みなさんこんにちは!ほんのり歴女なマンガフルライターayameです。
今回も始まりました、名作『あさきゆめみし』キャラ解説。
第8回は、源氏の恋人のなかでもひときわ目立つファーストレディ・六条の御息所です!
彼女は『あさきゆめみし』前半部の主要キャラクターでもあり、物語を展開させる重要な存在です。
そのため、前編・後編の二回にわけて解説していきますね。
実は『源氏物語』ファンにも『あさきゆめみし』ファンにもかなり人気の高い彼女……。
その人気の理由を探っていきましょう!
前回の第7回はこちら↓
このコラムの初回0回はこちらです↓
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1、『源氏物語』における六条の御息所
六条の御息所(みやすどころ)は源氏にとって比較的早めにできた恋人のひとり。
桐壺帝時代に亡くなった前東宮の元妃で、六条に居を構えていたことからこのように呼ばれています。(御息所=天皇の子供を産んだ女御や更衣、あるいは皇太子や親王の妃の敬称。ちなみに、六条の御息所の夫である亡き東宮は桐壺帝の同腹の弟であるとされています)
以下、御息所と呼ばせていただきます。
御息所は源氏よりも7歳年上の大人の女性。(17歳年上とする説もあり。『あさきゆめみし』では8歳とされています)
未亡人ではあるものの、身分も地位もあり、美しく、教養のある人です。
源氏は当時17歳くらい。17歳の若造が24歳のファーストレディと……って考えると、現代の感覚でもちょっと驚きですよね。
源氏と御息所のなれ初めは『源氏物語』ではとくに語られていませんが、藤壺の宮への叶わぬ想いに苦しむ源氏が、同じく年上で身分と教養のある女性で心の穴を埋めようとしたことは想像に難くないでしょう。
そんな御息所ですが、『源氏物語』前半部のメインキャラクターといっても過言ではなく、漫画や小説、映画などのメディア化では必ずといっていいほど重要人物として登場します。
なぜなら彼女、数多いる源氏の恋人の中でもとりわけ嫉妬深く、それゆえとりわけ苦しみ、とりわけひどい目に遭っているのです。
それでいて、扱いはほぼほぼヒール。
紫式部の私怨でも込められているのか?!と思ってしまうほど他の女性とは一線を画す存在であり、彼女が活躍(?)する場面は現代人の目から見てもとてもエンタメ性が高いと言えるでしょう。
ざっと御息所関連の事件を箇条書きにすると、以下の通り。
- 源氏の恋人である夕顔に取り憑き殺す(ただし明確に犯人が御息所だという記載はなし←というのも、この時点で御息所は正式に物語に登場していない)
- 葵祭で源氏の正妻である葵の上と牛車でバトル(敗北して大恥をかく)
- 葵の上の出産の際に生き霊を飛ばして苦しめる(葵の上は産後死亡)
この3つの事件はメディア化ではもれなく取り上げられる名シーンであり『源氏物語』のハイライトでもあります。
最終的に御息所は源氏と泣く泣く別れ、伊勢の斎宮に選定された娘に付き添い下向。
数年後、帝の代替わりに伴って斎宮の任期も終了し、都に戻ってきますがそのまま出家。
久しぶりに会った源氏に「娘には手を出すな」と釘を刺し、病によってこの世を去ります。
思いのほかあっさり退場した御息所でしたが、死後も源氏の前に亡霊として姿を現わすなどして、読者が忘れた頃に存在を主張してくるのが彼女らしいというかなんというか……。
間違いなく源氏の人生に大きな影響を与えた女性の一人といえるでしょう。
ただ、これだけのことをしていながら、意外にも原作『源氏物語』ではあまり登場シーンは多くありません。
紫式部は彼女について作中それほど多くを記してはいないのですが、当時の読者にとってはそれがかえって御息所への興味や関心をそそったのではないでしょうか。
そのせいか、後生あらゆる媒体でなにかとメインキャラにされがちな御息所……。(絵画や能、映画やドラマ、小説などなど)
メディア化によるさらなるキャラ付けによりいっそう人気を高めていったと考えられ、ある意味二次創作面での扱いやすさがずば抜けたキャラクターであるといえるでしょう。
2、『あさきゆめみし』における六条の御息所①~年齢差と嫉妬に苦しみ第一の生き霊飛ばし~
前述の通り、『源氏物語』では御息所と源氏のなれ初めはとくに書かれていません。
初めてその存在が示唆されたのも、夕顔の帖の冒頭で「源氏が六条あたりにお忍びで通っていたときのこと……」というような感じで、メインキャラ感は薄め。
でも、『あさきゆめみし』では源氏と御息所のなれ初めがきっちり描かれているし、原作では「考えるな、感じろ」レベルだった彼女の嫉妬深さもしっかりきっちりみっちり描かれています!
『あさきゆめみし』での二人のなれ初めは以下の通り。
ある日、文章博士と思われる男性のもとを訪ねた源氏は、そこで「六条の御息所こそ当代一の貴婦人」だと聞かされます。
興味を持ちアポを取るものの、御息所はそれを拒否。
源氏に対面する前は自分の立場や身分をしっかりわきまえていて、なんだったら源氏のことを「煩わしい」とすら思っていた御息所。
(文庫版『あさきゆめみし』1巻 大和和紀/講談社 より引用)
博士にとりなされ仕方なく対面した御息所は源氏の若さに驚くものの、にじみ出る教養や人柄、美しさにじわじわと惹かれていきます。
やがて、御息所は源氏への恋心を自覚。
こうして思い煩う時間が、かえって彼女の恋心を深めたのかもしれませんね
(文庫版『あさきゆめみし』1巻 大和和紀/講談社 より引用)
とはいっても、一度は人の妻となった年上の身です。
「いけない」と思いつつもついには源氏に身を任せてしまうのですが、これが彼女の不幸の始まり。
まだ薄暗い時間に起こされてなかなか覚醒できない源氏を見てはその若さに狼狽したり。
こちらは『あさきゆめみし』の名シーンですね。源氏の若さが強調されています。(といっても、御息所だってまだ24、5歳なんだからまだまだ若いじゃん……とか思うライターであった)
(文庫版『あさきゆめみし』1巻 大和和紀/講談社 より引用)
日が高くなる前に源氏を帰そうとするなど、プライドを守るために源氏に厳しい態度を取りつつも「もう来ない」と言われて慌てて縋ったり。
源氏を見送った後、この幸せがいつまで続くかと不安を感じたり。
年の差カップル(女性が年上バージョン)にはありがちな悩みですよね。
現代人でもよくあることなのですから、女性が男性に頼る部分が大きく、またその気になれば簡単に切れてしまう恋人関係が当たり前の平安当時であれば、いっそう御息所の悩みは深かったでしょう。
そんな御息所の悩みを知ってか知らずか、源氏も徐々に彼女との付き合いを重荷に感じるようになります。
教養高く趣味も良く、美しい年上の女性との付き合いは想像以上に若い源氏の体力と精神を消耗させたのでしょう。
そんなときにひょんなことから出会ったのがおっとりした儚げ美女の夕顔。
源氏は夕顔に夢中になり、徐々に御息所から遠ざかります。
御息所も源氏の新しい恋人の噂を聞き、「年若い恋人に捨てられたと噂されるくらいなら」と別れを考えますが……。
余談ですがこの中将、『源氏物語』では源氏に粉かけられて見事にいなしたりしてる有能女房です
(なんで源氏がそんなことをしたかって?素晴らしい女性は仕える女房も素晴らしい、みたいな感じです。本当に節操がないですね)
(文庫版『あさきゆめみし』1巻 大和和紀/講談社 より引用)
御息所の頭の中は姿も名前も知らない、自分よりはるかに格下の憎い女のことでいっぱい。
そして、ついには夕顔を手にかけてしまうのです。
強い思いが体を抜け出し、人を殺めてしまう衝撃的なシーンです
(文庫版『あさきゆめみし』1巻 大和和紀/講談社 より引用)
このとき御息所に生き霊を飛ばした自覚などありませんが、当然、源氏の足は御息所からさらに遠ざかります。
そして、源氏は夕顔を亡くしたショックで山ごもりするのですが、そこで後の正妻となる紫の上と衝撃的な出会いをするのです。
思わぬところで物語を大きく展開させるのに一役かった御息所ですが、その後、彼女をさらに苦しめる出来事が……。
というところで、前編はここまで。
後編は深まる嫉妬と苦悩、第二の生き霊飛ばしなどについて語っていきます!
(ayame)
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