みなさんこんにちは、マンガフルライターの神門です。
今まで、あえて書くのを避けていたテーマの記事があります。
それは、
『はじめの一歩』
です。
テーマは『はじめの一歩』ベストバウトなのですが、はっきりいって今更感が強すぎる!
というか、このテーマにすると、誰がどうやっても上位にくる試合は決まってしまうんですよ!
他でも腐るほど話されてきたテーマであろうし、今更やる意味があるのかとも思いましたが、改めて『はじめの一歩』を読んでみると。
お、面白ぇ!
熱い!
何回読んでも面白いし、試合に引き込まれ盛り上がります。
いや、きっとそういう人も多いはず。
好きな人は何度やろうが好きだし面白いし、何より私自身が楽しいじゃないか!
といういことで今回、改めて『はじめの一歩』ベストバウトをお届けします。
で、せっかく書くのであれば、多少なりとも独自視点を交えてお伝えしたいと思います。
連載が長すぎて脱落しちゃったよ、という方も、この記事を読んで思い出してみてください!
目次
- 1、『はじめの一歩』ってどんな作品?
- 2、『はじめの一歩』ベストバウト8選!
- 8位 幕之内一歩 vs 間柴了:間柴の勝利に対する執念を刻みつけた試合
- 7位 幕之内一歩 vs 伊達英二:チャンピオンの拳の重さを知らされた一歩の初の敗戦
- 6位 鴨川源二 vs ラルフ・アンダーソン:鴨川と猫田の友情、一歩に繋がる愚直なまでの拳
- 5位 伊達英二 vs リカルド・マルチネス:絶望的な展開の中で伊達英二自身を取り戻す
- 4位 ヴォルグ・ザンギエフ vs マイク・エリオット:息詰まる頭脳戦!
- 3位 幕之内一歩 vs 千堂武士:東西の雄、日本一の拳を決める戦い!
- 2位 木村達也 vs 間柴了:ドラゴン・フィッシュブローが死神の鎌を打ち砕く!
- 1位 鷹村守 vs ブライアン・ホーク:日本の鷹が世界の鷹となった一戦!
- 3、まとめ
1、『はじめの一歩』ってどんな作品?
著者 | 森川ジョージ |
出版社 | 講談社 |
掲載雑誌 | 週刊少年マガジン |
掲載期間 | 1989年~ |
単行本巻数 | 既刊139巻(2024年1月現在) |
ジャンル | スポーツ |
『はじめの一歩』は森川ジョージ先生が週間少年マガジンで連載しているボクシング漫画です。
主人公の幕之内一歩は母子家庭に育った気弱な少年で、高校では同級生の不良たちにいじめられていました。
しかしある日、プロボクサーの鷹村守に会ってボクシングに興味を持ち、鴨川ボクシングジムに入門しました。
そうして、いじめられっ子だった一歩が、多くの仲間やライバルと出会って戦う中で成長していく姿を描いていく作品です。
1989年から今もなお連載の続く人気作品で、多くの人に感動と勇気を与えてきました。
2、『はじめの一歩』ベストバウト8選!
それでは早速、『はじめの一歩』ベストバウトを発表します。
TOP8と順位を付けていますが、冒頭にも記載したように本作のベストバウトは多くの人が同じ試合を上位に挙げることが多く、それだけ突出しているともいえます。
今回の記事も奇をてらわず、おそらく多くの人が選ぶであろう試合を選出していますが、ベストバウトにはベストバウトたる理由もあると思います。
そこで本記事では、以下の2点を付け加えました。
■試合に至るまでのストーリー性
試合には単なる練習試合から世界タイトルマッチまで色々とありますが、その試合に至るまでのストーリーも重要です。
- 戦うキャラクターが、対戦相手も含めてどのような気持ちで試合に臨んでいるのか
- その試合に何を賭けているのか
そういうものがあるからこそ、戦いの中身にさらに大きな意味が出てきます。
そういった試合に至るまでのストーリー性の魅力をご紹介します。
■ベストバウトを決めた1シーン
名試合には、その名試合に相応しいシーンがあります。
個人的に、「コレは外せない」という1シーンを切り取ってご紹介します。
8位 幕之内一歩 vs 間柴了:間柴の勝利に対する執念を刻みつけた試合
「はじめの一歩」 10巻 森川ジョージ/講談社 より引用
東日本新人王トーナメントの決勝戦です。
間柴は一歩との再戦を熱望していた宮田を倒して勝ち上がってきましたが、その勝ち方は決して褒められるものではありませんでした。
一歩は、間柴に対して並々ならぬ思いを抱いて試合に挑みます。
一方で間柴も負けるわけにはいきません。
フリッカージャブを放つ左腕の肘を一歩の拳により破壊された間柴。
一方で一歩もエルボーガードする間柴の硬い左肘を殴り続けたことにより右の拳を痛めます。
そんな状態でも右の拳で叩きつける一歩と、壊れた左腕を使う間柴の、意地と執念の戦いはまさに決勝に相応しいものだったと思います。
■試合に至るまでのストーリー性
間柴の存在は、これまで登場してきたキャラクター達とは異なり、「闇」あるいは「陰」のオーラを纏ったようなキャラクターだと思います。
見た目もそうなら言動もそうで、ボクシングに関してもとにかく勝利優先、勝てば何でもよいと、勝利に対して凄まじいまでの執念を燃やしています。
それというのも、間柴は17歳の時に両親を亡くして以来、妹の久美と二人暮らしをしています。
ボクシングをする傍らで働いてもいますが、昔から素行が悪く保護観察もついているような立場で、職場からもすぐに首を切られてしまいます。
自分だけでなく妹の久美に楽をさせるため、間柴は負けるわけにはいかないのです。
「はじめの一歩」 10巻 森川ジョージ/講談社 より引用
もちろん、だからといって試合で不正をして良いわけではありませんが、試合ではなく勝利にかける思いは誰よりも強いということを分からせてくれます。
■ベストバウトを決めた1シーン
間柴は一歩の執拗な強打により、武器であるフリッカージャブを放つ左腕を壊されてしまいます。
左腕を封じられたまま試合に勝てるほど甘い世界ではありません。
一歩の強烈なボディブローを喰らい、間柴の脳裏に「負け」の二文字がよぎります。
だけど、兄妹二人となり、ずっと苦労をかけていた妹の久美のためにも負けられない間柴は、凄まじい執念で左腕を上げたばかりか、その拳を一歩に叩きつけます。
「はじめの一歩」 10巻 森川ジョージ/講談社 より引用
この先の試合でも間柴は凄まじい執念を見せてくれますが、その間柴の凄さを見せてくれたこの試合の1シーンが後々まで強烈に残っています。
7位 幕之内一歩 vs 伊達英二:チャンピオンの拳の重さを知らされた一歩の初の敗戦
「はじめの一歩」 21巻 森川ジョージ/講談社 より引用
7位にあげたのは、一歩がフェザー級の1位となっていよいよ日本チャンピオンの伊達英二に挑んだ一戦です。
10戦10勝10KOの戦績を引っ提げて、いよいよタイトルマッチに臨む一歩。
社会的にはまだ青二才と言われてもおかしくない年齢(29歳)の伊達ですが、ボクサーとしては既にベテランの域に入っています。
それに対し、一歩はデビュー戦からまさに飛ぶ鳥を落とす勢いの若武者。
待ち受けるベテランのチャンピオンと、それに挑む新鋭という実に分かりやすい構図です。
伊達の技術や経験の前に、一歩は若さを活かしたスピードとパワーで迫ります。
しかし、千堂やヴォルグを倒してきたパンチを当てても倒れない伊達に、一歩は次第に余裕をなくしていきます。
一進一退に見える試合でしたが、最後は伊達がハートブレイクショットを放ったことで鴨川会長がタオルを投入。
一歩にとって初めて敗戦を味わう試合となりました。
■試合に至るまでのストーリー性
この試合に至るまでに何度となく描かれたのが、「拳の重さ」です。
「はじめの一歩」 20巻 森川ジョージ/講談社 より引用
単純にパンチが重い、軽いという問題ではありません。
それは、その拳に乗せられた思いや気持ちの強さのことです。
チャンピオンの伊達は若かりし頃に世界チャンピオンに挑み、手も足も出ず2ラウンドでKOされました。
敗戦のショックを負ったまま帰国した伊達を待ち受けていたのは、最愛の妻が流産した姿でした。
そのことをきっかけに一度はボクサーを引退しましたが、26歳の時に現役を復帰して日本チャンピオンに返り咲き、再び世界を目指しています。
29歳の伊達は一度負けたら後はなく、また妻や新たに生まれた長男、そして亡くなった子供のために、チャンピオンである姿を見せ続ける必要がありました。
最強の挑戦者である一歩に負けるわけにはいかないのです。
■ベストバウトを決めた1シーン
4ラウンド、一歩が伊達にガゼルパンチをクリーンヒットさせます。ヴォルグを倒したパンチであり、一歩も手ごたえを感じますが、それでも伊達は倒れません。
その一歩のパンチを受けた後の伊達が見せるシーンですね。
「はじめの一歩」 22巻 森川ジョージ/講談社 より引用
一歩のパンチを軽いと言い、更にチャンピオンの拳の重さを味わってみろと言います。
痺れますね!
まさに伊達がこの試合で一歩に見せたかったものであり、その後も見せ続けるチャンピオンの意地でした。
6位 鴨川源二 vs ラルフ・アンダーソン:鴨川と猫田の友情、一歩に繋がる愚直なまでの拳
「はじめの一歩」 46巻 森川ジョージ/講談社 より引用
時は戦後、日本がアメリカの支配下にある時代です。
そこで行われた若き日の鴨川源二と米兵ラルフ・アンダーソンの一戦をあげます。
鴨川の試合ではありますが、これは鴨川の親友・猫田の試合と地続きでもあります。
猫田はパンチドランカーの症状が出始めていましたが、試合で劣勢になったアンダーソンの反則のパンチ(後頭部を殴るパンチ)により致命的なダメージを受けて敗北します。
その猫田の敵を討つため、そして日本人としての誇りを見せるため、鴨川は圧倒的な体格差を誇るアンダーソンに真っ向から勝負を挑みます。
猫田のような華麗な足も技術も持っていない鴨川は、打たれ続けながらも愚直にアンダーソンに向かいます。
病床から抜け出してきた猫田の檄を受けた鴨川は、猫田のアドバイスも受けると、左右のボディブローでアンダーソンの腹を文字通りに破壊して勝利を収めたのでした。
■試合に至るまでのストーリー性
戦争に敗れて復興しつつある日本ですが、それでもなお米兵の下にあることは変わりません。
そんな中、猫田は想いを寄せるユキに勇気と希望を与えるためアンダーソンに挑みますが、反則技の前に敗北を喫します。
パンチドランカーの症状がありながら一人で戦い続けた猫田の無念を晴らすため、鴨川はアンダーソンに挑みます。
「はじめの一歩」 45巻 森川ジョージ/講談社 より引用
圧倒的な体格を誇るアンダーソンを倒すため、鴨川は土手に埋めた丸太を殴り続けて埋め込んでしまうほど打ち込み、鉄の意志が乗り移った文字通り鉄の拳を作り上げて試合に臨みます。
敗戦後の日本で、親友の無念を晴らすため、そして好きな女性に生きる力を与えるため、圧倒的な力を誇る米兵に、決して折れない勇気と根性で立ち向かいます。
まさに日本人が好む物語だと思います。
■ベストバウトを決めた1シーン
苦戦する鴨川に対し、駆けつけた猫田が気合を入れてやるとパンチを放ちます。
しかし、鴨川にあたったのはヘロヘロのパンチ。
かつて電光石火を誇ったパンチが、見るも悲しいくらいに力を失ってしまいましたが、それでも鴨川は、これほど痛い拳は初めてだと言ってアンダーソンに再び立ち向かいました。
恐らく鴨川にしか分からない猫田のパンチの痛み。
これにこたえなければ男ではないと鴨川は奮起します。
「はじめの一歩」 46巻 森川ジョージ/講談社 より引用
これがあったからこそアンダーソンに勝てたと思います。
まさに、二人の勝利でもあると感じさせてくれました。
5位 伊達英二 vs リカルド・マルチネス:絶望的な展開の中で伊達英二自身を取り戻す
「はじめの一歩」 37巻 森川ジョージ/講談社 より引用
伊達がかつて辛酸をなめた相手が世界チャンピオンのリカルド・マルチネスです。
リカルドは伊達が一度は引退し、そして復帰してから再挑戦するまでずっとチャンピオンの座を防衛し続けてきた、無敗の最強チャンピオンです。
伊達はボクシング人生をかけてリカルドに再び挑みます。
かつて何もできずに敗れた23歳の時とは違います。
様々な経験を経て技術を手にし、新たな武器も手に入れ、以前とは違うところを見せる伊達ですが、それでもこの試合が見せる絶望は半端ないものがあります。
必殺のコークスクリューをエルボーガードによって防がれただけでなく拳を壊され、ハートブレイクショットも通じず、ボロボロになって敗戦する伊達。
リカルドの強さを見せつけ、フェザー級でしのぎを削る一歩や千堂の目標として描かれたこの一戦は、無情で絶望的ではありますが、『はじめの一歩』を語る上では忘れてはいけない一戦だと思います。
■試合に至るまでのストーリー性
伊達はかつて完膚なきまでに叩きのめされた相手に、雪辱を期して再戦します。
しかもその間に一度は引退し、復帰してブランクを埋め、ベテランになってなお全盛期を取り戻してリカルドに挑みます。
伊達がリカルド個人に恨みがあるわけでもなく、憎悪しているわけでもありません。
それでも、リカルドに負けて、再戦することもなく逃げ続けているわけにはいかず復帰したのです。
それは、かつてリカルド戦で失ったもの=伊達英二という男そのものを取り戻すため。
伊達英二が伊達英二であるために、戦いに臨むのです。
「はじめの一歩」 37巻 森川ジョージ/講談社 より引用
一度は地獄の底に落とされて這い上がってきた男と、ずっと頂上にい続ける男。
試合前から凄まじい戦いになることを予感させるものだと思います。
■ベストバウトを決めた1シーン
伊達は全盛期を超える力をもってリカルドに挑戦しましたが、リカルドはそんな伊達をも遥かに上回る力をもって伊達を捻じ伏せます。
王者の攻撃をただ凌ぐことしかできず、それも限界を迎えてきます。
右拳は砕け、顎は砕け、アバラも折れ、もはやなすすべもなくなったように見えます。
それでも戦うのは何故か?
前述した、伊達英二が伊達英二であること。
それは、妻の愛子に、惚れた女の前で格好をつけたいということ。
「はじめの一歩」 38巻 森川ジョージ/講談社 より引用
自分の女が見ている前で無様な姿は見せられない、彼女の前でカッコつけたい、それこそが伊達が戦う理由であり、伊達英二が伊達英二であることなのです。
その気持ちを思い出してリカルドに向かって放った“ハートブレイクショット”
この一連の流れは、『はじめの一歩』の中でも屈指の名場面であり、名言でもあったと思います。
骨ならいくらでもくれてやる
――そのかわり
キサマの魂をオレにくれっ!!
「はじめの一歩」 38巻 森川ジョージ/講談社 より引用
4位 ヴォルグ・ザンギエフ vs マイク・エリオット:息詰まる頭脳戦!
「はじめの一歩」 102巻 森川ジョージ/講談社 より引用
4位に選んだのはヴォルグの世界挑戦の試合です。
相手はIBFジュニアライト級の世界チャンピオン、マイク・エリオットです。
ともにアマの世界で腕を上げてきた、ピカ一の技術、そして頭脳を持った選手です。
準備期間が一週間しか与えられなかったヴォルグは、最初の数ラウンドは試合勘も戻らず、必殺のホワイトファングも破られて窮地に陥ります。
飛燕を駆使してどうにか立ち直った中盤戦以降は、エリオットと凄まじい頭脳戦を繰り広げていきます。
観客たちも息をのむようなハイレベルの頭脳戦は、今までの『はじめの一歩』ではなかなか見られなかった戦いです。
更に、エリオット陣営が行っていたレフェリー買収や、それに対するヴォルグの対応など、試合そのもの以外にも見所の多い試合でした。
■試合に至るまでのストーリー性
家庭に色々な事情を抱えたボクサーは多いですが、ヴォルグに至ってはさらに海外からの輸入ボクサーというものを背負っています。
日本で一歩、千堂に連敗し期待に応えられなかったヴォルグは、一度は引退したものの渡米してカムバックします。
しかしアメリカでもアウェイであることには変わらず、どれだけ勝利してランキング一位になろうともタイトルマッチには縁がありませんでした。
しかしIBF王者の対戦相手が負傷し辞退した防衛戦の相手の代役として指名され、わずか一週間の準備期間で世界戦に挑むことになりました。
常に逆境で戦い続けてきたヴォルグは試練の連続であり、一週間の準備期間しか与えられない状況にも関わらず、ヴォルグはチャンスが来たと決して後ろ向きになることはありませんでした。
「はじめの一歩」 101巻 森川ジョージ/講談社 より引用
逆境の中で世界チャンピオンに挑む。
常に逆境の中で戦ってきたヴォルグですが、彼にとってはもしかしたら逆境ですらないのかもしれません。
■ベストバウトを決めた1シーン
この二人の戦いはチェスになぞらえられています。
しかし、最後になってものを言ったのは、やはり戦士としての本能であり、生き残るために戦うという意志の強さでした。
レフェリーさえエリオットの味方となり、準備不足だったヴォルグは体力的にも限界を迎えます。
それでもヴォルグは迷わずに立ち向かい、自分自身の想いに身を任せて立ち向かいます。
エリオットが見たのは、そんな手負いの狼。
「はじめの一歩」 103巻 森川ジョージ/講談社 より引用
殺らなければ殺られるという、ただそれだけのシンプルなこと。
ヴォルグの想いと、その想いを感じ取ったエリオット。
この瞬間をあげたいと思います。
3位 幕之内一歩 vs 千堂武士:東西の雄、日本一の拳を決める戦い!
「はじめの一歩」 28巻 森川ジョージ/講談社 より引用
3位に選んだのは一歩と千堂の二回目の戦い、“LALLAPALLOOZA”です。
かつてお互いに東日本と西日本の新人王となって戦った時以来の試合となります。
その時、一歩に負けた千堂は、フェザー級の日本チャンピオンとなって一歩を待ち受けます。
一方の一歩も、伊達戦での敗戦から再起して改めて日本チャンピオンを目指しての挑戦となります。
ともに強打のインファイターですが、新人の頃とは違い一歩はデンプシーロールを習得し、千堂もまた課題を克服し強打に更なる磨きをかけてきました。
KO必至の戦いは戦前の予想に違わぬ大熱戦となります。
一歩が開幕デンプシーロールでいきなり千堂からダウンを奪うと、そこから両者とも全開で壮絶な打ち合いが開始されます。
「はじめの一歩」 29巻 森川ジョージ/講談社 より引用
強打と強打、デンプシーロールとスマッシュが正面からぶつかりあい、観客たちも盛り上がりまさに“LALLAPALLOOZA”に相応しい試合。
互いに倒し、倒され合う壮絶な試合は最後まで見所満載でした。
■試合に至るまでのストーリー性
一歩と千堂の試合のストーリー性は語るまでもないかもしれません。
お互いに同じ年に東西の新人王となって戦い、その時は一歩が千堂に勝ちました。
その後、再戦を誓って互いに成長し、勝ち続け、そして巡り合った再戦の場が日本チャンピオンのタイトルマッチ、燃えないはずがありません。
「はじめの一歩」 28巻 森川ジョージ/講談社 より引用
千堂の戦績は16戦15勝、唯一の敗戦相手が一歩です。
そして一歩の戦績は11戦10勝、唯一の敗戦はタイトルマッチでの伊達が相手の時です。
互いが因縁のある相手であり、因縁のある試合、それも日本最強の頂点を決める試合での再戦と、ここで盛り上がらないでどうする!
という試合であり、そんな二人が繰り広げるのにふさわしい試合でした。
■ベストバウトを決めた1シーン
序盤から試合の終盤まで見所だらけの試合になります。
読んでいて力の入るシーンも沢山あり、一つに絞るのがなかなか大変な試合ではあるのですが、私が選んだのはこちら。
運命の第7ラウンド、両者とも肉体ダメージが大きくここが最後と決めたラウンドです。
一歩はデンプシーロール、千堂はスマッシュと、互いの得意技を正面からぶつけあった中での1シーンです。
千堂のスマッシュをよけて千堂に入り込む一歩。
一歩を見下ろす千堂と、千堂を見上げる一歩が、目だけで互いを呼び合うシーン。
「はじめの一歩」 30巻 森川ジョージ/講談社 より引用
心の内ではありますが、このお互いの名前を呼ぶ一言にどれだけの思いが込められているか。
それを感じさせるシーンでした。
2位 木村達也 vs 間柴了:ドラゴン・フィッシュブローが死神の鎌を打ち砕く!
「はじめの一歩」 31巻 森川ジョージ/講談社 より引用
2位にあげたのは、ベストバウトといえば外せない木村と間柴の一戦です。
青木とともに一歩のよき先輩である木村は実力も確かではありますが、チャンピオンになるまではいきません。
そんな木村にようやく巡ってきたチャンス、その相手が間柴でした。
階級をJライト級にあげ減量苦から逃れた間柴は圧倒的な強さを誇ります。
木村も序盤は、間柴のリーチの長いフリッカージャブに近寄ることすらできません。
「はじめの一歩」 32巻 森川ジョージ/講談社 より引用
しかし耐えに耐えてラウンドを重ね、間柴のパンチを体で覚え、間柴にも疲労が見え始めた7ラウンドから反撃を開始します。
辛抱に辛抱を重ねて積み上げてきた伏線からの、ドラゴン・フィッシュブロー。
まさに鳥肌が立った瞬間でした。
そして、木村のドラゴン・フィッシュブローを喰らってなお立ち上がり、執念で木村に立ちふさがる間柴。
最後は技術ではなく、お互いが勝ちたい、チャンピオンになりたいという執念の戦いであり、木村の立ったまま失神KOという壮絶な幕切れは忘れられません。
■試合に至るまでのストーリー性
試合に至るまでのストーリー性という点では、間柴戦前の木村が一番泣きそうになるかもしれません。
木村は一歩や鷹村のように特別なモノをもたない、強いけれど普通のボクサーです。
不良だった高校生からボクシングジムに入り、勝ったり負けたりを繰り返して5年間、ようやく巡ってきたベルトを掴むチャンスですが、その相手がよりによって“死神”の異名をとる間柴です。
宮田にスパーの相手を頼み、総合力はあるけれど武器がないことに気づかされ、間柴を倒すべく考えに考え、練習を積み上げ、そうして挑む試合。
木村だけではありません。
幼稚園の頃からの腐れ縁だという青木も、木村の気持ちを汲み取って宮田に土下座をしてまで木村のことを頼み込みます。
「はじめの一歩」 31巻 森川ジョージ/講談社 より引用
それまで脇役だった木村に、試合が始まる前までの姿に8話も費やすほどであり、木村の周囲も含めて実に魅せる試合でした。
■ベストバウトを決めた1シーン
これはもちろん、
全ては
この一撃のために!!
「はじめの一歩」 32巻 森川ジョージ/講談社 より引用
の場面しかないでしょう!
木村がボクサーとして積み重ねてきた5年間の全てをぶつけた一撃を、間柴に食らわせたこの瞬間。
それまでの試合の流れから、見開きで描かれたこのシーンは『はじめの一歩』という作品の中でも三本の指に入る名シーンだと思います。
1位 鷹村守 vs ブライアン・ホーク:日本の鷹が世界の鷹となった一戦!
「はじめの一歩」 42巻 森川ジョージ/講談社 より引用
1位はもう、これしかありません。
鷹村の初めての世界挑戦であった、”バトル オブ ホーク”、ブライアン・ホークとの一戦です。
この試合は、実際の試合の前からどんどんと盛り上がりを見せていきます。
試合前の記者会見から予想通り荒れに荒れ、日本という国全体がホークに侮辱された状態で始まった試合。
これまで圧倒的な力を見せて勝ち続けてきた鷹村ですが、さすがに世界チャンピオンのホークが相手では苦戦を強いられます。
ホークはどんな体勢でどこからパンチを放ってくるのかも分からないような、天衣無縫の型で鷹村を攻めます。
「はじめの一歩」 43巻 森川ジョージ/講談社 より引用
鷹村は今まで戦ったことがない変則的なボクシングによる圧倒的な強さで序盤から劣勢に立たされます。
それに対し鷹村は、鴨川会長から徹底的に叩きこまれた正統派のボクシングと、そして本来得意とするケンカスタイルのボクシングで反撃しホークに対抗します。
倒し倒され、互いに譲らない試合も、最後に差が出たのはやっぱり積み重ねてきたものの差でした。
鴨川会長に叩きこまれた技術と鷹村が持つ喧嘩ファイトが融合し、とうとうホークを倒し世界チャンピオンに登り詰めたのでした。
■試合に至るまでのストーリー性
ホーク戦に関しては、試合に至るまでに非常に多くのことが描かれています。
何しろ単行本にしてほぼまるまる2巻分を費やしているくらいですから。
その中で描かれていたことは、初めて明かされる鷹村の実家と家族のことであったり、鷹村のボクシングやジムの仲間達への想いであったり、試合に至るまでの減量のことであったりと、多岐に渡ります。
「はじめの一歩」 42巻 森川ジョージ/講談社 より引用
もちろんその中にはホークの挑発を含めた因縁なども描かれており、それらすべてがただ一つの試合に向かって収束していき、気分を高めていきます。
実際の試合が始まる前の話でこれだけを費やしつつ、それでいて決してつまらなくないどころか面白いのです。
それらを抱いたまま、実際の世界戦が始まったらどれくらい盛り上がるのだろうか。
どんなドラマが待っているのだろうか。
『はじめの一歩』の中で、最も濃密なストーリーを持って描かれた一戦だったと思います。
■ベストバウトを決めた1シーン
試合前の厳しい減量により、鷹村の体は5ラウンドを戦うのがやっとという状態でした。
6ラウンド、スタミナの切れた鷹村はホークの猛攻にあい敗戦寸前まで追い込まれます。
しかし、ダウンしそうになった鷹村の体を支えるものがありました。
それは、目には見えない仲間達の思いでした。
「はじめの一歩」 44巻 森川ジョージ/講談社 より引用
精神論なんて、というかもしれませんが、極限を超えた状態で差が出るのは精神的な強さなのかもしれませんし、それだけ積み重ねてきたものが鷹村にはあったのです。
仲間たちの前では最強でなければいけない、負けることは許されない。
それこそが鷹村を支えているものです。
だから、鷹村はどんな姿になっても戦い続けるのです。
たとえ心臓が止まっても魂で戦う
魂が消えても棺桶からはい出して
キサマに勝つ!
「はじめの一歩」 44巻 森川ジョージ/講談社 より引用
この一連の流れには本当に魂が揺さぶれました!!
当時はマガジン本誌を買っていたのですが、震えが止まらなかったですね!
3、まとめ
『はじめの一歩』のベストバウトをお届けしました。
- 鷹村vsホーク
- 木村vs間柴
- 一歩vs千堂
等々、想像するに難くない試合を順当に選出しました。
こうして改めて見ると単行本の前半(50巻以前)に収録されている試合が殆どになりましたが、これはある意味で必然ともいえます。
なぜなら、鷹村vsブライアン・ホーク戦までは、挑戦者の立場として試合に臨んでいるのに対し、その後は日本チャンピオン(一歩)や世界チャンピオン(鷹村)の肩書をもって強者として戦っているからです。
物語を読むにあたり、下から這い上がって強い相手に向かい戦う試合を描いた方が盛り上がるのはある意味で必然です。
以降ももちろん強敵との試合が数多くありますが、どうしても初めて世界挑戦をしたホーク戦がある意味でピークであり、基準になってしまうのです。
それでも数多くの熱い試合がありますし、読み手によってはそれらの試合の方こそベストバウトだとあげる人も沢山いると思います。
本記事を機に、改めて読み返してみてはいかがでしょうか!?
以上、マンガフルライターの神門でした。
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