【今週の一冊】『雨夜の月』感想。咲希と聴覚障害を持つ奏音、二人の繊細な友情を描くくずしろ先生の新作百合

みなさんこんにちは、【今週の1冊】として毎週金曜日、基本的には直近に読んだ作品(時には古い作品も!)をご紹介するマンガフルライターの神門です。

皆さんが作品を購入するご参考にしていただければと思います。

今週は、くずしろ先生の新作、『雨夜の月』です!

 

 

くずしろ先生といえば、『姫のためなら死ねる』、『兄の嫁と暮らしています』などなどを発表されています。

特に百合作品が好評ですが、今回もまた新たな百合作品で期待大です!

 

主人公は高校生に進学したばかりの金田一咲希。

ピアノ教室に通っている咲希は、ある日教室のレッスンに向かう途中で一人の美少女とぶつかって転び、楽譜を落としてしまいます。

美少女に楽譜を拾ってもらい、さらに転んだ時に怪我した傷を見て絆創膏までもらっちゃいます。

それで終わりかと思いきや、その美少女と入学した高校で同じクラスで隣の席に!(なんてベタな展開。だが、それがいい!)

彼女の名前は及川奏音。

そして奏音は耳が不自由な聴覚障害者でした。

奏音のことが気になる咲希はなんとか仲良くなろうとしますが、耳が不自由なことで奏音は他人と距離を置いており、どのように接していけば良いのか悩みます。

タイトル「雨夜の月」とは、雨雲に隠れた月のことを示し、想像するだけで目には見えないもののたとえです。

咲希と奏音、二人の少女の、目には見えないけれど確かにそこにある、大切なかけがえのないものを求める物語です。

ぶつかった美少女はなんと、同じクラスで隣の席だった!(王道!)

「雨夜の月」 1巻 くずしろ/講談社 より引用

 

くずしろ先生の百合作品は、『姫のためなら死ねる』みたいに最初から完全に百合に振り切ったものと、『兄の嫁と暮らしています』みたいにドラマ性の中にある百合の作品に分かれますが、本作は後者になります。

本作では聴覚障害者の奏音をメインキャラに据えていますが、主人公はあくまで耳が不自由ではない咲希です。

なので、咲希から考える耳の不自由な人、になります。

そして耳が不自由と一言でいっても、それは人によってどの程度なのか、どういう症状なのか、というのは異なります。

咲希はネットなどで知る耳の不自由な人ではなく、奏音はどういう症状なのかを理解しようとします。

くずしろ先生の上手いところは、『兄の嫁~』なんかもそうですが、重いテーマについてのアプローチの仕方です。

単に設定としておくのではなく、その設定だからこその物語をきちんと織りなしていく、というところだと思っています。

きちんと聴覚障害について調べています(最後に沢山の参考文献もあり)

「雨夜の月」 1巻 くずしろ/講談社 より引用

 

当然ながらそう簡単にうまくコミュニケーションをとることもできず、奏音も他の人と同様に咲希と距離を取ろうとします。

”どうせ自分のことなんか分からないでしょ”

今までの経験から奏音はそのように思い、ならば最初から関わらないで良いと咲希を突き放そうとしますが、咲希は諦めません。

突き放すのは簡単だけど、それを言うなら奏音も同じ。

相手のことをわかろうとすること、相手にわかってもらおうとすること、双方があって少しずつ分かり合えていくのだということを見せてくれます。

奏音と一つずつ距離を縮めていく咲希

「雨夜の月」 1巻 くずしろ/講談社 より引用

 

はじめはクールに見えていた奏音ですが、知らない面を知ることでどんどんど惹かれていく咲希。

だけど、知ることは、知りたくないことも知るということ。

 

  • 咲希が奏音と距離を詰めていき、咲希の心が動いていく様子
  • 咲希によって少しずつ明らかになっていく奏音の本質や過去

 

そういった展開もくずしろ先生ならお手の物。

こういう描写をごく当たり前のようにしているくずしろ先生ですが、繊細な感情や思考を読んでいて自然に入ってくるように描く力は本当に凄い。

 

咲希の思いが、そして奏音の気持ちがこの先どう動いていくのかが楽しみです。

百合に興味がない方でも楽しめる作品なので、是非!

 







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ABOUTこの記事をかいた人

社畜として働きつつ、漫画と小説と野球に癒される日々。人生を変えた作品は「女神転生」。プロ野球を愛しベイスターズを愛する。 熱血王道もの、血飛沫舞うバトルものから美少女百合ものまでなんでも好む。特に「無限の住人」の美しい殺し合い、「はやて×ブレード」のバカバトルが好きです。