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故人の想いを巡る刻(とき)の旅路の続き〜夜麻みゆき先生が『レヴァリアース』『刻の大地』の続きを執筆するクラウドファンディングを実施中

どうも、「推し」という概念が(たぶん)なかった頃から夜麻みゆき先生の作品を読んでいるけど、今も昔もイリアが一番好きなマンガフルライターの相羽です。

「最近読んだ漫画」について、ミニコラムをお届けする「ゆるゆるコラム」のコーナー。

今回は、『刻の大地 天秤の代理』2巻の感想および、夜麻みゆき先生が現在クラウドファンディングをおこなっている、「刻の大地 天秤の代理 3巻制作プロジェクト」についてです。

『刻の大地 天秤の代理』2巻は夜麻みゆき先生が『刻の大地』を一時休載されてから、その後クラウドファンディングで続きを描き続けておられるという流れの中で、現時点(2024年1月時点)で『刻の大地』最新のエピソードに位置付けられる作品です。

『天秤の代理』1巻〜2巻では、メインキャラクターの十六夜、ジェンド、カイ、イリアら四人それぞれにフォーカスした、キャラクターの内面を掘り下げるような物語が展開されております。

その中でも今回はイリアに注目して、『天秤の代理』2巻に収録されている「イリア編」について語っていくのですが。

まず、前提としてイリア(ウリック)が主人公だった『レヴァリアース』だけ読んでいたという読者の方向けに軽く解説。

『レヴァリアース』! 不朽の名作です!

ですが、今回のコラムでイリアに注目するのに、前提としてお伝えしておきたいのは、今になって振り返ると『レヴァリアース』はイリアの物語の「序章」的な位置付けにおさまりそうだ、という点です。

というのも、続く『刻の大地』にイリアは出てきて、十六夜、カイ、ジェンドらの仲間になるからです。

しかも、ゲスト出演という感じでもなく、本格的にメインキャラクターの一人として合流してきます。

『レヴァリアース』のラストでシオンを喪ってからの、イリアの物語、特に彼女の「心のあり方」についてというような物語が続いていくのです。

大事な人が死んでしまってから、その想いに向き合うために旅を続けるというのは、近年のヒット作だと『葬送のフリーレン』などと重なる部分でもあるなぁと、個人的には思いながら読んでおります。

『葬送のフリーレン』のフリーレンとヒンメルの関係と、『レヴァリアース』〜『刻の大地』のイリアとシオンの関係とには、重なるものを感じるのです。

喪っても、その人のことを想い続ける。その人のことについて考え続ける。

やはりイリアとシオンの間にあったのは恋愛感情だったのではと言いたくなりますが、二人の関係をそういう単純な言葉で表現したくもないというやっかいなファン心理!

『葬送のフリーレン』のヒンメルとフリーレンの関係については、「時空を越える恋人たち」という物語の型について言及しながら語ってみた、以下のコラムを以前書かせて頂きましたが。↓

『葬送のフリーレン』12巻の感想〜フリーレンとヒンメルの死別というド級の「障壁」がある恋愛譚だとして

2023年12月27日

以下、新城カズマさんの『物語工学論』の「時空を越える恋人たち」の箇所を再び引用してみます。

〈時空を越える恋人たち〉の名称は、二つの重要なポイント……すなわち「自分と合一することで完全となる、相補的なもの」への希求と、それを妨げる「強烈な障壁」の存在を暗示しています。

『物語工学論 キャラクターのつくり方』 新城カズマ/KADOKAWAより引用

その人がいれば完全になれるのに。そういう自分自身の相補的な半身。それが失われているから、求めて旅を続ける。『刻の大地』以降で綴られるイリアの旅路はそういう類のものです。

今回、特に『天秤の代理』の「イリア編」は「死別」を題材に描いてる側面が強いです。

そういう意味で、子どもの頃に『レヴァリアース』を読んでいて、現在30代、40代、50代とかになってる方が読むと刺さるものがあると思います。(何らかの大事な方との死別の経験をしているという方の割合が高くなってくると思うので……)

「死」というものに関して、『レヴァリアース』の終盤でイリアがパニックになった時のことを、『天秤の代理』の「イリア編」でイリアはこう語ります。

ボクね 自分が死んだらどうなるかって考えてパニックになったことがあるの

(中略)

ボク、自分が死んだらお星さまになるか 何かが終わるような 全て無になると思ってた

『刻の大地 天秤の代理』2巻 夜麻みゆき/Amazonプリント・オン・デマンドより引用

「死」に関して終わりと捉えていたから、パニックになった。その結果、シオンとの「死別」という結末になってしまったのが『レヴァリアース』という物語。

このあたりは、当初から夜麻みゆき先生の中でそういう位置付けだったのか、年月を経るうちに物語の捉え方に厚みを加えていった部分なのか分かりませんが、今、『天秤の代理』「イリア編」が発表された段階から振り返ると、『レヴァリアース』の結末はいったんのバッドエンドと捉えることができると思います。

その上で、『天秤の代理』「イリア編」ではバッドエンドになった要因である、「死」についての捉え方をイリアが変えて、イリアが変化する様子が描かれています。

 

「死」を経由しながら一巡する世界のあり方について

『刻の大地 天秤の代理』2巻 夜麻みゆき/Amazonプリント・オン・デマンドより引用

 

かなり哲学的なシーンなのですが、イリアは「死」とは決して全ての終わりではないということを感得して、故人のシオンへの想いに一つの区切りをつけます。

 

大事な人がもういなくても

『刻の大地 天秤の代理』2巻 夜麻みゆき/Amazonプリント・オン・デマンドより引用

 

ここからは、ライターの個人的な予想になってしまうので話半分の雑談程度に聞いて頂きたい部分ですが、おそらくこの先『刻の大地』の物語の終盤に、イリアに『レヴァリアース』のラストと同系の困難が待っています。

標準的な物語の作劇としても、何かしら「ラスボス」に相当するような、最後の困難が待ち受けているはずです。

とすると、イリアの場合はそれは「死」とか「終わり」に関する何かである可能性が高い。

その時、今度のイリアは『レヴァリアース』のバッドエンドの時とは少し違うということ。

何故なら、『天秤の代理』のエピソードをとおして、今のイリアは「死」が全ての終わりではないという世界観を感得しているから。

今度は、きっとパニックにはならない。

バッドエンドをトゥルーエンドへ。

最後の困難の、その時。イリアはあの時できなかった、本当になすべきことをなすのではないかと思います。

おそらくは、一人でではなく、仲間と共に。

そう。

イリアが『レヴァリアース』の物語の終わりからもう一つ、手に入れたもの。

それは、新たな仲間たちです。

イリアは、『刻の大地』で十六夜たちに合流したばっかりの時はまだシオンとの「死別」が影を落として元気がない感じだったのですが。

今回の『天秤の代理』「イリア編」の頃には、仲間たちと笑えるようになっています。

謎の人物からの招きに応じて、イリアが一人で教会に行こうとした時、仲間たちが自然に同行の意志を示します。

 

生きているイリアの旅路は続く。仲間たちと共に

『刻の大地 天秤の代理』2巻 夜麻みゆき/Amazonプリント・オン・デマンドより引用

 

さりげない場面ですが、イリアがシオンと「死別」した後も続いている人生の中で得たもの(十六夜、ジェンド、カイらの仲間たち)を描いている、よいシーンだと思います。

大事な人と「死別」した後の人生の中でも、明るくて楽しいことがあって、笑ったりしている。

故人のことを考えて、心が彷徨(さまよ)ったりはしている。それでも、できればその彷徨う過程を、後ろ向きなものとしては捉えたくない。

生き残った自分に、罪悪感を抱えたりしないようにということ。シオンは最後に「俺の代わりに世界を旅してくれよ」とイリアに言うわけですが、たぶんイリアが笑って旅してくれた方が、シオンも喜ぶから。

以前書かせて頂いたこちらのコラムで『レヴァリアース』の結末をイリア(ウリック)の「少女時代の終わり」と表現しましたが。↓

『レヴァリアース』~ファンタジーの神髄「オッツ・キイム」三部作の幕開けは人間と魔物が仲良く暮らす世界を夢見た男装少女とゆく冒険譚

2021年10月26日

「死」について感得したここから(『天秤の代理』「イリア編」以降)のイリアは、いわば「大人」編です。

奇しくも、現実の読者とも重なります。子ども時代に『レヴァリアース』を読んでいた頃から時間が経過していて、読者の僕たちは大人になっています。

たいていは、ある程度「喪うこと」を経験しています。

僕は、そういった読者たちとも重なる、「喪うこと」「終わり」「死」、そういったものを経験しながら、「大人」になっても旅路を進めるイリアが旅の終わりで何に出会うのか。それが、みたいのです。

僕は年齢を重ねるにつれて現在そんなにも何かに執着するようなことが少なくなってきているのですが、ただ一つ、『刻の大地』の物語の結末は生きてる間に読んでみたいと思っているのです。

こればかりは自分の力だけではどうしようもないので、夜麻みゆき先生に描いて頂くしかない! 

夜麻みゆき先生は現在、『天秤の代理』2巻から先の『刻の大地』の物語を描くためのクラウドファンディングを実施中です。

『刻の大地 天秤の代理』3巻。今度は、いよいよ物語の「本編」とのことです。

かなりライターの私的な願望マシマシで締めるコラムになってしまいましたが、やはり僕は『刻の大地』の物語の続きが読みたいです。ご協力を頂けましたら喜びます!

ぜひ、下記のクラウドファンディングのページをチェックしてみて頂けたらと思います。↓(募集期間は2024年1月14日(日)、23時59分まで)

●刻の大地 天秤の代理 3巻制作プロジェクト/ソレオス(2024年1月14日、23時59分まで)

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