みなさんこんにちは!ほんのり歴女なマンガフルライターayameです。
毎週水曜更新の名作『あさきゆめみし』キャラ解説ですが、今回は番外編。
5.5回とし、キャラクターではなく名シーンの解説をしようと思います。
というわけで、今回は紫式部プレゼンツ・平安男子による女性品評会の「雨夜の品定め」を解説!
『あさきゆめみし』キャラ解説、初回の前説はこちらです↓
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目次
1、『源氏物語』における「雨夜の品定め」
「雨夜の品定め」とは、『源氏物語』の帚木の巻(割と序盤です)での出来事。
とある雨の夜に源氏や頭中将たちが理想の女性を語り合う場面のことで、転じて「人物を品評すること」の意味でも使用されます。
舞台は宮中。
とある五月雨の夜、宮中で物忌みをしていた源氏のもとに、頭中将がやってきます。
頭中将が源氏の恋文を漁ったりなどするうちに、さらに二人の男性が増え、男達は女性の品評会を開催するのです。
「何一つ非の打ちどころのない完璧な女性は、何一つ取り柄のないつまらない女と同じくらいめったにいない」
「上流や下流の女より、荒れ果てた屋敷のなかに見目麗しく優れた女性がひっそり暮らしている、そんな中流の女がおもしろい」
「やさしくて女らしいかと思いきや、情緒にこだわりすぎているのも問題。さりとて所帯じみているのは勘弁」
「何事も頼りないと可愛らしいが、いざというときに家のことをてきぱきできる女こそさすがだと思う」
「頼りなく心のままに手折ればこぼれ落ちそうな萩の露のような女は魅力的だが、そういう女が間違い(浮気)を犯すと男が間抜けなんだと言われてしまう」
などなど。
男達は自分自身の失敗談を交え、さまざまな女性観を披露します。
興味深く耳を傾ける年若い源氏にとって、この夜の女性談義は少なからず源氏の恋人選びに影響を及ぼすのです。
2、『あさきゆめみし』における「雨夜の品定め」~よりコミカルかつシビア~
しっとりと雨が降る夜、源氏と頭中将は互いの妻について語り合います。
頭中将は源氏の妻である葵の上の兄で、源氏にとっては従兄弟にあたる人。
顔よし、家柄よし、才気あり、ちょっとお茶目なところも魅力的な人気のプレイボーイで、源氏と都の女性人気を二分する存在です。
頭中将の妻は右大臣の四の君(4人目のお姫様)で、左大臣を父に持つ頭中将としては妻の家はどうにも居心地が悪い。(父の政敵の家ですからね)
源氏も源氏で、なかな打ち解けない葵のもとに足繁く通う気にはなれない……。
この時代、正室(本妻)のほかに側室(妻)をもつことは咎められることではありませんでしたし、浮気(恋人をつくること)も珍しくありません
(文庫版『あさきゆめみし』1巻 大和和紀/講談社 より引用)
互いに妻には苦労するね……ということから、左馬の頭や籐式部の丞なども参加し、「では理想の女性とは?」という話しになるのです。
それなりに場数をこなしている男達ですから、でるわでるわ、女性への理想や不満。
曰く、上流の姫は面白みがなく、噂を聞いて出かけていくと肩すかしをくらうこともある。
かと言って身分が低すぎるのも考えもの。
時代はやはり中流の姫で、地方の受領(地方公務員みたいなもの)の娘にこそ、面白みのある女がいたりする。
ただし、遊びと結婚は別で、身分や面白みだけで妻を選ぶのは危険。
優しい女は情に流されて浮気をしやすく、しっかりものすぎても色気がない。
嫉妬深いのもたまらないけれどだからといって放置されすぎると愛情を疑うし、可愛いばかりで頭空っぽも疲れるけど頭が良すぎても緊張する……。云々。
よくもまぁ、これだけ好き放題言えるものですね!
(文庫版『あさきゆめみし』1巻 大和和紀/講談社 より引用)
大和和紀先生によって、男達のあきれるような理想像や苦労譚がよりコミカルかつシビアに描かれています。
とはいえ、さすがに好き勝手言い過ぎじゃない?と読者がモヤモヤし始めたところで、頭中将が披露したのが過去の苦い失敗談。
縁あって結ばれ可愛い女の子まで生まれたけれど、正妻のいじめによって姿を消してしまった人、常夏との思い出。(この常夏こそが前回紹介した夕顔です)
このときは、まさかその常夏と自分が恋仲になるなんて、そしてあんな結末になるなんて思ってもいない源氏です
(文庫版『あさきゆめみし』1巻 大和和紀/講談社 より引用)
頭中将の切ない話を聞きながら源氏は自身のこれまでの不遇の恋を振り返り、いっそう理想の女性を強く追い求めるのです。
3、意外と納得してしまう部分もある……あらためて紫式部ってすごい
平安男子が理想の女性を語り合う「雨夜の品定め」。
平安男子の女性観なんて時代錯誤もいいところ!……と思いきや……。
コレがなかなかバカにできず、意外と現代にも通用するポイントが多かったりするんですよね。
(※以下に書くことはあくまでもライターの個人的な見解で、すべての男性・女性に当てはまるというわけではありません)
身分差に関しては、経済格差と置き換えるとしっくりきやすいでしょう。
男女に限らず交友関係で経済格差が大きいと、金銭感覚だけではなく周囲の環境も違うし、自ずと経歴なんかも違ってくるし、そうするとものの考え方も違うことが多いし……(もちろん一概には言えませんが)。
となると、噂に名高いセレブ美女といえど、いざ付き合ってみると「なんか違うな……」と思ってしまうこともないとは言えません。
かといって逆パターンならうまくいくのかというと、少女漫画ならいざ知らず、現実にはなかなか難しそうです。
「でもでもだって」で言い寄ってくる男性を拒みきれないタイプの子は確かに付き合うと苦労が絶えないでしょう。
そう考えると、バッサバッサと男性を切り捨てるような気の強い女性の方が魅力的に思えますが、うっかりすると自分も切り捨てられてしまうやも(笑)
また、学力差も男女関係で注目されやすいポイントですよね。
「自分より高学歴の女性はちょっと」という意見はたまに耳にします。さりとて、IQが20違うと会話が成立しないなんていう噂も聞きますし……(それが事実かどうかはさておき)。
結局、万人にとってパーフェクトな理想の女性なんて時代が変わってもなかなかいない!ということなんでしょうね。
だからこそ、今大切に思う女性を心から慈しみ、守るべきだと。頭中将の失敗談がしみるわけです。
しかし、何がビックリって、この身勝手な男心を書いているのが女性である紫式部なんですよね。
女性の身でありながらこれほど「女性」を俯瞰して見られるなんて、さすがです。
紫式部さん、当時まわりの男性に取材とかしたのかしら。
あらためて紫式部ってすごいなと思ったのでした。
4、男と女は時代を経ても根本的には変わらず、だからこそ『源氏物語』は現代でも面白い
「雨夜の品定め」を通して、男性の理想とする女性は時代を経てもそれほど変わらないのだと思い知らされたわけですが……。
そもそも、女性もそんなに変わらないですよね。
現代に光源氏みたいな人がいたら、やっぱり激烈にモテまくると思うんです。
血筋が良くて金持ちで(この時点でモテる)、そもそもビックリするほどイケメンで(間違いなくモテる)、仕事もできるしスポーツも万能で芸術方面も明るく人柄もいい(もうどこのスパダリ……)。
唯一の欠点といえば女性関係の派手さですが、源氏は表向き真面目でちょっぴり固い人で通していて、遊び人なのは知る人ぞ知る、だったりするわけで。
それさえ知らなければ(人によっては知っててもなお?)、好きにならずにはいられませんよね。私だったらイチコロです。はい。(面食い)
結局、男女ともに根本にあるのは「よりよい遺伝子を残したい」という本能であって、だからこそ、男女の理想は時代を経ても大きくは変わらないということなのかな、と思ったライターなのでした。
そして、だからこそ『源氏物語』は現代でも通用するエンターテイメントであり、それを生み出した紫式部ややはり偉大であるとしみじみ感じ入るわけです。
(ayame)
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