どうも。マンガタリライターの相羽です。
福島県は飯坂温泉(いいざかおんせん)。
最近は温泉地をモチーフにした地域活性クロスメディアプロジェクト、『温泉むすめ』とのコラボが話題になってます。
風の噂で、
- 何か、最近飯坂温泉がすごいらしい。
と聞こえてくる中、
僕のきっかけは郵便切手でした。
2019年9月13日(金)、飯坂温泉を擬人化した『温泉むすめ』のキャラクター・飯坂真尋(いいざか・まひろ)ちゃんのフレーム切手が日本郵政さんから発売されました。
朗報!朗報!なんと #飯坂真尋 ちゃんが切手になって福島市内の全郵便局にて9月13日から販売開始です!温泉むすめ飯坂温泉トークイベントにあわせた販売という郵便局さんの粋な計らい。販売価格はフレーム切手1シート(82円切手×10枚)1,700円
https://t.co/hTMjO1kRiq— 飯坂温泉オフィシャル (@iizaka_onsen) September 4, 2019
こちらの郵便切手で飯坂真尋ちゃん(キャラ原案は有坂あこ先生)を描かれたのがらぐほのえりか先生でして。
もともとらぐほのえりか先生のファンで、「マンガタリ」でも『ちかのこ』や『すくりぞ!』の記事を書かせて頂いていた僕は、
このニュースがきっかけで、初めて飯坂温泉を知りました。
描かれている風景に何かしら惹かれるものを感じた僕は、少しずつ飯坂温泉に行ってみたいと思うようになっていました。
そんな折に、不思議な縁のようなものを感じる話を父から聞きます。
というのも私事で恐縮ですが、何と、僕が生まれる前の話、55年ほど前に父は飯坂温泉で1年9か月ほど働いていたことがあると言うじゃありませんか。
ええ!?
何かしら、僕のルーツのようなものもあったりする場所でもあるのでしょうか。
天の(?)導きのようなものを感じます。これはもう、実際に取材に行ってみるしかないですね!
こうして、ライターは仙台から飯坂温泉へと向かったのだった。
今回の記事では、
- 飯坂温泉と『温泉むすめ』の取り組みに関する基本情報
- 飯坂温泉を過去、現在、未来の視点からワクワク感と共に紹介
- 飯坂温泉に実際に取材に行ってきての現地の様子の写真付きレポート
などなどをお贈りさせて頂きます。
飯坂温泉や『温泉むすめ』、そして「飯坂真尋ちゃん」をより知って頂けるきっかけになれたなら幸いです。
目次
1、『飯坂温泉』ってどんな所?
飯坂温泉は(秋保、鳴子と共に)奥州三名湯にも数えられる、福島県は県北に位置する温泉地です。
福島の奥座敷と呼ばれ、古くはヤマトタケルノミコトが湯治(とうじ)をしたと伝えられ、江戸時代には松尾芭蕉が「奥の細道」の途中で立ち寄ったとも伝えられる、歴史と伝統ある名泉です。
福島駅から飯坂電車に揺られて25分ほどという交通の便の良さも魅力で、首都圏やライターが住む仙台からも気軽に訪れることができる場所だったりもします。
豊かな自然と風情ある街並み、熱い温泉、そして最近では『温泉むすめ』の飯坂真尋ちゃんとのコラボレーションが楽しめる温泉地なのです。
2、『温泉むすめ』ってどんな作品?
著者 | 漫画:三倉ちかげ 原作:エンバウンド |
---|---|
出版社 | KADOKAWA |
掲載雑誌 | コミックNewtype |
巻数 |
1巻(2019年11月時点) |
飯坂温泉と(も)コラボしている『温泉むすめ』という作品について、軽く紹介させて頂きます。
「マンガタリ」は漫画メディアなので、三倉ちかげ先生のコミカライズ版に最初の視点を置いていますが、『温泉むすめ』自体は、小説、複数の漫画作品、温泉地でのパネルの設置にグッズ販売、声優さんたちのライブイベント……などなどと大きく展開している地域活性クロスメディアプロジェクトです。
様々な活動が広がる中で、2019年6月には観光庁からの後援が公認されたりも。
観光庁の後援が決まるほどのプロジェクトになった理由の一つに、「地方への送客実績」が挙げられるということを『温泉むすめ』プロデューサーの橋本竜氏が述べておられます。
(ざっくりとは、『温泉むすめ』とコラボした場所に本当に人が行っているという数字が出ているということですね……。)
参考:『温泉むすめ』プロデューサー橋本竜が語る、地方活性化プロジェクト新展開と2次元コンテンツの今
日本の各温泉に宿る下級の神さまである……という設定の「温泉むすめ」たちが、温泉地を盛り上げるべく試行錯誤したり、青春を生きたり、アイドル活動をしたり……といった世界観のもと、様々な媒体でのストーリー、各温泉地でのパネル設置やグッズ販売やライブイベント、などなどが展開されております。
現在、120人(2019年11月現在)の「温泉むすめ」たちがキャラクター×リアル温泉地……の視点から地域活性クロスメディアプロジェクトの前線で活躍しております。
3、『飯坂真尋』ちゃんってどんなキャラクター?
そんな『温泉むすめ』の飯坂温泉担当、もとい飯坂温泉がキャラクター化された存在が飯坂真尋ちゃんです。
キャラクター原案は有坂あこ先生、ボイスを担当する役者さん(声優さん)は吉岡茉祐(よしおか・まゆ)さん。
- 飯坂けんか祭りに参加するくらい勇ましい性格で姉御肌で
- 運動神経が良くて空手の有段者で
- 好きな食べ物は飯坂ラーメン、円盤餃子、ラジウム玉子で
- どっしり構えていて大抵のことには動じない
そんな女の子、もとい(下級の)神さま的な存在(という設定のキャラクター)です。
また、重要なこととして、飯坂真尋ちゃんは正式に任命されている「飯坂温泉特別観光大使」だったりもします。
参考:飯坂温泉の温泉むすめ「飯坂真尋」とキャラクターを演じる吉岡茉祐さんが飯坂温泉特別観光大使に就任!
現在、飯坂温泉はこの心強い特別観光大使と共に、新たな歩みを始めているのです。
4、取材では「飯坂真尋ちゃんプロジェクト」実行委員長さんにご協力頂きました
今回の取材は飯坂温泉の「飯坂真尋ちゃんプロジェクト」実行委員長でもあられる吉川屋七代目さん
こと畠正樹さんにご協力頂いて、奥飯坂・穴原(おくいいざか あなばら)温泉の旅館「吉川屋」で、
- 飯坂温泉の歴史について詳しく解説して頂いたり
- 飯坂温泉と『温泉むすめ』および飯坂真尋ちゃんとのコラボについての深いところまで話を伺ったり
した上でさらに、
- 実際の飯坂温泉の街で飯坂真尋ちゃんパネルやグッズが見られる場所・風景やお店を案内して頂いたり
- 飯坂温泉観光協会にもアポイントメントを取った上で伺い、「国際ボランティア」のメッテさんにもミニインタビューもさせて頂いたり
といったかたちで進めさせて頂きました。
吉川屋で行われた「飯坂真尋ちゃんプロジェクト」についてより深く語って頂いた畠さんへのインタビューの様子も後日公開予定の記事で詳しくお届けさせて頂きますので、そちらも楽しみにお待ち頂けたらと思います。
5、飯坂温泉は高度経済成長の後観光客は減少し震災を経て現在は『温泉むすめ』コラボと共に前進中
伝統的な温泉地でありながら『温泉むすめ』ともコラボしながら歩んでいるというユニークな飯坂温泉に関して、本節では取材を通して見えてきた風景を、過去、現在、未来の三つの視点から紹介させて頂きます。
5-1 『飯坂温泉』の過去~1964年の東京オリンピックの頃は伝統の温泉街として賑わっていた
実際に取材として探訪してきた『温泉むすめ』の飯坂真尋ちゃんで溢れる現在の現地の光景を紹介する前に、少し昔の話、飯坂温泉の歴史についても簡単に紹介させて頂きます。
【過去1】 ヤマトタケル、松尾芭蕉、俵藤太伝説、長い歴史を誇る伝統的な温泉地である
昔(むかし)というよりは古(いにしえ)の……と形容した方がよいくらいまで遡ってみますと、飯坂温泉は、
- ヤマトタケルが東征の際に湯治に訪れたと伝えられている
- 摺上川(すりかみがわ)やその支流の赤川(あかがわ)は俵藤太(たわらのとうた)伝説と関係があると伝えられている
- 松尾芭蕉が「奥の細道」の途中に立ち寄ったと伝えられている
などなどと、神話や伝承といった視点にまで繋がっていける長い伝統を誇る温泉地だったりします。
これが俵藤太伝説に出てくる川(と伝えられているの)か~、ここが松尾芭蕉が入った温泉(かもしれないの)か~、と歴史好きや伝承好きにもとても楽しめる温泉地だったりもするのです。
【過去2】 首都圏や仙台近郊からの団体客で隆盛し、電話もいち早く繋がり栄えていく高度経済成長期
観光客数のピークは1973年。
僕の父がいた1964年頃の話を聞いてみると、当時の最新機器だった「電話」も比較的早い時期に引かれ(当時は「交換手」が必要な方式でした)、団体客を中心に連日賑わっていたということです。
ちょうど、1964年の東京オリンピックの頃なので、2020年の東京オリンピックの時期との比較で風景を捉えてみると、過去と現在を投射して捉える視点が持てるかもしれません。
「交換手」が必要だった固定電話からスマートフォンに伝達のメディアが変わる中、高度経済成長期のピークから比べると観光客は団体客から個人客中心へと推移し、社会の方では「無縁社会」がキーワードになったりして人と人との繋がりが希薄になってきているのでは、といった言説もあったりする近年です。
コミュニティのカタチ、人と人とが「伝え」合うカタチの過去と現在にも想いが馳せられたりもします。
【過去3】 芸者さんたちも沢山いて賑わっていたが現在は50代以下の人にはあまり知られていない
団体客が中心だったのと連動するように、今回の取材では「昔は芸者さんたちがたくさんいた」という話も伺いました。
また、その芸者さんたちも今ではいなくなっているとも。
今や飯坂温泉と聞いてピンとくるのは60代以上の方が中心で、首都圏の若い世代にはあまり知られていないと(観光協会の方は)語ります。
肌感覚としては合っていて、ライターの近辺でも僕(30代)自身は飯坂温泉の存在を知らず、父母(70代)は名前を知っているという状態でした。
一方で、そんな知らなかった僕が『温泉むすめ』の飯坂真尋ちゃんをきっかけに今回飯坂温泉を訪れている……というのを踏まえた上で、次節では飯坂温泉の「現在」を見ていってみましょう。
5-2 『飯坂温泉』の現在~震災から前へ伝統と最新を両義に途切れない大事なものと共に歩む
そんな、1970年代をピークに訪れる人は減少傾向だった飯坂温泉でしたが、「現在」はまた違った風景が見え始めるようになってきています。
本節では、東日本大震災から現在にかけての「現在」の飯坂温泉の話を、いよいよ登場する『温泉むすめ』の飯坂真尋ちゃんの話と共に見ていってみましょう。
【現在1】 東日本大震災から8年経った福島の温泉地として『温泉むすめ』と共に次の展望の中へ
同じ被災地という言葉でくくられるとしても、東北に生きる者にとって、あの日、あの日からしばらくの日々の経験は一様じゃなく、一概にああだった、こうだったと語ることは難しいと僕は考えているので、飯坂温泉の東日本大震災の頃の話に関しては『温泉むすめ』公式サイトに掲載されている「飯坂温泉観光協会からの手紙「飯坂真尋ちゃんが射してくれた光」」からの引用をさせて頂きます。
どうやって新しい飯坂温泉を目指していこうか?と検討を重ねていた矢先…あの大災害が起きました。
2011年3月11日 東日本大震災と、東京電力福島第一原発事故
飯坂温泉は岩盤の固い地域で、大変な揺れはあったものの、けが人など報告はありませんでした。
しかし、10日以上水道が止まってしまい、お風呂を求めて福島市内からたくさんの方が飯坂にいらっしゃいました。
そして、津波被害が甚大であった南相馬市の避難者の方々を飯坂温泉で受け入れ、また原発30㎞圏内の警備にあたる全国から集まった警察の方たちを受け入れる、そんな時期がしばらく続きました。
原発から遠く離れているけれど、飯坂温泉は復興を支える一大拠点となったのです。震災の傷が癒える間もなくやってきたのは、福島に対する「風評被害」
フルーツの一大産地だった福島の果樹園は、一時期売上が一割まで落ち、本当に先が真っ暗になったといいます。
しかし、くじけず、前を向いて検査体制の徹底や品質の向上に努めて、震災から8年たった今は震災前の売上を超えるところまで回復したそうです。震災直後、よく聞いた後ろ向きな言葉の数々…
「原発さえなければ…」
「もう商売やったって駄目だ…」
「福島から逃げよう…」時間しか癒せないものがあると言いますが、8年という年月が震災の傷を癒し、普段の生活の有難さを噛みしめられるようになった時、私たちは次の展望が必要になりました。
「震災前に戻るのではなく、震災前よりもっと素敵な福島、飯坂へ!!」
(飯坂温泉観光協会からの手紙「飯坂真尋ちゃんが射してくれた光」より引用)
といった状況だったと語っておられます。
そして出会います。
(『温泉むすめ』公式ホームページより)
飯坂温泉と『温泉むすめ』の飯坂真尋ちゃんとの出会いの契機をこのように語っておられます。
「飯坂真尋ちゃん?」
その名前を聞いたのは、2018年11月のこと。
いわきでの温泉イベントの帰りに、飯坂温泉に寄ってくれたファンの一言がきっかけでした。「飯坂真尋?温泉むすめ?なんだろう?」
温泉むすめ公式HPを覗くと、飯坂真尋ちゃんはこんな感じの子でした。(中略)
まさに、飯坂温泉の魅力をぎゅっと詰め込んだようなキャラクター!
自然と、愛着が湧いてきました。調べていくうちにたどり着いたのは、温泉むすめを運営する株式会社エンバウンド橋本社長のインタビュー記事。
「シャッター街になっていく地元を、地方を、元気にできないだろうか?」
同じ福島県出身ということもあり、地域活性化の思いに共感し、すぐさまWEBサイトからコンタクトをとり、12月には飯坂温泉で青年部メンバーと橋本社長とお会いしていました。
「やろう!」
こういったコンテンツとどのように組み、どのように盛り上げていくか?
何もノウハウはありませんでしたが、温泉むすめの取り組みの先に、きっと今まで見たことがない飯坂温泉があると、そんな期待感、ワクワクを感じていました。(飯坂温泉観光協会からの手紙「飯坂真尋ちゃんが射してくれた光」より引用)
ここから本格的に活動を開始したのが、なんとまだ今年(2019年)の2月のことです。
それからの、いわば「プロジェクト飯坂真尋ちゃん」にまつわる実行委員会や観光協会の方々を中心とする物語は先ほどのリンク先を参照して頂くこととして、本節では、10か月ほど経った「現在」の飯坂温泉のことを中心に紹介していきたいと思います。
伝統や街に息づく人々の気持ちを大事にしながらも、「飯坂真尋ちゃん」と共に少しずつ変わり始めた街の風景がそこにはありました。
【現在2】 街のいたるところに飯坂真尋ちゃんのパネルが立ち日本郵便から切手も発売される
ライターが取材で飯坂温泉を訪れたのは2019年の10月。
現在どのように街に飯坂真尋ちゃんが溢れているかは、実際に取材で見て来た風景をお見せした方が早いですね。
楽しい雰囲気なので、この節は写真たっぷり目でお届けさせて頂きますね。
温泉地として『温泉むすめ』とコラボしてるだけでもユニークですが、飯坂温泉はバージョン違いの真尋ちゃんがいっぱいいる点が、他の『温泉むすめ』とコラボしてる温泉地と比べてもさらにユニークだったりします。
そして、街では今回僕が訪れるきっかけとなった真尋ちゃんフレーム切手も売ってます。
キャラデザが有坂あこ先生の飯坂真尋ちゃんをらぐほのえりか先生がイラスト担当で描かれているというこの切手。
『温泉むすめ』のコンセプトに、より多くの人たちを巻きこむために各「温泉むすめ」のキャラクターそれぞれの原案イラストレーターと担当声優をすべて分けている……というのがあるのですが、入口が多彩である点でとても功を奏していると実感します。
この切手がきっかけで、実際に僕はここ飯坂温泉まで来たわけですからね。
日本郵政から出ているというのも何かすごい感じですが、この飯坂真尋ちゃんフレーム切手にいかに飯坂温泉の魅力が詰っているかも、後日公開のインタビュー記事でお届けさせて頂く予定ですので、『温泉むすめ』のファンの方も、飯坂温泉のファンの方も、らぐほのえりか先生のファンの方もお待ち頂けたらと思います。
【現在3】 街に9か所ある途切れずに続く公衆浴場は過去と未来を繋ぐ地域の宝である
飯坂温泉には古くから続く「公衆浴場」と呼ばれる入浴施設が9か所あります。なんとライターの父も55年前にほぼ毎朝入っていたというので、実感としても歴史を感じます。
今回の取材では飯坂真尋ちゃんプロジェクトの実行委員長さんにもお話を伺ってきましたが、地域の宝は足元に眠っていて、飯坂真尋ちゃんをきっかけにしてそれを磨き上げていきたいという想いがあり、9か所の公衆浴場はそんな「宝」の一つなのだと述べておられました。
そんな足元の宝たる公衆浴場を輝かせる試みの一つが、現在(2019年9月1日~2020年2月28日/景品がなくなり次第終了)開催されている「熱湯スタンプラリー」です。
9か所ある公衆浴場のうち、7か所訪問&そのうち1か所入浴でクリアとなり、激レアの特別仕様の真尋ちゃんノベルティクリアファイルをゲットすることができます。
この、伝統息づく「公衆浴場」と最新のプロジェクトである「飯坂真尋ちゃん」とを掛け合わせた企画。「公衆浴場」を管理している方々からも、ファンの方々からも、好評であるとのことです。
ライターも真尋ちゃんフレーム切手にも描かれている、公衆浴場の一つ、鯖湖湯(さばこゆ)に入ってきました。
いいお湯でありました。
しみじみと雑想を思い浮かべてみるのなら。
高度経済成長が終わっても。東日本大震災があっても。飯坂真尋ちゃんが立つように少し風景が変わっても。
途切れずに。
このお湯は、ここにあるのでした。
5-3 『飯坂温泉』の未来~2020年の東京オリンピックの先へ飯坂真尋ちゃんと共に進んで行く
最後に、飯坂温泉の「これから」に想いが巡るようなお話をお届けさせて頂きます。
取材を通して伺ってきた、『温泉むすめ』の飯坂真尋ちゃんとのコラボを通して見据えている「未来」。
それは空想(キャラクター)と現実(リアル)を補い合いながら進む類のものであり、また飯坂温泉のみにとどまらず、東北、ひいては日本の未来に関するビジョンが静かな温泉地から描かれ始めているのを感じさせるものであるようです。
【未来1】 飯坂真尋ちゃんの声優を務める吉岡茉祐さんを招くなどリアルイベントも活性化中
未来へ向かう「これから」の飯坂温泉を感じさせる出来事として、最近リアルイベントで過去最高くらいの勢いの活況を実現した話があります。
現代社会は「もの」消費から「こと」消費に移っているという認識がビジネスの世界では語られる昨今ですが、グッズの販売(「もの」消費)などをやりつつリアルイベント(「こと」消費)にも力を入れているのが『温泉むすめ』プロジェクトです。
飯坂温泉において、これまでの活動の集大成のように開かれたリアルイベントが、2019年9月14日(土)の、声優の吉岡茉祐さん(飯坂真尋ちゃん役)を招いてのトークイベントです。
【御礼】本日は飯坂温泉トークイベント、また飯坂温泉 へお越しいただきありがとうございました。CVの吉岡茉祐様、奥野香耶様をはじめ、応援していただいてるファンの皆様、温泉むすめ関係者の皆様、書ききれないですが、全ての皆様のお陰で無事終了することができました。
ありがとうございました。 pic.twitter.com/7rNehWmWhQ— 飯坂温泉オフィシャル (@iizaka_onsen) September 14, 2019
今回取材してきて伺ったエピソードとしては、ステージで吉岡茉祐さんと飯坂真尋ちゃんの特別観光大使就任の報を発表した時の歓声もすごかったのですが、同じくらい続いて福島市長が登壇した時の歓声も凄かったとのことです。市長さんも「市長をやっていて、檀上に上がることでこれだけ歓声がもらえたのは初めてかもしれない(笑)」と仰っていたそうです。
福島市長さんは、Twitterで飯坂真尋ちゃんに言及するツイートなどもされております。
#温泉むすめ トーク@#飯坂温泉
熱い盛り上がりにビックリ#飯坂真尋 と 声優 #吉岡茉祐 さんが 特別観光大使に就任
*見届け人 #雲仙伊乃里 役 #奥野香耶 さん
いま飯坂真尋グッズが次々登場→https://t.co/SuesZ6m1QZ
熱い飯坂温泉、益々熱くなって行こう❗️#福島市 pic.twitter.com/Ozpniyw4p0— こはた 浩(木幡 浩) (@hatabohk) September 15, 2019
他ならぬ市長さんも自分が応援している作品に肯定的であるというのが嬉しいというファン心理は、個人的にも分かる部分です。
イベント当日の夜、飯坂温泉は多くのぽか旦那、ぽか女将(『温泉むすめ』のファンの方々の総称)で賑わい、(経済的にも)ものすごい活況な一日であったということです。
こういった声優さんが直接こられるような年に一回クラスのブースト的なイベントの他にも、飯坂温泉では様々な地域イベントが開かれており、たとえばライターが取材に訪れた数日後には、クラシックカーのレースを飯坂真尋ちゃんや観光協会の方々、街の人たちが見守るといった風景が見られたりもしました。
飯坂温泉・クラシックカーレース・飯坂真尋ちゃん・ゆげお・若女将・メッテさん…情報量多すぎィィィイイイ!!!!#飯坂温泉 #飯坂真尋 #温泉むすめ #ミッレミリア pic.twitter.com/O57iZb75gD
— 吉川屋七代目@奥飯坂 穴原温泉 (@machaki7th) October 25, 2019
取材を通して伺った今後のビジョンとしては、ファンの皆さんがただの「観光客」ではなく、もう少し地域やイベントの内側に入ってきてもらえたりもするような、次のカタチのファンと温泉地の関係も試行錯誤していきたい……といった方向性も語って頂きました。
【未来2】 飯坂温泉にとどまらず東北全体で温泉地を活況させていくという展望
ここまでは飯坂温泉と『温泉むすめ』(飯坂真尋ちゃん)のコラボについて見てきましたが、ここから先の未来の話、「これから」の話としては、飯坂温泉だけにとどまらず「東北」という単位で『温泉むすめ』コラボ地、ひいては温泉地を活況させていきたいというビジョンも持っておられるということです。
ライターの感覚的にも、たとえば僕が暮らす宮城ですと、鳴子、作並、松島、秋保、などの温泉地には既に鳴子夏月ちゃん、作並日果ちゃん、松島名月ちゃん、秋保那菜子ちゃんといった「温泉むすめ」がいるのですが、地理的にも心理的にも「近い」感覚があり、今後何か飯坂温泉や飯坂真尋ちゃんと絡んでいったりするのなら、何だか嬉しいところです。
行動が早いと言いますか、ライターが取材に訪れた数日後には今回インタビューもさせて頂いた「飯坂真尋ちゃんプロジェクト」の実行委員長でもあられる吉川屋七代目さんと福島県旅館青年部部長でもあられるほりえや婿旦那さんが、飯坂真尋ちゃんを連れて(笑)山形県は小野川温泉の「温泉むすめ」、小野川小町ちゃんに会いに行ったりしております。
来ちゃった、小野川温泉! pic.twitter.com/Ij9DcWCayC
— 飯坂温泉ほりえや旅館婿旦那 (@horieyakazunari) October 25, 2019
擬人化された「温泉むすめ」と「温泉むすめ」との出会いは、リアルの視点からは地域と地域の出会いでもあります。
若干詩的な表現をさせて頂きますと、東北にたくさんある温泉地はそれら自体が価値を秘めた「星」のようなもので、それらを想像力で「星座」のように結んだら、何か新しい絵が、前向きな未来の東北のカタチが浮かび上がってくる予感がしております。
【未来3】 インバウンド需要も見込んで国際ボランティアもやってきて世界に飯坂温泉を発信中
さらに未来志向の施策としては、飯坂温泉では飯坂温泉観光協会の受け入れで、飯坂温泉や福島の魅力を「インスタグラム」などで海外向けに発信したりしている「国際ボランティア」の方が海外からやってきておられます。
取材時(2019年10月)に飯坂温泉にいらしてたのはフィンランドからきたというメッテ・アールトさんで、ちょうど英語の電話がきたからと街へヘルプに行っていた先から観光協会へ帰ってこられたところでした。
今回はそんなメッテさんにミニインタビューさせて頂くことができました。
日本とフィンランドは地理的には遠いと思うのですが、メッテさんが日本を知ったきっかけは「いとこ経由で日本のアニメを観たから」だと言います。
当方は漫画メディアなので好きな漫画も聞いてみたところ、
- やまもり三香『ひるなかの流星』
- 花田陵『デビルズライン』
- 冨樫義博『HUNTER×HUNTER』
- 古舘春一『ハイキュー!!』
- 村田真優『ハニーレモンソーダ』
といった作品をあげてくれました。ライターの印象ですが、けっこう「コアな」作品を読んでらっしゃいますよね!
書道に興味を持っていて現在練習中で、またお寺や神社も大好きとのこと。
日本人の印象を「親切(kind,helpful)」で他人を「慮る(worry about)」と答えて頂いたのは、何だか嬉しい感じです。
いわゆるギャップ・イヤーを利用して日本の飯坂温泉に「国際ボランティア」として訪れてきているというメッテさん。
将来の夢を尋ねてみると、フィンランドに戻った後のことはまだ未定ですが、将来的に日本で働いてみたい希望も持っていると語ってくれました。
漫画・アニメ・ゲームなどの日本のサブカルチャー的なコンテンツ(『温泉むすめ』や飯坂真尋ちゃんもこれらの一角とも捉えられます)が海外でもファンを獲得しているという話は語られて久しいですが、漫画やアニメをきっかけに日本を知ってもらって、メッテさんのように実際に日本を訪れてくれて、今度は訪れてくれたメッテさんの発信でまた次の誰かが訪れてくれて……そういった海外の人たちが訪れてくれる連鎖にも、前向きな未来が見えるところなのでした。
6、まとめ
今回の記事では、飯坂真尋ちゃんフレーム切手をきっかけに、『温泉むすめ』コラボと共に歩んでる飯坂温泉を実際にライターが取材に訪れて、過去、現在、未来の視点から紹介させて頂きました。
「過去」の視点としては、
- ヤマトタケルや松尾芭蕉、俵藤太伝説といった神話や伝承にも接続可能な歴史を持ち
- 団体客を中心にピークの1970年代まで高度経済成長期の華やかさと共に歩み
- ピークの後、観光客は個人化と共に減少傾向となり、現在は50代以下の若い人にはあまり知られていない
といった昔からの流れを追ってみて、
「現在」の視点としては、
- 東日本大震災から8年が経ち「次」の展望を『温泉むすめ』コラボと共に歩みはじめ
- 街には『温泉むすめ』の飯坂真尋ちゃんのパネルやグッズが見られるようになり郵便切手も発売され
- 伝統的な「公衆浴場」と最新の飯坂真尋ちゃんとのコラボで地域の宝を磨いたりしている
といった風景を紹介させて頂き、
そして「未来」の視点としては、
- 声優の吉岡茉祐さんのトークイベントなどに象徴される新しいカタチのリアルイベントを模索したり
- 飯坂温泉のみに留まらず東北規模で『温泉むすめ』や温泉地を活況させていきたいという未来へ向けて歩み始めたり
- インバウンド需要も見越して「国際ボランディア」の方に世界に向けて飯坂温泉を発信していってもらったり
といった想い描き、動き始めている「これから」へのビジョンについても語らせて頂きました。
飯坂温泉。
「伝統」を大事にしながらもキャラクター文化(ビジネス)のような「最新」も同時に存在している。独特の柔らかさが感じられる、今、最高にイカしている温泉地です。
今回取材に応じて頂いた皆さん、温かく対応して頂いて本当にありがとうございました。
歩いているだけで癒される感じの、歴史に裏付けられた風情が、癒される自然が、熱いお湯が待っています。ここまで読んでくださったあなたも、温泉に入りに、歴史を感じに、そして飯坂真尋ちゃんに逢いに、是非ぜひ飯坂温泉を訪れてみて頂けたら、僕としても望外の喜びなのでした。
相羽裕司(あいばゆうじ)
【続編記事】