みなさんこんにちは、【今週の1冊】として毎週、直近に読んだ作品(時には古い作品も!)をご紹介するマンガフルライターの神門です。
皆さんが作品を購入するご参考にしていただければと思います。
今回ご紹介するのは
『君のためのカーテンコール』
です。
演劇をテーマにした作品は、熱血青春ものが多いイメージです。
特に学生の演劇ともなれば、それは情熱をぶつけあうような作品が多くなるのも頷けます。
本作も勿論、それに違わぬ作品でありますが、そこに百合な風味もつけあわせている感じです。
高校二年生の阿久津桜は人と話そうとする前に自分の中で色々と考えてしまい、なかなか自分の思いを言葉にすることが出来ませんでした。
周囲の人たちのペースにあわせることができず、自分が思っていないことでも流れに乗るため人に合わせてしまうことが多い。
桜はそんな生活を、息もできない海の底だと、世界はまるで濁流のようだと考えていました。
ところがある日、桜の前に転校生の柊つばめが現れます。
有限な命、短い学園生活、全力で生きなければつまらないと宣言するつばめに、桜だけでなく学園が度肝を抜かれます。
そのつばめと廊下でぶつかり、落としてしまったノートを取り違えたところから桜の物語は大きく動き始めます。
桜がノートに綴っていたのは、桜の声であり、桜が描いた世界である、小説。
出来心から読んでしまったつばめは読むのを止められなくなってしまい、桜の小説が大好きだと言い、桜の声をつばめが世界に届けようと言います。
そうして始まった二人の演劇部。
熱い、青春物語が幕を開けたのです。
「君のためのカーテンコール」 1巻 さとうしほ、恵茂田喜々/一迅社 より引用
ということで。
- 引っ込み思案というか、周囲のペースにあわせられない女の子が脚本を描き
- その子の手を引っ張る、活力に満ちた女の子が演じる
王道と言えば王道のコンビでありカップルですが、青春物語はそれで良いと個人的に思います!
行動力に溢れたつばめは、すぐに演劇部を作り出そうと動き出し、正式な部でもないのにいきなり公演を行うと宣言。
桜はつばめの行動力に驚きつつも、自分にないものを持っているつばめに引かれ、少しずつかわっていきます。
「もし失敗したら」
誰も知らない演劇部がいきなり公演をするといって、誰か観に来るのか。
来てくれたとして、素人の書いた脚本と劇を楽しいと思ってくれるのか。
不安しか抱かない桜に対してつばめは、「失敗したならダメだったと笑いあおう!」と笑顔で言います。
「君のためのカーテンコール」 1巻 さとうしほ、恵茂田喜々/一迅社 より引用
失敗を恐れて何もしないことを恐れるつばめ、言葉でいうだけなら簡単ですが、実行するのは難しい事。
そうしてつばめに手を取られて動きだす桜も、少しずつ自分の意思を出していくように。
特に、自分の作り出した物語、その意味と解釈については強い思いをつばめにも告げるようになります。
ただ単に芝居のことを描いているというより、やはり青春物語ですから、主は桜とつばめという二人の少女を描く物語です。
ここまで、つばめはとてもポジティブで人を引っ張っていく女の子のように書いてきましたが。
実際には自分のことを「ボク」と言い、転校初日から色々とぶちかまし、実際には周囲から「痛い人」と見られていたりもします。
だけど桜にとってはそんなことはない。
そう見られていることが桜は悔しい。
だから、新入生向けの部活動紹介の場で桜はぶちかまします。
破天荒なつばめが真ん中に見えて、だけどこの作品は、桜が書きたい物語を見せるもの。
「君のためのカーテンコール」 1巻 さとうしほ、恵茂田喜々/一迅社 より引用
もちろん、つばめだってただ単に痛い人というわけではありません。
つばめが抱えているもの、その裏に隠されているものも、この巻の中でもちょっと描かれています。
二人がお互いの欠けた部分を補い合うのとはちょっと違いますけれど、この二人だから埋めあえるものがあるのも確か。
それが、明確な百合ではないのだけれど、百合を感じさせているのがまた雰囲気にも合っています。
劇団員として活躍している久世珊瑚も演劇部に加え、ここからどのような世界を桜が描いていくのか。
注目していきたいと思います!
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