【『あさきゆめみし』キャラ解説】20回:自分だけの幸せを選び取った希有な女性・槿の姫君

みなさんこんにちは!ほんのり歴女なマンガフルライターayameです。

今回も始まりました、名作『あさきゆめみし』キャラ解説。

第20回目となる今回は、プラトニックを貫いた希有な女性・槿(あさがお)の姫君です!

得がたい美女と見るや即刻手を出す源氏ですが、彼女は源氏がどんなに口説いてもなびかなかった人。

強い意志を持って源氏をはねつけ、自分だけの幸せを掴んだ女性です。

でも、あまりにも登場シーンが少なく、「え?あさがお?誰?」という人も多いのではないでしょうか。

そんなのもったいない!

存在感は薄いけれど実はすごい女性、そんな槿の姫君をライターの独自目線で解説します!

 

このコラムの初回0回はこちらです↓

【『あさきゆめみし』キャラ解説】0回:コラム連載にあたっての前説~本作の魅力とキャラ解説に至った理由

2022年2月9日

 

こちらは『あさきゆめみし』の完全版。美しい!

 

また、55周年記念の新装版も発売しています。

 

1、『源氏物語』における槿の姫君

槿の姫君は、桃園式部卿の宮の娘。

桃園式部卿は源氏の父である桐壺帝の弟なので、源氏とは従姉弟同士にあたる高貴な女性です。

源氏は年若い頃から美しい従姉と折に触れ文などのやり取りをし、一部では槿の姫君は「源氏の初恋の人」と言われています。

源氏との結婚話は何度か出ていますが、そのたびに彼女自身はそれを拒否。

源氏の正妻である葵の上が亡くなった際には朧月夜や六条の御息所とともに次の正妻候補として名が挙りましたが、やはり彼女はそれを拒絶したのです。

ご存知の通り、この後正妻(仮)の座を埋めたのは紫の上です

(文庫版『あさきゆめみし』2巻 大和和紀/講談社 より引用)

この時代の女性としては、控えめで慎み深いだけではなく、とても頑固な人といえるでしょう。

その後、彼女は賀茂の斎院に選ばれ、源氏は朧月夜とのゴタゴタで須磨に隠遁。

さらに月日が経ち、源氏が帰京した後に姫君も父宮の死によって斎院を退下し、久々に再会を果たします。

今度こそ、とばかりに姫君を口説く源氏ですが、やはり彼女の心は固く、源氏は頑固な姫君の心を恨めしく思いながらも彼女を諦めるのでした。

2、『あさきゆめみし』における槿の斎院~親の結婚生活によって固められた決意~

源氏に対して拒否の姿勢を見せた女性は、藤壺や空蝉など、何人か名前を挙げることができます。

【『あさきゆめみし』キャラ解説】6回:恋の抜け殻だけを残しながらも生身感のある女性・空蝉

2022年3月23日

しかし、源氏に強く惹かれながらも最後の最後まで体を許さなかったのは槿の姫君だけ。

彼女は深く源氏を愛しながらも、その愛を拒否しつづけたのです。

『あさきゆめみし』ではその理由を、”両親の冷めた結婚生活から女性の生き方に疑問を感じたから”として掘り下げて描いています。

槿の姫君の父・桃園式部卿の宮は、貴族の男性の常として正妻以外に何人かの愛人を抱えていました。

そして正妻である姫君の母も、貴族の女性として夫をとりたてて咎めることもせず、幼い姫君は「夫婦とはこういうもの」と思っていたようです。

けれど、実際は違いました。

1人静かに陵王の舞を踊る母を見て、その苦しみを知ったのです

(文庫版『あさきゆめみし』3巻 大和和紀/講談社 より引用)

母親は怒りや涙を隠し、結婚生活という戦場で戦い続けなければならなかったのです。

そんな母親を見て、彼女は女性の生き方に疑問を感じるとともに自分はそうはなりたくないと強く思うまでに。

愛ゆえに人を憎み、嫉み、恨み、涙を流す生き方は清廉な彼女には耐えがたかったのでしょう。

紫の上のことも思いやれる、心優しい女性なのです

(文庫版『あさきゆめみし』3巻 大和和紀/講談社 より引用)

そんな彼女ですから、正妻(正式のものではありませんが)として紫の上を迎えている源氏に嫁ぐなど言語道断。

恋人になって愛の戦場に身を投じるよりも、ただ1人静かに源氏を思い続けることを選びました。

そうすることで、彼女はより強い愛を手に入れたのです。

3、自分の幸せを自分で決められる強い姫君

槿の姫君はこの時代の貴族の姫には珍しく、自分自身で【男性に頼らない道】を選びとった強い女性です。

周りに流されずに自分1人で決意したという点では、朧月夜と通じるものがありますね。

【『あさきゆめみし』キャラ解説】17回:源氏の幼稚さの犠牲となった艶やかなイマドキ女子・朧月夜

2022年6月29日

朧月夜は自身の立場を顧みず源氏を強く愛し、その身を破滅の淵まで追い込んだ女性です。

槿の姫君はただ一途に源氏を思いながら、その想いを告げることなく1人で愛を抱えることを決意しました。

2人の選択肢はまるで真逆であり、どちらが幸せとは言い切れませんが、女性が内に秘める強さを感じさせてくれます。

彼女にとってはこの選択こそがもっとも幸せなのです

(文庫版『あさきゆめみし』3巻 大和和紀/講談社 より引用)

 

また、『あさきゆめみし』の槿の姫君は、他の女性にはない特別な役割を持っています。

それは、槿の姫君に振られた源氏が立ち去るシーンに見られます。

厳かに降る雪がまたもの悲しさを引き寄せます

(文庫版『あさきゆめみし』3巻 大和和紀/講談社 より引用)

ここでの彼女の役割とは、源氏の”老い”を暗示させること。

「若い頃であれば引き下がることはなかった」という源氏の表情には、ある種の執着からの開放感を感じられます。

源氏の幼い頃からその成長と生き方を描き続けてきた『あさきゆめみし』。

うっかりすると作中の時間の経過を忘れてしまいますが、今を盛りと輝く光る君も、実はもう中年。(といってもまだ30代前半なのですが……当時としては年増です)

彼の人生も終盤に入りつつあることがほんのり示されているのです。

それでもなんやかんやまだまだ現役バリバリの源氏なのですが、そうはいえどもこのシーンにはなんとなく首の裏がスッとした感覚を覚えました。

存在感薄いながらも思わぬ効果をもたらすキャラクター、それが『あさきゆめみし』の槿の姫君なのです。

 

(ayame)

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

元研究職、現在は飼い猫を溺愛する主婦兼フリーライター。小さいころから漫画が好きで、実験の合間にも漫画を読むほど。 ジャンルを問わずなんでも読むけど、時代もの・歴史ものがとくに大好物。 篠原千絵先生大好きです!好きなタイプは『はじめの一歩』のヴォルグさんと『はいからさんが通る』の編集長。