こんにちは! 春の気配も色濃くなってきた今日この頃、とっても春めいたタイトルの漫画のお話をしようと思います。
その名も、『ホーキーベカコン』!
「ホーキーベカコン」と聞いて、ピンとくる人はどのくらいいるのでしょうか?
恥ずかしながら私は当初まったくわからず……(汗)。
「ホーキーベカコン」とは、ウグイスの鳴き声のオノマトペです。
というわけで、今回は『ホーキーベカコン』というとんでもねぇ漫画を読んだら思いもよらずライターの世界が広がったぜというお話。
目次
まずは『ホーキーベカコン』を読んだ感想:こ、こいつぁとんでもない変態漫画だぜ……!
『ホーキーベカコン』は谷崎潤一郎の『春琴抄』を原案としており、全3巻完結済み。
『春琴抄』を知らないと楽しめないのかな?と思うかもしれませんが、ご安心を。
私自身、『春琴抄』の「し」の字も知りませんでした!笑
気になる『ホーキーベカコン』のストーリーを簡単にまとめますと、盲目の美女をひたすら崇め奉り、まるで殉教者のごとく心身ともに奉仕する男が、甘美で淫靡な地獄(天国)で咽び泣く話です。
ちょっと意味わからないですね。
おおまかなストーリーは『春琴抄』と同じなので、手っ取り早くwikiさんの概要を引用させてください。
盲目の三味線奏者・春琴に丁稚の佐助が献身的に仕えていく物語の中で、マゾヒズムを超越した本質的な耽美主義を描く。
主人公は薬種問屋のお嬢様である鵙屋 琴(のちの春琴)と、春琴に仕える佐助の二人。
佐助は春琴のおはようからおやすみまで、すべてのお世話をします。すべてですよ、すべて。
トイレだって連れて行くし(春琴は座って出して、立ち上がるだけ)、お風呂だって入れるし(春琴は立ってるだけで脱がすも洗うも佐助の仕事)、足が冷たけりゃ懐で暖める(場合によっては蹴りが飛ぶことも)。
幼少のころよりその美貌と優れた舞の才能を謳われ、帝の覚えもめでたき春琴。
そんな春琴にとって佐助はあくまでも『丁稚風情』ですから、恥なんてありゃしません。
こんな官能的なシーンも春琴にとっては些末なこと
(『ホーキーベカコン』1巻 笹倉綾人/KADOKAWA より引用)
そんな春琴と佐助はやがて師弟関係となり、佐助は毎夜、春琴から三味線の稽古を受けるのですが……これがもう、苛烈。
佐助の泣き稽古と言われるほど
(『ホーキーベカコン』1巻 笹倉綾人/KADOKAWA より引用)
春琴は薬種問屋のお嬢様ですから、親兄弟含め、周りは「いいとこのお嬢さんが男相手に」と眉をひそめるわけです。
佐助もさぞ辛かろう……と思いきや。
春琴がなにも意地悪や目が見えないことへの苛立ちで佐助に辛く当たっているのではなく、音曲の神髄を教え込むために真剣に稽古していると知った佐助、なんと、その喜びでゴートゥーヘブン。
男の人ってすごいや!
(『ホーキーベカコン』1巻 笹倉綾人/KADOKAWA より引用)
ここまで読んで、「うーん、こいつぁとんでもねぇ変態漫画だな……!!」と思った次第です。
また、個人的に作中屈指と思える変態シーンがこちら。
佐助、成長して男前です
(『ホーキーベカコン』2巻 笹倉綾人/KADOKAWA より引用)
佐助が庭に咲く菊の花弁を食べるという、なんだかとても官能的かつ美しいシーンですよね。(人が食べてる姿は時と場合によってはとてもエロい)
でも。
実は、この菊の花、ただの菊の花じゃないんです。
この菊の根元には、春琴の不浄(排泄物)が埋まっているんです。
春琴のトイレはとても特別で、トイレの床底に蛾の刎を敷き詰めた壺を置いたものでした。
その壺に不浄を落とすと、音も臭いもなかったとかなんとか。(倪雲林の厠というそうです)
それを佐助はせっせと菊の根元に埋め、美しく咲いた菊の花弁を至福の顔で口にしているわけです……。
うーん、変態的すぎて、もはや言葉もない……(ライターなのに)
とまぁこんな感じで、美しく傲慢、どこまでも豪奢に生きる春琴と、そんな春琴に常に狂信的に付き従う佐助。
二人の関係性は幼い頃から成長して歳を重ねても変わることなく、春琴が死してもなお変わらず、佐助が最期の時を迎えるまさにその瞬間まで変わらないのです。
生まれた子供もほったらかし(子供まで作ってるんですよこの二人!)、自分の生きる道だけに真摯な二人は、もはや生き方そのものが変態的だといっても過言ではないでしょう。
作中にはほかにも変態的かつ淫靡なシーンがたくさんあり、まさにマニア歓喜!
美しい作画もあり、ページを繰る手が止まらない、目が離せない名作変態漫画なのです!
『ホーキーベカコン』を読んだら当然『春琴抄』が読みたくなるわけで……
読みました。
【読んだよ!】
ガキ使横目に春琴抄やっと読んだ!去年『ホーキーベカコン』読んですぐ購入して、なかなか読む時間取れなくて1年越し。
こ、これはまたホーキーベカコン読まなきゃ…(そしてまた春琴抄読む) https://t.co/NcU9RCveNY pic.twitter.com/2Eo5TAooac— ayame@猫好きライター (@ayame_kinusome) December 31, 2020
それでわかったのが、『ホーキーベカコン』が『春琴抄』に沿いつつもオリジナル要素満点で、よりエンタメ性が高く、読者の意欲を煽るものであるということ。
たとえば前項で挙げた変態シーン、これ、『ホーキーベカコン』オリジナルです。
オリジナルというともしかしたら語弊があるかもしれませんね。
『春琴抄』には書かれていない、けど書かれていないだけで「実際にあったことなんだろう」と思わせることが、『ホーキーベカコン』には描かれている、ということです。
原案(『春琴抄』)にないことを描いておきながらなんら違和感なく、むしろ原案を補完しているかのような『ホーキーベカコン』。
『春琴抄』がやや読みにくい文体なこともあり(極端に句読点、改行、括弧等が少ない)、漫画という媒体でよりキャラクターの像を深掘りしている『ホーキーベカコン』は、とてもエンタメ性が高いと感じられました。(絵もすっごい可愛いしな!)
くわえて、『ホーキーベカコン』にはちょっとした【仕掛け】もありまして。
普通に読んでいると「え? は? どういうこと?」となってしまうのですが、これは他の谷崎潤一郎作品のオマージュのようです。
『ホーキーベカコン』を読めば『春琴抄』を読みたくなること間違いなし!
すでに『春琴抄』を読破済みの人は、『ホーキーベカコン』との違いやそれぞれの魅力を堪能するのもいいでしょう!
そのうえ他の谷崎作品も読みたくなってしまうという!
『ホーキーベカコン』から『春琴抄』、そしてその先へと、意欲を煽られまくりなライターなのでした。
さらに『春琴抄』の映画も3作ほど見てみた
はい、もうどっぷり『春琴抄』に浸かってしまってますね。
だって、『春琴抄』を知った上であらためて『ホーキーベカコン』を読むと、「他作品では春琴と佐助はどんな風に描かれているんだろう?!」と気になってしまうんですよ!
というわけで、マンガフルには珍しく、ちょこっとだけ映画の感想を述べさせてください。
最初に見たのは、山口百恵ちゃんと三浦友和カップルによる『春琴抄』。
百恵ちゃんを愛でる映画です、というのはあながち冗談でもないのですが、春琴の苛烈さはそれほど描かれておらず、どちらかというとしっとりはんなりした気位の高い可愛らしいお嬢さんという感じ。
『ホーキーベカコン』では考えられないですが、佐助に取り縋って震えるシーンもあり、佐助×春琴のラブ要素がやや強めかなという印象です。
あと、百恵ちゃんのヌード、あります(こそっ)
2作目は、斎藤工の『春琴抄』
女性にひたすらご奉仕するイケメンを堪能できる、ある意味たまらん映画です。
ただ、春琴の暮らしがやや質素な印象で、原作や『ホーキーベカコン』にあるような「とにかく綺麗で贅沢してるいいとこのお嬢さん」感が薄いように感じました。
絵面も全体的に暗くて華がなく、それゆえか日本映画ならではの【湿気】を感じる作品です。
ラストは『賛歌』。
また、抽象的な演出が多く、ちょこちょこ挟まれる恐怖演出としか言えないカットには「もしやホラー映画だった……?」と思うほど。
ただ、これは監督である新藤兼人さん独特の世界観であり、ファンにはとても好評な模様。
生々しく描かれた『春琴抄』の世界を堪能したい人向けです。
ちなみに、今回取り上げている作品の中で佐助×春琴のセックスシーンが見られるのは、『ホーキーベカコン』と『賛歌』だけですよ!笑
胸を張って言おう、「『ホーキーベカコン』は面白い」と!
もうそれしか言えない。おすすめです、『ホーキーベカコン』。
あまりにもおすすめすぎて、魅力を語り尽くせなかったことが無念……。(語り尽くすと自然とネタバレしちゃうし)
- 谷崎潤一郎の『春琴抄』が好きな人
- ちょっと倒錯した愛に惹かれる人
- 可愛い女の子にビシバシしごかれたい人
そんな人にはとくにおすすめです!
まさか、1つの漫画を読んで、小説、そして映画を3本も見ることになるとは思いませんでした。
思いもよらず私の世界を広げてくれた『ホーキーベカコン』、めちゃくちゃ面白いからぜひ読んでみてください!
ちなみに、作者である笹倉綾人先生は、現在ろりおばば×リーマンの『アエカナル』を連載中。
800歳の未亡人ろりおばばと、山に死にに来た生真面目サラリーマンによる廃村生活恋愛物語
『アエカナル』1巻発売中です🦝🌸KADOKAWA公式オンラインショップhttps://t.co/spWSE7iAKh
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https://t.co/wF74Qd73Tb— 笹倉綾人 (@sasa_ayato) January 28, 2021
ろりおばば可愛らしい~! そして神秘的~!
というわけで、アダルト幼女好きは必読! ですよ。
以上、春琴が至上とする「人工の美」について日々考えているライターayameでした!
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