『レニフィルの冒険』~90年代キッズをファンタジー世界へ誘う一角を担った面白エルフと一緒にゆく冒険譚

この身は現実世界を生きつつも、『ドラゴンクエスト』や『ロードス島戦記』で心は「ファンタジー」世界も旅したりした子供時代をおくっておりました。マンガフルライターの相羽です。

80年代・90年代のマンガについて語る、火曜日の「ゆるゆるコラム」のコーナーですが。

今回紹介するのは、石田和明先生の『レニフィルの冒険』です。

 

著者 石田和明
出版社 エニックス
掲載雑誌 月刊少年ギャグ王
掲載期間 1994年~1997年
巻数

全4巻

ジャンル ファンタジー

 

まず前提として、源流から脈々と受け継がれてきたものを継承している、かなり正統的な「ファンタジー」の世界観で描かれている作品です。

ここでいう「源流」とは、便宜的にJ・R・R・トールキンの『指輪物語』を指すこととします。

令和の世となった現代の日本でこそ、剣と魔法! エルフ! ドワーフ! ゴブリン! などなど! といった世界観のファンタジー作品はあふれにあふれてバリエーションも豊富ですが、これらの世界観のかなり部分はトールキンの『指輪物語』に源流があります。

最近の作品でこそ、源流から色々と薄まってエルフの設定などは何となくイメージで描かれている作品も多いと感じるのですが(これはこれで、作品が多様になったという点でイイことだとも思います)。

90年代発表の本作・『レニフィルの冒険』は、かなり源流の設定・世界観を継承しており、特にエルフの「生まれ変わり」に関して、今の感覚だと骨太だとも感じるくらいの背景設定が前提に描かれていたりします。

 

第2巻の巻末特別企画「ようこそ!エルフの森へ」は必読!

(『レニフィルの冒険』2巻 石田和明/エニックス より引用)

 

この「新しく生まれた子供は亡くなったエルフの生まれ変わりだと言われています」という設定は、かなりトールキンの中つ国(『指輪物語』をはじめとするトールキンの物語のほとんどが起こったとされる場所)のエルフの設定を本歌としている感じです。

実は『指輪物語』のエルフの設定は、文学的・哲学的にかなり深いものがあるのですが、朗らかで明るい作風ながら、そういった深淵な世界ともちゃんと接続している感覚が感じられるのが、本作の魅力の一つです。

などと、偉そうに語ってみましたが、僕もこういう話を知ったのは、他ならぬ『レニフィルの冒険』の巻末漫画での、石田和明先生の解説コーナーででした。

 

第1巻の巻末漫画が、90年代キッズの「ファンタジー」世界深堀のきっかけに

(『レニフィルの冒険』1巻 石田和明/エニックス より引用)

 

ファミコンのゲーム『ドラゴンクエスト』第1作の発売が1986年。そのあと、個人的に日本のファンタジー作品の流れを考えるにあたって大事な作品だと感じている水野良先生の『ロードス島戦記』の第1巻の刊行が1988年。

そして、本作『レニフィルの冒険』第1巻の刊行が1995年ですが。

自分語りになってすいません。90年代って、まだまだ日本でファンタジー作品の愛好家はそこまで多くなくて、僕が子供の頃は宮城県の仙台市では骨太なファンタジー関連の書籍って、なかなか手に入らないものでした(インターネット通販など、まだ普及していない時代です)。

で、上述の石田和明先生の解説で、へ~、源流の方にはそんな世界があるんだ! と知った僕は、大学の頃関東方面に出てきてから、神保町でファンタジー関連の書籍をあさったりしていたものでした(その頃、『指輪物語』も翻訳されたものを読みました)。

そういった流れの中で『レニフィルの冒険』を考えてみると、なんといっても主人公のエルフのレニフィルが(わりとギャグ的な方向で)面白いというのが、最高に魅力的でした。

『指輪物語』のアルウェン姫は貴人ですし、『ロードス島戦記』のディードリット(こちらも、日本のファンタジーを語る上で外せないキャラクターですね……)もある程度コメディ的な側面はみせますが、基本的には「美しいエルフ」のイメージで描かれていると思います。

そういったキャラクターたちと比べると、レニフィルは百面相しますし。

 

レニフィルは表情が豊か

(『レニフィルの冒険』1巻 石田和明/エニックス より引用)

 

物語の最初の方では「黒の森」から「魔導の書」を盗み出そうとしたりとわりとろくでもないこと(笑)をしたりしますし、ちょっとえっちなサービスシーンはありますし、カイルへの恋心に関しても、シリアスというよりは明るく楽しい感じで描かれていきます。

令和の今でこそ、日本のマンガ・アニメ・ゲームなどなどでエルフも多種多様に描かれて、もはや全ての作品をチェックして傾向をとらえるなどというのは不可能な感じにまでなってきておりますが。

レニフィルはそういったエルフ観のカンブリア爆発に向かう前の、源流からの正統を継ぎながら、同時にエルフを自由に描いていく時代へ向かっていくにあたっての、「架け橋」的な頃に生まれたキャラクターなのではないかと思ったりする次第です。

最近の融通無碍(ゆうずうむげ)な「ファンタジー」世界で描かれるエルフもよいのですが、歳をとった「ファンタジー」愛好家の悪いクセではありますが、一度『指輪物語』から辿って、『ロードス島戦記』も読んで、90年代に日本のファンタジーの一角を司った雑誌『月刊少年ギャグ王』や『月刊ガンガンファンタジー(現・『月刊Gファンタジー』)』の作品にも触れて(ここに、さらに一人夜麻みゆき先生というすごい作家さんが編んだ「オッツ・キイム」というファンタジー世界が展開されることになりますが、夜麻先生の作品については、またの機会にコラムを書かせて頂きたいと思っております。)……と、日本の「ファンタジー」の通時的な「流れ」も体感で感じながら近年の「ファンタジー」作品にも触れてみる! という楽しみ方も特に若い方にはおすすめしたくなることがあります。

そんな時、『レニフィルの冒険』はぜひとも読んでいてほしい作品です。

僕も今回読み直してみましたが、昨今の複雑化した日本の「ファンタジー」作品と比べると、素朴で暖かくて、逆にそこが癒される感じでもあります。

レニフィルの相方の剣士のカイルも、最近の作品なら「スキル」の一つでも持っていそうなものですが、基本的にシンプルに剣の腕だけで素朴に戦いますからね。その純度が、むしろ今読むと心地よかったりです。

ぜひぜひ、世の中が複雑化・カオス化した近年だからこそ、歴史と繋がりながらも独自の面白さを開拓していった、『レニフィルの冒険』に触れてピュアな「ファンタジー」の楽しさを再獲得してみて頂けたらと思います。

 相羽裕司

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ABOUTこの記事をかいた人

宮城県仙台市在住のブロガー。言語の研究をしている人。最近は震災からの地域復興も兼ねて、マンガを含む二次元キャラクターのAR(拡張現実)を「ガワ」にした介護補助AI(人工知能)を開発しようと(勝手に)考えている。自身も親の介護生活中。人生に影響を受けた漫画はCLAMPの『ツバサ』。