みなさんこんにちは!ほんのり歴女なマンガフルライターayameです。
今回も始まりました、名作『あさきゆめみし』キャラ解説。
第3回は、光源氏にとって「永遠の初恋」でもある藤壺の宮を紹介します!
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目次
1、『源氏物語』における藤壺の宮とは
藤壺(ふじつぼ)の宮は、源氏が9歳のころに入内した桐壺帝の后妃。
飛香舎(藤壺)に住んだことから「藤壺の宮」と呼ばれます。
この藤壺、何を隠そう桐壺帝が愛して愛して愛し抜いた、光源氏の生母である亡き桐壺の更衣にうりふたつ。
桐壺の更衣との違いといえば、その身分。
桐壺が後ろ盾のない弱々しい少女だったのに対し、藤壺は先帝の四の宮。つまり皇女です。(桐壺帝と先帝との血縁関係については不明)
当時の後宮では弘徽殿の女御(桐壺帝の第一皇子の母であり、右大臣の娘)が権勢を振るい、亡き桐壺の更衣にもつらく当たっていましたが、さしもの彼女も宮家の姫にそんなことはできません。
美しく気品もあり、人柄もいい藤壺は朝廷で人気を集めていきます。
桐壺帝の御世において、まさに春といってもいいほど華やかな時代。
そんななか、14歳の藤壺と9歳の光源氏はそれぞれ「輝く日の宮」「光る君」と称され、まるで実の親子のように、そして姉弟のように仲睦まじく暮らすのです。
そう、光源氏の元服(成人)までは――。
ご存知の方も多いかとは思いますが、平安の時代の貴族社会において、成人した男女は直接応対することはほとんどありません。
身分の高い人ほど、間に人をおいて直接声を聞くことすらかなわないもの。
当然、互いの顔を見ることもタブー。顔を見る=もうそういう仲(夫婦・恋人)な考えで、なんだったら顔を見たもん勝ちみたいなところすらあります。
男女の間には御簾や屏風、几帳などで隔てられ、さらには女性は扇を顔の前に構えたりと、とくに男性からはなかなか女性の顔が見えません。
12歳で元服した光源氏はそのときすでに藤壺に対して肉親の情を超えた恋愛感情を持っており、昨日までいっしょに仲良く過ごしていた藤壺との間に隔てられた御簾を前にして、ますます恋心を燃え立たせるのです。
母とも姉とも慕う存在が遠のき、寂しさとともに胸の奥に情熱が湧き出すのを感じたはず
(文庫版『あさきゆめみし』1巻 大和和紀/講談社 より引用)
そしてついにはその情熱を抑えきれず、とある嵐の夜に二人はついに結ばれるのですが……。
天罰とでもいうかのように、たった一夜の過ちで藤壺は懐妊。
思い悩みながらも、彼女は源氏の子を帝の子、つまり皇子として出産するに至るのです。
2、『あさきゆめみし』における藤壺の宮~実は作中きっての悪女かもしれない?~
藤壺は源氏にとって永遠の憧れの人。母であり姉であり、永遠の初恋。
源氏が女性に求めるすべてを持った、まさにパーフェクトウーマンなのです。
とはいえ、相手は父帝の妃。
臣下である源姓の身分に降ろされ、皇族ですらなくなった自分にとってはまるで雲の上のような人。
そんなお高い身分ですらも燃え滾る情熱の燃料となるわけですが、かといって情熱を実行に移すことは難しく、致し方なく源氏はガールハントに勤しむわけですね。
こうなると、問題は藤壺です。
当の藤壺も、源氏に対して並々ならぬ思いを抱えています。
義理の息子に恋してしまうなんてある意味悲劇ですが、言ってしまえば藤壺さえしっかり源氏を拒否することができていれば、朝廷を巻き込みかねない一大スキャンダルは起きずに済んだわけです。
「一夜の過ち」で片付けるにはあまりにも重い……
(文庫版『あさきゆめみし』1巻 大和和紀/講談社 より引用)
許されぬ恋は悲劇でしかありません
(文庫版『あさきゆめみし』1巻 大和和紀/講談社 より引用)
なのに、「もう二度と会わない」と別れた後でさえ、藤壺はそれとなく源氏に思わせぶりなことを繰り返します。
そのたびに、源氏は藤壺との間の見えない絆を感じ、一層藤壺への想いを募らせていくのですが……。
そう考えると、藤壺ってなにげに物語最強の悪女なのでは……?と思ってしまうわけです。
『源氏物語』の悪女といえば弘徽殿のとか生霊飛ばしの六条の御息所とかがすぐに浮かびますが、そんなのは序の口。
源氏を狂わせ、多くの女性を苦しめるに至ったそもそもの原因って、藤壺の源氏に対する諸々の『甘さ』なんじゃないかとライターは思うわけです。
3、実はコンプレックスを抱えていた藤壺の宮……そこを見逃さない源氏の巧妙さ
とはいえ、藤壺が源氏に対して拒否の姿勢を貫き通せない事情もわからないではありません。
そもそも、源氏と縁を切ろうにも相手は夫の息子だし。
例の夜に源氏を藤壺の局(部屋)に入れてしまったのは源氏を憐れんだ女房の仕業だし。
そんで二人きりで対面しちゃったらもう致すのが当然の流れみたいなもんだし。(この時代独特の感覚ですね)
子まで生した仲だから前世からの縁も感じられるし。
後に愛する息子の後見人に源氏が選ばれるのですが、そうなると息子のためにもないがしろにするわけにはいかないし。
と、いろいろ並べ立ててみましたが、宮家の姫で教養も品格もあるスーパーウーマンでさえも流されてしまうほど、源氏が魅力的だっていうのが一番の理由でしょうか。
くわえて無視できないのが、藤壺が密かに抱えていたコンプレックス。
実は、藤壺は「桐壺帝にとって自分は亡き桐壺の身代わり」という思いをずっと抱えています。
誇り高い宮家の姫ですからね。熱心に所望されて入内してみたら死んだ女性の身代わりなんて、実際のところプライドが許さなかったはずです。
そんな藤壺の慰めになったのが幼い光源氏。
そして、そこを巧妙に衝いたのも光源氏なのです。卑怯ですよね。
この言葉が后妃としての藤壺を支えていたものを崩してしまったのではないでしょうか
(文庫版『あさきゆめみし』1巻 大和和紀/講談社 より引用)
その結果が神の末裔でもある帝を謀る恐ろしい行為になるわけですから、藤壺を悪女に貶めたのは結局のところ源氏にほかならず、桐壺帝の亡き妻への偏愛もいまだ呪いのように後世に影響を及ぼしているのかと思うと、「この親子は……!」と怒るやらあきれるやらなライターなのです。
4、唯一無二の女性・藤壺の宮まとめ
藤壺はその後中宮の位を与えられ、息子(もちろん源氏の子)が即位した後は母后として朝廷に君臨します。
当時の女性としてはこの上ない栄華を極めた形であり、まさに言葉通り唯一無二の女性といえるでしょう。
しかし、その心には主上への罪悪感とそれによっても消えることない源氏への思慕を抱え、永遠に苦しみます。
対する源氏はわりと都合の良いことばっかり言ってます。源氏っていつもそう。
(文庫版『あさきゆめみし』1巻 大和和紀/講談社 より引用)
だが、母になった藤壺は強かった!
我が子を守るために世を捨てることさえ厭わず(出家)、これによってやっと源氏との恋に終止符を打つことに成功するのです。
「やっとかよ!遅いよ!」と思わないでもないですが、母としてのこの強さ、やはりどこか桐壺に通じるところがありますよね。
そんな藤壺ですが、比較的若年でこの世を去ります。
しかし、死した後も源氏には悩まされ、夢枕にまで立つほど……。
亡くなった人の魂さえ縛り付ける、源氏って本当に恐ろしい男です。
同時に、今度こそ永遠に手の届かない存在になってしまった藤壺に、源氏の魂も縛り付けられるのです……。
(ayame)
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