どうも。アニメ放映開始をきっかけに『葬送のフリーレン』のコミックスを大人買いして、現在絶賛ハマり中のマンガフルライターの相羽です。
「最近読んだ漫画」について、ミニコラムをお届けする「ゆるゆるコラム」のコーナー。
今回は、今月発売した『葬送のフリーレン』コミックス最新刊・第12巻の感想です。
本記事は『葬送のフリーレン』第12巻の感想という性質上、コミックス『葬送のフリーレン』第1巻〜第12巻の内容のネタバレを含みます。あらかじめご了承ください。
いきなりですが、僕は『葬送のフリーレン』という作品を、物語の中核はフリーレンとヒンメルとのラブストーリーなのだろうと解釈して読んでおります。
これまでも、二人の間にあったのはやはり恋愛感情なんじゃ?(だったんじゃ?)と思わされる描写がありましたが。
今巻で、ヒンメルから見たフリーレンが花嫁姿をしているという描写が読者に提示されたことによって。
『葬送のフリーレン』 12巻 山田鐘人・アベツカサ/小学館より引用
このシーンがたとえ、七崩賢・グラオザームがヒンメル(orフリーレン?)に見せてる幻影のようなものであるのだとしても。
とはいえこの描写を通して、本作の全体像としてフリーレンとヒンメルは何らかの恋愛感情的パートナーシップが意識される関係に含みがある、という射程が読者に提示されたと思います。
ええ!?
フリーレンとヒンメルって、もう死別してるじゃん!? と思う方もおられるかもしれませんが。
ここで紹介したいのが新城カズマさんの『物語工学論』という本の中で分類されてる物語のフォーマットの中に、「時空を越える恋人たち」という物語累系がある、という話です。
ざっくりとは、恋人たち二人の間に時空級の大きな「障壁」があり、二人がそれを乗り越えて結ばれるまでが描かれる……という物語の型です。
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〈時空を越える恋人たち〉の名称は、二つの重要なポイント……すなわち「自分と合一することで完全となる、相補的なもの」への希求と、それを妨げる「強烈な障壁」の存在を暗示しています。
『物語工学論 キャラクターのつくり方』 新城カズマ/KADOKAWAより引用
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時空を越えるまでいかなくても、二人の間に「障壁」があり、それを乗り越えようとする恋愛的な物語を描くというフォーマットは、世界各地の神話やシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』にもみられます。
その意味で、『葬送のフリーレン』という作品は、フリーレンとヒンメルが二人の間にある「死別」という大きな「障壁」を乗り越えようとする物語だと捉えることができます。
フリーレンが時間を遡る今巻の内容はまさに「時空を越える」的な要素が入ってきていて、フリーレンとヒンメルの関係は、いよいよ「時空を越える恋人たち」、これだろうと。
このタイプの物語として新城カズマさんが例に挙げられているのは、
- 『ウェストサイド物語』
- 『タイタニック』
- 『ふりだしに戻る』
などですが(いずれも二人の間に「障壁」があります)。
僕としては、現在の日本でまさに時空的「障壁」を恋人二人が乗り越えて結ばれる話として広く共有されているのは、大ヒットした新海誠監督の映画『君の名は。』(2016年)だと思います。
『君の名は。』における瀧と三葉の関係が、『葬送のフリーレン』におけるヒンメルとフリーレンの関係に重なります。(『君の名は。』を観ていない方には伝わりづらい例えですいません。)
そういう意味で、瀧と三葉がある種の超時空的ギミックで「障壁」を乗り越えて最終的には結ばれたように、ヒンメルとフリーレンが今後何らかのかたちで結ばれるという展開もあり得ると僕は思っています。
実際、「女神の魔法」で、今巻では「死別」という「障壁」を乗り越えて、フリーレンとヒンメルは時を超えて再会してるわけですから。(「女神の魔法」には謎が多いというのも、まだまだ今後の展開に関係してくると推察していたりします……)
以上。
若干の考察コラムめいた内容にも、なってしまいましたが。
- 故人の想いを捉え直すといったかたちで、心理的な意味でフリーレンとヒンメルの関係が再生されるまでを描くのか。
- あるいは超時空級のギミック(たとえば、過去改変やループ、転生など?)が展開されて、本当に結ばれたりするのか。
いずれにせよ、本作が「愛」という概念において死別とは必ずしも終わりではないということを描こうとしているがごとき、「時空を越える恋人たち」の恋愛譚だとして。
フリーレンとヒンメルのラブストーリーがどういう結末へと収束していくのかも楽しみに、物語の続きを待ちたいと思います。
相羽裕司
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