『薔薇王の葬列』のキャラクターとストーリーを歴女ライターが解説!ダークファンタジー×歴史から生まれたキャラが魅力的すぎる!

こんにちは!

ほんのり歴女ライター、一番好きなのは平安時代だけど和洋問わず歴史・時代ものなら大好きなayameです!

そんな私が今回取り上げるのは、歴史ダークファンタジーの『薔薇王の葬列』!

なんと、2022年1月にアニメ化が決定している、今大注目の作品なんです!

今回はそんな『薔薇王の葬列』について、簡単なあらすじ解説とキャラを相関図付きで解説しつつ、さらに一歩踏み込んだキャラの魅力を語っていきたいと思います。

  • 『薔薇王の葬列』が気になってる
  • アニメの前にストーリーやキャラを予習したい!
  • 『薔薇王の葬列』のキャラにハマっている!
  • 『薔薇王の葬列』の登場人物を整理して把握したい

という人は、ぜひぜひお付き合いくださいませ!

※ストーリー解説とキャラ紹介は、おもに単行本3巻までの内容にとどめています

※一歩踏み込んだキャラの魅力については、単行本15巻までのネタバレを含みます

目次

1、『薔薇王の葬列』ってどんな漫画?

著者 菅野文
出版社 秋田書店
掲載誌 月刊プリンセス
発表期間 2013年10月~
単行本巻数 既刊15巻
ジャンル 歴史ダークファンタジー

 

『薔薇王の葬列』は、ウィリアム・シェイクスピアの『ヘンリー六世』と『リチャード三世』を原案とした歴史ダークファンタジーです。

残念ながらライターは原案の2作は読んでいないのですが、原案を知らなくてもとくに問題なく楽しめる漫画なので安心してくださいね!

物語は、ランカスター家とヨーク家による王位を巡る【薔薇戦争】を舞台にしています。

作品を読む上で、薔薇戦争の概要を軽く知っておくと比較的読みやすいでしょう。

以下、薔薇戦争について軽く解説しますが、史実である以上どうしても『薔薇王の葬列』のネタバレも含みますので、1ミリもネタバレしたくない!という方は、「2、これでアニメの予習もバッチリ!『薔薇王の葬列』の簡単なストーリー解説」までどうぞ!

薔薇戦争(ばらせんそう、Wars of the Roses)は、百年戦争終戦後に発生したイングランド中世封建諸侯による内乱であり、実状としては百年戦争の敗戦責任の押し付け合いが次代のイングランド王朝の執権争いへと発展したものと言える。また、フランスのノルマンディ公2世ギヨームがイングランドを征服したノルマン・コンクエストの後、アンジュー帝国を築いたプランタジネット家の男系傍流であるランカスター家ヨーク家の、30年に及ぶ権力闘争でもある。最終的にはランカスター家の女系の血筋を引くテューダー家ヘンリー7世が武力でヨーク家を倒し、ヨーク家のエリザベス王女と結婚してテューダー朝を開いた。

薔薇戦争 – Wikipedia

ランカスターが赤薔薇を、ヨークが白薔薇を記章としたため、【薔薇戦争】と言われています。(なんだかとっても厨二心をそそりますね!)

ものすごーく簡単に言ってしまうと、百年戦争に負けたランカスター朝ヘンリー6世に対して、ヨーク公リチャードが「軟弱な王め!」と反乱を起こしたことから始まる戦争です。

そもそもランカスターとヨーク、もとは親戚(同じプランタジネット家の傍流)なのですが、ランカスター朝自体がプランタジネット朝から王位を奪ったことから興ったものであり、なんやかんや因縁が深い両家。

最初のヨーク公リチャードの反乱から派手な兄弟喧嘩も含めて30年もドンパチしてたのに、結局ランカスター系のテューダーに王位を持って行かれるという、ちょっとズコーな結末でもあります。

ただ、このテューダーから始まる系譜は、その後偉大なるエリザベス1世にまで続きます。

イングランド史において、とても重要な戦争であることは間違いありません。

 

そんな薔薇戦争を舞台にした『薔薇王の葬列』、歴史ロマンを感じさせるだけではなく、ダークでゴシックな雰囲気あふれるファンタジー作品でもあります!

続いては、『薔薇王の葬列』の簡単なストーリー解説をさせていただきますね!

2、これでアニメの予習もバッチリ!『薔薇王の葬列』の簡単なストーリー解説

物語はヨーク公リチャードがヘンリー6世に対して反乱の意を固めるところから始まります。

彼には長男エドワード、次男ジョージ、そして三男リチャードがおり、とくに自分と同じ名をもつリチャードを深く愛していました。

幼いリチャードも父親を深く愛し、父とともに戦いたいと願いますが、子供ゆえそれは叶わず。

リチャードは父のことを神のごとく崇めています

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

また、リチャードには兄弟すら知らない秘密がありました。

彼は男と女、両方の性をもつ両性具有だったのです。

知っているのは両親と乳母、そして側近くに仕えるケイツビーのみ

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

そのため、彼は母親であるセシリーから憎まれ、疎まれ、幼いころから常に呪いの言葉をかけられていました。

それは幼いリチャードを縛り、蝕み、そして精神を歪めていくのです。

幼い頃から少しずつ精神を蝕まれています

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

時は経ち、ヨーク公リチャードはヘンリー6世から「死後に王位を譲り受ける」約束を取り付けることに成功します。

ヨークの勝利は明白でしたが、そうはいっても王位はまだランカスターのもの。

リチャードは父に王冠を完全に奪うよう進言し、その言葉を受けてヨーク公リチャードは再び挙兵を決意。

またしても戦いに参加できなかったリチャードですが、偶然にも森で不思議な男と出会います。

森には良い思い出のないリチャードですが、徐々に謎の男と過ごす時間に安らぎを見出します

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

実はこの男こそ、リチャードが宿敵と定めるヘンリー6世。

二人は互いの正体を知らぬまま出会い、偶然によりさらに逢瀬を重ね、少しずつ惹かれ合っていくのです。

一方、ヨーク公リチャードは勝利をおさめ、ランカスター軍は敗走。

これにて一件落着と言いたいところですが、ヘンリー6世王妃であるマーガレット・オブ・アンジューが黙っていません。

彼女はスコットランドの援助を受けて挙兵。

激しい戦いのなか、ヨーク公リチャードは「けして退かぬ」と猛然と敵に立ち向かいます。

愛する息子との誓いを守りーー

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

結果、彼は無残に殺害され、その首はヨークの門に……。

敬愛する父親の死を知ったリチャードは発狂し、鬼神のごとくランカスター軍を襲撃します。

血に飢える姿はまるで獣のよう

(『薔薇王の葬列』2巻 菅野文/秋田書店 より引用)

同時に、兄である長男エドワードもウォリック伯とともに進軍。

ウォリックはヨーク公リチャードの右腕的存在。エドワードも彼を信頼しています

(『薔薇王の葬列』2巻 菅野文/秋田書店 より引用)

リチャードの暗躍もあり、ヨーク軍は見事ランカスター軍を破り、ついにヨーク(エドワード)は王冠を手に入れたのです。

そうしてイングランドには平和な時が訪れますが……。

父であるヨーク公リチャードに似て、強く美しく賢いエドワード王には、一つだけ難点がありました。

それが女性関係。

戦の最中でも女性を切らさなかった男です

(『薔薇王の葬列』2巻 菅野文/秋田書店 より引用)

彼はもともとはランカスター派であったエリザベス・ウッドヴィルに一目惚れし、強引に王妃にしていまいます。

しかし、これは憎きヨーク家への復讐に燃えるエリザベスの陰謀。

この強引な結婚が、イングランドにさらなる禍と争いの種をもたらすことになるのですーー。

エリザベスの復讐は始まったばかり

(『薔薇王の葬列』3巻 菅野文/秋田書店 より引用)

 

『薔薇王の葬列』の簡単なあらすじはこんな感じです。

イングランドはひととき平和な時を取り戻しますが、宮廷とはいつの時代も陰謀がうごめくもの

続きが気になる方は、ぜひ漫画本編をチェックしてみてくださいね。

3、【相関図付き!】『薔薇王の葬列』に登場するキャラクターを詳しく解説

家族のなかで唯一あるがままの自分を受け入れてくれた父を亡くし、大きな喪失感を抱えるリチャードは平和のなかでも血を求め続けます。

そんな彼を取り巻くのは個性豊かなキャラクター達。

展開の予想しやすい歴史物というある意味”枠のある設定”のなかで、各キャラクターたちは読者の予想を超える動きを見せ、『薔薇王の葬列』という物語を彩っていきます。

ここでは『薔薇王の葬列』序盤に登場するキャラクターを解説していきます。

3-1 白薔薇のヨーク派:プランタジネット家とその周辺のキャラクター達

まずは主人公リチャードの家族であるヨーク派プランタジネット家と、その周辺キャラクターの紹介です。

①主人公・リチャード

両性具有として生まれたため、母親に強く疎まれて育ちます。

母親に愛されませんでしたが、父親には深く愛され、それが彼の父に対する深い敬愛に繋がっていると考えられるでしょう。

同時に母の愛にとても飢えていて、ファザコンとマザコンをこじらせていると言っても過言ではありません。

どれほど疎まれようと、子が母親の愛を求めるのは当たり前のことです

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

母親に愛されなかった分、無意識のうちに他人から愛されることを望んでいるリチャード。

互いの正体を明かさないまま少しずつ心を通わせ合ったヘンリーにも「愛されたい」と望んでしまい、これが悲劇のはじまりとなります。

そんなリチャード、常に自分の性や体に対してコンプレックスを抱えているうえ、人生の多くを戦のなかで過ごしたせいか、性格は疑り深く無慈悲で冷酷(に見せているという部分も)

ランカスターを憎む気持ちが強いことから非常に好戦的で、敬愛する父親に王冠を捧げたいあまり戦へと駆り立てる一面も。

息子が父親に接する態度としてはあまりにも妖しい……

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

女性のようになめらかな肌をもち、細い肢体から繰り出される剣術は鋭く脅威的。

不思議な魅力とハラハラするような危うさを抱える、あまりにも歪でアンバランスなキャラクターです。

②ヨーク公リチャード(リチャードの父)

主人公リチャードの父親です。

そもそも彼が反乱さえ起こさなければ薔薇戦争は起こっていないのですが、百年戦争で護国卿として戦った彼にとって、ヘンリー6世がとったフランスとの和睦という結果は耐え難きものだったのでしょう。

また、彼の生家はとんでもない名家なのですが、父親がヘンリー5世に対する陰謀に関わったとされて処刑されており、彼自身はもともと爵位も領地も持っていませんでした。

ちょっと語弊がありますが、イメージとしてはたたき上げの人で、そのためにランカスターの人々にひどい侮辱を受けます。

フランスとの和睦を決めたヘンリー6世に対し強く反発するリチャード。しかし返ってきたのは嘲笑でした。

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

こうしたことが積み重なり、反乱の芽は少しずつ、しかし着実に育っていったのでしょう。

そんなヨーク公リチャード、これぞ正義のヒーローといってもいいくらい、強く正しくたくましく、そしてなにより美しい!

ヨークの人々にとって太陽のような存在で、妻子を愛し、力強く民衆を導きます。(余談ですが、史実では妻セシリーとの間に13人も子供をもうけています)

愛する息子に辛く当たる(というか虐待してる)妻を叱るでなく、ブチュッとなだめます。なんというか、女性の扱いを完璧に心得ている感がありますね。

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

不利な状況でもけして退かず、誇り高い姿はいっそ神々しくすらあります。

その誇りこそが彼の身を滅ぼすことになるのですが、それすら受け入れる器の大きさを持っているのです。

王はけして退くことはありません

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

結局彼自身が王冠を得ることはできませんでしたが、まさに王のなかの王、KING OF KING。それがヨーク公リチャードなのです。

③セシリー・ネヴィル(リチャードの母)

主人公リチャードの母で、ヨーク公リチャードの妻です。

夫と息子を溺愛していますが、両性具有として生まれたリチャードだけは愛することなく、「悪魔」と疎みます。

過去には幼いリチャードを森に置き去りにしたことも。

かなり精神的に追い詰められている感じがありますね……

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

また、リチャードのもつ不思議な魅力に対して畏怖の念を抱いた最初の人ともいえます。

彼女はリチャードが成長するごとに彼への不信感を大きくしていき、ヨークが被る戦禍のすべてがリチャードによるものだという妄想じみた考えに囚われるまでに……。

たしかに、リチャードの姿はあまりにも妖艶です

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

しかし、考えてみれば彼女もかわいそうな人。

時代と宗教観を考えればリチャードを悪魔と捉えるのも仕方のないことであり、そんな悪魔を生んでしまったという大罪の意識から精神を狂わせてしまったのであれば、多少の同情の余地があります。

とはいえ、母親としてはけして褒められた人間ではなく、リチャードを大きく歪ませてしまった張本人であることに間違いはありません。

④エドワード4世(リチャードの長兄)

ヨーク公リチャードとセシリーの長男。(正確には早逝した兄がいるのですが、ストーリーに登場しないため今回は便宜的に長男とします)

父に似て美しく、カリスマ性に満ちた男性です。

まだ幼い弟たちを残し、父とともに戦いに赴くエドワード

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

唯一の難点は女癖の悪さ。(というか、女性が好きすぎること)

戦の最中でも女性に愛をささやかずにはいられません

(『薔薇王の葬列』2巻 菅野文/秋田書店 より引用)

美女に目がなく、フランス王の義妹との婚約も蹴って、よりにもよってランカスター派のエリザベスと身分違いの結婚をしてしまいます。

しかも、極秘で!

一国の王のすることとは思えませんね

(『薔薇王の葬列』3巻 菅野文/秋田書店 より引用)

この事が後のすべての禍の元凶と言ってもいいでしょう。

彼の浅慮な結婚は貴族達の不評を買い、宮廷にエリザベスの親族が蔓延ることを許し、そして薔薇戦争を複雑に長引かせることになるのです。

⑤ジョージ(リチャードの次兄)

エドワードの弟で、リチャードの兄です。

優秀な兄と不思議な魅力を持つ弟と比較すると、あまりパッとせず、凡庸なイメージに描かれています。(といっても見た目はけして悪くない)

美形の血筋ですね

(『薔薇王の葬列』2巻 菅野文/秋田書店 より引用)

母セシリーの十分な愛に満たされているからなのか、母と弟リチャードの関係性に対しやや配慮に欠ける面もあり、どことなくデリカシーのない印象も。

宴に現われない母セシリーについて、兄弟でこれほど見解が別れるとは

(『薔薇王の葬列』3巻 菅野文/秋田書店 より引用)

敵方に「単細胞」とあだ名されるほどちょっ無神経で浅はかで、兄弟に対してほんのりコンプレックスを抱えているジョージ。(ちなみに兄エドワードは「女好き」)

でも、まさにこの人間性こそがジョージと言ってもいいでしょう。

そしてそんなジョージの性質が、後にヨーク家に大きな動きをもたらすことになるのです。

⑥ウォリック伯(リチャード・ネヴィル)

ヨーク公リチャードの右腕的存在。

ヨーク公リチャードを反乱へと奮起させた人です

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

ヨーク公が命を落とした後はその息子であるエドワードを支え、ランカスターから王冠を奪い取ることに尽力します。

ヨーク派からの信頼はとても篤く、エドワードが戴冠した後もその地位を安定させるために奮闘しますが……。

愛するヨーク公リチャードの息子だからこそ、エドワードのために力を尽くします

(『薔薇王の葬列』3巻 菅野文/秋田書店 より引用)

慎重に進めていたエドワードとフランス王の義妹・ボーネ姫との婚約を直前でエドワードが反故にし、おまけにエリザベスと極秘結婚。

結果的にエドワードに裏切られた形となったウォリック伯は、失望を隠せません。

堂々と「お前より女!」と宣言されてしまうウォリック……

(『薔薇王の葬列』3巻 菅野文/秋田書店 より引用)

その失望が、イングランドを揺るがす大きな戦いの切っ掛けになるのです。

この時代、イングランド王の座は忙しなく動きますが、その裏には常に彼の存在があり、ゆえに彼は「キングメイカー」として後の世までその名を残します。

そんなキングメイカーはこの先どんな道を歩むのかーー? ぜひ、本編で確認してくださいね。

⑦アン・ネヴィル(リチャードの幼馴染)

ウォリック伯の娘です。

お下げ髪が愛らしい

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

リチャードは幼い頃、兄のジョージとともに一時ウォリック伯の城に身を寄せていました。

そのときに出会ったのがアン。

ちょっぴりおてんばだけど抜けているところもあり、ハキハキしてませている妹と比較するとやや内気なタイプ。

地味で目立たないタイプに見えますが、心根はまっすぐで優しく、裏表のない可愛らしい女の子です。

成長するとともにどんどん美しくなり、幼なじみであるリチャードにほのかな恋心を抱きますがーー。

トレードマークのお下げ髪はそのままに、かなりキレイになりました!

(『薔薇王の葬列』2巻 菅野文/秋田書店 より引用)

激動の時代、アンもまた、薔薇戦争のなかでその身を翻弄されるのです……。

⑧イザベル・ネヴィル(アンの妹)

ウォリック伯のもう一人の娘です。

後ろでもじもじするアンと違い、堂々としたレディっぷり

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

アンと比べると容姿も派手で、ズバズバ自分の意見を言うタイプ。

おまけに早熟で幼いながらも有力貴族の娘として男性を見る”目”があり、現状と未来を見据えて自分の将来をしっかり考える力があります。(アンはそういったことはからっきし)

「もしエドワードが亡くなったら王妃になれるかもしれない」と胸を躍らせるイザベル

(『薔薇王の葬列』3巻 菅野文/秋田書店 より引用)

ただし、ウォリック伯の娘であることから、彼女も姉のアン同様に薔薇戦争のなかで悲しい運命を辿ることになります。

⑨ケイツビー(リチャードの世話係)

リチャードが生まれたときから側にいる世話係。

両親と乳母以外で唯一リチャードの体の秘密を知る人物で、それゆえリチャードの世話を一手に引き受けています。

リチャードが生まれた直後の混乱の場に、ケイツビーもいました

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

物静かで朴訥としたイメージですが、リチャードがピンチのときや苦しんでいるときには必ず側にいます。

が、エドワードが王座についた後はリチャードから離れ、ヘイスティングス卿に仕えることに。(もともとヨーク公リチャードに仕えている形だったため)

とはいえ、あいかわらずリチャードには並々ならぬ忠義をもっており、しばしばリチャードのもとに駆けつけます。

リチャードをとても大切に思っており、そこには主従を越えた想いがあるようですが、果たしてーー?

リチャードにとってはあくまでも世話係なので、半裸を見られてもなんともないようですね

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

⑩バッキンガム公爵(ヨーク派貴族)

なかなかに尊大不遜

(『薔薇王の葬列』3巻 菅野文/秋田書店 より引用)

多数の王族・貴族の流れを汲む、名門バッキンガム公爵家の当主です。

王妃となったエリザベスの妹・キャサリンと無理矢理結婚させられたことに不満を持っている模様。

名家でありながら彼自身は王冠には近いようで遠く、自身の野心をリチャードに投影したのか王座をほのめかします。

ポスト・ウォリック伯

(『薔薇王の葬列』3巻 菅野文/秋田書店 より引用)

幼いながらもキングメイカーとしての野心を見せる明晰な少年であり、今後長くリチャードと時をともにする存在です。

⑪ジャンヌ(???)

百年戦争で男装の罪により火あぶりの刑に処された、ジャンヌ・ダルクの亡霊。

イングランドに呪いの言葉を吐きながら火あぶりにされるジャンヌ

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

たびたびリチャードの前に現われ、リチャードを惑わせます。

リチャードの内面が作り出したただの幻想なのか、それとも……

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

リチャードの内面の歪さを映したような存在であり、不安・恐れ・懐疑を増幅させる存在でもあり、そしてときに優しく抱きしめる存在。

まだまだ謎が多いですが、リチャードに大きな影響を与えていることに間違いはありません。

3-2 赤薔薇のランカスター派:ランカスター家とその周辺のキャラクター達

続いては、ヨークに敵対するランカスター派の人々について。物語序盤の重要キャラクター達です。

⑫ヘンリー6世(イングランド王)

死んだ魚のような目……

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

ランカスター朝の王であり、一時はフランス王も兼ねていました。

父ヘンリー5世を幼くして亡くし、わずか生後9か月にイングランド王位を継いでいます。

敬虔なクリスチャンである彼の性格を一言で表わすと『博愛主義』。

聞こえはいいですが、彼は信仰心と平和を愛する心に囚われて目の前の現実から逃避するクセがあり、意志薄弱で戦禍において王位にふさわしいとは言いがたい人物です。

もちろん、博愛なのが悪いわけではないですが、彼はあまりにも人として、王として弱い。

そこで目をそらしては王の器と言えません

(『薔薇王の葬列』2巻 菅野文/秋田書店 より引用)

現実逃避した状態は周囲から精神錯乱と見なされ(実際、ほとんど正気ではないようです)、政治もろくに行わず、ランカスター軍の指揮も妻であるマーガレットが執る始末。

ではヘンリーは何をしていたのかというと、人気の無い森の中でリチャードと出会い、「自分は羊飼いである」という妄想(願望)に浸るのです。

死んだ魚の目と打って変わって、瞳が輝いています

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

ヘンリーにとって、羊飼いとしてリチャードと過ごす時間は苛烈な日々を忘れることができる、まるでオアシスのようなもの。

リチャードが無意識のうちにヘンリーの愛を求めるように、ヘンリーもまたリチャードとの時間に依存していくのです。

ヘンリーにとって、唯一すべてを忘れて安らげる時間(忘れちゃダメなんだけど)

(『薔薇王の葬列』3巻 菅野文/秋田書店 より引用)

王としては頼りないヘンリーですが、彼の生い立ちにも同情の余地はあり、彼もまた大きな歴史の流れに翻弄された被害者といえます。

自分を省みない母に、打算と策略しかない大人達に囲まれた幼少期

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

とはいえ、その身は紛う事なきイングランド王であり、リチャードの宿敵。

二人の出会いや交流が薔薇戦争にどんな結末をもたらすのか……? 

物語のキーパーソンであり、もうひとりの主人公といっていい存在です。

⑬マーガレット・オブ・アンジュー(イングランド王妃)

ヘンリー6世の妻。

夫とは正反対に好戦的な美女

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

フランス出身で、15歳のときに百年戦争の和平のためにヘンリー6世と結婚しました。

つまりは政略結婚であり、ヘンリーとの間に愛はありません。

王としても男としても役に立たない夫ヘンリーに日々激しい怒りを募らせています

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

ランカスター軍の指揮官としてよく働き、敗走した後もスコットランドを味方につけ再び挙兵するなど、軍人・外交官としての手腕もたいそうなもの。

敵に対しても情け容赦なく、ヨーク公リチャードを無残に処刑してその誇りを汚したり、兵達に略奪を許したり。

ここでも夫婦で正反対の反応を見せています

(ちなみに、略奪を許したのは兵士達への報償のためであり、略奪行為自体も大きなものではなかったとされています…)

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

息子には母親らしい愛情を見せますが、基本は冷酷無比な女性として描かれています。

とんでもない恐妻に見えるかも知れませんが、彼女の行動はランカスターを背負う王族としての誇りによるものであり、またこうした激しさを持つに至った理由もちゃんとあります。

彼女にとっての不幸は、望まぬ結婚と相性の悪い夫、そして時代。

この3点が揃わなければ、彼女の人生ももう少し穏やかだったのではないかな、と思います。

⑭エドワード(ランカスター王子)

ヘンリー6世とマーガレットの息子であり、ランカスターの正当なる後継者です。

意地悪王子を地で行く感じですね

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

プライドが高く傲慢ですが、彼も父親に対して複雑な思いをもっており、寂しさを抱えた子供の一人と言って良いでしょう。

父ヘンリーに愛された記憶はなく、そのうえ王位継承権も奪われてしまいます

(『薔薇王の葬列』3巻 菅野文/秋田書店 より引用)

母マーガレットに似て好戦的な性格ですが、リチャードの半裸を見たことで彼を女と認識し、ほのかな恋心を抱きます。

思いもよらない初恋です

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

この幼い恋心が薔薇戦争のなかでどのように発展していくのか……。

悲しい結末しか見えませんが、どこか憎めず、なんだか応援したくなるような愛すべきキャラクターです。

⑮エリザベス・ウッドヴィル(ランカスターの下級貴族)

ランカスター派の下級貴族で、夫ジョン・グレイを殺害されたことでヨークに強い憎しみをもつ女性。

THE・美女ですね

(『薔薇王の葬列』2巻 菅野文/秋田書店 より引用)

復讐のため自らを犠牲にし、王となったエドワードを誘惑して宮廷を内側から掌握することを企みます。

復讐心に駆られ、自分の体を憎い男に好きにさせることも厭いません。こうなった女性は最強かも。

(『薔薇王の葬列』2巻 菅野文/秋田書店 より引用)

エドワードが一目惚れするだけあって容姿はとても美しく、肉感的なボディを持ち、手練手管によってエドワードを翻弄。

この時点ではまだ寝たい程度だったのですが、あれよあれよと王妃にすることを約束してしまうのです

(『薔薇王の葬列』2巻 菅野文/秋田書店 より引用)

計画通り王妃となった後は、父であるリヴァース伯や弟のアンソニーをはじめ親族を続々と宮廷に集め、有力貴族と結婚させたり称号を与えたりなど、やりたい放題。

ぽっと出の成り上がり貴族に、ウォリック伯などの外戚や旧来の有力貴族がいい顔をするわけもなく、宮廷は混乱していきます。

ちなみに、とても多産な女性。

元夫ジョン・グレイとの間にトマス(後のドーセット侯)とリチャードという息子がおり、エドワードとの間にもたくさんの子供をつくります。

彼女の子供のうちの一人が歴史的にとても重要な人物になるのですが、それはもうすこし先の話……。

4、物語を残酷かつ華麗に彩るキャラクターの魅力を深掘り!とくに気になる5人+αをピックアップ!

ここからは、『薔薇王の葬列』に登場する魅力的なキャラクターについてもう少し詳しく触れていきます。

最新巻である15巻までのネタバレを含むので、ネタバレ厳禁!の方は、「5、まとめ」にお進みください。

 

さて、エドワードが戴冠し、エリザベスが王妃となったイングランド。

一時は平和を取り戻したかに見えますが、ランカスターとの争いはまだ終わっていないしクーデターも勃発するしで、相変わらず混乱の極みのなかにあります。

年月を重ねるなかで、当然キャラクター達の関係性も大きく変わり、複雑化していきます。

こちらが15巻時点での人物相関図です。

この図を確認しつつ、さらにキャラクターの魅力を深掘りしていきましょう!

4-1 まさにダークヒーロー!愛に飢える歪な悪魔・リチャード

キャラクターを深掘りするにあたって、やはり主人公リチャードは避けられない存在でしょう!

そもそもリチャード、少女漫画の主人公とはとても思えない凶悪っぷり。

もともと不安定な性質でしたが、父を亡くしてからは完全に壊れ、自ら暗く歪んだ悪の道を進んでいきます。

美しく描写されてはいますが、完全に壊れた状態だと察せられます

ランカスター軍を襲撃する姿はまさに殺戮マシーンでした

(『薔薇王の葬列』2巻 菅野文/秋田書店 より引用)

これには父親からの深い愛と、それに応えようとするリチャードの誇りが根幹にあるのでしょう。

ただし、その父の愛すらやがては彼を縛る呪いに変わります。

父の愛は確かなものでしたが……

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

やがては父の亡霊に取り憑かれることにーー

(『薔薇王の葬列』4巻 菅野文/秋田書店 より引用)

愛があろうとなかろうと、親が子供に与える言葉の影響の大きさを考えさせられますね。(もちろん、リチャードの事例があまりにも特殊すぎるのですが)

そうして呪いを受けた子供・リチャードは、性的にもねじれていきます。

敬愛する父の息子であること=自分は男であるという強い性自認を持ちつつ、実際の性衝動や恋愛感情は男性にしか向きません。

その対象となったのがヘンリー。(一部例外として、アンに対して友情と恋心と信頼の混じった感情を抱きますが、発展することはありませんでした)

ですが、ヘンリーはリチャードを受け入れきれず、行き場のない愛は失望と悲しみと怒りに変わり、ついにはヘンリーを殺害

意を決して想いを伝えますが叶うことはなく、もっとも愛する人を手にかけるのです

(『薔薇王の葬列』7巻 菅野文/秋田書店 より引用)

俯瞰して見ると、癇癪を起こした子供に見えなくもありません。

この性的なねじれ行動やまるで子供のような幼さ、冷酷さ、妖艶さが彼のエロティックさを生み出しているようにも感じられますね。

そしてこのヘンリーとの一件のみならず、その後もヨーク家に起こるさまざまな事件が少しずつ彼の暗黒面を形作っていき、やがては悪魔を自称する罪深き王”リチャード3世”が生まれるのです。

 

(『薔薇王の葬列』11巻 菅野文/秋田書店 より引用)

王は神に愛され、神に選ばれた存在でなければなりませんが……

(『薔薇王の葬列』13巻 菅野文/秋田書店 より引用)

(リチャードの自称するところの)悪魔の身で王冠を手に入れた彼の前途は、けして明るいものではありません。

バッキンガムや息子エドワードに対して確かな愛情を持つようになった点も懸念するべきポイントです。

それはかつての自分が父親に対して抱いていた感情。リチャードが無視できるわけありません。

(『薔薇王の葬列』14巻 菅野文/秋田書店 より引用)

深い愛は強さにも弱さにもつながります。

非情で冷酷であったはずのリチャードのなかに芽生えた温かい感情が”リチャード3世”にどう影響するのか、そしてリチャードを愛するあまり反旗を翻したバッキンガムとの関係性がどのように展開するのかがこれからの見所です。

4-2 敵なのに憎めない!報われない恋とコンプレックスに悩むエドワード

作中、ランカスターのエドワードほど憎めないキャラはいないでしょう。

リチャードにほのかな恋心を寄せるエドワード。

性格はジャイアンのように傲慢ですが、幼い恋心をずっと温め続け、リチャードに堂々と「可愛い」と言うあたり純朴で可愛い人です。

また、リチャードを前に年頃の青年らしく葛藤する姿も微笑ましいですね。(リチャードが凶悪だから余計に)

互いに正体を明かさないまま再び出会います(リチャードは過去にエドワードと会ったこと忘れちゃってる……)

ちなみに、リチャードはエドワードのことをちっとも信頼してません(寝たふりしてる)

(『薔薇王の葬列』5巻 菅野文/秋田書店 より引用)

リチャードに対して心の奥で「王になったら迎えに行く」と誓いますが、後に彼が歩む道を思って心を痛めた読者は私だけではないはず。

しかし、彼はどんな苦しみも自らの力に変えていきました。

自分を愛することのなかった父親に対する寂しさは、王子としての誇りに。

そんな父親がリチャードと愛し合っているという(事実に近い)誤解は、自身を奮い立たせ成長する糧に。

この件が父親に対するコンプレックスを深める切っ掛けになりました

(『薔薇王の葬列』3巻 菅野文/秋田書店 より引用)

望まぬ結婚をしても妻に無体を働くことは無く、互いに友情を抱くまでになりました。

そして、最期まで王子としての誇りを失わず、気高く散ったエドワード。

誇り高さは母譲りか……皮肉ですね……

(『薔薇王の葬列』7巻 菅野文/秋田書店 より引用)

その最期をリチャードに託せたことは彼にとって唯一の幸福だったのではないでしょうか。(余談ですが、エドワードの最期のシーンはライターが作中もっとも泣いたシーンでもあります)

たった一つの最後の願いを、リチャードは叶えてくれました

(『薔薇王の葬列』7巻 菅野文/秋田書店 より引用)

彼は残虐なことには一切手を染めていません。(少なくとも描写されているなかでは)

初期こそ性格が悪く嫌なヤツとして描かれていましたが、どこまでもまっすぐで心根は優しい人です。

加えて、おそらく作中トップを争う報われなさ。

そんな彼の存在はストーリーの深みと切なさをより強くし、結果として読者に強い印象を与えたと言えるでしょう。

4-3 暗躍する次代のキングメイカー!ビックリするほど男前に育つバッキンガム

初登場の3巻時点ではまだ少年だったバッキンガム。

王冠をほのめかし「キングメイカーになる」宣言をし、成長した後はリチャードの右腕的存在になります。

ひとまずそれは置いておいて、とにかくこれだけ言いたい。よくぞここまで男前に育ってくれた!

まさかまさかの長身黒髪眼鏡!

(『薔薇王の葬列』8巻 菅野文/秋田書店 より引用)

見事イケメンに成長したポスト・ウォリックのキングメイカー(仮)。

自らの王をリチャードと定めてからは影になり表になり彼を支えますが、物語を読み進めていくとその関係性が徐々に崩れていく過程が丁寧に描かれています。

バッキンガムにとっての誤算は、リチャードが秘めた不思議な魅力(性的な意味も含む)。

自分の尽力を取引材料にしてリチャードの秘密に迫り、肉体関係を結んでしまったことが彼にとっての悲劇の始まりといってもいいでしょう。

最初こそ「誓約」とか「契約」とか「痛みを」とか御託を並べていたけれど、結局リチャードにどんどんハマっていくところは読んでいてちょっと口角が上がってしまいます。

最初は互いを縛り付けるための交わりでしたが……

(『薔薇王の葬列』10巻 菅野文/秋田書店 より引用)

個人的には「ああ、あんなに愛に冷めていたバッキンガムもなんだかんだただの男だったんだな」とちょっぴり落胆したのですが、それだけリチャードに人として、王として、男として、そして女としての魅力があるということ。

なんだか、バッキンガムを通してリチャードに潜むダメンズメーカー的ポテンシャルが見えてくる気がします……(そもそもリチャードは意図してはもちろんせずとも男を操るのがうまい)。

また、バッキンガムの本名がヘンリーっていうのも、胸に来るものがありますね!

はじめて愛した人と同じ名前

(『薔薇王の葬列』13巻 菅野文/秋田書店 より引用)

ついには、リチャードの心をほんのわずかでも自分以外の存在が占めることにも嫉妬を覚えるほど、愛に狂ってしまったキングメイカー。

彼を独占するために監禁未遂まで起こし、15巻では”リチャード3世”に対し殺意を見せました

バッキンガムのこの思いが今後の展開を大きく左右します!

(『薔薇王の葬列』14巻 菅野文/秋田書店 より引用)

リチャードしか見えなくなっているバッキンガムと、王になり国と家族への愛や責任感が芽生えたリチャード……二人の愛の結末が待ちきれません!

4-4 妄想と幻想、信仰に生きる悲しき王ヘンリー…ティレルは今後どう動く?

もうひとりの主人公といってもいいヘンリー6世。

リチャードの心が壊れているように、ヘンリーもまた壊れています。

正気を保っているときでも、常に精神的に追い詰められているのです

(『薔薇王の葬列』5巻 菅野文/秋田書店 より引用)

けれど、壊れた二人の関係は、ふたりっきりの輪の中だけであれば正常でいられます。

それは身分や立場、地位を忘れて妄想に没頭できるからだけではなく、互いの寂しさに触れたこと、その寂しさや苦悩から生まれた性質が正反対のものであったこと、それでいて求めるものが二人とも同じだったからではないでしょうか。

ヘンリーはひたすら神に縋りますが、リチャードは神だって殺してみせると言い切ります。神聖さのあるヘンリーと悪魔性のあるリチャード、二人の正反対の性質がよくわかりますね

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

ヨークの王子とランカスターの王……端から見れば歪でしかありませんが、二人きりの時間が互いにとって心地よかったのも頷けます。

愛し合う二人ですが、互いの正体がわかったのはヨークが勝利をおさめたとき。

ヘンリーは次々と散っていく儚い命を目の前に、完全に正気を失います。

幽閉後、愛を懇願するリチャードを目の前にして一時は意識を取り戻し、ついには体を重ねようとするのですが……。

ヘンリーは過去のトラウマにより、ギリギリのところでリチャードを受け入れられません。

彼のトラウマは母親が起因のものであり、すなわち性愛や情欲を悉く嫌悪するものです

(『薔薇王の葬列』5巻 菅野文/秋田書店 より引用)

「悪魔」という言葉は、はたしてリチャードへのものなのか、それとも……

(『薔薇王の葬列』7巻 菅野文/秋田書店 より引用)

そのまま激昂したリチャードに殺害された……というストーリーですが、肝心の遺体は別のものにすり替えられています。

リチャード自身は「殺した」と信じてるのですが、実際のところリチャードもほとんど正気ではありませんでしたし……。

死んでる……ように見えなくもないけど、確定とはいえませんね

(『薔薇王の葬列』7巻 菅野文/秋田書店 より引用)

とにかく、これにてヘンリー退場。

と、思いきや。

その後、ヘンリーの面影を残す暗殺者ジェイムズ・ティレルが登場。

うーん、なるほど……?

(『薔薇王の葬列』8巻 菅野文/秋田書店 より引用)

記憶を持たず、普段は羊飼いとして過ごし、リチャードがヘンリーにつけたのと同じ部分に傷跡をもつティレル。

賢い読者にはすぐ察しがつくと思いますが、リチャードとの接触もわずかであり、まだ決定的なことがわかりません。

ヘンリー亡き今、ジェイムズが今後リチャードの人生にどのように関わり影響を与えるのか、注目していきたいと思います。

4-5 くすぶる情熱が大火となる日は来るのか?耐え忍ぶ男・ケイツビー

片恋キャラが好きなみなさん、お待たせしました。

報われない片恋という意味ではランカスターのエドワードをしのぐ逸材、褐色イケメンのケイツビーです。

イケメン祭りだわっしょいわっしょい!

(『薔薇王の葬列』4巻 菅野文/秋田書店 より引用)

幼い頃からリチャードの側近くに仕えていたケイツビー。

物語序盤ではあくまでもリチャードのお世話役というポジで、感情を発露させることもほとんどありません。

ところで、おちびリチャードとおちびケイツビー、めちゃくちゃ可愛くないですか?(唐突)

(『薔薇王の葬列』10巻 菅野文/秋田書店 より引用)

エドワード戴冠後はリチャードと離れることになりましたが、とくに不満らしい不満も見せませんでした。(まぁちょこちょこ主人から離れてリチャードのとこに来てるんですが)

もちろん、リチャードに対して色気を出すことも一切無く。

リチャードに「もし自分が王を裏切ったら?」と問われたときも、リチャードにつくともつかないとも応えず「自分はヨーク王家を守る」と、あくまでも従者の立場を主張します。

リチャードにとっては、この距離感がかえって心地よかったし信頼できたのでしょう

(『薔薇王の葬列』4巻 菅野文/秋田書店 より引用)

だからこそ、リチャードにとってケイツビーは「特別な存在」でありながら「取るに足らない存在」でもあります。

ものすごく矛盾してますが、ケイツビーという存在は確かにリチャードにとってかけがえのない”支え”ではあるものの、そこにあるはずの一個人としての人格にはあまり関心が無いようです。

こんなにも自分を大切にしてくれる存在なのに、「ヘイスティングス卿の部下になったんだから自分への忠義に縛られることはない」とすげなくしたり。

ケイツビーに思う相手がいると知って心底驚いたり。

ケイツビーの心情など一切お構いなしにきわどい接触を許したり。

訳あって女装で大衆宿に泊まったとき。まさに生殺し

(『薔薇王の葬列』5巻 菅野文/秋田書店 より引用)

 

すべては信頼の裏返しとはいえ……とにかくケイツビーが不憫……!

それでも、やはり文句一つ、不満一つ言わないケイツビー。

恐らく、心底慕うリチャードの側にいられるという、その事実だけでケイツビーにとっては十分だったのでしょう。

が!

バッキンガムがリチャードに急接近するようになってから、ケイツビーにも大きな変化が表れます。

まず、バッキンガムがケイツビーを煽る煽る!

(『薔薇王の葬列』10巻 菅野文/秋田書店 より引用)

煽ったり牽制したり、バッキンガムも大忙しですね

(『薔薇王の葬列』11巻 菅野文/秋田書店 より引用)

リチャードの秘密を知るやいなや、まるでトンビが油揚げをかっさらうがごとく速攻ツバをつけたバッキンガム。

さすがのケイツビーだって黙ってはいられません。

それまでまるで路傍の石のようだったケイツビーにも、徐々に徐々に感情が見られるようになるのです……!

バッチバチですね

(『薔薇王の葬列』8巻 菅野文/秋田書店 より引用)

ケイツビーの心情を察するに、

  • リチャードの幸せが第一
  • とはいえ自分はあくまでも従者
  • 同時に一番の理解者
  • リチャードは誰のものにもならないという願望めいた憶測をもっていた
  • だからこそ自分の気持ちが通じなくてもそれはそれでよかった
  • なのにバッキンガムと関係を持った!(相手が女ならまだしも男というのも無視はできない)
  • リチャードの幸せが第一なのは変わらないけどバッキンガムはちょっと気に入らない!

こんな感じの考えがグルグルしているのではないでしょうか。

興味深いのは、リチャードがヘンリーにお熱だったときは傷つくリチャードに心痛めながらも、ヘンリーに対してバッキンガムほどには敵愾心を見せなかったこと。

ケイツビーの目を通して、ヘンリーと一緒にいるときのリチャードは心から幸せそうだったけれど、バッキンガムとではそうではないことがわかりますね。

実際、ヘンリーとリチャードの絆はあらゆる意味でプラトニックだったのに対し、バッキンガムとリチャードの間にあるのは打算と欲にまみれた破滅に続く絆です。

ケイツビーは、バッキンガム×リチャードという不穏なカップルに対する読者の不安や焦燥感をそのまま投影できる存在であり、だからこそそのキャラクター性に心惹かれるのかもしれませんね。

今後のケイツビーの動きが気になりますが、個人的には歪んだ主従関係って大好きなので、今後もケイツビーには不憫で損な役回りを全力で全うしてほしいです!(いや、でも幸せになっても欲しい!もどかしい!)

歪んでますねぇ……!ここまで言ってくれるのに100%忠誠心だと思ってるあたり、リチャードってもしかしかしてものすごく純粋?

(『薔薇王の葬列』11巻 菅野文/秋田書店 より引用)

4-6 女性陣も負けてない!運命に翻弄されつつ力強く生きる姿が胸を突く!

『薔薇王の葬列』は、男性キャラだけではなく女性陣も魅力たっぷりです。

この時代、貴族の女性は政略結婚が当たり前で、世継ぎを生むのが使命。

いわば政治の駒でしかなく運命に翻弄されるばかりですが、それでも懸命に生き、必死に抵抗し、幸せや正義を掴もうとする姿に胸を突かれます。

たとえば、ランカスターのマーガレット・オブ・アンジュー。

15歳でフランスから輿入れし、自分に関心のない夫と無理矢理子を作り、愛する男性を失って、なおも強く生き抜こうとする女性です。

ストーリーには登場しませんが、おそらくサフォーク伯ウィリアム・ド・ラ・ポールのことかと思われます(マーガレットとヘンリーの結婚交渉をまとめあげ、輿入れしたマーガレットを宮廷内で導いた人)

(『薔薇王の葬列』1巻 菅野文/秋田書店 より引用)

ちなみに、この初夜は貴族たちに公開のもと行われています

(『薔薇王の葬列』6巻 菅野文/秋田書店 より引用)

ヨーク公リチャードに対する残忍さ、ヘンリーに対する冷酷さ、そして息子エドワードに見せる厳しさ……どれも目を覆いたくなるようなものですが、彼女はそれらを遂行するにあたって彼女なりの正義をもっています。

それはランカスターを背負う王妃として、そして未来の王(息子エドワード)を擁する一人の母として当然の振る舞いであると言えるでしょう。

息子を守るためであれば手段は厭わず、また、その命を奪われる際にはそれまでの彼女の冷静さからは想像もできないほど取り乱して見せます。

恐ろしい女性ではありますが、とても人間らしく、息子同様いまいち憎みきれないキャラクターです。

(個人的には、ヨーク公リチャードに対する凶悪すぎる仕打ちにゾクゾクして、かえってマーガレットが大好きになってしまいました!)

 

また、ネヴィル姉妹の壮絶な運命も無視できません。

リチャードに恋しながらもほんのわずかなすれ違いから想い叶わず、貴族の娘の宿命としてランカスターのエドワードと結婚したアン。

薔薇戦争の中で、姉妹は大きく翻弄され続けます

(『薔薇王の葬列』5巻 菅野文/秋田書店 より引用)

形だけの結婚でしたが、夫とは不思議な友情で結ばれ、その命を守るために戦場で影武者になるなど、並の男など比較にならない豪胆さです。(もちろん、根っこにあるのは優しさや純粋さです)

ヨークとランカスターの戦いが終わった後はリチャードと結婚しますが、彼はかつて恋したリチャードとはまるで別人で、むなしい結婚生活を送ることに……。

亡きエドワードとの息子を、リチャードの子として育てていますが……

(『薔薇王の葬列』8巻 菅野文/秋田書店 より引用)

そして妹のイザベル

念願かなってジョージと結婚し、一時は王妃の座にも迫るものの、ついには反逆者の妻にまで身を落とすことに。

父を亡くし、姉を犠牲にし、宮廷での居場所をなくし……かつての輝きはありません。

ジョージのため、ついには呪いにまで手を染めて……

(『薔薇王の葬列』7巻 菅野文/秋田書店 より引用)

どんなときでも夫を強く励ます強い妻であり続けましたが、最期は不遇のなかで命を落としました……。

それほど時を待たずしてジョージも亡くなりますが、最後の瞬間に目の前に表われたイザベルがジョージの願望ではなく、たしかにイザベルの魂そのものだったことを願わずにはいられません。

肉体を離れた地獄の果てで、二人はやっと穏やかな幸せを手に入れられたのだと思いたいです

(『薔薇王の葬列』9巻 菅野文/秋田書店 より引用)

 

また、復讐に燃え続けるエリザベスに、新たな愛人としてエドワードを堕落させる魔女ジェーン、リチャードを憎み続けるセシリーなど、とにかく女性キャラクターはクセが強い!

魔女を自称する妖しい魅力を持つ美女、ジェーン

(『薔薇王の葬列』8巻 菅野文/秋田書店 より引用)

エドワードを亡くし、聖域に逃れた後も、虎視眈々とヨークへの復讐の機会をうかがうエリザベス

(『薔薇王の葬列』12巻 菅野文/秋田書店 より引用)

彼女たちなくして『薔薇王の葬列』のダークでインプレッシブかつ悲しく切ない物語展開はあり得ません。

共感できるキャラもいればまったく理解できないキャラもいて、でもそれぞれの生き方に引きつけられずにはいられない。(「楽しければそれでいい」というジェーンですら、そのバックボーンが気になって仕方ないライターです!)

王位を奪い合う男達の戦いの裏にある、女達の熱く苦しいバトル(=人生)も、『薔薇王の葬列』の大きな魅力のひとつです。

5、まとめ

今回は2022年1月にアニメ化が決定している『薔薇王の葬列』について、キャラクターをメインに解説しつつ、あらすじを紹介しました!

少女漫画でありながら主人公はびっくりするほどダークかつエロティックで、展開は血なまぐさく、勧善懲悪ともほど遠い。

ダークファンタジーと歴史ものの親和性ってすごい! そこから生まれたキャラが魅力的なのも当たり前だ!

アニメでどこまで描かれるか? いや、どこまで描けるのか? 猛烈に気になります!

少女漫画で主人公が生首もって笑ってるんですけど!

(『薔薇王の葬列』12巻 菅野文/秋田書店 より引用)

 

また、作中には何人もの王が出てきますが、タイトルになっている【薔薇王】が具体的に誰を指すのかも気になるところ。(全員という考え方もありますね!)

多種多様な王や暫定王が登場するので、あなただけの推しキングを見つけるのもいいでしょう!

 

ちなみに、『薔薇王の葬列』のネタバレはしたくないけど、薔薇戦争あたりについて詳しく知りたい!という人におすすめなのが、AmazonのSTARZPLAYで視聴できる『ホワイト・クイーン 白薔薇の女王』です。

エリザベス・ウッドヴィルを主人公としたドラマで、エリザベスは魔女の血筋という設定のため、ちょっぴりファンタジー要素ありです。

『薔薇王の葬列』とはまた違った視点で薔薇戦争を知ることができるでしょう!

↑Blu-ray及びDVDも出てます。続編の『ホワイト・プリンセス エリザベス・オブ・ヨーク物語』『スパニッシュ・プリンセス キャサリン・オブ・アラゴン物語』とあわせて3つともとても面白かった!!

 

また、『薔薇王の葬列』の掲載誌である月刊プリンセスでは、スピンオフ作品である『キング・オブ・アイドル 薔薇王の学園』も連載中です。

こちらは本編とは打って変わってお気楽ギャグ展開なので、本編の箸休めはもちろん、キャラの新たな魅力発見にもおすすめ。

アニメ放映までまだ時間があるので、漫画本編だけではなく、いろんな方面から『薔薇王の葬列』を楽しんでみてくださいね。

 

 

せっかくだからこれを機に原案の『ヘンリー六世』と『リチャード三世』を読んでみようと思っているayame

 







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ABOUTこの記事をかいた人

元研究職、現在は飼い猫を溺愛する主婦兼フリーライター。小さいころから漫画が好きで、実験の合間にも漫画を読むほど。 ジャンルを問わずなんでも読むけど、時代もの・歴史ものがとくに大好物。 篠原千絵先生大好きです!好きなタイプは『はじめの一歩』のヴォルグさんと『はいからさんが通る』の編集長。