みなさんこんにちは!ほんのり歴女なマンガフルライターayameです。
今回も始まりました、名作『あさきゆめみし』キャラ解説。
第25回目は、源氏の実兄であり舅でもある朱雀帝(院)です!
ご存知、桐壺帝の第一皇子である朱雀帝。
前回の女三の宮の解説では、彼女のことを「ストーリー終盤のテコ入れ要員として投入された、ただひたすら損な役回り」と評しましたが……。
そんな女三の宮の父親である朱雀帝は、娘を大きく上回る不運っぷり!
もう貧乏くじが直衣着て歩いているようなものです!
ただ、彼の存在がなければ『源氏物語』のストーリーは展開していきませんでしたし、元祖スパダリの源氏のキャラ立ちも十分ではなかったでしょう。
そんな朱雀帝の貧乏くじ人生とは?
詳しく見ていきましょう!
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こちらは『あさきゆめみし』の完全版。美しい!
また、55周年記念の新装版も発売しています。
目次
1、『源氏物語』における朱雀帝
朱雀帝は桐壺帝の第一皇子。
母親は弘徽殿の女御で、右大臣家という強力な後ろ盾をもつ東宮として登場します。
ストーリーの序盤では東宮、中盤では即位して帝となり、源氏が明石から戻ってしばらく後、源氏の子である冷泉帝に譲位して朱雀院を名乗りました。
気性の強い母親を反面教師にしているのか、その人柄は優しく風雅。
思慮深く賢い人でもありますが、源氏とならぶと並以下に見えてしまうため、優秀さがわかりにくい人でもあります。
ただ、その優しさは弱さの裏返しでもあり、在位中は母や祖父(右大臣)に政治をいいようにされ、亡き父の遺言もまともに守れませんでした。(源氏と協力し、東宮(後の冷泉院)を守れとの遺言)
彼自身、自分の無力を感じているはずです
(文庫版『あさきゆめみし』2巻 大和和紀/講談社 より引用)
また、女性関係でも何度も辛酸を嘗め、源氏とは別の意味で女性には苦労しています。
晩年は愛する娘・女三の宮を源氏に託しますが、不幸にもこの結婚は失敗。
誰よりも幸せを願ったはずの女三の宮は出家し、現世から離れてしまうのです。
とにかく、生まれたときから晩年まで踏んだり蹴ったりの人生……。
最後には報いられることもあるのかと思いきやそんなこともなく、そのままひっそりと物語からフェードアウトするのでした。
2、『あさきゆめみし』での朱雀帝~こじらせたブラコンと絶妙なあざとさがキラリと光る!~
右大臣を父にもつ朱雀帝と、左大臣の後ろ盾をもつ源氏。
生まれてすぐに東宮になった朱雀帝と、臣籍に降ろされた源氏。
こうして事実だけを並べると複雑な兄弟のように見えますが、意外にも2人の関係は良好。
朱雀帝は源氏を優秀な弟として大切に扱い、源氏も兄に敬意を払っています。
しかし、実際は源氏に対して大きなコンプレックスを抱えているのでしょう。
それは、朱雀帝自身が強く入内を希望したものの、実は源氏と通じていたという朧月夜との会話からもわかります。
源氏に惹かれている自分をいっそ責めてくれという朧月夜に対して
(文庫版『あさきゆめみし』2巻 大和和紀/講談社 より引用)
朱雀帝は、源氏の優れた才を認めているからこそ、いっそ妬むことすらできないのではないでしょうか。
幼い頃から陰でずっと比較されたきたわけですから、源氏に対する思いが複雑なのも当然です。
朱雀帝は、すっかりブラコンをこじらせているわけですね。
しかし同時に、そのこじらせが彼のキャラクターに深みを与えていると言っても良いでしょう。
その優しさとの合わせ技で、朧月夜を自分のもとに置くことに成功したのも事実です。
意図してかせずかはわかりませんが、もしわかっててやっているなら相当あざとくて強かな人ですね……。
3、踏んだり蹴ったり人生まとめ!朱雀帝のメンタルはまさにアダマンタイト
ここで、朱雀帝の不幸を箇条書きにしてみましょう。
- 幼い頃から弟と比較される(朱雀帝だって優秀なのに)
- 妃にと考えていた葵の上を源氏に取られる(左大臣家の後ろ盾を失う)
- 朧月夜に一目惚れするが、源氏に横からかっさらわれる(なんとか後宮にとどめるものの、尚侍としての出仕)
- 即位したものの誰が見てもわかる傀儡政権(母の弘徽殿が強すぎる)
- 実の父の亡霊ににらまれて眼病(明らかに弟ばかり可愛がる父親)
- 六条の御息所の娘(秋好中宮)に想いを寄せるも、源氏の養女として冷泉帝に入内してしまう(ずっと目を付けてたのに)
- 源氏を信じて女三の宮を降嫁させるものの、不幸になる(自分の手で出家させるという悪夢)
- (ずっと自分に添っていてくれた朧月夜が、晩年になってまた源氏と通じる)←これは朱雀帝は知らない?
こうして見てみると、まとも育ったのが不思議です……(ブラコンこじらせてるので、まともじゃないといえばまともじゃないのですが)。
六条の御息所の娘への思いは8年ものです
(文庫版『あさきゆめみし』2巻 大和和紀/講談社 より引用)
また、よくもまあ源氏との関係を良好に保っていられるものだと関心しますね。
とくに、愛娘を源氏に降嫁させるなんて……源氏には女性関係で散々煮え湯をのまされているのに、なぜあえて自分から追い煮え湯するのか。
結果は最悪のものでした
(文庫版『あさきゆめみし』5巻 大和和紀/講談社 より引用)
源氏に対する根拠なき信頼や揺るぎない愛情には違和感を覚えますが、この朱雀帝が放出する違和感こそ、主人公を主人公たらしめる理不尽さなのでしょう。
そんな理不尽を抱えて生きる朱雀帝、彼のメンタルは鋼を越えてアダマンタイト級なのかもしれませんね。
4、残酷な愛は幼いころからの愛情不足ゆえ?本当は誰よりも強く愛を求めた朱雀帝
朱雀帝について語る上で忘れてはいけないのが、娘である女三の宮との関係性。
ライターは朱雀帝の溺愛こそが女三の宮を不幸にしたと考えており、彼は【優しい虐待】の加害者だと思っています。
彼の深い愛は、本来親が子に与えるべき【生きる力】そのものを奪いました。
これはとても残酷なことです。
そして、彼の残酷な一面は朧月夜を引き留める場面でも見られました。
彼は自分を裏切った朧月夜をけして責めませんでしたが、その優しさは朧月夜を縛り付け、ひどい罪悪感で苦しませたのです。
なぜ彼は、こんなにも人を愛することが下手なのか……。
もしかしたら、それは彼が幼いころから誰かにきちんと愛されたことがなかったからかもしれません。
母の弘徽殿は桐壺の更衣への復讐心に駆られ、息子を帝にすることだけに躍起になっていました。
彼女に朱雀帝への愛情がなかったとはもちろん言いませんが、弘徽殿は朱雀帝をコントロールしようとする場面が多く、歪んだ親子関係であったことは想像に難くありません。
また、父である桐壺帝は彼を愛しましたが、その愛情が源氏に対するものより上回ることはありませんでした。
『あさきゆめみし』は源氏が愛を求めてさまよう物語ですが、本当は朱雀帝こそが誰よりも愛情を求めている人なのかもしれません。
貧乏くじばかりの人生でしたが、物語に描かれていない部分で、彼になりに幸せな結果を掴んでいることを祈るばかりです。
(そしてそんな思いから生まれるのが二次創作……求む、朱雀帝ハッピーエンド)
(ayame)
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