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『僕の心のヤバイやつ』の両片思いラブコメの魅力は心の機微の描き方にあり!具体的な場面を選出しご紹介

みなさん、こんにちは。

ラブコメ作品も大好きなマンガフルライターの神門です。

 

いつの世もラブコメ作品が廃れることはありません。

そんな中でもいつ頃からでしょうか、陰キャと陽キャのラブコメ、オタクに優しいギャル、といった主人公とヒロインで格差があるようなカップリングが増えてきたのは。

そんなラブコメ作品の中でも人気作品の一つが

 

『僕の心のヤバイやつ』

 

です。

数多くあるラブコメ作品の中で、なぜ本作が人気を誇っているのか。

今回の記事では、作品が持つ魅力をお伝えできればと思います。

 

1、『僕の心のヤバイやつ』ってどんな作品?

著者 桜井のりお
出版社 秋田書店
掲載雑誌 マンガクロス
掲載期間 2018年3月~
単行本巻数 既刊8巻(2023年1月現在)
ジャンル ラブコメ

 

『僕の心のヤバイやつ』は現在、WEBコミックス配信サイトのマンガクロスで桜井のりお先生が連載しています。

 

陰キャで中二病を患っている少年の市川京太郎と、高身長でモデルもやっている陽キャ美少女の山田杏奈の二人の関係を描いたラブコメ漫画です。

初めは同じクラスでも殆ど接点のなかった二人ですが、山田が図書室でこっそりと持ち込んだ食べ物を食べていることを目撃してから市川は山田のことから目が離せなくなっていきます。

一方で山田も、少しずつ市川の存在を気にするようになっていきます。

二人の関係性は読み手を実にニヤニヤとさせたり、ヤキモキとさせてくれたりして人気も上昇し、2023年にはアニメ放映も決定しています。

今、一番注目のラブコメ作品、といってもいいかもしれません。

 

2、『僕の心のヤバイやつ』最大の魅力は心の動きとそこから発生する行動の因果の見せ方が抜群に上手いこと

『僕の心のヤバイやつ』は主人公の市川とヒロインの山田、この二人を中心としたラブコメ作品です。

その魅力は、二人が交流を通してそれぞれ自分の思いや感情を変化させていくその心の変化の過程の見せ方です。

そこが抜群に上手い作品なのです。

 

陰キャの主人公のことを陽キャのヒロインが好きになるラブコメ作品は他にも幾つか思い浮かびますが、本作ほどその流れや過程が上手く、そしてきっちり描いている作品はなかなかないと思います。

ラブコメというと二人のイチャイチャを楽しむ作品が多いと思いますし、それは正しい方向性だと思いますが、本作はイチャイチャよりも心の動き、即ち心の成長に焦点をあてているようにも感じられます。

そして、心の動きから始まる行動や発言が、単なるイチャイチャ以上の関係性を読者に見せてくれるのです。

 

その心の動きの見せ方も、主人公の市川とヒロインの山田で異なります。

主人公の市川の心の動きは、主人公らしく市川の「独白」という形で読者たちにも分かりやすく表現されています。

独白には、別人格を作り出して対話するパターンも

「僕の心のヤバイやつ」 4巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

それに対してヒロインの山田の心の動きは、分かりやすい言葉では表現されていません。

それは、漫画の中の過去からの伏線であったり、コマの中に描かれた一描写であったり、そういったものを拾い上げていかないと分かりません。

主人公がいて、主人公視点なので他のキャラクターの心の動きが主人公より分かりづらいのは当然ではありますが、その見せ方が絶妙なのです。

だからこそ山田の心の動きに関しては、考察勢が非常に好んで食指をのばしてもいます。

山田に関しては、山田の表情、行動から読み取る

「僕の心のヤバイやつ」 3巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

皆さんも、そういう視点で山田の行動を追いかけてみてください。

そうすることで

  • 「なぜ山田は市川を好きになったのか?」
  • 「いつ山田は市川を好きになったのか?」

 

が分かってきます。

そしてそういった二人の心の動きを見逃せず、どのように着地するのかを見届けたいから、私達読者の心を掴んで離さないのだと思います。

 

3、市川と山田、徐々に両片思いになっていく二人の心の機微の見せ方を具体的に紹介

では、ここからは実際に市川と山田それぞれの心の動きがどう描かれているのかを具体的にお見せします。

 

3-1 市川の心の機微は、市川本人の独白により市川自身の変化を追いかける

市川は主人公ですので、市川自身の思いは「独白」の形で表現されます。

これは、読み手が主人公に感情移入することも考えると、ごく当然の手法となりますし多くの作品が行っています。

市川が考えること=独白内容 を、読み手も自分のことのように考えて読んでいくと思います。

市川は独白での自問自答が多い

「僕の心のヤバイやつ」 3巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

そうすると分かってくるのは、市川は陰キャでボッチではありますが、それは人とコミュニケーションをとることがちょっとばかり苦手だ、というだけです。

実際には、周囲の人のことをよく見ていますし、周囲の人が嫌がるようなことを避けるだけでなく、周囲の人をフォローするような行動も行う優しい心根を持つ少年です。

ただ、その行動が不器用なため他の人には伝わりにくいだけです。

読み手は、市川の独白を読むことで理解することが出来ます。

だからこそ、ちょっとコミュニケーションが苦手だけど、人を思いやれるやさしさを持ち、普通に思春期らしいエロさも持つ市川のことが分かります。

特別に変な少年ではない普通の等身大の、そして少し理想的な少年として感情移入することが出来ます。

何気に周囲のことを見てよく考える市川

「僕の心のヤバイやつ」 1巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

こうして感情移入することに成功させられれば、あとはもうこっちのものです。

山田のことを思い悩む市川の姿を見て、頑張れと思います。

思い切って行動をする市川の姿を見て、「よくやった」と拳を握りたくなるのです。

独白の内容も、そこから生まれる行動も、少しずつ変わっていく姿を見るのが楽しいのです。

 

3-2 山田の心の機微は、山田の行動の周辺を追いかけて推測する

市川と異なり、山田の心の機微は作品内で具体的に説明されません。

山田の口からも出ませんし、“山田編”みたいになって山田の感情を見せてくれることもありません。

だから、読者は山田がどうして市川のことを好きになっていったのか、注意をして見ていなければ気が付かないかもしれません。

ここが実にうまいところで、そうした山田の変化の理由に気が付けない場合、市川と同じように

「なぜかよくわからないけれど山田は僕に好意を抱いているようだ……?」

と、市川と同調してしまいます。

市川も読者に近いくらいの情報量はあるはずですが、細かい描写でもありますし、市川自身が意識していないところでもあったりするので、山田の心の変化の理由に気が付けていないのです。

変わっていく山田を追いかける

「僕の心のヤバイやつ」 2巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

逆に読者が山田の変化の理由に気が付けた場合、「これか!」と市川の時とは異なる意味で拳を握っちゃいますね。

ただ、山田の市川に対する好意が明確になってからは、明らかに分かりやすくなるのも山田らしいところです。

 

3-3 魅力的なサブキャラが二人の心の動きを違う側面から見せてくれる

市川と山田の気持ちや心の内を描くにあたり、本人たち直接ではなくサブキャラを通して伝えてくる場合もありますが、これもまた実にうまく配置されています。

 

■関根萌子

山田を含む仲良し女子四人グループのうちの一人です。

萌子は四人の中でもっとも恋愛体質であり、市川からは「ビッチ」扱いされて実際にイケメン男子には目がありませんが、市川と山田の双方の気持ちを表現する代弁者でもあります。

他者の恋愛感情に敏感であり察知能力に優れていて、実際、友人の山田に近しくなっていく市川との関係性について最も早く気が付いたのも萌子でした。

萌子の言動は山田の気持ち、そして山田と市川の距離感を示してくれています。

例えば市川の山田ヘの好意を知りつつも山田に近づくのを阻害しない一方、先輩の男子が山田の情報を取得しようとするのは邪魔します。

山田の情報を知りたがる先輩に詰め寄られる市川をフォローする関根

「僕の心のヤバイやつ」 4巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

それは即ち、市川は山田に近づいても良いけれど先輩の男子は駄目ということで、山田の気持ちも汲み取ってそのような態度を取っています。

市川が学校関連の人で初めて山田に対する好意を告げた相手が萌子でもあります。

心の中で思っているだけの状態と、言葉にして誰かに伝えた状態では大きく異なります。

言葉にすることでそれは取り消せなくなり、退路を塞ぐということでもあります。

とりわけ相手が山田の友人である萌子であれば、簡単に取り消せば市川の株を落とすことになるわけで、萌子に向けて口に出して宣言することで改めて市川の気持ちを強く確固たるものにしたのだと思います。

市川の気持ちを知りつつ、邪魔はしない関根。良いキャラ

「僕の心のヤバイやつ」 4巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

■市川香菜

市川の姉で市川が「おねえ」と呼んでいる香菜は、市川の心を動かしたり、市川自身に自分の気持ちを気づかせたりする、“媒介”のような存在だと思います。

市川の6学年上の大学2年生で(途中でお酒が飲めるようになっていたので20歳になったと思われます)、適度に年の差があることで市川を可愛がりそして気にかけてくれています。

山田の存在を知った香菜は、姉という立場とその適度な距離感を活かして市川に働きかけてくれます。

決して押しつけがましいものではなく、むしろ数年前に同じ中学時代を経験した立場からの言葉を投げかけてくれます。

悩む市川に、押しつけがましくなく話してくれるお姉

「僕の心のヤバイやつ」 5巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

詳しくは描かれていませんが、香菜も決して人との付き合いが得意ではなさそうで、美少女の山田に対してはキモい態度を取ったりしており、市川と似た者同士とも思えます。

だからこそ市川も、香菜のことをやや邪険にしつつも頼りにしているのだと思います。

山田とつきあいたいと自分の願望を明確に口にしたのも、香菜との会話の流れの中でした。

 

山田の友人である萌子と、市川の姉である香菜。

「山田への好意」「市川の願望」を言葉にして告げることで、市川が自分自身の気持ちを改めて自覚し、次の一歩を踏み出す力につながっているのだと思います。

こうして見ると、なんだかんだで市川は周囲の人間に恵まれているということが分かります。

 

4、市川と山田、二人の心が動いた一瞬をとらえたシーン6つを振り返る

では実際に、作品の中で市川と山田の心が動いたシーン、およびそのシーンの描き方を6つ紹介します。

実際には他にも数多くありますが、ライターの独断と偏見で選出しております。

 

4-1 市川の山田に対する印象が変わったその時

市川の、山田に対する思いが変わった最初のエピソードではないかと思います。

それまでは市川の山田に対する人物像は、学校一の美人で雑誌のモデルもやっていて市川のことを底辺だと見下している陽キャ、というものでした(実際に山田がそう思っていた、というわけではなく市川の勝手な想像として)

ところが、図書室での山田との出会いで、山田への見方は一変します

  • 図書室に持ち込んだお菓子を一人でニコニコして変な鼻歌を歌いながら食べる山田
  • 授業の研究発表資料を下書きもせずサインペンでいきなり直書きしはじめる山田(そして案の定、失敗)
  • カッターがないといきなり手でそのまま紙を切ろうとする山田(そして案の定、失敗)

 

と、スクールカーストの最上位に位置する存在とは思えない、変な行動を連発したからです。

いきなりこんな行動を見てしまったら・・・!?

「僕の心のヤバイやつ」 1巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

この前まででも、山田はアイドル的ルックスで気になる存在ではあったのですが、ここからはまた別の意味で市川は山田のことが気になって仕方なくなります。

学校一の美少女だけど、裏の姿というか真の姿を知ってしまうと、実は色々と抜けていて心配になって目が離せなくなってしまう。

 

4-2 山田が初めて「市川」として意識した瞬間

学校への登校の途中、山田は上級生からしつこく声をかけられていました。

山田ほどの美少女ですから、ナンパをされるのもよくあることなのでしょう。

山田はなんとか無難にやり過ごそうとしますが、上級生も諦めることなく山田についてきます。

そうしているうちに、山田は上級生からの「山田さんって意外と面白いよね」の一言に強く反応してしまいます。

実は、「面白い」というのが山田にとっては大きな誉め言葉だったからです。

「面白い」といわれて喜色満面

「僕の心のヤバイやつ」 1巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

それが契機で調子に乗った上級生は、山田から強引にアドレスを聞き出そうとします。

それをなんとか阻止したい市川は、上級生の意識を山田からそらせるため、通学に使っていた自転車を投げて川に落としてしまいます。

すると山田は、投げたのではなくアクセルとブレーキを間違えたのだと言い訳をする市川を見て、

「市川って面白いね」

と言って笑います。

「僕の心のヤバイやつ」 1巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

ここで初めて、山田は市川のことを名前で呼びます。

これまでは同じクラスに所属する男子の一人でしたが、この事件をきっかけに「市川=面白い男の子」という存在として意識をするようになったのだと思います。

 

4-3 原さんをかばう市川の気遣いと優しさを知る山田

文化祭の出し物のお化け屋敷の準備をしている中で、市川も担当している背景の絵の中に「山田家之墓」が描かれていました。

それを見た山田は、自分の墓が描かれていると思ってしまいます。

その絵を描いたのは女子の原さんでしたが、もしそれがバレると女子が無駄にギスギスしてしまうかもしれないと考えた市川は、咄嗟に自分が描いたと嘘をつきます。

結局その後、原さんが悪意もなくよくある名字だったから描いただけだということが分かります。

そこで山田は、市川のことを誤って疑ってしまったこと、そして市川が原さんをかばって嘘をついていたと気が付きます。

山田はすぐに、市川に「ごめんね」と謝りますが、この一件で市川の心の優しさというものに気が付いたのではないかと思います。

素直に謝れるのも良い事です

「僕の心のヤバイやつ」 1巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

4-4 市川が山田を好きだと理解したその瞬間

バスケの授業でぼーっとしていた山田は、ボールを顔面で受けてしまいます。

怪我をして大量の鼻血を出した山田は保健室で治療を受けます。

だけど、怪我をした今の状態では翌日に予定していた撮影の仕事はキャンセルするしかありません。

市川は以前、雑誌に載っていたまるで別人のような山田の写真を見ており、モデルの仕事を真剣にやっていることを知っています。

だから、撮影に行けなくなって泣いている山田を思い、市川自身も涙を流します。

その瞬間、市川は山田に恋している自分を自覚しました。

山田が喜んでいる姿や楽しそうな姿を見れば、美少女だし魅力的にも思えるでしょう。

山田が好きだという気持ちに気が付いた市川

「僕の心のヤバイやつ」 1巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

そうではなく、山田が悲しい時に自分自身も悲しく思える、だからこそ本当に山田のことが好きなんだと理解した市川のこの瞬間、良いですよね。

 

4-5 山田の市川に対する気持ちが変化する決定的な瞬間

職業見学で出版社の見学に行った帰り道、市川は駅でトイレに寄りました。

トイレに行くことを山田に伝えたのですが、山田が他の皆に伝え忘れてしまったため、市川と山田は電車に乗り遅れて皆とはぐれてしまいます。

山田はそのことに責任を感じて落ち込んで泣いてしまいます。

市川はそんな山田を慰めようと、駅の自販機で飲み物を買って山田に渡します。

購入したのは紅茶花伝のロイヤルミルクティー。

ミルクティーは職業見学の最初に山田が飲みたいと言っていたものです。

冒頭のこれが・・・

「僕の心のヤバイやつ」 2巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

市川は山田の望みを耳にして、おそらくそこまで意識はせずに、それでも覚えていたからミルクティーを購入したのではないかと思います。

だけど、これが山田にとっては大きなものでした。

落ち込んでいる時に、飲みたいといっていたミルクティーを買って慰めてくれた市川のことを強く、“恋”として自覚するようになったのだと思います。

落ち込む山田に対して市川が渡してくれたのは・・・

そして山田は

「僕の心のヤバイやつ」 2巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

実際、これより少し前のエピソードで原さんから彼氏がいるかと尋ねられた時、何も考えることなく彼氏などいないと朗らかに答えています。

その時点で市川のことを意識していたならば、山田の性格からして顔に出ないとは考えられません。

 

また直後のエピソードでも、校門でわざわざ市川が登校してくるのを待ち構えて貸すと約束した漫画を貸してくれたり、LINEの交換をしたがったりと、山田の方から積極的に市川へのアタックを開始し始めます。

また、他の女子と仲良さそうにすると、人殺しのような目を向けてきたりして、焼きもちもやくようになります。

関根と仲良くする市川をにらみつける山田の目(下のコマも凄い)

「僕の心のヤバイやつ」 3巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

そのくらい、山田の行動が大きく変わる重要な1シーンでした。

 

またこのミルクティーは、この後にもその重要さを示すシーンで登場します。

市川が山田の家に上がった時のこと、お母さんが帰ってくるということで市川は山田の部屋の布団の中に隠れました。

なんとか母親をやり過ごした後に市川が布団から出てきたとき、窓際に置かれていたのがこの紅茶のペットボトルでした。

山田の部屋の窓際に置かれていたのは

「僕の心のヤバイやつ」 5巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

取っておいてあるんかい!?

と、言いたくなるような山田の行動です。

 

なお、市川が山田に紅茶を渡すシーンが描かれていたのが2巻ですので、山田の変化の重要なところは2巻までで多く描かれていると思います。

では3巻以降はどうなるかというと、二人の気持ちの浮き沈みが多く描かれていきます。

二人とも中学生であり、恋愛経験はこれが初めてです。自分の気持ちも不安定だし、相手がどう思っているかもわからず、お互いに相手の一挙手一投足に動揺したり、喜んだり、思い悩んだりします。

特に山田からの市川に対する好意は強く表現されるものの、市川は自分に自信がないためなかなか思い切った行動が出来ません。

だけど、そんな市川の心が少しずつ成長していく、そういう変化がこの先は描かれていくのです。

 

そこは実際に読んで、市川に同調し、そしてエールを送っていきたい部分です。

 

4-6 市川が卒業式の在校生代表の送辞を読んだことから知る、山田の気持ち

市川は学年末テストが2位だったことから、卒業式で在校生代表の送辞を読んで欲しいと頼まれました。

当然、市川は送辞など嫌だと思いますが、正式な人が決まるまでならやっても良いと引き受けます。

これは、前のエピソードで山田がモデルの仕事をしているところを見学している中で、頑張る山田のことを尊敬し、自分自身が子供過ぎることが悔しいと思っていたからこそ、何か変わりたいと受けたのではないかと思います。

そして実際に、正式に在校生代表の送辞を読むことを引き受けます。

市川は卒業生当日に送辞の原稿を家に忘れながらも、その場で考えながらどうにか送辞を読み終えると、安堵感と緊張感の解放から気分を悪くして保健室に行きました。

咄嗟に考えた送辞の言葉は、むしろ市川自身の気持ちを吐き出したもの

「僕の心のヤバイやつ」 6巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

その場にやってきたのが、山田と山田に好意を寄せる卒業生の男子でした。

そこで上級生の男子は山田に正式に告白をしますが、その時に山田は、泣きながら言います。

他に好きな人がいるからと、もう両手が塞がっていて先輩の第二ボタンは受け取れないと。

その人が頑張っているのを見ると嬉しくて、尊敬すると。

泣きながら紡ぐ言葉

「僕の心のヤバイやつ」 3巻 桜井のりお/秋田書店 より引用

 

相手のことを思って涙を流すのは、かつて市川自身が経験したことでした。

その人のことを思って泣く“感情”は、市川自身が良く知っていることです。

この時、市川は山田が自分のことを好きだと理解します。

それを受けてまた動く、市川の気持ち。

そういうお互いの気持ちを受けての行ったり来たりもまた、一つの大きなポイントなのだと思います。

 

5、まとめ

ということで、『僕の心のヤバイやつ』が持つ魅力や、市川と山田の心の動きの具体的なシーンと描き方をご紹介しました。

なかなか文章で伝えるのが難しいところだとは思いますが、作品が持つ良さが少しでも伝わったなら幸いです。

以上、マンガフルライターの神門でした。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

社畜として働きつつ、漫画と小説と野球に癒される日々。人生を変えた作品は「女神転生」。プロ野球を愛しベイスターズを愛する。 熱血王道もの、血飛沫舞うバトルものから美少女百合ものまでなんでも好む。特に「無限の住人」の美しい殺し合い、「はやて×ブレード」のバカバトルが好きです。