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【『あさきゆめみし』キャラ解説】4回:大人の事情に振り回された時代錯誤なお姫様・葵の上

みなさんこんにちは!ほんのり歴女なマンガフルライターayameです。

今回も始まりました、名作『あさきゆめみし』キャラ解説。

第4回は、押しも押されもせぬ源氏の不動の正妻・葵の上です!

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1、『源氏物語』における葵の上とは

マザコンをこじらせ藤壺の宮への恋心を暴走させ、数多の女性を苦しませたり泣かせたり、なかなかやりたい放題な光源氏。

「とっとと身を固めておとなしくしろ!落ち着け!」という声も聞こえてきそうですが、安心してください、結婚してます!

源氏は12歳で元服(成人)し、同時に葵の上という女性を妻にします。

この葵の上は左大臣と桐壺帝の妹である大宮という女性の娘で、つまり源氏にとって従姉にあたる人。

源氏より4歳年上の、とても美しく教養のある女性です。

そして、なんといっても身分もプライドも気位もとーっっても高い。

父親である左大臣は太政官の長官で主従二位。なんのこっちゃと思われるかも知れませんが、実質朝廷のトップのようなものです。

そして母親は今上帝の妹であり、葵の上自身も尊い血筋ということになります。

言ってしまえば、都イチのお姫様なんです。

源氏と結婚が決まる前は、いずれ春宮妃にと望まれていたような女性でもあります。(春宮=源氏の兄である桐壺帝の第一皇子)

いずれは春宮妃、ゆくゆくは太后……そう言われて大切に大切に育てられてきたわけですから、葵の上のプライドの高さも然もありなん。

それが、源氏の将来を有望視した左大臣によって突如その話しは立ち消え、年下の、しかも”ただびと”(=皇族ではないという意味)である源氏と結婚することになったのです。

4歳も年上の幼い従弟を前に、プライドの高い葵の上はなかなか打ち解けません。

作中、葵の上の詠んだ和歌が一首もないといえば、いかに源氏と葵の上の仲が冷え切っていたかがわかるかと思います。(平安貴族はなにかっていうと和歌を詠みますからね)

そんな葵の上にとって何よりもの誤算は、夫となった源氏があまりにも美しく、魅力的で、実は一目で恋に落ちてしまったこと。

とはいえ、いまさらどのように振る舞えばいいのか葵の上にはわかりません。

こうして、葵の上と源氏との間には深い深い溝ができてしまうのです。

2、『あさきゆめみし』における葵の上~周りの大人がもっとしっかりせい!~

『あさきゆめみし』で描かれる葵の上はほとんど笑顔がありません。

それどころか、表情の描写が乏しく、口調は厳しく、まるで冷たいお人形さんのような印象を受けます。

源氏のみならず、読者からも「とっつきにくいなぁ」と思われてしまうのも仕方ありませんね。

とはいえ、葵の上の周りに侍る女房たちは彼女を信頼し大切に慈しんでいる様子。

ただただプライドが高い高飛車なお姫様というわけではなく、あくまでも態度が厳しいのは源氏に対してだけで、人柄そのものはけして悪いわけではないことがわかります。

ここで、源氏と葵の上の婚礼の様子を見てみましょう。

恥ずかしがるとかそういうレベルでは……

(文庫版『あさきゆめみし』1巻 大和和紀/講談社 より引用)

二人はこのときが初めての顔合わせだったわけですが……。

見てわかるとおり、葵の上と周りとの温度差があまりにも大きいですね。

浮かれる親に、戸惑いのあまり源氏を拒否する葵の上。

さすがに初対面でそれはないんじゃないの……と思ってしまいますが、たとえ葵の上が年上だといっても、まだ16歳の少女なのです。

そんな少女が、これまで描いていた未来予想図から大きく外れ、初対面の夫(しかも美しく魅力的な源氏)の添い臥しをするのだから、戸惑って当たり前。むしろ、もう少し周囲(親)が気を遣ってあげるべきではないでしょうか。

※添い臥しとは……元服の夜に添い寝をすること、あるいはその相手の女性。性的指南の意味合いも含まれますが、男子の年齢によっては『あさきゆめみし』での葵の上のようにただ隣で寝るだけというパターンもあり。身分・年齢の釣り合いの取れた女性が選ばれそのまま正室になるケースもありますが、あくまでも性の指南ということで年長の女性が選ばれるケースもあり←その後要職に就いたりする)

葵の上に対して、あまりにも周りの大人たちの配慮が欠けています。

大人の事情で振り回され(それ自体はこの時代珍しいことじゃないのですが)、「あとは若いもん同士ご自由に」なんて言われて放置されても、そりゃうまくいきませんよ。

結果、初夜で葵の上は源氏に背を向けて寝てしまい、大失敗に終わるわけです。(その時ですら、源氏は藤壺を思い浮かべ「あの方とだったら一晩中おしゃべりして楽しいのになぁ」とか思ってる)

そこから、この夫婦はどんどんすれ違っていくわけですね。

3、時代錯誤な賢さが葵の上の不幸の根本であり、愛すべきところ

素直な心を表せない葵の上は、たまに源氏が訪ねてきてもろくに顔を出さない、出してもすぐ「具合が悪い」と言って引っ込んでしまう。

源氏はそんな葵との気まずさに耐えられず、ますます間遠になって他の女性と浮名を流す。

負のスパイラルです。

思うに、葵の上の不幸は源氏が浮気性であるだけではなく、時代錯誤ともいえる賢さにもあるのではないでしょうか。

当時の女性は愛する人がなかなか通ってこなければ、めそめそ泣いて恨み言の手紙を書いて、「はぁ、早く来ないかなぁ。有明の月が憎いぜ!」「もう袖も褥も涙でビチョビチョよ!」なんて和歌でも読みつつ、それでも恋人が訪ね来たら舞い上がって喜ぶものですが……。

葵の上はそんなことはしません。(それができたら当時は「可愛い女」なんですよね)

恨み言の手紙なんて書かない分、直接会ったときに態度に出すのです。「私はお前が気に入らない」と、ハッキリ。

また、ついうっかりとはいえ源氏のコンプレックスを突いてしまう(=核心をついてしまう)のも、頭が良いからこそ。

このときちょうど帝が譲位する話が出ており、源氏は「俗人として東宮や帝の位を望まないといえば嘘になるが、皇族の血筋でありながら親王ですらない自分には一生許されない」と己の身分を恨めしく思っていたところなのです

(文庫版『あさきゆめみし』1巻 大和和紀/講談社 より引用)

そして、そんな自分を反省する賢さを持っているため、自己嫌悪も大きく、こういった賢さが葵の上をがんじがらめにしているように見えます。

同時に、それこそ彼女の愛すべきポイントでもあるわけです。

と、ここまで彼女にスポットを当ててその不幸の原因を書き連ねてきましたが、彼女の最大の不幸が【源氏と和解した直後の永遠の別れ】であることは言うまでもありません。

それも、源氏の恋人の生き霊に取り殺されたわけですから、こんな不幸はないでしょう。

この生き霊の正体は有名なあのお方……(いつかのキャラ解説にて!)

(文庫版『あさきゆめみし』2巻 大和和紀/講談社 より引用)

(ちなみに『源氏物語』だと生き霊に殺されたとは書かれていません。生き霊によって殺された明確な描写は『あさきゆめみし』オリジナルです)

4、生まれる時代が早すぎた?葵の上まとめ

葵の上はお産の際に生き霊につきまとわれ、尋常ではない苦しみを味わいます。

なんとか出産を乗り切り、源氏と真の夫婦となった矢先に命を落とすわけですが……。

このエピソード、当時の生き霊という存在に対する恐怖の念にくわえて、いかに出産に際して命を落とす女性が多かったかを物語っていて、緊張感のある描写が物語を大いに盛り上げてくれる良エピソードといえます。

同時に、平安時代の妊娠・出産の様子が垣間見えて、とても興味深いですね。(『あさきゆめみし』のなかでも出産の様子が描写されているシーンはとても少ないのです)

 

葵の上は強く源氏を拒否し続けた希有な女性です。

もちろん、他にも源氏を拒否した女性はいないではありませんが、正妻という約束された座にいながら(いるからこそ?)、ここまで拒否の姿勢を貫けたのはもはやあっぱれの一言。

賢さにくわえてプライドの高さも時代錯誤といった感じですが、それゆえ現代女性にとってはどこか親近感を覚えてしまう存在かも?(意地やプライドで自分を上手く表現できないって、むしろ人間味があって身近に感じてしまいますよね)

こういうことを周りの大人がちゃんと教えてやれという話しですよ

(文庫版『あさきゆめみし』2巻 大和和紀/講談社 より引用)

ある意味、生まれる時代が早すぎた人ですね。(そう考えると紫式部ってホントにすごいな)

登場シーンはけして多くはなく、源氏との甘いエピソードもほぼなく、とにかく最期だけが衝撃的で印象深い女性ですが、それでも現代人の興味・関心をひいてやまないのは、彼女の親近感のあるキャラクターが『源氏物語』と現代女性との橋渡しをしているからかもしれません。

プライドが高くて冷たくで、でも実は不器用なだけで、さみしい気持ちを抱えたまま強く自分を保とうとした、愛すべきキャラクターです。

そんな彼女のけして長くない人生を、よりドラマティックかつエンターテイメントに描いたのが『あさきゆめみし』。

葵の上ファンの方はもちろん、「葵の上ってあんまり可愛くないし、それほど好きじゃないのよね」なんていう人ほど、ぜひ一度『あさきゆめみし』を読んでみてくださいね。

 

ayame

 

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ABOUTこの記事をかいた人

元研究職、現在は飼い猫を溺愛する主婦兼フリーライター。小さいころから漫画が好きで、実験の合間にも漫画を読むほど。 ジャンルを問わずなんでも読むけど、時代もの・歴史ものがとくに大好物。 篠原千絵先生大好きです!好きなタイプは『はじめの一歩』のヴォルグさんと『はいからさんが通る』の編集長。