今回は、宝塚市立手塚治虫記念館で館長をされている河合晋一(かわい しんいち)さんにインタビューさせていただきました!
そんな河合館長に、
- 一番衝撃を受けた大好きな手塚作品について
- 手塚先生の知られざる伝説
- 開館25周年を迎え、新しく生まれ変わる記念館のこと
などなど
ファンなら思わず手塚作品を読み返したくなっちゃうような面白い話をいろいろ聞かせてもらえました。
いつか記念館に行きたいと思っていた人はもちろん、手塚作品をあまり読んだことがない。という人や、記念館のことを知らなかった人にも興味深い内容になっていると思います。
どうぞご覧ください!
目次
1、第7代手塚治虫記念館 館長 「河合」さんってどんな人?
ベレー帽をかぶった素敵な河合館長
ファンからすると、館長さんがベレー帽を愛用してる。っていうのは、なんか嬉しいですよね。笑
河合館長がどんな人なのか?お聞きしました。
1−1 衝撃を受けた手塚作品との出会い〜記念館の館長になるまで
僕はもともと観光企画課という宝塚市の観光をPRする仕事をしていました。宝塚といえば「宝塚歌劇」が有名なんですけど、その他にも「宝塚温泉」やこの「手塚治虫記念館」も含めてずっとPRをしてきました。
ちなみに、手塚治虫ファンからしたら記念館の館長って憧れの存在なんですけど、、どうしたらなれるんですか?
まずは、宝塚市の職員になってください。笑
人事異動なので絶対とは言えないんですけど、、
希望を出して、頑張ったらなれるかもしれません。
もともと手塚先生のことはお好きだったんですか?
高校生の時に読んだ最初の手塚作品が『アドルフに告ぐ』だったんですよ。その時に物凄い衝撃を受けて。手塚治虫って凄い人だな〜、って。
その時は、まさか自分が手塚先生に携わる仕事ができるなんて思ってなかったので、今はやっぱり嬉しいですね。笑
1−2 『アドルフに告ぐ』が1番好きです!
それにしても『アドルフに告ぐ』って…また刺激の強い作品から入りましたね。
『アドルフに告ぐ』は、劇画風というか、重厚で大人のテイストに仕上がっています。この作品を高校生の時に読んじゃったので、インパクトはもの凄かったですね。笑
1人は歴史的にも有名な「アドルフ・ヒトラー」ですね。
あとの2人は、「カウフマン」と「カミル」という先生が作られた架空の人物だと思います。
第2次世界大戦という激動の時代の中で、2人のアドルフの友情と確執。そして、ヒトラーとの運命的な巡り合わせが描かれている斬新で壮大なストーリーの作品です。
「子どもに殺しを教えることだけはごめんだ」
というセリフがあるんですけど、、
それは今でも残ってます。
ちなみに、なんで『アドルフに告ぐ』から入ったんですか?
もともと本が好きでよく本屋に行ってたんですよ。
で、『アドルフに告ぐ』が目にとまったんです。ちょうどその頃、第二次世界大戦を歴史の授業でやってた時で。
「手塚治虫」という名前はもちろん知ってたんですけど、作品を読んだのはそれが初めてでした。
でも、すごい気になって、お小遣いをはたいて全巻買っちゃったんですよ。
だから今でも持ってます。笑
河合館長には、この他にもおすすめの手塚作品をご紹介していただきました。よかったらまた後ほどご覧ください!
2、みんな知ってる?手塚治虫の面白いエピソードを紹介!
2−1 血液型は間違っていた!
手塚先生は自身の血液型をずっとB型だと言っておられました。ただ、実際はA型だったんです。
戦時中の血液検査でB型と診断されて、それを信じていたんですけど、戦後に再検査したら、実はA型だったと。
ご本人は、「自分はB型だからおおらかで責任感がない。」と仰ってたみたいですが。
2−2 ベレー帽をよく失くしていた!
漫画家、アニメーション作家。1930年代に若手漫画家グループ「新漫画派集団」を結成。戦中、戦後初期の漫画界を牽引。代表作『フクちゃん』
そういった理由もあって、先生もずっと愛用なさってたんじゃないかと思います。
きっと何個も持ってたんですよね。
先生は、よくタクシーでベレー帽を忘れられてたみたいで、、
テレビの対談前に慌ててスタッフの人がベレー帽を買いに行った。っていう話も残ってます。笑
2−3 生涯で700作品を生み出す忙しさの中、恐るべき速読でインプットを絶やさなかった
手塚先生は、生涯で約15万枚、700作品。と、漫画を描きまくってた人です。
「いつ本を読む時間があるんだ?」という感じなんですけど、
芥川賞、直木賞などを受賞された作家さんの本はもちろん、みんなが驚くくらい多くの本を読んでました。
なぜそんなことができたか。というと、斜め読みが得意だったみたいで、例えば、「300ページぐらいの本だったら10分くらいで読めるよ。」と仰ってたとか。
それにしても700作品ってすごい数ですね?
僕も今、半年間かけて手塚作品を読んできたんですけど、今は700作品中の35作品です。
しかも手塚作品って1つ1つが重たいというか、、
35作品読むのに半年かかったので、このペースで行くと1年で70冊。1年経ってもまだ1割しか読めないんです。
これを全部描いたっていうのは本当に凄いことですよね。
戦時中も空襲を体験されて、近くに爆弾が落ちた、という話もされています。
あと少しズレてたら、、って考えると、ほんと奇跡ですよね。
手塚先生のことは、この他にも
- 実は自分の絵にコンプレックスを持っていた
- 尋常じゃないレベルの記憶力だった
- 漫画を寝ながら描いていた
- ガタガタ動くタクシーの中でも正確に描いていた
など、いろんな話を聞かせていただきました。
人間味のある神さまの話が聞けて、僕はますます手塚先生のことが好きになりました。笑
3、開館25周年を迎え、生まれ変わる手塚治虫記念館!?
宝塚での幼少時代の体験…例えば、昆虫採集や宝塚歌劇などが手塚先生の漫画家としての原点になっている。とご本人も仰っています。
なので、遺族の方にも相談して、この宝塚に記念館を建てることになりました。
阪神淡路大震災の前年、1994年4月25日にオープンして、2019年は25周年を迎えることになります。
どのようにリニューアルするか詳しくはまだ言えないんですけど、
2018年12月25日から2019年3月31日(予定)までの期間
休館させていただくことになります。
そして、4月1日(予定)にリニューアルオープンします。
ぜひ綺麗に生まれ変わる記念館を楽しみにしていてください。
まさに火の鳥!どんな姿に生まれ変わるのか?楽しみですね。
4、館長イチ推しスポットは「手塚治虫ライブラリー」
もちろん、手塚先生の生い立ちがわかる展示室もゆっくり観ていただきたいんですけど、作品を読んでもらえたら、どれだけ凄い漫画家かわかっていただけると思います。
海外で出版された手塚作品なども読める「手塚治虫ライブラリー」
ちなみに時間内であれば、ずっと居ても大丈夫なんでしょうか?ご迷惑だったりしないんですか?
再入館も可能なので、一旦ご飯を食べに外に出られて、また来ていただいても大丈夫です。
とにかく手塚作品にいっぱい触れていってもらいたいですね。
あと、手塚作品を読んでいく楽しみの1つとして「スターシステム」があります。
元はハリウッド映画で使われていた言葉。マンガにおいては、キャラクターを映画俳優のように扱い、1人のキャラクターがいろんな作品によって違う役を演じること
ちなみに僕は最初、ランプって『アドルフに告ぐ』だけのキャラクターだと思っていたんですけど、いろんな作品に出てくるんですよね。
あっ、またランプ出てきた!
みたいな感じで嬉しいし、どんどん愛着が湧きますね!
この後、いっぱい読ませていただきます。
5、年に約3回開催!手塚治虫の新たな魅力を感じられる企画展もオススメ!
年に約3回のペースで開催されている企画展
「OSAMU TEZUKA MANGA NO KAMISAMA Ⅰ(アン)〜フランスからみた手塚治虫〜」
が開催されています。
フランス語で数字の1を「アン」と呼びます。
手塚先生の「漫画の神様」としての偉業を、フランスのキュレーター(学芸員)の方が、
時代別に5つの章に分けて細かく分析されました。
今やっている1(アン)は2018年12月24日までで、
5章のうちの第3章までが展示されています。
そして、2019年4月1日(予定)からは4章、5章を展示。という流れで展開していきます。
今回はあまり期間がないんですけど、ぜひぜひ皆さんに観に来ていただきたいなと思っています。
フランス・ベルギーを中心とした地域の漫画。日本の漫画・アメコミとともに世界3大漫画の1つと言われている。
そして2019年4月からは第2部が始まるわけですね。ということは、今やっている3章までを見ないと、、、という感じですか?
ただ、やっぱり出来るだけ多くの人に1章から通して、楽しんでいただきたいですね。
フランスのキュレーターの方の解説とともに、手塚先生の初期〜中期の作品の生原稿が間近で観られます。
ぜひお楽しみください!
6、「手塚先生の普遍的なメッセージは年齢・国籍問わず、楽しんでもらえると思います。」
最後にこれから来館される方へのメッセージをお聞きしました。
僕も閉館の時にお見送りすることがあるんです。その時に喜んでもらえるのは、やっぱり嬉しいですね。
どんな人にもっと来てほしいですか?
当時、手塚作品の連載を楽しんでみえたご年配の方から、これからの未来を担っていく子供たち。そして国外からも多くの人に来ていただきたいです。
国籍とか時代が変わっても、やっぱり面白いものは面白いんですよね。
あとはネット上で、「手塚作品をあまり読んだことがなくても楽しめますか?」という疑問があったんですけど、、
有名な作品として、『ブラック・ジャック』『火の鳥』『鉄腕アトム』とありますけど、どの作品を読んでも、根本的なメッセージは同じで、
「自然への愛」と「生命の尊さ」があります。
ぜひライブラリーに読みに来てください。
まずは、有名な作品から入ってもいいですし、ちょっと短めの作品から入ってもいいと思います。
そこには手塚先生が生涯をとおして描き続けた「自然への愛」や「生命の尊さ」という普遍的なメッセージが込められています。
そういったメッセージを感じながら楽しく過ごしていただけたら嬉しいです。
まとめ
今回は、ベレー帽をかぶり、手塚治虫愛のある河合館長に
- 手塚先生の意外な一面や超人伝説
- 開催中の企画展について
- 館長のオススメ手塚作品
などのお話を聞かせていただきました。
面白い話がいっぱい聞けましたね!
今の姿の記念館、企画展が観られるのは、12月24日までです。
館長さんの話を聞いて俄然興味が湧いた。という方は、この機会にぜひ足を運んでみてください!
じょにすけ
↓こちらは手塚治虫記念館をより楽しむためのガイド記事です。河合館長オススメの手塚作品5選も紹介しています。どうぞ併せてご覧ください!