みなさんこんにちは、マンガフルライターの神門です。
スポーツを題材にした漫画は数多くあれども、フィギュアスケートを題材にした作品はあまり知りません。
少年漫画だと鈴木央先生の『ブリザードアクセル』などがありましたが、やはりそう多くはないと思います。
日本で知名度も高く人気もある競技で強い選手も沢山輩出しているのに不思議とも思いますが、それだけ題材にするのが難しい競技ということでもあるのかもしれません。
そんなフィギュアスケートを題材にした絶対的なお薦め作品が
『メダリスト』
です。
マンガフルでも連載開始後に1巻が発売された後に紹介もしております。
2025年1月よりアニメ放映も開始の『メダリスト』
今回はその『メダリスト』の魅力を紹介します!
目次
1、『メダリスト』ってどんな漫画?
著者 | つるまいかだ |
出版社 | 講談社 |
掲載雑誌 | 月刊アフタヌーン |
掲載期間 | 2020年~ |
単行本巻数 | 既刊11巻(2024年9月時点) |
ジャンル | スポーツ(フィギュアスケート) |
『メダリスト』はつるまいかだ先生が月刊アフタヌーンで連載している作品です。
明浦路司(あけうらじ つかさ)は、大学時代にフィギュアスケートの全日本選手権に出場したほどの腕を持っています。
司はその実績からプロスケーターを目指したものの、アイスショーのオーディションに落ち続けて無職の日々が続き、非常に落ち込んでいる状況でした。
そんな司がある日出会ったのが、フィギュアスケートをやりたいという女の子、結束いのりでした。
いのりの母親は、いのりには才能がないからとスケートはやらせない考えでしたが、司は氷上のいのりを見て、
いのりには絶対に才能がある!
と強く断言し、コーチとなっていのりを教えることを決意しました。
いのりが目指すのはオリンピックの金メダル。
司といのり、二人が本気でメダル獲得に向けて、熱く、フィギュアに賭ける姿を描いた物語です。
2、物語の根幹を構築する主要登場人物4人を簡単に紹介
まずは、本作品の根幹ともいうべき4人の登場人物を紹介します。
2-1 結束いのり(ゆいつか いのり):フィギュアを求めても出来なかった、“出遅れた少女”
「メダリスト」 1巻 つるまいかだ/講談社 より引用
本作の主人公で作品登場時は小学五年生です。
姉の実叶(みか)がフィギュアをする姿を見て憧れて、いのり自身もフィギュアをやりたいと願いますが、母親から優秀な姉と比較されてしまいフィギュアをさせてもらえませんでした。
学校では授業についていけなかったり、他の子どもたちが出来ることが出来なかったり、いわゆる劣等生だったからです。
ですが、やりたいのに出来ないという境遇だったからこそ、いのりには他の子を大きく上回るスケートに対する執念があり、その情熱をぶつけていきます。
フィギュアを本格的に開始するのが小学五年生からと、他の子と比べて圧倒的に開始が遅いハンディを背負っていますが、天才と称される狼嵜光にも臆することなく相対し、オリンピックで金メダルを取ることを目指します。
非常に負けず嫌いでありますがとても純粋であり(単純でもあり)、ライバルであるはずの他の選手達にも、恐れることも躊躇することもなく懐に入り込んでいきます。
2-2 明浦路司(あけうらじ つかさ):シングル選手にもプロにもなれずに“夢破れた青年”
「メダリスト」 1巻 つるまいかだ/講談社 より引用
本作のもう一人の主人公でもあります。
中学生の頃にテレビでオリンピックのフィギュアを観て強烈に影響を受け、スケートの世界に入ります。
遅れたスタートで後がないこともあり誰にも負けない努力を重ねますが、努力だけで報われる世界ではなく、フィギュアのシングルの選手を諦めてアイスダンスへと転向しました。
選手を引退後はアイスショーの面接に落ち続けており、無職の状態が続いていたところでいのりと出会います。
司はいのりのスケートの技術、そしてスケートに対する執念ともいえる情熱を受け、プロになることを諦めていのりのコーチとなることを決心しました。
本人の努力とアイスダンスの経験からスケーティングの技術はとても高く、また自分や他の人のスケーティングを俯瞰して見ることができ、一度見た振り付けをすぐに再現できる能力を持っています。
非常に情熱的で感情の起伏が大きく、素面なのに酔っているのではないかと本気で思われるくらい普段からテンションが高いです。
2-3 狼嵜光(かみさき ひかる):人も運も強烈に惹きつける“天才少女”
「メダリスト」 1巻 つるまいかだ/講談社 より引用
初出場した全日本ノービスBで優勝を果たした、いのりと同学年の天才少女です。
年頃らしい明るさや天真爛漫さも見せますが、スケートに関しては非常にストイックであり、時には狂気的であるとすら思わせられます。
まだスケートを始めたばかりのいのりと出会い友達となりますが、その時からいのりが自分のところまで上がってくることを確信しているかのように接してきます。
いのりが超えるべき高い壁であり、友達でありライバルである、そんな存在です。
2-4 夜鷹純(よだか じゅん):出場した全ての大会で勝ち続けた“伝説”
「メダリスト」 1巻 つるまいかだ/講談社 より引用
元フィギュアスケートの選手で、オリンピックの金メダリストでもあります。
出場した全ての大会で金メダリストになる、といった数々の伝説を残し、その演技を観た人に強烈な印象と影響を与えてきました。
光のことを指導しており、自分自身と同じ道を辿るであろうことを信じています。
選手としてのいのりと光、そしてコーチとしての司と夜鷹。
この二組のライバル関係が物語を大きく動かしていくのです。
3、『メダリスト』が放つ王道スポーツ漫画としての魅力的な要素4点を紹介
『メダリスト』の魅力の一つは、スポーツものの王道を描いていることです。
スポーツものの王道とは何か?
- 主人公がそのスポーツの未経験者もしくは初心者
- 主人公が努力によってどんどん上達していく
- 上達したうえでライバルたちと激闘を繰り広げ勝利する(時には敗北も)
- 主人公が目標とする強力で圧倒的なライバルが存在する
この4点について順番に紹介していきます。
3-1 主人公がそのスポーツの未経験者もしくは初心者だから、読者も一緒に理解し成長していく気持ちになれる
主人公がそのスポーツの未経験者もしくは初心者の場合、読者も未経験者であれば主人公と同じ目線で競技のルールを知り、理解していくことができます。
また読者が経験者であっても、自分も最初はそうだった、確かにこの通りだ、そう昔を思い出しながら読むことができます。
特にあまりメジャーとはいえないスポーツや、メジャーかもしれないけれどあまり経験する人は多くないスポーツの場合、初歩的なことから読者にも理解してもらう必要があるので、このパターンは有効です。
「メダリスト」 1巻 つるまいかだ/講談社 より引用
『メダリスト』の場合は後者で、フィギュアスケートというのは一般的によく知られており、でオリンピックでも人気を誇り有名な選手も多く存在する一方で、実際にフィギュアスケートをやったことがあるという人は少ないのではないでしょうか。
またテレビでよく見ていても、
- ルッツ? ループ? アクセル?
- 何がどう違うの?
- この得点はどうやって出たの?
そう思う人が多いのではないでしょうか。
だからこそ、主人公のいのりとともに少しずつ技を覚え、ルールを覚え、作戦を覚え、というのが読んでいてとても有難いです。
コーチである司も一気に教えるのではなく、いのりの成長にあわせて段階を踏んで教えていくので、読者もいのりと同じペースでフィギュアを学んでいくことができます。
3-2 主人公が努力によってどんどん上達していく姿を見て応援したくなる
主人公が未経験者、もしくは初心者ということは、その先には伸びしろしかないということです。
漫画はエンタメですから、練習という苦しさの先に楽しい展開が待っていないと辛くなります。
スポーツ漫画でいえば主人公の上達です。
そういう意味ではこのフィギュアスケートという競技は、上達が非常に分かり易いものでもあります。
- 1回転から2回転に
- 今までできなかった技が出来るように
- 単体で行っていた技を連続で出せるように
「メダリスト」 2巻 つるまいかだ/講談社 より引用
フィギュアスケートの場合は演技で得点を出すという性質上、相手の選手はいれども戦うのは自分自身ともいえます。
その結果が目に見える形で分かり易いように表現されています。
またいのりは、フィギュア以外のことはてんでダメダメな子でもありました。
学校でも勉強が出来ないというだけではなく、物忘れが激しくて遅刻も多く、同級生の子達からも諦められているような子供です。
「メダリスト」 1巻 つるまいかだ/講談社 より引用
だけど、そんな他ではまるで駄目だった子がフィギュアスケートの世界でぐんぐんと上達していく姿を見るのは、読者にとっても爽快です。
そして司自身もコーチは初めてであり、そもそもフィギュアでは成績を残せずアイスダンスに転向した過去があり、司もいのりと共にコーチとして成長していく姿を見ることができます。
読者の中には部下やメンバーを指導する立場の人もいると思いますが、司の姿はそういう人にとっても感情移入でき、また学びにもなることがとても多いです。
3-3 上達したうえでライバルたちと激闘を繰り広げ勝利する姿に爽快感を覚える
そうして主人公が上達したうえで待ち構えているのが、実際の競技会であり他の選手達との戦いです。
スポーツであり競技である以上、優劣があって勝者がいれば敗者がいる。
ただ勝利するだけでなく、最初は初心者だった主人公のいのりが、いのりよりも先にフィギュアを始めていた他の選手達を上回り勝利する姿は、作品を読んでいる私達にも爽快感を与えてくれます。
「メダリスト」 6巻 つるまいかだ/講談社 より引用
いのりの努力が報われるところでもあり、頑張ったと褒めたくもなります。
一方でフィギュアは自分自身との戦いのスポーツでもあります。
相手の得点は上回れずとも自己最高の演技をして自分の中での最高得点をたたき出したり、今まで本番で成功したことのなかった技を成功させたり、失敗しても最後まで良い演技を続けたり、その選手なりの勝利というものも存在します。
いのりも、当然ながら上手くいくことばかりではなく、失敗したり負けたりすることもあります。
だけど、敗北は何かを気づかせてくれることでもあり、更なる成長を促す機会でもあります。
いのりに限らず、いのりとともに滑り、戦った選手達を通して、勝者と敗者の姿を描いて見せてくれているのも本作の魅力の一つです。
「メダリスト」 5巻 つるまいかだ/講談社 より引用
3-4 主人公が目標とする強力で圧倒的で対称的なライバルが存在するからこそより強く燃える
主人公に倒すべき強力なライバルがいる、というのも大きな魅力です。
魅力的な敵キャラクターがいてこそ、主人公はより強く輝くというのは色々な作品が見せてくれています。
特に本作はタイトル通り金メダルを目指す物語であり、金メダルを獲得できるのはたった一人だけ。
その道筋に圧倒的なライバルが立ち塞がってこそ物語の盛り上がりはより強くなるものです。
その存在こそ、狼嵜光です。
「メダリスト」 8巻 つるまいかだ/講談社 より引用
全日本ノービスB大会を2連覇したフィギュア界の天才少女。
今まで出場した全ての大会で金メダルを獲得しているとされるほど、他の選手とは隔絶して圧倒的な実力を誇っています。
とにかく光と、そして光のコーチである夜鷹純の存在感が圧倒的なのです。
光が放つ、まさに光。
その一方で他の人には見せない練習では、狂気とすら思えるほどのストイックさを誇ります。
「メダリスト」 8巻 つるまいかだ/講談社 より引用
天才とは何か他人と感覚が異なるというのはありますが、光がいのりに対して見せる執着心はどこか危うさというか異常を感じさせるところもあります。
ただ強いだけではない、光だけでも闇だけでもない、そんな強力なキャラクター性をもった光の存在はとても強く、正直、いのりが戦う他の選手が霞んでしまうくらいですが、それだけ素晴らしいライバルとして描かれていると思います。
「メダリスト」 9巻 つるまいかだ/講談社 より引用
ライバル関係という意味では更に、司に対する夜鷹という存在も同様です。
かつてアイスダンスで全日本選手権に出場しプロスケーターを目指すもアイスショーのオーディションに落ち続けて無職だった司に対し、夜鷹は出場した全ての大会で優勝してきた男です。
「メダリスト」 2巻 つるまいかだ/講談社 より引用
そんな天才がコーチする天才少女を相手に、司といのりはどう対していくのか。
越えるべき壁は手強いほど燃えるものでもあります。
読者もまた、強力な壁に立ち向かう司といのりにシンクロして気持ちを奮い立たせられます。
4、王道の魅力だけではない『メダリスト』の魅力を高める更なる3つの要素を紹介
『メダリスト』の魅力として、スポーツ漫画の王道を抑えている点をご説明しましたが、王道が揃えばそれだけで抜群に面白い作品になるというわけではありません。
ここでは更に踏み込んで、王道以外の魅力的な要素をご紹介します。
4-1 いのりと司、選手とコーチの二人ともフィギュアの世界では異色の存在を主役に据えることで放つ光
多くのスポーツは、始めるのが多少遅くてもそのハンディを乗り越えられることも多いです。
成長することで体が大きくなり筋力も強くなり、多くのスポーツではそれらがプラスに働きます。
また生まれついての運動神経や身体能力があれば、多少のスタートの差など軽く追い越すことが出来たりもします。
ですが、フィギュアという世界ではそれらのことはあまり当てはまらず、スタートが遅いとそれはそのまま越えることが難しいハンディを抱えることになります。
5歳から始めるべきだと言われ、小学生で将来が決まると言われるフィギュアの世界において、11歳で本格的に始めたいのりは他の皆から大きく出遅れてのスタートとなります。
「メダリスト」 1巻 つるまいかだ/講談社 より引用
一方でコーチの司もフィギュアでシングルの選手を目指すも果たすことができず、諦めてアイスダンスに転向し、そこからプロを目指すも夢叶わず、当然ながらコーチとしての実績など皆無です。
この作品は、出遅れた少女と夢破れた青年がタッグを組んだ物語です。
そんな彼らが、幼少時よりフィギュアを開始した少女と選手として抜群の実績のあるコーチとのタッグに挑んでいきます。
この世界では異色の二人だからこその戦いが描かれていきます。
「メダリスト」 4巻 つるまいかだ/講談社 より引用
いのりは学校生活で周囲とうまくいかずスケート以外には何もありませんが、親に言い出すことができずスタートが遅れてしまいます。
だけど出遅れたことを言い訳にはせず、本気でオリンピックの金メダルを目指しています。
コーチの司はそのための戦略を考えますが、アイスダンスの選手だった司だからこそできる指導もあり、それがいのりともマッチして成長を見せてくれます。
「メダリスト」 6巻 つるまいかだ/講談社 より引用
フィギュアの選手としての夢が破れた司がフィギュアのコーチとなり、フィギュアの世界で実績を残してきた他のコーチ達が教える少女たちと戦います。
そうした異色の二人だからこそ見せてくれる成長の仕方、戦い方が、物語に強いアクセントとしてかけられているのです。
4-2 フィギュアの世界を魅力的に描いている描写と表現
スポーツを題材に描く時、そのスポーツをいかに魅力的に描き表現することができるか、ということも重要な点だと思います。
『メダリスト』においてそれを実現しているのは以下の2点だと思います。
- フィギュアスケートのスピード感、美しさ、ダイナミックさを伝える描写力
- フィギュアスケートの技やルールを分かり易く伝える表現方法
・フィギュアスケートのスピード感、美しさ、ダイナミックさを伝える描写力
「メダリスト」 9巻 つるまいかだ/講談社 より引用
これはもう言わずもがな、漫画ですから絵でどれだけそのスポーツの肝を描写できるかだと思います。
フィギュアスケートで思うのは、スケーティングやジャンプ・スピンでみせるそのスピード感。
速さだけではなく、そこには見ている人を魅了するような美しさがあり、そして派手さがあります。
静止画である漫画でそれをいかに表現できるか。
私は絵の専門家ではありませんが、『メダリスト』においてそれらを描写する肝だと感じるのは手足の先端の描写です。
ダイナミックさや美しさは、大きく伸ばされる手、足で表現される部分が多いように素人ながらに感じます。
「メダリスト」 1巻 つるまいかだ/講談社 より引用
それが漫画の中でも表現されているのはもちろん、スケーティングやジャンプ、ステップの中で全体の中の一部として、そして手足そのものが体の主役として描かれているように感じることが多いです。
その見せ方のバランスや強弱が良いのか、読んでいて物凄く脳に突き刺さってきて鮮明に記憶されるのです。
もちろん、読んでいくと手足以外の部分も細かく注意して描かれているのが分かり、いろんなところに目移りしていくようになりますが(笑)
・フィギュアスケートの技やルールを分かり易く伝える表現方法
どれだけダイナミックな描写をしても、凄いことは伝わっても、それがフィギュアの世界でどれくらい凄いのかは素人の読み手には分かりません。
フィギュアスケートの技やルールを理解することで、その凄さがより伝わることだと思います。
フィギュアスケートを見ると分かりますが、速くて目で追うのも大変で、何の技をどういう順番で繰り出していたのか理解できないまま終わってしまいます。
本作では、その分かりづらい技やその難度、演技の構成について、素人でも感覚的に分かり易く表現して伝えてくれます。
「メダリスト」 5巻 つるまいかだ/講談社 より引用
「なんとなく凄い」から、「なるほど、確かに凄い!」という感じに読み手もレベルアップできるように描いてくれています(笑)
それが実にありがたいのですよね!
4-3 フィギュアにかける圧倒的な熱量、そして緩急自在な展開が読み手を惹きつける
色々と説明を重ねてきましたが、なんだかんだいって、そのスポーツにかける圧倒的な熱量を読者に届けられるかどうか、なんだと思います。
「メダリスト」 9巻 つるまいかだ/講談社 より引用
これが例えば同じスポーツを題材にしていても、コメディが強めだったり、恋愛要素が大きかったりするのであればまた話は別ですが、『メダリスト』は主人公のいのりが金メダルを目指す物語で、努力と成長、挫折と勝利といったものが主たる完全なスポ根路線です。
だからこそ、オリンピックの金メダルを目指す本気さ、真剣さが読み手に伝わらなければ面白さは半減してしまいます。
本作では、主人公のいのりはもちろんコーチの司も、フィギュアにかけ金メダルを目指す溢れんばかりの情熱が絵から、言葉から、ぶつけられます。
本当に小学生か!?
そう思ってしまうほどの言葉が、ページをぶち破って読み手にぶつけられます。
そしてその熱量は私達読み手にも確実に伝わり、大会の演技のシーンでは、
「うぉおおおお、降りろ、降りろ!!」
「あぁ、転倒! でもまだ次がある、リカバリー!!」
などと、見守る司達コーチの心情に入り切って読んでしまいます。
「メダリスト」 9巻 つるまいかだ/講談社 より引用
そしてそれは主人公達だけでは意味がなく、他の同年代の選手達も同様で初めて本当のこととして伝わってきます。
登場する選手たちは理由や動機はそれぞれ異なりますが、真剣に真摯にフィギュアに取り組んでおり、才能も覚悟も想いも全てを込めて滑っています。
そんな彼女たちが存在するからこそ、相対するいのりたちの本気度も伝わってきます。
「メダリスト」 5巻 つるまいかだ/講談社 より引用
また、いかに熱量が高くても全編通して同じテンションでは読む方も疲れてしまいます。
『メダリスト』はその点、テンションの高い場面ばかりでなく、フィギュアのルールや技について説明してくれるシーンや練習の合間のやり取りなど、緩急の付け方が非常に上手く感じます。
「メダリスト」 5巻 つるまいかだ/講談社 より引用
緩い部分が長いわけではなく、大会や練習の合間に上手く挟み込むことで熱中しつつも疲れず、いつの間にか一気に読み切ってしまわせるようになっています。
その緩い部分も、メインの選手たちが小学生や中学生ということで、子供らしい姿を見せるのがとても効果的に感じます。
- 自分のコーチを褒められて得意げになったり
- 子供同士で意地を張り合ったり
- 大人の胸に突き刺さるような無邪気な発言をしたり
「メダリスト」 4巻 つるまいかだ/講談社 より引用
また司をはじめとする大人たちも、選手といえどもまだ幼い子供に対しどのように接するのが正解か手探りでもあり、子供たちの前では不安にさせないため立派な姿を見せるようにしていても裏では人間らしい姿を色々と見せてくれます。
単に競技として、競技者として凄い姿を描くだけではなく、人間としての姿を描いてくれているから、物語によりのめり込めるようになっていると思います。
5、まとめ
今回は『メダリスト』の魅力を紹介しました。
スポ根ものとしての面白さはもちろん、素人には分かりづらいフィギュアスケートという競技の仕組みやルールなども分かり易く読ませてくれる作品です。
スポーツものが好きな方はもちろん、あまりスポーツものを読まない方も楽しめる一作ですので是非、読んでみてください!
個人的に好きなキャラは、格好良い岡崎いるかと、くじ運の悪い申川りんなです(笑)
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