しいような悔しいような憎たらしいような羨ましいような、そんな複雑な感情を抱かされてしまったのではないでしょうか。
紗月がこんな風にになってしまったのは、真唯を拗らせたのに加えてれな子というイレギュラーな存在のスパイスがあっからなのかもしれません。
3-3 瀬名紫陽花:癒しにして大天使、されど誰よりも普通の女の子
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 1巻 むっしゅ、みかみてれん、竹嶋えく/集英社 より引用
皆の天使、紫陽花さん。
いつもニコニコしていて他のクラスメイトとの関係性も良好、人当たりが良くて誰とでも仲良くできるような女の子です。
そんな紫陽花の魅力はといえば、
「普通の女の子が本気の恋をしている姿が尊すぎる」
っていうところだと思います。
作品未読の方にはネタバレになりますが、物語が展開する中で紫陽花はれな子にガチ恋することになります。
それまでの紫陽花も勿論可愛かったですし、天使ですし、魅力的なわけですが、恋をしてからの紫陽花の方が魅力を爆発させていきます。
ただこれは見せ方としても非常に上手く、れな子を始めとして真唯や紗月と少しばかり(?)常軌を逸したキャラクター達の中にあって紫陽花の普通の女の子らしさが輝きます。
れな子のことが気になりだして、好きになって、嬉しくなったり焼きもちを焼いたり、他の友人との関係性を気にしたり、そういった言動の一つ一つが恋する女の子としての魅力度を上げています。
また女の子同士の距離の近さというのも一役買っていると思います。
そこで見せるのは「天使」の紫陽花ではなく、ごく普通の人間臭さを見せる紫陽花です。
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 5巻 むっしゅ、みかみてれん、竹嶋えく/集英社 より引用
だからこそ、序盤のふわふわしていて可愛いけれど掴みづらいものではなく、人間味に溢れた本当の紫陽花の姿が見えてきて、人間らしい部分が感じられるからこそ身近な魅力を感じられるのだと思います。
- れな子に恋するまでの紫陽花は、離れた所から鑑賞して可愛いなと思うような魅力。まさに実態のない天使を愛でるような感覚。
- れな子に恋した後の紫陽花は、実際に手の届く女の子としての魅力。
その変化のさせ方もまた非常に上手かったと思います。
■れな子との対比
いつも明るくてニコニコして人当たりがよく、クラスメイトの誰からも好かれる。
家では小さな弟二人の面倒を見るお姉さんだけど時にはやんちゃな弟に手を焼いて怒ってしまうこともある。そして、恋だってする。
こうしてみると分かる通り、紫陽花こそ実はれな子が憧れている普通の女の子にもっとも近い存在だと思います。
だけどれな子は紫陽花のことを「天使」と称え、そのような意識は持っていません(とはいえ、天使であることは否定しませんが!)
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 1巻 むっしゅ、みかみてれん、竹嶋えく/集英社 より引用
紫陽花の容姿と醸し出す空気感がれな子にそう思わせているのかもしれません。
また一方で紫陽花は人当たりの良さは人との距離感をうまくとる分、人から深く突っ込まれてきたこともないと思われます。
だから、れな子に真正面から「好き好き大好き!(友達として人として)」とぶつけられたことで、れな子のことを想い、好きになったのだと思います。
そういう意味ではお互いに相思相愛、だけど人との付き合いが下手くそなれな子は気が付かない。
運命の人は実はすぐ近くにいる、だけど気が付かない。
そんな二人のようにも見えますね。
3-4 小柳香穂:みんなの妹でパリピな陽キャ、だけど全てはれな子が始まりだった!?
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 1巻 むっしゅ、みかみてれん、竹嶋えく/集英社 より引用
香穂は真唯のグループにおけるムードメーカー的な役割を持ち、その容姿や言動は「芦ヶ谷の妹」として男女問わず全校生徒から可愛がられているほどです。
真唯のことが好きで、入学早々に真唯に告白したというほどの行動力も持ち合わせています。
しかし正直、香穂は物語の序盤はあまりコレといった活躍をみせず目立ちません。
真唯、紗月、紫陽花にスポットライトが当たる中、賑やかしのような感じで出番も多くありません。
ですが、そんな香穂の真の姿が見られたあとでわかる香穂の魅力とは
「陽キャのコスプレをしただけの激重なオタク系陰キャである」
ことです。
未読の方にはネタバレになりますが、香穂も実はれな子と同類です。
元々は内気でオタクで陰キャな香穂ですが、陽キャのコスプレをすることで今のキャラになっています。
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 4巻 みかみてれん、竹嶋えく/集英社 より引用
コスプレとはそのキャラクターになり切ることであり、変身することです。香穂はコスプレの力を借りて陽気なキャラクターを演じているだけで、実際は人と話すのが苦手なコミュ障の女の子なのです。
そのギャップの可愛さもありますが、アニメオタクで重度のコミュ障が陽キャの仮面を被って演じていると思うと、そして香穂の過去のことを知ると、それまでの香穂の見え方も変わってくるというところです。
■れな子との対比
れな子と香穂の関係性は、真実が明確になると実に尊いものに思えてきますね。
いわば、鏡映し。
香穂はかつて知り合い仲良くなった甘織れな子に憧れ、その子になりきれば自分も明るく楽しくなれると思いました。
香穂が陽キャのコスプレをしているその対象は、れな子。
一方で、れな子は中学時代にやらかしてこじらせた後に高校デビューをして香穂と再会した時、れな子は香穂こそ明るく誰とでも仲良くなれる陽キャのパリピだと思いました。
ある意味で、れな子が理想とする女の子でありますが、実は香穂が見せていたその姿はれな子のコスプレをしていたというもの。
お互いが見ていた相手の上には、実は自分自身がいた。
序盤では分からなかったそんな二人の関係性には、どこかたまらないモノを感じます。
3-5 甘織れな子:自分自身が変わろうと、変えようと全力で動く姿がヒロインと読者の心に刺さる主人公
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 1巻 むっしゅ、みかみてれん、竹嶋えく/集英社 より引用
満を持して主人公の登場です。
高校デビューに成功して真唯グループに属するも、もとが陰キャゆえにグループ内での活動にHPとMPを根こそぎ吸い取られてしまうようなれな子。
香穂も実は陰キャでコミュ障だったことが分かりますが、人と話すことが苦手だったタイプのコミュ障だった香穂に対し、れな子は周囲の空気を読むことが出来ないタイプのコミュ障でした。
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 1巻 むっしゅ、みかみてれん、竹嶋えく/集英社 より引用
更に香穂との関係性で分かった事実として、もとは陰キャではなくむしろ陽キャに近かったけれど、コミュ障が災いして人間関係に失敗したことを気に陰キャ化したということも分かります。
そんなれな子の魅力は色々とあるわけですが、一番は
「自分や周囲の状況を良くするため、全力で考えて悩んで努力する姿」
なのかなと思います。
『わたなれ』の原作ラノベはれな子の一人称の語りであり、れな子の思考が読者に駄々洩れとなります。
そんなれな子が真唯、紗月、紫陽花、香穂という多くのヒロイン達から好かれるほど魅力的なキャラであると読者に納得させるためには、読者にも好かれる必要があります。
読めばわかりますが、れな子は自虐的で自己評価が低くて空気が読めないコミュ障ゆえ、言動が斜め上に突っ走りがちです。
だけどれな子は巻き込まれ型主人公ではなく、問題に対して立ち向かい、れな子の中で最大限に出来る頑張りをして状況を変えようと能動的に動く主人公です。
その方向性がおかしいというのはあるかもしれませんが、苦手であっても相手のことを考え自分のことを考え、よりよいと思うことをしようとする姿を見せられるからこそ魅力的だと思えるのです。
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』 5巻 むっしゅ、みかみてれん、竹嶋えく/集英社 より引用
満を持した割には短くまとまってしまいましたが、れな子については他4人についての紹介の中で書いておりますので、そちらに含まれてしまってもいます。
あとは、やはり『わたなれ』原作に全てがありますので、未読の方は是非、そちらを読んでいただければと思います!
4、まとめ
今回は『わたなれ』のキャラクターに主眼をおいてご紹介しました。
魅力的なキャラクターが数多くいますが、なんだかんだいって主人公・れな子という存在が他のキャラも輝かせていると思っており、れな子が全てなんですよ。
なんていったられな子は部屋に引きこもってぴーえすふぉーくんに語るだけになってしまいかねませんが。
いずれにしてもノベル、コミック、そしてアニメと展開する『わたなれ』を是非、ご覧になってみてください!
以上、マンガフルライターの神門でした。
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