みなさんこんにちは!ほんのり歴女なマンガフルライターayameです。
今回も始まりました、名作『あさきゆめみし』キャラ解説。
第13回は、ほっこり癒やし系お姫様、花散里の解説です!
前回・前々回と紫の上を取り上げ、空気的にもボリューム的にもずーんと重くなってしまったこのコラム……。
ですが、今回は紫の上とは対照の人生を歩んだ女性の話です。
源氏とともに、ほっこりした気持ちで読んでくださいね。
このコラムの初回0回はこちらです↓
こちらは『あさきゆめみし』の完全版。美しい!
また、55周年記念の新装版も発売しています。
目次
1、『源氏物語』における花散里
若い頃の源氏の恋は辛い別れや失敗ばかりでした。
初恋の藤壺しかり、六条の御息所しかり、夕顔しかり、他にも他にも。
でも、なかには長く、幸せに続いている恋もあるのです。
そのお相手が、花散里。
彼女は源氏の父・桐壺帝の妃である麗景殿の女御の妹です。
麗景殿の女御は特別な寵愛を受けた女性ではないのですが、桐壺帝いわく親しみやすく心安らぐ人。
花散里も姉君と同じく心優しい気質の人で、それほど容姿が美しいわけではありませんが、身分もよく性格も良く、源氏に安らぎを与えてくれる存在です。
そんな花散里、『源氏物語』での初出は花散里の帖。
初登場時点ですでに源氏との付き合いはそれなりに長い、という設定なのですが……この帖、すっっっごく短いんです。
おまけに、肝心の花散里はセリフひとつありません。むしろメインは姉の麗景殿の女御なんじゃないかっていうレベル。
そんなわけで、源氏とのなれ初めも不明、これといった印象的なエピソードもなし。
でも、源氏が建てた二条東の院に住まうことを許され、さらに後には六条院という壮大な屋敷の東の対の主となり、源氏の息子の養育まで担当します。
二条東の院に移った頃にはすでに源氏と男女の仲にはなかったようですが、夫婦としての信頼は篤く、他の女性とは違った形で源氏と深く結ばれていたことが察せられます。
源氏の恋人のなかでも数少ない、『穏やかな幸せ』を掴んだ女性と言ってもいいでしょう。
2、『あさきゆめみし』における花散里~健気で可愛らしいキャラが一服の癒やしに~
『あさきゆめみし』では源氏とのなれ初めがしっかり描かれています。
源氏が藤壺への叶わぬ恋心に鬱屈していたころ、橘の木にいたずらをしていたところを花散里が諫めたのが二人の出会い。
源氏は持ち前の大胆さで二人を隔てる御簾を超えてしまいますが、そこにいた花散里が思いのほか華やかさに欠け、衣装を褒めることしかできません。
傍若無人な振る舞いですが、それも源氏の魅力のひとつ
(文庫版『あさきゆめみし』2巻 大和和紀/講談社 より引用)
けれど、飾らず穏やかな気質の花散里に好感をもった源氏。
端午の節句に薬玉を贈ることを約束し、花散里は夢見心地です。
初心で可愛らしい女性です
(文庫版『あさきゆめみし』2巻 大和和紀/講談社 より引用)
しかし、いざ端午の節句になると、いつまで待っても源氏からの薬玉は届きません。
ほかの女君たちが恋人からもらった薬玉を自慢しあっているなか、花散里は「きっと私のことなんて忘れている、光る君とお話しできただけで幸せ」と自分を納得させるのですがーー。
そこへ、なんとも見事な細工の薬玉が届きます。もちろん、送り主は源氏!
これまでパッとしなかった花散里ですが、いっきに女性陣の注目と憧れの的に
(文庫版『あさきゆめみし』2巻 大和和紀/講談社 より引用)
源氏は「うっかり忘れていた」と言い訳もせず謝罪。
花散里の前では、どうにも取り繕うことができなくなるようです。
彼女の穏やかさが源氏の心を解きほぐし、ガードを外させるわけですね。
とにかく、この一件で二人は恋人どうしに。
源氏は花散里を頻繁に訪ねるわけではありませんが、時たま訪れては彼女の正直さや温かさに心を委ねます。
源氏の政治的立場が危うくなたっときも、花散里はいつも通り
(文庫版『あさきゆめみし』2巻 大和和紀/講談社 より引用)
源氏の近くにいる女性達と言えば、華やかではあるものの、一癖も二癖もある人ばかり。
そんななかで花散里の存在は、一服の清涼剤のような癒やしになったのでしょう。
3、あやかりたい女性ナンバーワン!?花散里こそ真の成功者!
花散里は時たま訪ねてくるだけの源氏に恨み言をいうこともなく、あっちこっちに恋人をつくる源氏にやきもきすることもなく、「源氏の恋人になれた」という事実だけで満足できてしまう人。
数多いる源氏の恋人たちの多くが苦しむ、「嫉妬」という感情と無縁の人です。
ただおっとりと鷹揚に構え、ふらりとやってくる源氏を温かく迎えるーーそれだけで源氏の妻の一人になり、子供の母代わりになり、男女関係がなくなってもしっかりと繋がりを持ち、晩年は二条東の院も彼女が譲り受けます。
すっかり男女の関係がなくなったあとも、彼女の心は変わらず穏やか
(文庫版『あさきゆめみし』3巻 大和和紀/講談社 より引用)
波風のない地味な性格、地味な容姿、地味な人生……そう思われるかもしれませんが、なんだかんだ花散里こそ真の成功者だと言えるのではないでしょうか?
源氏の一の人と言われた紫の上ですら、源氏の浮気や子ができないことに悩み続け、晩年には正妻の座すら追われ、その苦しみは生涯絶えることはありませんでした。
「花散里が紫の上のように苦しむことはなかった」とはもちろん言い切れませんが、彼女の立場や性格を考えると、苦しみや不幸よりも幸福に包まれた人生であったのだろうと察せられます。
人間、なんのかんのといっても平凡が一番。
山あり谷ありの人生も面白いですが、たとえ平坦でも、常に自分の側にある小さな幸せをこそ大事にしたいーーそう思わせてくれる・気づかせてくれる、それが花散里の魅力であり、源氏を強く引き付けたのだとライターは考えます。
(ayame)
『あさきゆめみし』を読むなら……(今なら無料もあり)
『あさきゆめみし』を全巻読むならこちらから!期間限定無料あり!
電子書籍の購入はこちらからも可能です!
コメントを残す