子どもの頃の愛読書は『Gファンタジー』と『ギャグ王』。今の『Gファンタジー』って、創刊当初は『ガンガンファンタジー』っていう名称だったんだよという豆知識を思わず披露したくなる古(いにしえ)のガンガン系キッズ・マンガフルライターの相羽です。
80年代・90年代のマンガについて語る、火曜日の「ゆるゆるコラム」のコーナーですが。
今回とりあげさせて頂くのは、夜麻みゆき先生の『レヴァリアース』です。
著者 | 夜麻みゆき |
---|---|
出版社 | エニックス |
掲載雑誌 | 月刊Gファンタジー |
掲載期間 | 1994年~1996年 |
巻数 |
全3巻 愛蔵版全2巻 完全版全2巻 |
ジャンル | ファンタジー |
まず特徴として、ネタバレになってしまいますが(わりと序盤で明らかになるので許してください!)、主人公のウリックは男装で旅をしていますが、実は女の子です。
もちろん、『リボンの騎士』のサファイアとか、『ベルサイユのばら』のオスカルとか、昔から既にあるキャラクター造形ではありますし。
作品が多様化した令和の現在では、溢れていてそこまで珍しくないキャラクターという感じではありますが。
「ファンタジー×男装女子」という組み合わせでしかも主人公が……という作品は、90年代時点だとまだまだユニークで新鮮だったと記憶しております。
(『レヴァリアース』1巻 夜麻みゆき/エニックス より引用)
キャラクターとしてのキャッチーな要素に留まらず、男装で旅をしていたウリックのアイデンティティの話は、『レヴァリアース』の物語全体とも関係し合う感じに展開されていきます。
ある出来事によって、ウリックが女の子でいられた時間は終わった、というのが物語の起点でもある作品なので。
『レヴァリアース』の物語──ウリックと相方のシオンの物語は、総じて「閉じた場所」から「外の世界」へ……という物語です。
森の中で魔物と一緒に暮らしながら時々帰ってくる英雄であり兄でもあるザードを待つという暮らしをしていたウリックと。
複雑な背景を抱えていることもあり、アドビス国のお城(実は王子様です)の中で本と知識の世界に閉じこもって生きていたシオン。
(『レヴァリアース』3巻 夜麻みゆき/エニックス より引用)
物語の二人のメインキャラクター、ウリックとシオンは時々反目したりしつつも、どこか共鳴する部分も持っている二人です。
二人が、一緒に並んで歩いて「外の世界」とふれ合っていく物語です。
その二人が冒険する「外の世界」、「オッツ・キイム」がとにかくすごいということは特筆しておきたいです。
夜麻みゆき先生が編み・紡ぐ空想(ファンタジー)世界なのですが。
個人的にはJ.R.R.トールキン(『指輪物語』の作者ですね)の「中つ国」とか、そういうのに匹敵するくらいの日本発の幻想世界だと思っております。
僕に「オッツ・キイム」について語らせると本格的な考察記事が別に何本も必要になってきてしまうので、今回はさわりだけちらっと紹介させて頂きますが。
まず物語の冒頭で提示される詩からして、壮大な世界を予感させます。
(『レヴァリアース』1巻 夜麻みゆき/エニックス より引用)
「未来」? 「古(いにしえ)」? 平面的なファンタジー世界だけでなく、こう「時間」とか、そういう射程まで入ってくる物語世界なの? と好奇心を刺激されます。
そして、旅の道中で明かされる壮大な天地創造以前の世界観。
(『レヴァリアース』1巻 夜麻みゆき/エニックス より引用)
あとで少し触れさせて頂きますが、この神と悪魔、天使、魔物、人が共存していたらしい天地創造よりも昔の話などを含め、広大な「オッツ・キイム」の世界は、現在進行中の作品・『刻の大地』でも、まだ全容は明らかにされていません。
そんな奥深い「オッツ・キイム」の世界でまずは焦点があてられる、人間と魔物という種族。
人間と魔物は共生できるのか? というテーマが共通している作品群でもあります。
人間と魔物は共に生きてゆけるという、兄・ザードから受け継いだ(とウリックが思っている/思いたい)理想のもと、ウリックは旅の途中でも基本的には魔物を殺しません。
(『レヴァリアース』1巻 夜麻みゆき/エニックス より引用)
そういった優しさの中での冒険は、一方である種のフワフワとした子ども的な世界観での冒険でもあります。
こういう言い方をしてイイのかわかりませんが、ウリックの「少女時代の終わり」までが『レヴァリアース』という作品なのかなと思います。
まだ読んだことがない方もこの記事にふれているかもしれないのでボカして書きますが、物語の結末付近で、フワフワした「少女時代の終わり」の象徴のようにウリックは「手を汚す」のですが。
ギリギリのところでウリックの「少女時代」の「想い」の方は、シオンが守ってくれたんだと個人的には解釈しています。
フワフワした感じながらも、ウリックとシオンが一緒に笑い、泣き、怒り、世界を実体験として感じた旅の時間は無駄ではなかったのだと。
では、「少女時代」が終わったとしてウリックはどうなったのかというと。
いよいよ「オッツ・キイム」三部作の続き・『刻の大地』という作品に、『レヴァリアース』のその後のウリックが出てきます。
しかも、過去作の主人公がゲスト出演といった軽いファンサービス的なものではなく、わりと重要な登場人物として描かれていきます。
この『刻の大地』は15年ほど前に連載が休止になっていたのですが、実は近年夜麻みゆき先生がクラウドファンディングで執筆するというカタチで、時代も令和となった現在再開しています。
多くの読者がとても盛り上がってきたところで休止となって残念! と思っていた「塔の戦い」も再開後、一区切り完結まで描かれています。
そんな『刻の大地』の続き、というか『レヴァリアース』の続き、「オッツ・キイム」三部作の続きは、ちょうどタイムリーに現在「キャンプファイヤー」様でクラウドファンディングを実施中ですので。
個人的に「オッツ・キイム」三部作は日本ファンタジーの宝だと思っているので、ぜひとも続きが読みたいです。
- 今回のコラムで興味を持って頂けた方
- 昔からファンだったけど再開していたという最近の動きは知らなかったという方
ぜひ、下記のクラウドファンディングのページをチェックしてみて頂けたらと思います。(募集期間は2021年10月31日まで)↓
●【再募集】漫画『刻の大地 天秤の代理編 2巻』制作プロジェクト/CAMPFIRE
フと思い浮かんで「少女時代の終わり」なんてキーワードを使ってしまいましたが。
子どもの頃に『レヴァリアース』や『幻想大陸』、『刻の大地』を読んでいたという人は、令和の今では大人になっている人が多いかと思います。
読者の我々もまたそれなりに現実世界の厳しさを見たりもしてきた上で。
『レヴァリアース』の結末から先のウリックの旅に、これから一緒に並走していくというのは、大きなワクワクをともなう読者の冒険でもあるのだろうという展望を示して、今回のコラムはまとめさせて頂きたいと思います。
相羽裕司
●『レヴァリアース』は現在(2021年10月時点)「マンガ図書館Z」ですべて無料で読むことができます↓
●ご購入は各種電子書籍販売サイトなどで↓
「マンガフル」では主に「考察」記事や「インタビュー」記事を執筆させて頂いております。
ピンとくるコラムなどがありましたら、タイミングが合った時に読んで頂けたら喜びます~。↓
しつこいようで申し訳ありませんが、個人的に『刻の大地』の「つづき」はとても読みたいので、ぜひぜひクラウドファンディングの方のページのチェックをよろしくお願いします~。(募集期間は2021年10月31日まで)↓
●【再募集】漫画『刻の大地 天秤の代理編 2巻』制作プロジェクト/CAMPFIRE
コメントを残す