こんにちは!アメコミはミリしら、マンガフルライター中山今です。
毎週日曜連載のこの「最近読んだ漫画感想」、本日は『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』の感想を書きたいと思いますー!
日曜の昼下がり、漫画レビューをサラッと楽しんでもらえれば幸いです。
このレビューでは作品を以下の3つの項目でご紹介していきます。
- 簡単なあらすじ
- レビュー
- 読み慣れないな?って思ったところを日本漫画と比較
それではまずあらすじからどうぞ!
(なお、本稿ではイスラム教徒のことに触れています。Ms.マーベルの世界観がイスラム教徒全般に適用しないことを先にお断りしておきます)
目次
1、『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』のあらすじ。ヒーローマニアのムスリム娘、ヒーローになる!設定がすでに勝ってるヒューゴー賞受賞作品
著者 | G・ウィロー・ウィルソン(ライター)/ エイドリアン・アルフォナ(アーティスト)/秋友克也 (翻訳) |
出版社 | ヴィレッジブックス |
発売日 | 2017/9/28 |
アメリカ、ニュージャージー州に住む16歳のムスリム(イスラム教徒)の女の子「カマラ・カーン」。
優しくも厳格な家族といたって普通に暮らしていたのに、ある日のパーティー帰りに謎の霧に包まれた!
倒れた彼女の前に、キャプテン・アメリカやアイアンマンといったヒーローが現れ、カマラに「なりたいもの」を聞く。
スーパーヒーローマニアのカマラは「あなたのようになりたい」と答え、霧が晴れたとき・・・カマラはスーパーヒーロー「Ms.マーベル」になっていた!
スーパーヒーローの同人小説を書くオタク少女が超能力でヴィランとバトル。コーランの一説「一人を救うのは全人類を救うのと同じ」の言葉に則り人を助ける!
『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』G・ウィロー・ウィルソン(ライター)/ エイドリアン・アルフォナ(アーティスト)/秋友克也 (翻訳) ヴィレッジブックスより引用
編集、脚本(ライター)をムスリムの女性が担当。また作画(アーティスト)も女性を起用。
2015年、SFの名誉ある賞「ヒューゴー賞」のグラフィックストーリー部門で最優秀賞を受賞。
アメコミの2代巨頭、マーベル社がムスリム&女性のチームで作り上げた期待のニューヒーロー漫画です。
2、『Ms.マーベル』レビュー!「普通の女の子」が特殊能力でヴィランと戦う王道バトル漫画
『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』はシンプルに感情移入でき、シンプルにワクワクするヒーロー漫画でした!
まずヒーローマニアの女の子がある日ヒーローになる展開が燃えーです。
カマラはヒーロー同人小説を書くヒーローマニア。オタクです。
ムスリムであることという前提はつきますが、厳格な両親から自由を与えてもらえないことや学校の友達に見くびられていることなどで悩んでいます。
オタクでちょっと立場の弱い子がヒーローになる、感情移入のバリバリできるヒーロー像です。
『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』G・ウィロー・ウィルソン(ライター)/ エイドリアン・アルフォナ(アーティスト)/秋友克也 (翻訳) ヴィレッジブックスより引用
そして特殊能力&ヴィランも燃えー!!
Ms.マーベルの能力は「体の変形能力」。
巨人化、小人化、足を延ばして移動速度をアップし、こぶしを巨大化させてハンマーのように敵を叩く!
特に手を大きくするアクションが万能で、おぼれる人あれば川底の泥ごと掬いあげ、敵あらば巨大拘束具として捕縛。
ビームや飛翔などの派手なアクションではありませんが、デカイ手で敵を叩き潰すのは豪快で爽快!
『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』G・ウィロー・ウィルソン(ライター)/ エイドリアン・アルフォナ(アーティスト)/秋友克也 (翻訳) ヴィレッジブックスより引用
そしてアメコミと言えばヴィラン!
1巻目・『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』では、友人のお店の強盗犯退治につき対ヒト戦闘。
しかし最終ページで鳥人間型のヴィラン「Mr.エジソン」が登場!いいですね鳥人間!どんな敵なんだ鳥人間ッ!
『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』G・ウィロー・ウィルソン(ライター)/ エイドリアン・アルフォナ(アーティスト)/秋友克也 (翻訳) ヴィレッジブックスより引用
レビューした通り、『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』は、共感型ヒーローが豪快系能力で敵と戦う王道バトル漫画です。
しかし、そのカタルシスやバトル動機にムスリム(イスラム教徒)の要素が入ることはすごく新鮮。
でもカマラはヒーロー同人を書いたりパーティーに行きたがったり、謎めいた「ムスリム」のイメージよりずっと普通の女の子で共感できるキャラ。
王道ヒーローものの主人公に変わった設定の子が入るのって面白いと思うんですけど、「ムスリム」を据えるの、さすが多民族国家・・・!と唸る気持ちです。
さて、このように『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』を面白い漫画だと思いつつ、やっぱり日本の漫画と違う部分もあるなあとは思いました。
以下で、レビュー以外の「ここの読み方新鮮だなー」と思うポイントを2つ紹介したいと思います。
3、『Ms.マーベル』の慣れないなって思ったところ2つ。確かに日本の漫画と読み方違うかも
『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』で、ちょっと日本の漫画と違うと思ったのは2つ。
- アクションのエフェクトが少ない
- 注釈は別紙
まずアクションのエフェクトですが、日本の漫画だと「動きや打撃の破壊力を表す記号や効果」が入り、コマの中で動きが分かるようになっています。
『ゴールデンカムイ』26巻G・野田サトル 集英社より引用
しかし『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』では動きを表す補足記号がない、あるいは薄目です。読者自身が前後のコマから動きを補足して読む形になります。
『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』G・ウィロー・ウィルソン(ライター)/ エイドリアン・アルフォナ(アーティスト)/秋友克也 (翻訳) ヴィレッジブックスより引用
また、ストーリー上は大切でも本筋とは関係ない設定は別紙の解説書で補足します。
日本漫画では「解説役」としてのキャラや解説するためのシーンを作るくらい、設定の解説を物語に盛り込む傾向があります。
スタイルはいろいろありますが、「そのことを知らないキャラクター」へ、「そのことを知るキャラクターが教える」という形をとったり、ナレーションを入れたりして作中に解説を入れ込みます。
『彼方のアストラ』3巻 篠原健太 集英社より引用
しかし『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』では、注釈を書いた別紙が本に挟み込まれています。
『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』G・ウィロー・ウィルソン(ライター)/ エイドリアン・アルフォナ(アーティスト)/秋友克也 (翻訳) ヴィレッジブックスより引用
地名やスラング、宗教上の決まりなど、読者が知らなかったりわかりづらいことは漫画外で補足するスタイルです。
これらの読みなれないポイントは『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』と日本の漫画の優劣ではありません。
『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』はアクションエフェクトがない代わり、ひとつひとつのコマがイラストのように美しいと感じます。
また物語中に解説を加えないことで話の展開を妨げませんし、特にキャラクター同士の会話で補足するのは無理があるスラングなどは別紙解説の方がスマートだなと思います。
日本の漫画に慣れているとちょっと戸惑うポイントではあります。しかしフルカラーの美しい冊子なので繰り返し読んで楽しむのがいいな、と思いました!
(また、『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』はあえて漫画的表現を抑えているとも感じます。解説書によると「女性ファンも引き込みたい」とあったので、従来のコミックのテクニックよりイラスト的表現を選択しているのかもしれませんね)
4、まとめ。アメコミ、案外読みやすいよ!
この記事では『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』のレビューや日本漫画との違いを解説しました。
ライターはアメコミをほとんど知りません。(昔、『るろうに剣心』の和月先生が好きだって言ってたから『スポーン』を何冊か持ってたくらい)
アメコミは映画化作品も多くあります。そのため有名なキャラクターなどは知っていますが、漫画としてはほとんど知らない状態でした。
でも今回『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』を読んで、「絵のセンスいいし設定で勝ってるしテンションも共感できるし面白いじゃん!」と思った次第です。
しかし今回はたった一冊のアメコミを読んだだけ。
興味が出たのでもう少しいろいろなアメコミを読んでみたいと思います!
それでは今週もありがとうございました。
来週は、本稿で引用にも使用した『ゴールデンカムイ』26巻の話をしたいと思いますー。
1巻中で複数のバトルを視点スイッチする構成がすごかったんです・・・!
↓前回のレビュー記事はこちら↓
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