こんにちは!マンガフルライター、中山今です。
今回は『アラガネの子』の名言を4人のライターがチョイス、解説したいと思います。
『アラガネの子』は、ジャンプ+で連載中のファンタジーアクション漫画です。
最近の少年漫画の大ヒット作と言えば『鬼滅の刃』『呪術廻戦』など。
血を吐くように戦い続け、呪いや生き死にといった極限状態にさらされるハードな世界観の作品です。
しかし今回ご紹介する『アラガネの子』は、困難な状況はあれど未知への好奇心や希望に満ちた明るい冒険物語です。
一人一人は強くはないキャラクターたちが、少しの不安と大いなる好奇心を抱えて旅に出る。まるで実際の人生のようです。
刺激的な作品でないからこそ、自分の人生に重ねられる言葉があるかもしれない。
今回、マンガフルでは4人の漫画ライターが自らの過去の経験や想いをのせて『アラガネの子』の印象的な言葉を「名言」としてチョイス。
その言葉をフックに作品の魅力を解説していこうと思います。
この記事では以下のようにクロスレビューを紹介していきます。
- 『アラガネの子』のあらすじ
- 4人のライターが選んだ名言をシーンを交えて解説
- まとめ
『アラガネの子』の評判を知りたい方、ハード過ぎない少年漫画の楽しみ方を知りたい方に読んでいただけたら嬉しいです。
それではまず、『アラガネの子』のあらすじをご紹介します。
目次
- 1、『アラガネの子』ってどんな漫画?あらすじと特徴のご紹介
- 2、4つの名言をシーンを交えて解説。各ライターが選んだ「価値ある言葉」はこれだ
- 2-1、「まだ灰は生きてるよ だから今はやれることをやろう 自責とか後悔とか そういう感情は全部後でいい」:時間は止まらない、今やるべきことをやる。朱星の淡々とした言葉のカッコよさに倣う
- 2-2、「この世界を見て そして学んでほしい」:灰が「未知の世界」へ旅立つ際に贈られた言葉。年長者が旅の高揚を思い出し、少年のワクワク感を後押ししたくなるあたたかな一言
- 2-3、「だから今は やれることをやろう」:仲間たちにかける、クールダウンの一言。失敗することは多々ある。朱星の周囲を冷静にさせる言葉は現実でも有効
- 2-4、「もう大丈夫、これを持って全部話して、助けてって叫ぶんだ」:朱星が灰にかけた労りの言葉。ブラック企業にいた時にかけられたかった、優しさと責任感に溢れる一言
- 3、まとめ。好奇心と優しさと、現実的な実現力を持つ言葉たち。
1、『アラガネの子』ってどんな漫画?あらすじと特徴のご紹介
著者 | 佐々木尚 |
出版社 | 集英社 |
掲載雑誌 | ジャンプ+(アプリ) |
掲載期間 | 2018年11月15日~ |
単行本巻数 | 既刊2巻 |
ジャンル | 冒険ファンタジーアクション |
~~あらすじ~~
「この世界の中心は”石”だ」
水の浄水や電気的エネルギーなど、日常生活を送る上で「石」を使う。
そして「宝石」は、人の想像を超えた大いなる力を秘めている・・・
日常生活に不可欠な石エネルギーを調整する鉱石職人、「朱星(アケボシ)」。
(アラガネの子 1巻 佐々木尚/集英社より引用)
ある日彼が訪れた集落に、一人の少年がいた。
少年の名前は「灰(カイ)」。
(アラガネの子 1巻 佐々木尚/集英社より引用)
灰は謎の男により、家族を宝石にされてしまい絶望に打ちのめされていた。
家族を元に戻すため、朱星に師匠になってもらうよう頼む灰。
師弟となった朱星と灰は、広大な世界に旅立っていく。
~~~~~~
次に『アラガネの子』の持つ特徴について解説します。
『アラガネの子』は灰が朱星と共に世界を見る物語です。
家族に起こった不幸に打ちのめされていた少年が、師匠の力を借りて世界へと旅立つ冒険譚。
使命感と共に、知らない世界への好奇心や旅のワクワク感に満ちています。
(アラガネの子 1巻 佐々木尚/集英社より引用)
また、宝石というキーアイテムで必殺技を発動させるアクションも見どころ。
(アラガネの子 1巻 佐々木尚/集英社より引用)
例えばルビーは炎の力を秘め、ダイヤは純粋な破壊力を秘めています。
鉱石職人である朱星、またその弟子として修業する灰も、宝石の力を引き出して悪と戦います。
更にジャンプ+というweb上の漫画アプリ連載のため、漫画の一部に色を差し込む印象的な演出が目を引きます。
(アラガネの子 1巻 佐々木尚/集英社より引用)
『アラガネの子』のキーアイテム、宝石とも相まった色遣いは漫画のキメシーンに新鮮な驚きをくれます。
「未知への冒険心」や「宝石から引き出すかっこいいアクション」という、とてもまっすぐな少年漫画らしい作品。その上でweb掲載でしかできない演出を加えた漫画が『アラガネの子』です。
それではこの後、漫画ライターが実際に『アラガネの子』を読み、心に響いた言葉をチョイス。
どのように心に響くのか?を解説していきます。
2、4つの名言をシーンを交えて解説。各ライターが選んだ「価値ある言葉」はこれだ
それでは4人のライターが選んだ名言と、名言から見る物語をご紹介します。
実際の生活にふと思い出してしまうような言葉とは?そしてその理由は。
また、名言を選んだ漫画ライターの普段読んでいる漫画・執筆記事も同時にご紹介しています。
「このライターが好きなら感性が合うかも!」という視点から見ていただくのも楽しいかもしれません。
2-1、「まだ灰は生きてるよ だから今はやれることをやろう 自責とか後悔とか そういう感情は全部後でいい」:時間は止まらない、今やるべきことをやる。朱星の淡々とした言葉のカッコよさに倣う
【ライター】
選んだ名言は、灰のレッドダイヤを狙う一味に、灰が石化されてしまった後の朱星のセリフです。
(アラガネの子 2巻 佐々木尚/集英社より引用)
灰の警備役でありながら目の前で敵にやられてしまった黄は、自分を責め動揺していました。
同じように、武器職人として初めての客である灰を、近くにいながら助けられなかった鉄も、自分を責め落ち込んでいました。
(アラガネの子 2巻 佐々木尚/集英社より引用)
そんな2人に対して、自責や後悔は後でいい。そんなことより今やれることをやろう。と冷静に諭し、淡々とやるべき事を進める朱星の姿…
(アラガネの子 2巻 佐々木尚/集英社より引用)
例えばサッカーの試合中、決定的な場面でシュートを外してしまった。自分のミスで失点してしまった。そんななか落ち込んでいても事態が良くなることはありません。時間は止まってくれません。
まだ試合が終わっていない限り、素早く切り替えて次の1点を取りに行かなければいけないんです。
失敗を人のせいにせず、責任を感じ反省することも大事なことなんですが、その前に今やるべきこと、やれることを淡々とやる。
そんな朱星のような人でありたいと思えた名言でした。
2-2、「この世界を見て そして学んでほしい」:灰が「未知の世界」へ旅立つ際に贈られた言葉。年長者が旅の高揚を思い出し、少年のワクワク感を後押ししたくなるあたたかな一言
【ライター】
「マンガフル」では主に考察系の記事を担当。ストーリー重視で構造(世界観)と実存(キャラクター)が有機的に関係し合っているような作品が好きです。百合、日常系も好き。マイバイブルはCLAMPの『ツバサ』。
執筆記事:
「ファンタジー」、「バトル」など様々な要素がミックスされている本作ですが、僕としては「冒険」ものとしての魅力を推したいところです。
次の目的に向かって旅立つ若者の灰に、年長者の左紺が贈ったセリフがこちら。
(アラガネの子 2巻 佐々木尚/集英社より引用)
物語の冒頭からして灰が朱星に連れ出されて「閉ざされた場所」から「外の世界」へと出てくるという流れでありますが。
若者が若い感性のまま、「外の世界」で未知のものと出会っていくワクワク感を描くのがうまい作品です。
私事で恐縮ですが、僕も若い学生の頃に海外に研修に行く機会があって、その時は自分にとって「外の世界」へと旅立っていくワクワクとした心境があったのを思い出しました。若いうちに、旅をする経験をしておくというのは一生の宝物になると思います。
旅の過程で次の都市(街)についた時の高揚などを、上手に切り取っている作品だと思います。
(アラガネの子 2巻 佐々木尚/集英社より引用)
作中には灰(少年)が「外の世界」のワクワク感を語るドンピシャのセリフもあるのですが、僕も今では朱星よりも年上のおじさんなので、若者を見送る先輩目線のセリフの方をチョイス。
漫画という創作作品を通しての擬似的な体験とはなりますが、みなさんも『アラガネの子』で「外の世界」を冒険するワクワク感を感じてみて頂けたらと思います。
2-3、「だから今は やれることをやろう」:仲間たちにかける、クールダウンの一言。失敗することは多々ある。朱星の周囲を冷静にさせる言葉は現実でも有効
【ライター】
熱血モノからスポ根、ラブコメ、百合など王道からニッチなところまで幅広く雑食に読みます。
好きな漫画は『はやて×ブレード』
執筆記事:
(アラガネの子 2巻 佐々木尚/集英社より引用)
この台詞は、2巻で主人公の灰が敵からの攻撃を受けて石化してしまい、それを助けることが出来なかったと仲間達が悔やんでいる時に、灰の師匠の朱星が口にしたセリフです。
人間誰しも失敗をすることは多々あります。
- 学校で
- 友人関係で
- 仕事場で
トラブルが発生すると冷静になれず、いつも通りの判断をしたり行動をとったりすることができなくなります。
(アラガネの子 2巻 佐々木尚/集英社より引用)
終わった後に、あの時ああすればよかった、もっとうまくできたのにと後悔しますが、そういう後悔は後処理も全て終わった後にすればよいこと。
大事なのは、そこから最大限状況を良くするために何が出来るかを考えて行動することです。
朱星が感情を昂らせることなく落ち着いた様子で言ったことも、周囲を冷静にさせる効果があると思います。
現実世界でも何かあったとき、人はスーパーマンではないから出来ることは限られます。
その出来ることをきっちりと実施することが意外と難しい。
そんな思いもあって、こちらの台詞を選びました。
さて『アラガネの子』、設定とか世界観とか登場人物の言動とか、突っ込みたいところは色々とあって、この先どうなるのかがある意味で楽しみな作品でもあります。
その辺も注目していきたいと思います・・・!
2-4、「もう大丈夫、これを持って全部話して、助けてって叫ぶんだ」:朱星が灰にかけた労りの言葉。ブラック企業にいた時にかけられたかった、優しさと責任感に溢れる一言
【ライター】
バイオレンス漫画好き。戦争漫画と怪獣・妖怪アクションも好き。
好きな漫画は『ゴールデンカムイ』『うしおととら』
執筆記事:
(アラガネの子 1巻 佐々木尚/集英社より引用)
このセリフが刺さるポイント、個人的な話ですが「ブラック企業にいた時に聞きたかった言葉」だからなんです。
「苦労を労り、弱った者に一番負担がかからない提案」で、ちょっと泣きそうになっちゃったんですね・・・
『アラガネの子』では、少年の灰が集落の領主・錆也から理不尽な対応を受けています。
(アラガネの子 1巻 佐々木尚/集英社より引用)
『アラガネの子』での宝石は、美しさのほかエネルギー源としても価値のあるものです。
しかし宝石と一人の少年の価値は比較対象にはなり得ません。
つまり集落の領主・錆也の言い分は理不尽なものです。
でも灰は家族が宝石にされており、自分ひとりで逃げることはできません。
どれだけ理不尽でも、受け入れるしかない状態なのです。
まるで現代におけるブラック企業のようです・・・
ライターも過去、いわゆる「ブラック企業」にいたことがありました。
簡単に逃げるわけにもいかず、しかし毎日のように巻き起こる理不尽に精神のバランスを崩してしまいました。
本当に辛かったのですが、友人に話すこともできませんでした。もし「もっと頑張れ」と言われてしまったら?と思うと恐ろしくてなりませんでした。
朱星が灰に伝えた「辛かったよね、逃げていいよ」というメッセージは、ライターにとても沁みるものでした。
(アラガネの子 1巻 佐々木尚/集英社より引用)
灰はこの戦いの後、地下の集落から世界に旅立ちます。
家族を治療するためもあるのですが、純粋に枷から解き放たれた少年の好奇心や冒険心は泣きたくなるような晴れやかさです。
灰が世界を楽しむことができるのは、絶対的な朱星への信頼感あってのものです。その信頼感を作ったセリフだと思っています。
目立たないセリフではありますが、『アラガネの子』の優しさと責任感をじわっと味わえるセリフです。理不尽な現実に立ち向かう際、ぜひ思い出してください・・・!
3、まとめ。好奇心と優しさと、現実的な実現力を持つ言葉たち。
以上、4人のマンガライターによる、『アラガネの子』の名言集と共感のポイントをお届けしました。
4人のチョイスした名言をまとめると、『アラガネの子』から以下のような魅力を見出すことができました。
- 冷静な、周囲への配慮のある実現力
- 若い、未知への好奇心のワクワクした心
- 理不尽への労りと信頼感
『アラガネの子』の持つ、優しい魅力が解説できたと思います。
漫画作品は現実ではありません。
しかし物語に自らを重ね、現実生活のふとした時に思い出すこともまた、漫画の読み方の一つです。
今回ご紹介した『アラガネの子』の名言が、あなたの人生に彩りを与えれば幸いです。
現在(2021/9/10)、2巻刊行の『アラガネの子』。
灰は家族を元に戻すことができるのでしょうか。そして朱星やほかのキャラクターたちの関係性はどうなるのでしょうか。
ぜひ、灰と共に未知の世界へ冒険に出てみてください。優しい師匠と共に。
(編集:中山 今)
王道バトルものやギャグ漫画が好きです。今は『呪術廻戦』『僕とロボコ』にハマってます。
執筆記事:
漫画『ONE PIECE』の笑って死んだ8人に注目!なぜ笑って死ねたのか?を考察してみた
2020年1月5日