みなさんこんにちは!ほんのり歴女なマンガフルライターayameです。
今回も始まりました、名作『あさきゆめみし』キャラ解説。
第21回目は、源氏の養女であり、実の息子・冷泉帝の妃となった秋好中宮(あきこのむちゅうぐう)です!
というわけで、ついに源氏の恋人・想い人ではなく、子世代のキャラクターの登場。
すっかり中年となった源氏……(現代の感覚ではまだ若い年齢ですが)。
そろそろ色恋沙汰は子世代に譲ってのんびり隠居……かと思いきや、美しい秋好中宮を目の前にして実はまだまだ現役……?!
源氏が後宮政治に参入するきっかけにもなった秋好中宮ですが、今回はその不思議な魅力に注目。
冷泉帝とのほのぼのとした夫婦関係も推していきますよ~!
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こちらは『あさきゆめみし』の完全版。美しい!
また、55周年記念の新装版も発売しています。
目次
1、『源氏物語』における秋好中宮
秋好中宮は、源氏の元恋人である六条の御息所の一人娘で、冷泉帝の妃。
朱雀帝の即位によって伊勢の斎宮に選ばれ、思春期を六条の御息所と共に伊勢で過ごしました。
その後、朱雀帝が譲位したため斎宮の任期を終え京に戻りますが、同時に母・御息所を病で失ってしまいます。
幼いころに父を失っているため、彼女はひとりぼっちに……。
文字にするとあっけないですが、これ、当時の貴族女性の人生としてはなかなか厳しいものです(もちろん現代人にとっても大変なことですが)。
源氏はそんな彼女を養女に迎えます。
これは亡き御息所の意向に沿った形ですが、後に源氏は彼女を冷泉帝の女御として入内させ(梅壺の女御)、源氏は後宮政治へと乗り出すのです。
冷泉帝にはすでに中納言(頭の中将)の姫君が入内していたため(弘徽殿の女御)、梅壺VS弘徽殿、ひいては源氏VS頭の中将という構図を作り出すことに。
この対立は華やかな絵合の会の催しにもつながり、読者が優雅な後宮文化を垣間見るきっかけにもなっています。(ちなみに、絵合は源氏の勝利です)
絵合は衣装調度の色も統一し、とても華やかに。まだ若い冷泉帝の後宮ですが、源氏たちの手によって高雅さを保っています
(文庫版『あさきゆめみし』3巻 大和和紀/講談社 より引用)
秋好中宮という(とても呼びにくい)名前の由来は、源氏が彼女に春か秋か、どちらが好きか尋ねたときの返答から。
母親ゆずりの才気と美しさ、女らしい優しい声音で、一時源氏が気の迷いを起こしそうにもなりましたが、彼女自身が源氏を自身にあまり近寄らせず、ふたりはあくまでも義理の親子関係のまま。
冷泉帝との関係はとても良好で、中宮の位にまでのぼります。
子供こそ生まれませんでしたが、冷泉帝の退位後も仲睦まじく暮らしました。
2、『あさきゆめみし』における秋好中宮~よき娘の本音は意外に強か?~
『あさきゆめみし』で描かれる秋好中宮は、下がり端あたりの髪がウェーブしていて、やわらかい雰囲気のある美少女として描かれています。
冷泉帝と過ごす一場面。ほのぼのとした可愛らしい夫婦ですね
(文庫版『あさきゆめみし』3巻 大和和紀/講談社 より引用)
(とはいえ、実際のところ平安時代は直毛至上主義。ウェーブがかった髪(縮毛)は恥ずかしいものであり、髢(かもじ。エクステやカツラのようなもの)でごまかすのが普通です)
斎宮を退いたばかり、おまけに両親ともすでにないとなるとかなり不安定な立場ではありますが、運よく源氏が面倒を見てくれたことで、当時の女性として最高に近い幸せを手に入れました。
入内当時、秋好中宮は21歳、冷泉帝は12歳。
夫婦というよりも姉弟、当時なら場合によっては親子とも言えるような歳の差ですが、あまり世慣れしていない純粋な彼女にとって、むしろこの年の差はかえって心地よかったのかもしれません。
そんな秋好中宮、幼いころは母を悩ませる源氏に対し、嫌悪を隠しませんでした。
伊勢への下向を決めかねている御息所。まだ幼い姫にとって御息所が同行してくれるかどうかは大きな問題です。
(ただし、母親が斎宮に同行すること自体異例ではあります)
(文庫版『あさきゆめみし』2巻 大和和紀/講談社 より引用)
御息所が亡くなった直後も、源氏への悪感情は消えていません。
源氏は御息所の葬儀の手続きなどもすべて引き受けました。感謝の念はありますが、それでもまだ源氏を許すことはできません
(文庫版『あさきゆめみし』3巻 大和和紀/講談社 より引用)
これほど源氏に対し頑なな彼女ですから、形ばかりとはいえ彼の娘になることには大きな抵抗があったはず。
それでも源氏の養女として入内することを受け入れたのは、若い女性が一人で生きていくことの難しさをよく理解しているからでしょう。
実のところ、思いのほか強かな女性なのかもしれません。
結果、この選択は大正解。
冷泉帝との関係は良好で、源氏の家に栄えと誉れをもたらすことに。
紫の上ともいい関係を築き、源氏のよき娘、そして冷泉帝のよき理解者となり、幸せをつかむことに成功したのです。
3、大人の男性を魅了する不思議な力?源氏の変化にも注目
実は、秋好中宮は伊勢の斎宮に選ばれた当時、朱雀帝に一目惚れされています。
このとき、中宮はわずか13歳。朱雀帝は24歳。
8年近く思い続けていた朱雀帝(でも朧月夜にもぞっこんだったので、一途というわけでもないですね)
(文庫版『あさきゆめみし』3巻 大和和紀/講談社 より引用)
当時、10以上離れた年齢差婚こそとくに珍しくはありませんが、相手がまだ10代前半という点にはなんとも言えないものを感じます……。
といっても、女性の12歳は裳着の適齢期でもあり、成人と見なされる年齢ではありますが……。
さすが18歳当時に10歳前後の紫の上を見初めた源氏の兄、とでもいうのでしょうか。(そういえば、二人の実父である桐壺帝も20代後半あたりで当時14歳の藤壺の女御を后に迎えていましたね……)
そして源氏も、秋好中宮に対して何度がグラっときています。
けっこうストレートに口説いています
(文庫版『あさきゆめみし』3巻 大和和紀/講談社 より引用)
いくら若く美しいとはいえ、元カノの娘で、自分の養女で、息子の嫁に、ですよ。
当時、最愛の人である藤壺の女御を失ったばかりとはいえ、これは看過できるものではありません。
源氏が正気を取り戻し、結果的に未遂とはいえ、相変わらず源氏はとんでもない奴だと思わされるエピソードです。
ただし、源氏も少しずつ成長しています。
おそらく、若いころの源氏であればそこで引き下がることなく、強行突破していたはずです。
なんせ、父親の嫁にすら手を出す男ですから。
そこをグッとこらえることができたのは、読者にとっては好ましい変化ですね。
同時に、源氏の老いを見て取れる一瞬でもあり、ちょっと切なかったりするのですが……。
とにかく、秋好中宮がどこか大人の男性ウケする不思議な魅力を持っていたのは事実です。
父親を早くに失っているせいか、どこか頼りなげかつ儚げな印象(実際どうかは関係なく、当時のイメージで「親を亡くしている=頼りどころがない、か弱い存在」なのです)、くわえて(元)斎宮の神聖な雰囲気のなせる業かもしれませんね。
しかし、最初から色めいた目線しかもっていない大人の男性には、斎宮あがりの初心で大人しく、控えめな秋好中宮を幸せにすることはできなかったと思います。
その点、年下夫である冷泉帝との穏やかな関係は彼女にとって理想的だったのではないでしょうか。
二人の初対面(初夜)の一コマ
(文庫版『あさきゆめみし』3巻 大和和紀/講談社 より引用)
純粋な好意から始まったからこそ、互いに信頼し合い、まるで親友のような関係を築くことができた二人は、『あさきゆめみし』(『源氏物語』)のなかでもトップクラスのお似合いカップル。
もしベストカップル賞をあげるなら、冷泉帝×秋好中宮にあげたい!と思うと同時に、波乱万丈な人生を送った秋好中宮が穏やかな幸せを手に入れられたことを嬉しく思うライターなのでした。(『源氏物語』で幸せを掴める女性は多くないですからね)
(ayame)
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