みなさんこんにちは、【今週の1冊】として毎週、直近に読んだ作品(時には古い作品も!)をご紹介するマンガフルライターの神門です。
皆さんが作品を購入するご参考にしていただければと思います。
今回ご紹介するのは
『写らナイんです』
です。
オカルトものってのはいつの世も需要があり一定の人気を誇っています。
怖いの嫌い、絶対嫌だという人がいる一方、その筋の固定ファンがいて途切れることはありません。
怖いもの見たさってのもあるでしょうし、次にどんなことが起こるのか、何が出てくるのか、そういう期待もあるのかもしれません。
かくいう私自身は怖いモノ、ホラー系は苦手で、映画やゲームや小説はもちろん、漫画でも怖い系はあまり読みません。
本作もホラーでありオカルトではありますが・・・コレはちょっと違う!?
何せホラーでありオカルトでありますが、爽やかな青春ホラーでありコメディであるからです!
主人公の黒桐まことは生まれた時からの「超霊媒体質」で、視えてはいけないものを引き寄せてしまいます。
- 写真をとれば必ず心霊写真
- 学校では近くにいる人にオカルト現象を発生させる
- 常にヤバイものが身近にいてつきまとう
「写らナイんです」 1巻 コノシマ ルカ/小学館 より引用
親からも見放され、友達もできず、一人でいることが当たり前になっていました。
そんな黒桐が新たに転入した高校にはオカルト部があり、唯一の部員が橘みちる。
心霊写真がとりたい、オカルト現象を体験したい、霊感がほしい、そう強く願う橘ですが、実際は霊感ゼロ!
だけどその霊感の無さは黒桐の「超霊媒体質」をも上回り、黒桐の周囲に現れる霊たちを容赦なく成仏させていく!
- 黒桐を撮影しても成仏させてしまうので心霊写真にはならず
- 霊に触りたいと思って手を伸ばして触れれば成仏させ
- あまりの音痴さで歌によって霊を成仏させ
「写らナイんです」 1巻 コノシマ ルカ/小学館 より引用
でもそんな橘だからこそ黒桐と一緒にいることができるし、橘は霊媒体質の黒桐のことを尊敬して懐いていきます。
黒桐にとっては、生まれて初めて普通に接してくれて一緒に部活動したり、遊んだりすることができる相手。
橘との出会いによって黒桐もその行動や考え方も少し変わっていきます。
そんな黒桐と橘の二人の関係性と黒桐の変化を描いていく、青春ホラーコメディ作品なのです。
本作で感じたのは、オカルトやホラーはメインではなく主題を活かすための素材なのかなということ。
主題はあくまで青春であり、黒桐の成長なのではないかなと。
何かコンプレックスをもった主人公が周囲と隔絶している中、他の人とは異なる誰かに影響を受けて変わっていく、成長していく。
そういう作品は描き方の違いこそあれど珍しいものではないと思います。
本作はその主人公のコンプレックスに「超霊媒体質」、オカルト現象を使っているわけですが、それがこの主題にはよくマッチする素材なのですよね。
「写らナイんです」 1巻 コノシマ ルカ/小学館 より引用
誰だって自分の身にホラーなことは起きて欲しくないし、そんなことを引き起こす人には近づきたくないと思います。
オカルトが好きな人だって、自分が死にたいわけではない。
だけど橘は全く霊感がない上に自らオカルト現象を欲するから、黒桐の周囲にあった壁を容易にぶち壊す。
むしろ、壁などないものかのように振る舞うわけです。
「写らナイんです」 1巻 コノシマ ルカ/小学館 より引用
そして黒桐も、橘なら自分の体質が迷惑をかけることがないと分かるから、徐々に普通に接することが出来るようになるし、今までなかった経験をすることで考え方も変わっていくのは自然なこと。
実にテーマと相性が良いですね。
そして暗くて重くなりそうなテーマを明るくしているのが絶妙なギャグテイストです。
橘という無霊感少女の存在が全てを吹き飛ばしてくれます。
「写らナイんです」 1巻 コノシマ ルカ/小学館 より引用
読んでいる方も思わず笑ってしまいます。
無邪気に霊を求めるも、その体質によって全てを無にしてしまう女、橘みちる。
彼女の明るさと優しさ、そして純粋で真っすぐなアホさは作品を、そして黒桐を救います。
他に、謎の強さを誇るオカルト部の顧問の先生(元・オカ部所属)もいて、物語に彩りを添えます。
友情、成長、ギャグ、オカルト。
それらが絶妙なバランスで成立しており、魅力的な作品に仕上がっています。
あ、怖くないようなこと書いてますけれど、ホラーの描写もちゃんと怖いですよ?
ただその印象が、橘の素敵で可愛いアホさで上書きされてしまうだけなのです。
これは良きお薦めの一作!
コメントを残す