みなさんこんにちは!ほんのり歴女なマンガフルライターayameです。
今回も始まりました、名作『あさきゆめみし』キャラ解説。
第22回目は、亡き夕顔の忘れ形見・玉鬘(たまかずら)です!
夕顔といえば、生きていれば源氏最愛の女性になりえたかもしれない魔性の女性。
六条の御息所にとり殺されてしまいましたが、儚げな雰囲気の美少女でした。
そんな夕顔によく似た娘・玉鬘は、作中屈指の波乱万丈人生!
その人生の歩みを追いつつ、彼女のキャラクターを考察・解説していきます!
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こちらは『あさきゆめみし』の完全版。美しい!
また、55周年記念の新装版も発売しています。
目次
1、『源氏物語』における玉鬘
冒頭の通り、玉鬘は亡き夕顔の忘れ形見です。
源氏と夕顔が愛の逃避行ごっこしている最中に死亡した夕顔。
大事になるのを恐れた源氏はしばらく夕顔の死を家人に隠し、幼い玉鬘(当時の名を瑠璃君)も放置します。
夕顔に仕える人々は主人の帰りを待ち続けますが、しばらくして乳母一家が筑紫に行かねばならなくなり、仕方なく玉鬘を連れて京を離れることに。
玉鬘はそのまま都から遠く離れた場所ですくすくと成長し、その美しさで何人もの求婚者が訪れます。
都から離れて育ったとはいえ、その佇まいは優美で雅な美しさをもっています
(文庫版『あさきゆめみし』3巻 大和和紀/講談社 より引用)
なかでも、有力な豪族である大夫の監(たゆうのげん)の求婚は強引で、乳母一家までも分裂。
困り果てた玉鬘と乳母は、乳母の長男である豊後の介と協力してなんとか京に逃げ延びました。
そして、慣れない京で頼るものもなく困っていたところ、偶然にも椿市の宿で夕顔の女房・右近(夕顔が死亡したとき唯一一緒にいた女性。現在は源氏に仕える)と再会。
そのまま源氏の娘という触れ込みで源氏の邸に引き取られることになります。
源氏は玉鬘を娘として扱う一方、ときたま見られる夕顔の面影を愛しく感じなまめいた態度を取ったり、かと思えば玉鬘に求婚する男性をわざわざ邸に招いたり……。
とんでもないこと言ってます
(文庫版『あさきゆめみし』3巻 大和和紀/講談社 より引用)
年齢のわりに初心で経験の浅い玉鬘はもちろん、読者も翻弄されっぱなしです。
そんな源氏も、親らしく玉鬘の縁組みに苦慮します。
いっそ自分のものに……とまで考えますが、そこをぐっとこらえ、今上帝(源氏の実子である冷泉帝)の尚侍にすることに。
しかしその矢先、玉鬘に求婚していた髭黒の右大将が強引に玉鬘と結婚。(まぁ言ってしまえば強姦です……この時代ならそう珍しいことではないのでしょうが)
玉鬘は華々しい宮中での生活を諦め、六条院での雅な生活から離れ、涙を流しながら右大将の妻として生きることを決意。
望まぬ結婚生活を最初こそ悲観していたものの、次第に右大将との絆は深まり、やがて3人の子をもうけます。
そしてこの3人の子は、源氏の子世代の物語にも登場し、源氏亡き後のストーリーに華を添えるのです。
2、『あさきゆめみし』における玉鬘~明かされる衝撃的な事実と受け継がれる自己犠牲精神~
『あさきゆめみし』の玉鬘のエピソードでは、ほんのりショックな事実が明かされます。
それは母である夕顔のこと。
不思議な運命により源氏と巡り会い、儚く散ってしまった夕顔……。
衝撃的なエピソードと年を経ても続く源氏の深い愛に、なんとなく2人の恋にドラマティックなものを感じるのですが……。
乳母一家の安全のために、大夫の監に身を差し出そうとする玉鬘。その姿に、在りし日の夕顔が重なり…
(文庫版『あさきゆめみし』3巻 大和和紀/講談社 より引用)
実は源氏と夕顔の出会いは、夕顔の打算によるものだったのです……!
女一人、幼い子供を抱えて生きていくのは難しい時代。
夕顔は小さな玉鬘や家人のため、言葉は悪いですが羽振りの良さそうな源氏に粉をかけたということですね。(もちろん、その後何度も逢瀬を重ねることで恋に落ちていったのだと思いますが)
あらためて、夕顔の魔性っぷりには驚かされます。
そして、その自己犠牲精神はしっかり玉鬘にも遺伝。
自己犠牲といえば損ばかりでネガティブなものと考えがちですが、玉鬘の場合、その健気さに触発された家人により筑紫から京へと上ることになったわけですから、優れた人物特性のひとつとも言えるでしょう。
本人にその気がなくても周りが勝手に動いてしまう……もしかしたら玉鬘は母を越える魔性を持っているのかも……?!
また、玉鬘といえば、有名なのは螢(蛍)兵部卿の宮との几帳越しの対面シーン!
『あさきゆめみし』ではこのシーンをとても華やかに描いています。
源氏の弟宮である兵部卿の宮は、玉鬘の美しさを噂に聞いて求婚する男性のひとり。
ある夜、源氏は宮を玉鬘と引き合わせます。
とはいえ、もちろん几帳越し。
玉鬘と宮、互いにわずかな緊張感を持ちながらの初対面の席で、源氏は几帳の内に大量の蛍を解き放ちます。
源氏のこの表情ですよ
(文庫版『あさきゆめみし』3巻 大和和紀/講談社 より引用)
蛍の光によって几帳越しに浮かび上がる玉鬘の艶姿……当然宮はイチコロです。
そんな宮を見てほくそ笑む源氏の心境は定かではありませんが、宮に対してなんとも言えない優越感を持っていたことは想像に難くありません。
物越しに透ける姿といい、蛍の仄かな光といい、懸想する”娘”を男性(弟)に見せびらかすその心情といい……なんともフェティシズムが渋滞したワンシーンとなっています。
3、当時の女性の生きにくさと美しさを体現したキャラクター
左大臣家の嫡男を父に持ちつつも、正妻腹でなかったがゆえに市井で貧しい暮らしをし、唯一頼りの母を亡くしてからは都を離れ田舎暮らし……。
望まぬ結婚から逃れるため、厳しい船旅の末に憧れの源氏に引き取られるものの、雅さのかけらもない男(3人の子持ち)と結婚し宮仕えの夢も諦めることに……。
右大将に襲われるシーンは衝撃的でした……
(文庫版『あさきゆめみし』4巻 大和和紀/講談社 より引用)
玉鬘の人生は当時はもちろん、現代の感覚でもエクストラハードモードです。
すさまじい強運と凶運の両方を併せ持っているとでも言えばいいのでしょうか……。
もし夕顔が生きていれば? あるいは、もし夕顔の父親(三位の中将まで上り詰めた人)が生きていれば?
右大将が本懐を遂げられず、玉鬘が別の男性と結婚していたら? あるいは宮仕えをしていたら?
ちょっとしたことで玉鬘の人生は大きく変わっていたはずです。
いかに、この時代の女性の人生が不安定なものなのかがわかりますね。
けれど、玉鬘は濁流に翻弄される笹舟のような人生でも、強く美しく前を向き、やがてきちんと根を張り生きていきます。
もう流されまいと決意する表情はとても凜々しいですね
(文庫版『あさきゆめみし』3巻 大和和紀/講談社 より引用)
平安女性の生きにくさに、希有なまでの強さとそれに付随する美しさ。
紫式部がどんな意図でキャラメイクしたのか今となってはわかりませんが、玉鬘はそれらを現代に伝えてくれるキャラクターだと言えるでしょう。
最終的には幸せを掴んでくれて、ホッと安心せずにいられないライターなのでした。(密かに玉鬘推し)
(ayame)
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