こんにちは!マンガフルライター、中山今です。
今回は『煙と蜜』を5人のライターのクロスレビューで解説したいと思います!
- 30歳と12歳の年の差恋愛
- 大正時代という浪漫ある時代設定
- 男の色気、女の子のいじらしさ(と、フェティシズム・・・)
- 新しく読む漫画を探していて、『煙と蜜』に注目している方
- 自分と似た傾向の人の『煙と蜜』の感想が読んでみたい方
- 『煙と蜜』のいろんな感想が見てみたい方
レビューするライター各位、レビュー傾向の参考として好きな漫画作品&執筆記事を挙げています。『煙と蜜』の評判を知りたい方は「自分の趣味と似ているかも!」というライターを探してみてください。
もちろん、すべてのライターのレビューを読んでいただいてもOK。『煙と蜜』既読の方にも新たな発見があるかもしれません!
この記事では以下のようにクロスレビューを紹介していきます。
- まずは『煙と蜜』のあらすじ
- 各ライターが5つの★で評価した『煙と蜜』結果発表&ライター5人の紹介
- 各ライターの詳細なレビュー文
『煙と蜜』の複合的な評価、また1つの作品を複数人でレビューする視点の違いもお楽しみいただければ幸いです!
目次
1、『煙と蜜』ってどんな漫画?
著者 | 長蔵 ヒロコ |
出版社 | KADOKAWA |
掲載雑誌 | ハルタ |
掲載期間 | 2018年11月15日~ |
単行本巻数 | 既刊2巻(2021年6月15日3巻発売) |
ジャンル | 大正恋愛物語 |
時は大正5年、名古屋。
12歳の良家の子女、花塚姫子。
そして30歳の名古屋帝国陸軍第三師団歩兵第六連隊少佐、土屋文治(ぶんじ)。
二人は年の離れた許嫁であり、文治が姫子の家に訪れる交流をしています。
母の療養のため東京から名古屋に越してきた姫子は、母、賑やかな女中たち、穏やかな祖父と楽しく暮らしています。
そしてなにより文治が大好きで、はやく文治に見合う女性になりたいと願う女の子です。
一方文治は大人として、子供の姫子を見守り慈しみます。
豊かで華々しい大正の良家を舞台にした、穏やかな恋の物語です。
(煙と蜜 第一集 長蔵ヒロコ/KADOKAWAより引用)
2、『煙と蜜』クロスレビューの結果発表!5つ星評価一覧&レビュアー5人の紹介
それでは各ライターが出した『煙と蜜』についての評価を5つの★で発表します!
その後、レビューしたライター5人の紹介をします。評価の参考になれば幸いです。
2-1、各ライターの5つ星評価一覧!総合は★★★★☆(★4つ)
各ライターの最大★5の評価一覧です。
おおむね高評価の傾向が高く、 総合★★★★☆(★4つ) という結果になりました。
ライター | ライター属性 | 総合オススメ度 |
ayame |
歴史&イケメン好きライター |
★★★★☆ |
相羽裕司 |
ストーリー重視ライター |
★★★★★ |
神門 順 |
設定マニアライター | ★★★★☆ |
中山今 |
ハードボイルド好きライター |
★★★☆☆ |
じょにすけ |
ジャンプ・王道バトル好きライター |
★★★★☆ |
まずはざっとした評価をご紹介しました。
それでは、この評価を出したライター陣のご紹介をしたいと思います。
どのような漫画を読み、どんな記事を書いているライターか?がレビューの参考になれば幸いです。
2-2、ライター5人の紹介・・・歴史好き、ハードボイルド好きやジャンプ好きまで。自分と合いそうなレビュアーを見つけてください
レビュアー5人の紹介です。好きなマンガ作品、またマンガフル内での執筆記事を併記しているので、好みの参考にしてみてくださいね。
【ライター紹介】
「マンガフル」では主に考察系の記事を担当。ストーリー重視で構造(世界観)と実存(キャラクター)が有機的に関係し合っているような作品が好きです。百合、日常系も好き。マイバイブルはCLAMPの『ツバサ』。
執筆記事:
ハードボイルド&バイオレンス漫画好き。
好きな漫画は『ゴールデンカムイ』『極東事変』
執筆記事:
熱血モノからスポ根、ラブコメ、百合など王道からニッチなところまで幅広く雑食に読みます。
好きな漫画は『はやて×ブレード』
執筆記事:
最近、10歳の娘が『ONE PIECE』を1巻から読み始めたことに喜びを感じているお父さんライター。普段はアツい展開の王道漫画やギャグ漫画をよく読んでます。今回は普段手にとらない「大正ロマンス」…楽しみです。
執筆記事:
見ていただいたとおり、方向性のバラけた5人のレビュアーが評価を行っています。
次の項目から、どのようにして総合評価に至ったか?という各ライターの詳細なレビューをご紹介していきます!
3、各ライターの詳細なレビュー!大正への浪漫やタイトルから対照性を分析など多方向の視点あり
それでは5人のライターによる詳細なレビュー文をご紹介します。
レビュー文だけでなく、最初に総合評価+独自項目として2つのポイントを★で評価しています。レビュー文はピンポイントにまとめたレビューもあれば、のめりこむような長文になったレビューも。
独自項目の★評価を見るもよし、がっつりレビュー文を読むもよし。お好みのライターのレビューを参考にしてくださいね!
3-1、年の差キュンキュン&大正ノスタルジイ。大人と子供の境界線を考えさせられる漫画:歴史&イケメン好きライターayameレビュー
【☆評価】
総合オススメ度:★★★★☆
ノスタルジィ度:★★★★☆
胸キュン度:★★★★★
【レビュー】
兵児帯に大きめのお端折り、肩上げした着物を着た姫子と、煙草の煙をくゆらせる陸軍少佐の文治。
憧れ混じりの恋心を募らせる姫子に、それを知りつつ拒否こそしないものの大人の余裕を保つ文治。まさに一分の隙も無い完璧な年の差モノです!
時代は第一次世界大戦による好景気に沸く大正5年。賑やかな街の様子とのどかな田舎風景にノスタルジィを感じつつ、姫子と文治の関係性にキュンキュンが止まりません。
また、ほのぼのと見せかけて時折さりげなくエロい!
(煙と蜜 第二集 長蔵ヒロコ/KADOKAWAより引用)
ただ、姫子は父親不在だし(死別か?)母親は病の身。
このあと起こる戦後の反動不況や関東大震災を考えると、今が姫子と文治にとって一番幸せなときなのかも思い、ふと切なくなることも……。
姫子の比較的早い婚約(しかもだいぶ年上)も、姫子の将来の不安定さを危惧してのことかもしれませんね。(姫子の父親や婚約の経緯は今後描かれるのかな?)
(煙と蜜 第一集 長蔵ヒロコ/KADOKAWAより引用)
初々しい姫子の可愛らしい姿やエリート軍人の文治のかっこよさを楽しみつつ、大人と子供の境界線を考えさせられる漫画です。
女性には全力でおすすめできますが、男性が姫子の恋心に共感するのはちょっと難しいかな?ということで総合オススメ度は★4つ。
個人的には軍隊語を喋る文治も見たかったです!(余談ですが、文治の声は私の中で低くかすれ気味の井上和彦さんか優しめの小杉十郎太さんで再生されてます!)
3-2、子供と大人、平和と戦争。対照構造が軸となる作品:ストーリー重視ライター相羽裕司レビュー
【☆評価】
総合オススメ度:★★★★★
ストーリーの充実度:★★★★☆
燃え萌え度:★★★★☆
【レビュー】
作品タイトルの『煙と蜜』が象徴しているように。
二人の主人公、文治と姫子における、
「煙」―大人(文治)
|
「蜜」―子供(姫子)
という対照構造が軸となっている作品です。
第二集までは、「子供」である姫子は「大人」である文治に憧れる、自分も早く「大人」になりたいという力学でストーリーは進むのですが。
(煙と蜜 第二集 長蔵ヒロコ/KADOKAWAより引用)
「煙」には「煙草」の「煙」の他に、「銃や火器」の「煙」という含意が同時に入っているようで。
「大人」の世界とは文化・習俗的な「煙草」の世界だけでなく、「戦争」の世界でもあるという仕込みが既にちょくちょくと描かれております。
(煙と蜜 第二集 長蔵ヒロコ/KADOKAWAより引用)
姫子にとっての文治は、熟成された「大人」の世界(文化)への案内役でありながら、同時に姫子を「戦争」に近づけさせる役割も担っています。
物語の舞台は第二集までは「大正5年」と明示されています。
つまり文治と姫子が結婚する予定である「3年後」までにどういった歴史上の大きい出来事が起こるのか、ある程度歴史に詳しい読者は前提として読み進めることになります。
この後におとずれる歴史的・世界的な混乱の中で、姫子が「蜜(=子供)」でばかりもいられなくなってきた時に、物語がどう展開していくのか。
大きいストーリーの視点からも、今後が楽しみな作品なのでした。
3-3、12歳の淡い恋心を受け止める30歳。あたたかくやわらかな雰囲気を楽しむ:設定マニアライター神門順レビュー
【☆評価】
総合オススメ度:★★★★☆
ほっこりする度:★★★★★
フェチを感じる度:★★☆☆☆
【レビュー】
今回のレビュー作品は『煙と蜜』ということで、大正ロマン!
といいつつ、大正ロマンといえば『はいからさんが通る』と『サクラ大戦』くらいしかパッと思い浮かばず大正時代に詳しいわけではないので、時代背景などは横に置いておきます。
レビュー時点で既刊2巻なので全体評価は難しいのですが、この2巻までの段階でいえば、
作品が醸し出すあたたかくやわらかな雰囲気を楽しむ作品
かなと思いました。
※設定的には気になる部分もあったのですが雰囲気を楽しむと判断したので、本作ではその辺は無視することにしました
12歳の姫子と30歳の文治、許嫁ではあるけれど姫子が幼すぎるので恋愛、ラブコメには至っていない。
30歳と12歳ということですが、禁忌や禁断や耽美を思わせるようなものでもない。
あくまで、まだ12歳という幼い少女の姫子が、大人の男性である文治に憧れに近い恋心を抱き、そんな姫子を文治が受け止めている、という構図が最初から2巻の終わりまで変わること無く描かれています。
(煙と蜜 第二集 長蔵ヒロコ/KADOKAWAより引用)
それに加えて、時に二人を取り巻く人たち、姫子の母親や女中たち、あるいは文治の軍人仲間との関係性などが、いずれもほっこりした感じで描かれます。
第1話を読んでみて楽しめた方、雰囲気が好きな方は、確実に楽しめると思います!
(煙と蜜 第二集 長蔵ヒロコ/KADOKAWAより引用)
ただ逆に物足りなさを言うならば、今のところ雰囲気先行で深さがまだまだ感じられないところがあります。
- 姫子と文治はなぜ婚約したのか?
- 文治は姫子をどう思っているのか?
- 文治は過去に何があったのか?
というのが2巻まででは描かれていないから、雰囲気以上のものがないとも思えてしまいます。
ただ、ところどころで匂わせている部分はあるので、恐らくこの後に描かれていくのではないかと思っています。
その辺が分かればまた読み手の捉え方も違ってくると思いますので、今の良い雰囲気と今後への期待を込めて★4です。
3-4、リアル極める大正浪漫と物憂げな男の色気がシブい&エロい:ハードボイルド好きライター中山今レビュー
【☆評価】
総合オススメ度:★★★☆☆
大正リアリティ度:★★★★★
シブい男のエロみ度:★★★★★
【レビュー】
100年前の生き生きとしたディテール&タバコくゆらす男の哀愁に酔う。
さすが『乙嫁語り』『ふしぎの国のバード』を掲載するハルタでの連載作品。大正ディテールの本気度に唸る!(※乙嫁語りは現在雑誌『青騎士』に異動)
- 屋敷の女中たちが煮炊きする広い土間
- 女性のお風呂の入り方
- 大正5年の将校の日常
など、ガッチリした時代考証が見ごたえたっぷり。
(煙と蜜 第一集 長蔵ヒロコ/KADOKAWAより引用)
この匂いがするようなリアリティをさみし気に演出するエロスもたまんないです。
舞台の大正5年は大戦景気に沸く時代。
30歳と12歳の許嫁も、大日本帝国陸軍も、今では肩身の狭い喫煙者も違和感なく存在しています。華やかで豊かで、余裕を感じさせる時代です。
しかし主人公姫子の許嫁、文治はなにか物憂げな雰囲気を漂わせています。「陸軍少佐、かつ良家の許嫁を持つ男」という時代の恩恵を大いに享受している身でありながら、です。
文治がくゆらせ、まとわりつき消えていく煙の儚さは、まるで失われることが分かっている豊かな時代の行く末のよう・・・
シブい&なんかエロい!シブい!(大事なことなので2回言った)
(煙と蜜 第二集 長蔵ヒロコ/KADOKAWAより引用)
雰囲気フェティッシュを味わうマンガで、ものすごく人を選ぶであろうことから総合オススメ度は3つと低めの設定にしています。
が、
- 歴史もの・特に大正時代が好きな人
- 男はシブく、そしてほのかにエロくあってほしい人
には激しくお勧めしたいマンガです!
3-5、姫子の成長と恋愛を見守る。お父さん目線で許嫁との関係を想う楽しみ:ジャンプ・王道バトル好きライターじょにすけレビュー
【☆評価】
総合オススメ度:★★★★☆
もやもや度:★★★☆☆
姫子愛おしい度:★★★★★
【レビュー】
今回は「大正ロマンス」という触れ込みを聞いてドキドキしながら読み始めたんですが、最初の3ページを開いた時点で確信しました。
当たりだ!と。
(煙と蜜 第一集 長蔵ヒロコ/KADOKAWAより引用)
- 繊細かつ華のある画
- 色っぽいねーね(女中のお姉さま)たち
- そしてなにより姫子が可愛いらしい!
この作品はいろんな楽しみ方があるんですが、そのうちの1つをご紹介します。
それは、父(母)親目線で姫子の成長や恋愛を楽しむ!というもの。
姫子は、もうとにかくピュアで健気でほんとにいい娘なんです。
- 母親から「なんでもやってみなさい」と言われたことを素直に受け入れ、いろんなことに挑戦してる姿
- 歳の離れた文治(婚約者)に好かれよう、少しでも大人の男の気持ちを理解しようと頑張ってる姿
こんな姿を観ていると、たまらなく愛おしい気持ちが溢れてくるんです。
で、その愛おしい娘の許嫁として現れるのが文治ですね。
初めの印象は、目の下に深いクマがあり…なんか影があって掴みどころのない怪しい男です。
「うちの姫子を悲しませるようなことがあったら許さんぞ文治〜!」という気持ちで読み進めると…
女中の長で、姫子のことを我が子のように愛している龍姐さんが同じ気持ちだということに気づきます。
その後、龍姐と共に文治に怪しい動きがないか?注意しながら読み進めていくんですが、知れば知るほど…
文治は憎たらしいほどにいい男だということがわかってきます。
軍の大隊長として仕事がバリバリできて部下からも慕われてるだけじゃなく、誰に対しても礼儀正しく心遣いができる大人の男です。
そして、姫子の可愛らしく照れてる表情や幸せそうないい表情をうまく引き出します。
(煙と蜜 第二集 長蔵ヒロコ/KADOKAWAより引用)
姫子の親(?)としては、まだ完全に姫子の相手として文治を認めたわけではありませんが、ひき続き娘の成長と2人の恋愛を見守っていきたいと思います。
物語的には大正時代で、この後世界大戦に突入していく時期ということもあって、今後の展開がどうなっていくのか?楽しみであり心配でもありますが…
『煙と蜜』は、もやもやした気持ちを残しつつ幸せを感じられる作品です。
ぜひお楽しみください!
4、まとめ。総合★★★★☆!ほんわかキュンキュン年の差恋愛。時代の行く末に波乱の予感を感じる
以上、趣向の異なる5人のマンガライターによる、『煙と蜜』のクロスレビュー(星評価、詳細レビュー)をお届けました!
評価をまとめると、
総合的な☆評価(最大5つ)は★★★★☆
- 12歳と30歳、ラブコメ未満のもやもや関係
- 大正ノスタルジイ&史実から予想される近い未来の不安
- 娘を見るような楽しみもある(かわいいー)
というクロスレビューとなりました。
参考になった、また面白かったレビューがあれば幸いです!
第3集の発売は2021/6/15です。
姫子と文治の関係はどうなるのか。そして忍び寄る戦争の影は二人、そして周囲の人たちにどのような影響を与えるのか。
今後も引き続き、姫子と文治の恋を追っていきたいと思います!
(編集:中山今)
ほんのり歴女ライター。歴史・時代物が大好き!あと種類を問わずイケメンも好き。今回のレビューお題として『煙と蜜』を推薦した張本人。
執筆記事:
男女逆転歴史SF『大奥』の魅力とは?ストーリーを華麗に彩る3つのポイントと号泣シーンを共有したい!
2021年4月28日